始まりがあれば当然終わりもあるというもので……。
「Ah〜。なんで夏休みってこうも短いんだろうなぁ…」
と、英語っぽく嘆いてみたりする。
「祐一。ふぁいと、だよっ」
テーブルの向かい側に座る名雪が笑顔でそう言う。
「おかしいと思わないか?」
「何が?」
「夏『 休み 』だぞ? 休みなのになんで課題が出てるんだよ。
しかも新学期早々課題テストって……ちっとも休みになってないじゃないか」
「そんなこと私に言われても……」
「お前はこの深刻な事態に直面していながら、おかしいと思わないのか?」
「深刻でもないし、別に思わないよ」
「なんでだよ……」
「だって私たち勉強するために学校に行ってるし……」
「そりゃそうだが、休みは必要だろ?」
「だから、今まで夏休みだったでしょ?」
もはやgooの音も出ない。
『 うぐぅの音 』と言いたいところだが、他の人のSSとかで使われているのでやめておこう。
まぁ、この『 ぐー 』も使われているだろうがな。
「お前はまるで文部省の手先だな」
「……祐一、そんなこといいから早く課題終わらせようよ〜」
「それもそうだな……」
こんなくだらない言い争いで徹夜するのは御免だしな。
カリカリカリ……。
深夜に女と男が一緒の部屋にいると言うのに……。
「だぁぁぁ! やってられるか!」
思わず立ち上がる。
「ど、どうしたの?」
名雪が驚いて顔を上げる。
「いや、これは男なら誰しも思うことでな……」
ここから先は放送コードに引っかかるので放送禁止だ。
そして作者も18禁描写は苦手(ってか書けません)なので執筆中止だ。
「思うことで……なあに?」
首を傾げて聞いてくる。
だから、そう言うことすると理性が……。
「いや、その……なんだ……」
「祐一、どこか具合悪いの?」
心配そうな顔になる。
「ふふふ、名雪。それはね……」
「あっ、秋子さん!?」
いつも通り気配を感じさせずに秋子さんが部屋の中に入ってきていた。
「遅くまでご苦労様」
「い、いえ……」
秋子さん、お願いですから何か前触れでも入れてから登場してください。
「お母さん、祐一が何で具合悪いのかわかるの?」
「ええ」
いや、別に気分が悪いわけじゃないが。
「名雪も大人になればわかるわよ」
………その台詞、何気に怖いんですけど。
「私子供じゃないよ〜」
「ふふっ、そうね。ごめんなさい」
そう言ってテーブルにココアを置いてくれる。
「あ、すいません」
秋子さんから受け取ったココアは、熱すぎない程度の温度のだった。
「じゃあ、二人ともがんばってくださいね」
そういうと部屋から出て行った。
「じゃあ、少し休憩するか?」
「そうだね」
秋子さんが持ってきてくれたココアを一口飲む……が。
「甘い……」
「う〜、苦いよぉ」
どうやら秋子さんがカップを間違えたようだな…。
「じゃあ交換するか?」
「……うん」
名雪が顔を赤くしてカップを受け取る。
「ん、どうした?」
「その、間接キス……」
その一言に飲みかけたココアを思わず吐きそうになる。
「お前……何言い出すんだよ」
「だって……」
ったく、間接じゃないのを数え切れないくらいやってるって言うのに。
「えへへ……」
カップを持ったまま一向に飲もうとしない。
「な、なんだよ……」
「べつになんでもないよ」
「……変な名雪」
「祐一に言われたくないよ〜」
二人の間に妙な空気が生まれる。
この空気は……。
「ね、ねえ、祐一?」
「……なんだ?」
「もう今日はやめにしない? こんな時間だし……」
チラリと時計を見る。
……1時少し過ぎか。
「まあ、新学期開始早々遅刻も嫌だしな」
「うん」
「じゃあ、今日はこの辺でやめるか」
「うんっ」
テーブルの上に広がっていた参考書やノートを片付ける。
「じゃあ、ご馳走様でした」
「なにが?」
「いや真面目に聞き返されても困るんだけど……」
いちいち突っ込みを入れる名雪も名雪だが、返す俺も俺だな。
「???」
「いや、ココアご馳走様ってさ」
「それはお母さんに言ってよ」
笑いながら答える。
「じゃ、いい夢見ろよ?」
どこかで聞いた様な台詞を残して自分の部屋に帰ろうとする ――― が。
「……祐一が見せてくれないの?」
頬を少し赤く染め、恥ずかしそうにそう言ってくる。
「名雪さん……それはどういう意味で?」
ドアに手をかけたまま首だけを名雪の方に向ける。
「だから……その、一緒に……」
もじもじと口ごもる。
「……ダメかな?」
とどめの上目遣いだ。
しかも少し潤んでいるので効果は倍増……。
「しょうがないな……」
結局、最後には折れてしまう俺。
フッ、笑うが良いさ。
ああそうさ、俺は弱い人間だよ!
「祐一?」
無意識に自嘲気味に笑っていた俺の顔を覗き込む。
「本当に大丈夫?」
心配そうな表情を浮かべる名雪。
「大丈夫だって言ってるだろ?」
「ならいいけど……」
「じゃあ俺はカップを流しに置いてくるから…」
「うん、いってらっしゃい」
その言葉を聞き、苦笑しつつ俺は流しにカップを置く。
既にキッチンの電気は消えていた。
物音を立てないように部屋に戻る。
「おかえりなさい」
既にベットに入っている名雪が小声で言う。
「私たち、なんだか新婚さんみたいだね」
と、付け加えて。
「……今日はなんだか爆弾発言が多いような気がするのは俺の気のせいか?」
「そ、そんなことないよ〜」
あからさまに動揺する。
ったく、分かり易いやつだな。
俺もベットに潜り込む。
「明日から学校始まっちゃうんだよね……」
「そうだな」
「うん……」
どことなく名雪の元気がない。
「どうした? 学校行きたくないのか?」
夏休みが始まる前は『 夏休みでみんなに会えなくなるね 』とか沈んだ顔で言ってたのに。
「ううん、そんなことないよ。でもね……」
「でも?」
「祐一と一緒にいられなくなるから……」
「何言ってんだ、席も隣だろ?」
「そういうことじゃなくて、その……」
「むやみに抱きついたりできなくなる、って?」
「うん……」
少し暗い顔をする。
「そっか……」
夏休みはいつもそうしてたし。
「だから、今日だけは甘えても良いかな?」
「……ダメだな」
名雪の顔がより一層暗く沈む。
「『 今日から 』ならいいけどな」
「えっ?」
「さて、そろそろ寝るぞ〜」
恥ずかしいので名雪に背を向ける。
「ありがとう、祐一……」
そっと、背中に名雪が寄りかかってくる。
「早く寝ろ、明日は休みじゃないんだから」
「うん……おやすみなさい、祐一」
「おやすみ」
俺は背中に名雪の体温を感じながら、眠りに落ちていった。
結局、以前と同じように名雪を起こすのには苦労しながらも下に降りる。
「おはようございます、祐一さん」
「祐一君、おはようっ」
「おはよ〜、祐一」
既に2人は起きていて、朝食を取っていた。
ああ、この2人の寝起きのよさが少しでも名雪にあればなぁ……。
そう思いながら席に座る。
「祐一さん、いつも通りトーストにしますか?」
「はい」
するとすぐにきつね色に焼けたトーストが運ばれてくる。
「にゅう……おはようございます……」
そして目を擦りながらも名雪も降りてくる。
「おはよう、名雪」
「おはよう、名雪さん」
「名雪、おはよ〜」
自分の席について、相変わらず眠そうにする。
秋子さんが名雪の分のトーストを持ってやってくる。
「祐一さん、飲み物はコーヒーですか?」
いつも通り、コーヒーを飲もうとしたが、二人が飲んでいるものに目がいった。
「昨日もらったココアってまだありますか?」
「はい」
「じゃあ、ココアをお願いします」
「あ、私も〜」
「わかりました」
いつも通り微笑んで奥に行く秋子さん。
んで、カップを2つ持ってすぐに戻ってくる。
相変わらず不思議だよなぁ……。
「どうぞ」
「すいません」
「ありがとう、お母さん」
そしていつものようにキッチンの奥に戻って行く。
「ったく、何でもう少し早く起きれないんだよ…」
「だって、眠いんだもん……」
名雪がトーストにイチゴジャムを塗る。
「夏休みの間は充分過ぎる程に寝てただろ?」
「う〜」
俺はトーストにマーガリン(バターじゃないぞ?)を塗りながら愚痴ってみる。
「それに、祐一がなかなか寝かせてくれないからだよ」
「ゲフッ!」
飲みかけていたココアを思わず吐き出しそうになる。
「うぐぅ。祐一君、そうなの?」
「祐一のエッチ〜」
隣に座っているあゆと、その向かいに座っている真琴が食べるのをやめて聞いてくる。
「ち、ちがうっ! こら、名雪! なんで誤解を招くような言い方をするんだ!」
「私間違ってないよ〜」
「い〜や、間違ってる」
「でも、祐一……」
「ええいっ、そんなことより時間は?」
「え〜と、いつも通りに行けば大丈夫だよ」
「いつも通りに行くってことは、走るってことだろ……」
思わず溜め息がでる。
「ほら、早く口に押し込め」
「無理だよ〜」
結局名雪が食べ終わるのを待つ。
「よし、行くぞ!」
「あ、でもココア……」
「帰ってきてから飲め!」
「冷めてるよ〜」
「レンジで温めろ!」
「う〜」
名雪が恨めしそうな顔で俺を見る。
抗議したいのは俺の方だよ……。
「じゃあ、行ってきます」
「いってきま〜す」
そう言って玄関のドアを勢いよく開ける。
「いってらっしゃい、二人とも」
「いってらっしゃい」
「いってらっしゃ〜い」
家に残る三人に見送られ、俺たちは慌てて学校に向かった。
二人が学校に向かった少し後のダイニングで ―――。
「ふふふっ、あの二人にはもう少しココアを出さないとダメみたいね」
秋子は楽しそうに笑い、洗い物をしていた。
「秋子さん、どうして?」
あゆがココアが入ったカップを両手に持ち、秋子に訊く。
「ココアにはね、落ち着かせる作用があるの」
「そっかぁ、あの二人いつも慌てて出て行ってるもんねぇ」
真琴はココアを飲みながら納得したように呟く。
「それもあるけど……」
秋子の洗い物をする手が止まる。
「あの二人には、早く落ち着いてもらった方が私も安心できますから」
秋子はココアを飲む二人の方を向き、そう言った。
テーブルの上に残された二つのカップの中のココアは、まだ熱いままだった。
とりあえず……。
夏休み中に完結しなくてすみません。
どうにもこうにも筆が進まなくて……。
ちなみに落ち着くと言うのは、結婚をほのめかしてみたり……。
中途半端な終わり方かも知れませんが、一応ym2としてはがんばった方です。
本人も疲弊してるし……。
あ〜、安らぎたい。
『 テーマ・夏 』とか大層なこと言ってた割にはたいしたことないし……。
今回、夏は全く関係なさそうだし……。
ふぅ、もうちょっと修行が必要ですね。(汗)
次回作は……いつになることやら。
ym2@jmail.co.jp宛てにメールや掲示板に一報くれれば少しは早くなる……かな?(笑)