〜  In the blue sky  〜




 俺は公園のベンチに座っていた。
 こんなに天気のいい日は公園のベンチで『ボ〜』っとするのに限る。


 ……。
 似たようなやつがあそこにも立っている。
 なんか、不思議な感じがする女だ。
 結構かわいいかも…。
 でも、何をしてるんだ?
 つっ立ってないで、ベンチに座りゃあいいのに。
 おっ、なんかこっちに向かって走ってくる男がいる。
 そして、その男は不思議な感じがする女のほうに近寄っていった。
 会話が聞こえる距離にいるわけではないが、それを言ったらこのSSはおしまいだ。
 ――― という訳で、会話を聞いてみる。


「る、瑠璃子さん…」
「長瀬ちゃん、電波届いた?」
「届いたけど、もう、こういう待ち合わせやめにしない?」
「どうして?」
「だって、一応これは『 毒 』な訳だし…」
「長瀬ちゃんがやめろって言うならやめる」
「じゃあ、もうやめよう」
「うん」
「ふう〜、それで、今日はどこに行く?」
「長瀬ちゃんが行きたい所でいいよ」
「うん、判った。じゃあ行こう」
 ………。


 謎な会話だ、さっぱりわからん。
『 電波 』? 『 毒 』? …なんなんだ?
 もう、気にしないことにしよう。
 おっ、また一人の男が公園に入ってきた。
 辺りを見回している。
 怪しい、非常に怪しい。
 ――― ってこんな行動をしている俺も十分怪しいけどな。
 そして………ベンチに座った。
 なんだ、連れがまだ来ていないだけか。
『 バウッ 』
 犬の声に驚いてそちらのほうを向く。
 結構でかい犬だ。
 散歩の途中で、今は自由にされているのだろう。
 その犬に近づいていく人が二人ほど…。
 兄妹っぽいけど、髪の毛の色が違う。


「ねえねえ、けんたろ。私たちも犬、飼おうよ」
「ダメだ。これ以上食費を増やされてたまるか」
「いいじゃない、犬の一匹や二匹くらい…」
「世話とかも大変だし、品物をダメにされちゃかなわん」
「う〜、けんたろのケチッ!」
「うるさいっ、居候のくせにでかい顔をするなっ!」
「まじかるサン―――」
「わ、判った。俺が悪かった。だからここでは『それ』は使うなっ!」
「じゃあ、飼っていいの?」
「それはダメ」
「う〜〜〜」
「ほらっ、スフィー。もう行くぞ」
「うん…」
「…ま、もう少し収入が増えたらな」
「ほんとっ!?」
「ああ、だからちゃんと手伝えよ」
「うんっ、うんっ!」


 かくして、二人は犬との別れを惜しみながら、先を急ぐのであった…。
 ――― って、なんで『 次回に続く!』っぽくなってるんだ!
 ………。
 寒い、一人ボケ突っ込みは寒すぎる。
 そう思ったとき、先ほどの男が公園に入ってくる一人の女性の方に歩いていった。


「冬弥く〜ん」
「由綺、早かったね」
「『 早かったね 』って、約束の時間よりも10分も遅れてるよ」
「いや、俺はてっきり1時間くらい遅れるのかと…」
「あ、冬弥君酷い」
「はははっ、ごめんごめん。でも、由綺、最近忙しそうだったから」
「うん、最近あんまり会えないよね…」
「そうだね…」
「少し、寂しいな…」
「じゃあ、今日は思いっきり遊ぼうか?」
「…うんっ!」


 そして二人は、いちゃいちゃしながら公園を出て行った。
 なんか、平和な二人だったなあ。
 でも、彼女のほうはどこかで見たような気が…。
 まあ、いいか。
 しばらくすると、俺と同年代らしきカップルがこちらの方に歩いてきた。


「祐一、眠いよ〜」
「昨日あれだけ寝ただろ? 何で眠いんだよ」
「くー」
「こらっ! こんなところで寝るなっ!」
「だって、眠い…」
「だからって歩きながら寝るなよ」
「もうだめ、おやすみなさい…」
「あそこに、いい日陰があるからそこまで我慢しろ」
「うん…」
「ったく、しょうがないやつだな…」
 男の顔が女の顔に近づいていく。
 ………。
「わっ! 祐一、何したの?」
「何もしてないぞ」
「祐一、顔が赤いよ」
「気のせいだ」


 人前でキスなんてしないでくれ…。
 ただでさえ、暑いんだから。
 そう思ったとき、日陰にカップルがいるのに気がついた。


「浩之ちゃん、この桜、春は綺麗に咲くのかなあ?」
「さあな、桜なんてどれも同じだろ?」
「そんなことないよ、一本一本違うよ」
「そうか?」
「うん。花の色とか…」
「…まあ、そうなのかもな」
「あの桜と、どっちが綺麗かな?」
「…あっちの桜だな」
「どうして判るの? まだ、この桜が咲いたところ見ていないのに…」
「あっちは、あかりとの思い出の桜だからだよ」
「浩之ちゃん…」


 こっちでも同じ事をしてる。
 …暑いなあ。
 どこもかしこもカップルだらけ。
 そういう場所だからしょうがないけどな。
 ほら、また来た。


「耕一さん、ここで少し休みませんか?」
「千鶴さん、疲れちゃった?」
「…少しだけ」
「まあ、普段はデスクワークだからしょうがないかもね」
「それ、どういう意味ですか?」
「いや、別に深い意味は…」
「どうせ、私は運動してませんよっ!」
「だから…」
「それは、少しくらい体重が…」
「あの…」
「でも、私だって…」
「千鶴さん?」
「えっ!? あ、はい。何ですか?」
「大丈夫だよ千鶴さん。太ってなんかいないから」
「本当ですかっ!?」
「うん。本当」
「よかった…」


 あんな人が太ってるだって?
 そんなこと言ったら、世界中の大半の人が太ってることになるな。
 ……くだらない。
 ん? なんか騒がしい声が聞こえてきた。


「ほらっ! もっとちゃんと持ちなさいよ、和樹!」
「うっせーな、ちゃんと持ってるだろ?」
「だって落としそうじゃない、あれも、これも」
「だいたい買い過ぎなんだよ…」
「何か言った?」
「いいえ、何も…」
「そう、ならいいわ」
「なあ、瑞希。一つだけ聞いてもいいか?」
「なあに?」
「なんで俺はこんなに持ってるのに、お前は手ぶらなんだ?」
「あら、女の子に持たせる気?」
「少しくらいは持ってくれてもいいんじゃないか?」
「細かいことは気にしない、気にしない」
「おいっ、逃げるなよ。少しくらいは持てよ」


 あの彼氏、大変そうだな。
 ご愁傷様です。
『 チーン 』
 どこからか、鐘の音が聞こえた。


『 え〜ん、え〜ん 』
 子供の泣き声まで聞こえる。
「どうした、坊主」
「おかあさんがいないの」
「そうか…」
「え〜ん、え〜ん」
「じゃあ、お兄さんがいい物を見せてやろう」
「いいもの?」
「ああ、見てろよ」
 そう言うと男は人形を取り出した。
「あ、おにんぎょうだ」
「今からこの人形がひとりでに動き出すからな」
「うそだあ〜」
「いいから見てろって…」
 男がなにやら人形に手をかざすと、人形がひとりでに動き出した。
「わあ、ほんとうだ。すごおい!」
 しばらくそうしていると、人が集まりだした。
「坊主、この中にお前の母さんはいるか?」
「えっ? …あ、お母さん!」
 そう言うと子供は母親の元に走って行った。
 人だかりもなくなり、一人の女がそこに残った。
「…遅い」
「にはは…ごめんなさい」
「ラーメンセット、奢りな」
「が、がお…、もうお小遣いの残り、少ないのに…」
 あっ、男が女の頭を叩いた。
「痛い」
「叩いたからな、当たり前だ」
「往人さん、意地悪だよ」
「悪かったな」
「なんて…うそ。本当は優しい人」
「そんなことはない」
「さっきの『術』、あの子のお母さんを見つけるために使ったんだよね?」
「さあな」
「隠しても、私には判るよ」
「そんなことより、ラーメンセット」
「にはは…」
「置いてくぞ、観鈴」
「あ、往人さん。待って…」


 ラーメンセットか…。
 俺も腹減ったな。
 それにしても遅い、遅すぎる。
 今日はあいつの奢りだな。
「浩平、ごめんっ!」
 息を切らしながら長森が走ってきた。
「……」
「うう〜、怒ってるよね?」
「当たり前だ」
「…ごめんなさい」
「じゃあ、今日はお前の奢りな」
「う〜、わかったよ」
「じゃ、行くか」
「うん」
 そして俺たちは、行きつけのお好み焼き屋に向かった。
 風は南西。
 雲が流れていく。
 空はどこまでも広がっている。
 その空は、限りなく澄んだ青空だった。





   〜 あとがき 〜

   ども、ym2です。
   ごちゃまぜの第2弾、『 In the blue sky 』どうだったでしょうか?
   やっぱり、ym2が各作品で気に入った(萌えた)キャラを出しています。
   前回はAirが抜けていたので今回は入れてみました。
   次回は………どうしようかな?
   なにか、出して欲しい作品があったら、言ってください。
   出すように努力はしたいと思います。(汗)
   では、そういうことで……。


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