〜 えいぷりる・ふ〜る 〜




 今日は4月1日。
 そう、『エイプリル・フール』の日。
 今日は嘘をついてもいい日。
 …いつもついているけど。
 でも、今日は特別な日だから、祐一に凄い嘘をついちゃおうかな…。
 そうだ! いい事思いついちゃった。
 早速、祐一の部屋に行かないと…。


「……暇だ」
 昼食を終え、俺はベットの上で寝そべっていた。
 最初は名雪と商店街にでも行こうと思った。
 しかし、外はもう春の兆しがあるのに、俺の懐はまだ真冬だったのだ。
 そりゃあ商店街に行く度に、名雪にイチゴサンデーを奢っていればこんな事態にもなる。
 TVでも見ようとも思ったが、今の時間は何もない。
『笑って○いとも』も終わり、これからワイドショーの時間だ。
 しかし、あいにく俺はそんな番組に興味はない。
 …香里は別かも知んないけど。
 あいつ、クールを装ってるけど、案外、熱中して見ていたりして…。
『バキッ!』
「いてぇ! …あれ?」
 何かに殴られたような気が…、気のせいか?
 いや、そんなバカな。
 確かに今、誰かに殴られたぞ…。
 ……。
 きっと疲れてるんだな、うん、そうに違いない。
 そうと決まれば寝よう!
 そう思い、寝ようとした瞬間、ドアがノックされた。
『トントン』
「入ってません」
『ガチャ』
 入ってないって言ってるのに、入ってくるなんて…、失礼なやつだ。(怒)
 あ、入ってないから入ってくるのか。(笑)
「…祐一、ちょっといいかな?」
 やけに、にこやかな顔で聞いてくる。
「…5秒くらいならな」
「5秒じゃ短すぎるよ〜」
「じゃあ、3秒」
「さっきより短いよ〜」
 ああ、もう! うるさいやつだ、寝れないだろ!
「んで、何の用なんだ?」
 体を起こし、名雪に問う。
「うん、それがね……」
 名雪がもじもじしている。
「…私、祐一の他に好きな人ができちゃったの」
 なっ、なんだとっ!
 …ってよく見ると名雪の顔がにやけている。
 なぜだ? 何か企みがあるに違いない。
 読むんだ、名雪の考えを読むんだ。
 そうか、今日は『エイプリル・フール』か……。
 なるほどな、そう言うことか。
『目には目を』って言うからな…。
 よし、俺も名雪をからかってやろう。
「そうか、実は俺も名雪の他に好きなやつがいるんだ…」
 なるべく真面目な顔をして名雪に告げる。
「えっ!?  祐一。それ、本当?」
「ああ、本当だ」
「…好きになった娘って誰なの?」
 くっ、そうくるか!
 誰にすべきか…。
 あゆか? …………… う〜ん、なんかなぁ。
 舞か? ……………… 下手すると斬られそうだ。
 佐祐理さんか? …… こちらも舞に斬られそうだ。
 真琴か? …………… それだけは絶対に嫌だ。
 栞か? ……………… ダメだ、本気にしそうだ。
 北川か? …………… いや、この選択肢はないだろう。
 …となると残りは香里か。
 まあ、それでもいいか…。
 残りものには福があるって言うしな。
『バキッ!』
「ぐふぅ!」
 俺はまた何かに殴られた、…ような気がした。
「どうしたの祐一?」
「…いや、なんでもない」
 さっきから一体なんなんだ?
「それで、好きな娘って誰?」
 名雪がしつこく聞いてくる。
「…香里なんだ」
「香里? 本当なの、祐一?」
「ああ。春休みで香里に会えない日が続いて、初めて自分の気持ちに気がついたんだ…」
「そうなんだ…」
「隠していて悪かったな、名雪」
「ううん、いいよ別に。そっか………祐一、香里の事…」
 名雪が呟くように言った。
「…じゃあ、がんばってね。祐一」
 名雪が笑顔でそう言い、部屋から出て行った。
「何だ、ばれてたのか。『がんばってね。』なんて皮肉を言いやがって…」
 結局、名雪をからかえなかったので面白くない。
 俺は眠ることにした。


 …………。
「ふぁ〜〜〜」
 俺は目を覚ました。
 時計は3時30分を示している。
 ちょうど2時間寝てたわけか…。
 作者の手抜きもいいところだ。
 ん? 何だ今の台詞。
 ……今日は何かおかしいな、俺。
 目を覚ます為に顔を洗ったところに秋子さんが来た。
「これからお茶にでもしませんか?」
 いつものように右手を頬に当てて言ってくる。
「いいですね。それじゃあ、名雪を呼んできます」
「お願いします」
 そう言うと秋子さんは台所に消えていった。
 俺は名雪の部屋の前まで来た…が、何か変な音が聞こえる。
「ぐすっ、ぐすっ」
 何の音だ? …まあいいか。
『トントン』
 俺は名雪の部屋をノックする。
「……」
 返事はない。
 名雪のやつ、寝てるのか?
「名雪、入るぞ」
 そう言って名雪の部屋に入る。
「ダッ、ダメだよ裕一!」
「えっ?」
 時すでに遅し。
 俺は名雪の部屋のドアを開けていた。
 そこには着替え中の名雪が……いなかった。
 いるのは、目を真っ赤にした名雪だった。
「どうしたんだ…、花粉症か?」
 俺は名雪にそう聞いた。
「えっ? あ、うん、そう。私、花粉症なんだ…」
 しかし、ベランダに行くためのドアは閉められてる。
 さっき会った時はこんな事なかったのに…。
「どうしたんだよ、名雪。どこか痛いのか?」
 俺は本当に心配になった。
「だから、私は花粉症なの!」
 名雪が珍しく怒鳴った。
「違うだろ? ドアも閉まってるし、さっき会った時は何ともなかったのに…」
 俺は名雪の異変を感じ、隣に行こうとした。
「来ないで! …来ないで、祐一、お願いだよ」
 名雪は泣いていた。
「本当にどうしたんだよ…」
 俺は名雪の言うことを聞き、仕方なくその場で名雪に聞いた。
「ダメだよ、祐一。好きでもない女の子に優しくしたら…」
「何言ってんだよ。俺は名雪のことが…」
「だって祐一は香里の事が好きなんでしょ!? だったら私に優しくしちゃダメだよ」
「えっ? 俺が香里の事を?」
 そこで2時間前の会話を思い出した。
 ……。
『それで、好きな娘って誰?』
『…香里なんだ』
『香里? 本当なの、祐一?』
『ああ。春休みで香里に会えない日が続いて、初めて自分の気持ちに気がついたんだ…』
『そうなんだ…』
『隠していて悪かったな、名雪』
『ううん、いいよ別に。そっか………祐一、香里の事…』
『…じゃあ、がんばってね。祐一』
 ……。
 なるほど、そう言うことか。
「なぁ、名雪。今日は何の日か知っているか?」
 俺はできるだけ優しく話しかける。
「えっ? 今日は……あっ!」
 名雪もようやく気がついたようだ。
「分かったか? 今日は『エイプリル・フール』だ。嘘をついてもいい日なんだぞ」
「…酷いよ、祐一」
 拗ねたような顔で俺を見てくる。
 しかし、いつもの名雪の表情だ。
「エイプリル・フールでも、ついていい嘘とダメな嘘があるんだよ」
「ほ〜う。先に似たような嘘をついてきたのはどちらでしょうね。ねぇ? 名雪さん?」
「うにゅ〜。酷いよ、祐一。極悪人だよ…」
「悪い…、これで許してくれよ」
 そう言うと俺は名雪にキスをする。
「…これだけじゃあ、許さないよ」
 顔を赤くしながら名雪が言う。
「じゃあ、どうすればいいんだよ?」
「私、2時間も泣いていたんだよ」
「マジかっ!?」
「…うん、祐一と別れたくなかったから」
「ごめんな、名雪」
 そう言うと俺は名雪を抱きしめる。
 …俺の一番大事な人を。
「本当にそう思ってる?」
「ああ、本当にごめん」
「じゃあ、『あの』言葉を言って」
「…『あれ』か?」
「うん、『それ』だよ」
「どうしても?」
「祐一は私の事、嫌いなの?」
 ねだるように聞いてくる。
 ぐはぁ! そんな顔をしないでくれ。
「分かったよ、言うよ」
 ふぅ、仕方ないか。自分で蒔いた種だしな。
 俺は名雪を抱きしめていた手を解いて、名雪と向き合う。
『名雪…』
『俺には、奇跡は起こせないけど…』
『でも、名雪の側にいることだけはできる』
『約束する』
『名雪が、悲しいときには俺がなぐさめてやる』
『楽しいときには、一緒に笑ってやる』
『白い雪に覆われる冬も…』
『街中に桜の舞う春も…』
『静かな夏も…』
『目の覚めるような紅葉に囲まれた秋も…』
『そしてまた雪が降り始めても…』
『俺は、ずっとここにいる』
『もう、どこにも行かない』
『俺は…』
 ここで俺は一息ついて、こう言った。
「名雪のことが、好きだから」
「…祐一、ありがとう」
 顔を赤く染め、上目使いで俺を見つめる。
 ……やばいよなぁ、こう言う仕草。
 思わず襲いたくな……ゲフンゲフン。
 って、こんな台詞を良く覚えてるな、俺。
「2人とも、お茶が冷めてしまいますよ」
「!」
「!」
 部屋の入り口には秋子さんが立っていた。
 いつものように右手を頬に当てながら…。
 そして階段を下りていった。
「……」
「……」
 2人とも恥ずかしさの為、しばらく無言になった。
 キリがないので俺が口を開く。
「じゃ、じゃあ、行こうか、名雪」
「う、うん、そうだね」
 そして2人で部屋を出る。
 その時、名雪が
「でも、私はまだ許してないよ」
 と言った。
「これ以上、どうすればいいんだよ?」
 俺は困り果てた。
「う〜ん、そうだ! あの『ジャム』を1瓶、全部食べてよ」
 階段の前で笑ってそう言ってた。
「いいっ!」
 俺は本気で驚いた。
 そして体が一瞬で凍りついた。
 あの『ジャム』だけはヤバイ。
「な〜んてね、嘘だよ」
 そう言って、先に階段を下りていった。
「……シャレにならないぞ、名雪」
 俺は階段の上から名雪にそう言った。
「シャレじゃなくて、『嘘』だよ」
 そして、名雪は俺のほうを見上げて、さらに笑顔でこう言った。

「だって祐一。今日は『エイプリル・フール』だよっ!」





   〜 あとがき 〜

   はろ〜、ym2です。
   これは大分前に書いたものですが、公開する時期を考えて掲載しなかったものです。
   書き方って言うか、内容って言うか、なんとなく初期の作品です。
   つまり『ヘタレ』ってことですが(笑)
   なので、わかる人にはすぐに分かると思います
   個人的には良く出来た方の『オチ』だと思うのですが……。
   こんなもんでいっぱいいっぱいです、勘弁してください。(ぉぃ
   ううっ、これで本当に更新ネタが無くなった……。
   次回の更新どうしよう……。


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