華美 




「祐一、花火楽しみだねっ!」
 花の模様が入った浴衣に着替えた名雪が本当に嬉しそうに笑う。
 本当は海水浴に行くはずだったが、栞の体調が少し良くないみたいなので止めたのだ。
 まぁ、あゆと真琴と天野は秋子さんと一緒に泊りがけで出かけていったが……。
 海水浴に行けなくて栞が膨れていたのを聞き、少し離れた街の花火大会を見に来た。
「そうだけど……こんなに人が大勢いて、見れるのかどうかが不安だが……?」
 まだ会場には着いていないが、道は人でいっぱいだ。
「大丈夫よ、相沢君。いざとなったらバラバラに別れればいいんだから」
「そうですよ、祐一さん。
 それに、その方が祐一さんと2人っきりになれるかも知れないですし……」
「ん? なんか言ったか、栞?」
「い、いえっ! な、なんでもないですよ?」
「……あからさまに怪しいと思うが?」
「え〜ん、お姉ちゃ〜ん。祐一さんがいじめます〜」
 栞が泣いて(もちろん嘘泣きだが)香里に助けを求める。
「相沢君?」
 表情こそいつもの香里だが、空気が重い。
「へいへい、わかってますよ」
「ならいいわ」
 香里って何か逆らえないんだよなぁ……。
 さすが生まれついての女王様ってか?
 そんなこんなで花火会場に辿り着く。
「うわぁ〜、いっぱいですねぇ〜」
「そうだね〜」
 名雪と栞が感心したように言う。
「感心してないで場所を探さなきゃでしょ」
 香里が呆れ果てる。
「じゃあ2人ずつに別れたほうがいいかな?」
「そうだな。4人でまとまって見れそうにもないしな……」
「じゃあ、祐一さんは私と……」
「栞は私と一緒」
 栞の言葉を遮るように香里が言う。
「ううっ……。でも、お姉ちゃんもたまには名雪さんと2人っきりに……」
「具合が悪い妹を放っておけるほど、冷たい姉じゃないわ」
「……お姉ちゃんの意地悪」
「意地悪でも何でも構わないわ。さ、行くわよ」
 そう言うと栞の手を引っ張り引きずっていく。
「じゃあ、帰りは駅の近くの喫茶店で落ち合いましょう」
「ああ、了解だ」
 去り際に俺たちの方に軽くウインクをして。
「なんか、香里に気を使わせちゃったみたいだね」
「そうだな……なんか奢らされなきゃ良いけどな」
「クスッ、祐一ったら」
「さて、俺たちも場所探さないとな……」
「そうだね〜」
 さて、どうするかな。
 とりあえず辺りを見回すが開いている場所はない。
 かと言って通路に立っているわけにもいかないし……。
「どうしよう、祐一?」
 しょうがない、最終手段だ……。
「任せろ、名雪。俺にいい手がある」
「本当?」
「ああ、本当だ。少し待ってろ」
「うん」
 じゃあ最終手段を使うか……。
(おい、作者っ!)
(うおっ、いきなりなんだ?)
(俺と名雪が『 らぶらぶ 』になれる場所を用意しろ)
(断るっ!)
(なにっ!?)
(それくらい自分で探せ。以上)
(てめえ、それでも作者かっ!)
(うるせえ! 大体こういうことを作者に頼むなっ!)
(ごちゃごちゃ言ってないで用意してくれれば良いんだよ!)
(知るかっ、俺はもう寝る!)
(おいっ、待てよ! 話しはまだ……)
『 ym2は現在オフライン中です 』
 ………あの野郎。
「すまん、名雪。だめだった」
「そう……。じゃあ、歩いて探そう?」
「そうだな……」
 仕方なく人込みの中を歩く。
「キャッ!」
 人に押され、名雪が転びそうになる。
 俺は手を伸ばし、名雪を受け止める。
「大丈夫か?」
「う、うん。ありがと、祐一」
「それにしても人が多いな……」
 まともに歩くことさえ出来ない。
「じゃ、さっさと行くぞ?」
「うん……」
 名雪が少し遅い足取りでついてくる。
「ほらっ、早くこいよ。置いてくぞ?」
「あっ、待って……」
 名雪が少し駆け足でやってくる。
 でも、名雪にしては少し動作が鈍い。
「置いていかないでよ〜」
 名雪が頬を膨らませて講義する。
「……名雪」
「な〜に?」
「……足、くじいたのか?」
「そんなことないよ……」
「本当か? ちょっと見せてみろ」
「だ、だめだよ。こんなところで……」
「じゃあ、あっちの陰になってる場所で……」
「……祐一のエッチ」
「ああ、それで結構だ。ほら、行くぞ」
 俺は名雪の手を掴み人目のつかない場所に行く。
「そこに座って」
「……うん」
 名雪が観念したように座る。
 浴衣の裾を捲くり、右足首を少し押してみる。
「別に何ともないよ。だから花火、見よう?」
 今度は左足首を押してみる。
「っ……」
 もう少し強めに押してみる。
「つっ……」
「ここだな?」
「………」
 無言で頷く。
「ったく、痛いなら痛いって言えよ……」
「だって……」
 名雪が上目遣いで俺を見る。
「祐一と、2人っきりで花火見たかったんだもん……」
「だからってなぁ……」
「私、楽しみにしてたんだよ?」
 名雪の眼に少し涙が浮かぶ。
「香里に頼むのだって恥ずかしかったし……」
「そうか、あのウインクはそう言う意味だったんだな……」
「だから、私……!」
 俺は名雪の髪を『 くしゃっ 』と撫でる。
「でもな、名雪。捻挫は癖になると厄介だろ?
 お前も陸上部だったんだからわかるだろ?」
「……けど!」
「とにかく! これ以上お前を歩かせるわけにはいかない」
「う〜」
 非難の眼差しを俺に向けてくる。
「とにかく、ここを離れるぞ。邪魔になるからな」
 人目がつかない、とは言え道に変わりはない。
「だって、花火……」
「花火は来年にでも見ればいいだろ?」
「祐一と見たかったのに……」
 渋々ながら俺の言うことに従う。
「ほら、早く」
 俺は名雪に背を向けしゃがむ。
「え?」
「早く乗れよ?」
「う、うん……」
 名雪を俺の背中に乗せる。
「落ちるなよ?」
「大丈夫だよ〜」
 そう言い、俺の首周りに自分の手を回し、きつく抱きつく。
「そんなに首をしめたら死ぬって……」
「祐一なら大丈夫だよ〜」
 いや、俺でもダメだと思うが…。
「じゃ、行くぞ?」
「うん」
 名雪を背負いながら人気の少ない道を選んで歩く。
 さすがにこれは恥ずかしいからな……。
「祐一の背中、大きいね……」
「そうか?」
「うん……。お父さんってこんな感じなのかな?」
「そうだな……そうかも知れないな……」
「そうなんだ……」
 名雪の声が少し暗くなる。
「なんなら、お父さんって呼んでもいいぞ?」
(名雪は父親というもの自体を知らないんだからな……)
 その言葉は言うべきではないと判断し、胸の奥にしまった。
「ううん。呼ばないでいいよ」
「そうか?」
「うん。……だって」
 名雪が俺に回している腕に力を込める。
「祐一は私のお父さんじゃなくて、私の彼氏さんだから」
「……そっか」
「そうだよ」
 名雪が無邪気に微笑む。
「……悪かったな」
 その笑顔を見ると、花火を見ない内に無理に連れてきたことが悪いことに思えた。
「なにが?」
「花火のこと」
「ううん、もういいよ」
「あんなにこだわっていたのにか?」
「うん。今は、こうしていたいから……」
「なら、いいか」
「うんっ」
 しばらく歩くと駅の近くまで着いた。
「ん?」
 俺は路地の小道が気になり立ち止まる。
「どうしたの、祐一?」
 急に立ち止まった俺に名雪が驚く。
「この先って何があるかわかるか?」
「う〜ん、私もあんまりこの街に来たことないからわかんないよ」
「そっか」
 その道を無視して駅に行こうとすると……。
「あれ、相沢に水瀬さん?」
 聞き覚えのある声に足を止める。
「斉藤……」
「こんばんわ〜、斉藤君」
 振り返るとそこには自転車から降りた斉藤がいた。
「2人ともどうしたんだ、こんなところで?」
「いや、花火を見に来たんだがな。いろいろあって……」
「……なるほどね」
 斉藤は状況を理解してくれたみたいだ。
「そう言うお前は何やってんだ?」
「お前らと同じだよ。もっとも、俺は親戚とだけどな」
『 親戚 』を強調する。
「そっか……。ん、じゃあお前、ここら辺詳しいのか?」
「まぁ、それなりに」
「ちょうどいいや、この道ってどこに続いてるんだ?」
 気になっていた小道を聞いてみる。
「この道は確か神社に続いていたと思うけど……」
「へぇ、そうなんだ……」
「ま、行ってみるといいかもな。花火が始まるまで、まだ時間もあるし」
「どういう意味だ?」
「行けばわかるって。じゃあね、2人とも」
「ああ」
「おやすみなさい」
 そう言うと、斉藤は歩き出す……と思ったら
「水瀬さん、相沢に変なことされたら大声出すんだよ?」
 そう言って、自転車にまたがって走り去った。
「あの野郎……」
「……祐一?」
「なんだ?」
「あの……私、祐一なら……」
 顔を赤く染めて小声で呟く。
「……バカなこと言ってないでいくぞ」
 斉藤の言葉が引っかかったので神社に行ってみる。
 しばらく路地を進むと、結構な数の階段があった。
「………凄い階段だね」
「そうだな……」
 既に薄暗いからってこともあるけど、先が見えないくらい階段の数がある。
『 ま、行ってみるといいかもな。花火が始まるまで、まだ時間もあるし 』
 さっきの斉藤の言葉が浮かぶ。
 なるほどな、そういうことか。
「じゃ、行くぞ?」
「え?」
 俺は目の前の階段を上り始める。
「祐一?」
 名雪が不安そうな声を出す。
「任せとけって」
 俺は階段を上り続ける。
 だが、日頃運動をしていない俺はすぐに息があがる。
「祐一……大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。このくらい、お茶の子サ●サイシーだ」
「大丈夫じゃなさそうだよ?」
 むぅ、俺の必殺のジョークが効かないとは……。
 やるな、名雪。
「大丈夫だって……お、そろそろ終わりみたいだな」
 最後の一段を踏み終え、神社の境内に入ろうとすると……。
「おや……。申し訳ありませんが、本日はこの神社は立入禁止になっているもので……」
 この神社の神主さんらしき、老人が現れた。
「立入禁止……ですか?」
「はい。本日、花火大会の関係で大勢の方がこの街に来られます。
 しかし、中には心無い者もおりますので……」
 ……ゴミとか捨てていくやつ等のことか。
「なので、数年前よりここは立入禁止とさせてもらっているのです。
 他の神社や寺も同様にしておりますので……」
「そうですか……」
 まぁ、無理を言うわけにもいかないしな。
「なら、しょうがないな。行こうか?」
「うん」
 俺たちが諦めて階段を降りようとしたそのとき。
「おや、そちらの方はお怪我をなされているのですか?」
「あ……軽い捻挫だと思いますので平気です」
 名雪が慌てて弁解する。
「捻挫は癖になると怖いのですよ?」
 神主さんも俺と同じことを言う。
「それならば中へどうぞ。応急処置程度しか出来ませんが……」
「でも……」
「遠慮などなさらずに」
 ここで断るのも失礼だな……。
「………じゃあ、お言葉に甘えるか?」
「……うん」
 名雪も頷く。
「では、こちらに……」
 神主さんに案内され、本殿の脇の建物に通される。
「あら、お爺様。そちらの方は?」
 中から俺たちよりも少し上の女性が現れる。
「怪我をしたらしい。悪いが薬箱を取ってきてもらえないか?」
「わかりました」
 そう言って奥に消える。
「すみません、ご迷惑をおかけして……」
「なに、気にしないでください。さ、こちらです」
 客間に通される。
 俺は名雪を下ろす。
「大丈夫か?」
「うん、私より祐一の方こそ大丈夫?」
「いや、もう死にそう」
「う〜」
「冗談だって」
 俺たちのやりとりを見て微笑む神主さん。
「仲がよろしいんですな」
「え、いや。別に……その……」
「わ、私と祐一はそんな関係じゃ……」
 2人して思いっきりうろたえる。
「ふふっ。本当に仲がいいのね」
 薬箱を持って、さっきの女性が出てくる。
「では、早く済ませるとするかの」
 そう言って薬箱を受け取り、湿布や包帯を取り出す。
「どっちの足かね?」
「あ……左です」
「ふむ……」
 神主さんの治療は手馴れたものだった。
 薬を塗ってから軽くマッサージをし、そして湿布を貼り包帯を巻いた。
「ありがとうございます」
 名雪が頭を下げる。
「いやいや、礼には及ばんよ」
「随分手馴れているように見えますけど……」
 俺は少し訊いてみる。
「お爺様は昔、柔道をなさっていたの。
 それで捻挫とか多かったから、いつの間にか自分で覚えたんですよね?」
 薬箱の女性がスイカを麦茶をお盆に載せ、部屋に戻ってきた。
「まあ、昔のことじゃ」
「そうなんですか……」
『 ドーン 』
「お、花火が上がり始めたようじゃの」
「そうですね……」
「お2人とも、こちらへどうぞ」
 女性に促され、縁側に行くと……。
「うわぁ……」
「へぇ……」
 視界が開け、花火がよく見える場所だった。
「どうぞここでご覧になってください」
「えっ? でも……」
 申し出は嬉しいけど、そこまで甘える訳にはいかない。
「いいから、ほら!」
 女性に押され、縁側に座らせられる。
「……すみません」
「ふふっ、別にいいのよ。はい、これも食べてね」
 そう言ってお盆を置き、奥にいってしまった。
「じゃあ、貰おうか?」
「そうだね……」
 スイカをかじりながら、花火を眺める。
「綺麗だね〜」
「そうだ……な」
 名雪の方を見て、俺は言葉に詰まる。
 花火の、青、赤、緑などの様々な色の光が名雪の顔を照らす。
 そして、名雪の浴衣もその色に染まり、模様の花が美しく照らされる。
 花火が打ち上がる度に名雪がいろいろな色彩に染まる。
「綺麗だな……」
「うん」
 名雪は俺の言葉に頷く。
 俺は花火だけを指しているんじゃないのだが……。
「本当に綺麗だ……」
「……祐一?」
 名雪が俺の方に顔を向ける。
「どうしたの?」
「い、いや……。なんでもない……」
 俺としたことが、少し慌ててしまった。
「???」
 名雪が頭の上にハテナマークを浮かべる。
「何でもないって言ってるだろ」
 乱暴にそう言い、スイカをかじる。
「変な祐一……」
 名雪は再び花火を見始める。
 そして、穏やかな時間はあっという間に過ぎ、花火大会は終わってしまった。
 香里たちと合流しなければなので、そろそろ失礼することにする。
「では、俺たちはこれで……」
「すみません、お世話になりっぱなしで……」
「そうですか……。また機会があれば、ぜひ寄ってくださいね?」
「はい、では……」
 俺は名雪を背負い、階段まで向かう。
「おや、もう帰るのかね?」
「はい、お世話になりました」
 俺と名雪が頭を下げる。
「そうか。名雪ちゃん、お大事に」
「はい」
「それと、お母さんによろしく言っておいてくだされ」
『 えっ!? 』
 俺と名雪が驚く。
「どうして、お母さんを知ってるんですか?」
「いやなに、昔ちょっとあっての」
 笑いながら神主さんは答える。
「そうですか……。では、言っておきます」
 あ……。そう言えばお名前を聞いていませんでした」
「お〜、そうじゃったの。わしは森靖志と言う名じゃ。
 お母さんによろしくの」
「はい」
 俺は階段の前まで来て、振り返る。
「一ついいですか?」
「なんじゃね?」
「名雪のこと、最初から気づいていたんですか?」
「フォッフォッフォッ……」
 そう笑いながら境内へ戻っていった。
「……気づいていたみたいだね」
「そうだな」
 俺は神社に背を向け、階段を降り始める。
「落ちるなよ、名雪?」
「う……ん……」
「名雪?」
「大丈夫……だよ」
 ……ああ、そうか。
「眠いなら寝てていいぞ?」
「でも……」
「いつもならもう寝てる時間だろ?」
「うん……」
「いいから……。怪我人は大人しく寝てろって」
「ありがと、祐一……」
 しばらくすると名雪の寝息が聞こえてくる。
「寝つきのいいやつだな……」
 俺は階段を慎重に降りていく。
 すぐに帰ろうとすると電車が混むので、少し時間を潰すことにしたんだっけな。
 駅の近くの喫茶店で待ち合わせる予定だが……。
 香里たちは先に着いて、待ってるだろうか?
 俺がそう思ったとき、階段の下に数人の人影があるのに気がついた。
「相沢君、気をつけてね?」
「祐一さ〜ん、早く〜」
「ったく、早く来いよ……」
「相沢〜、水瀬さんに変なことしてないだろうなっ!」
 ……香里と栞はまだしも、なんで北川と斉藤までいるんだ?
 階段を降り、早速問いただす。
「んで、なんでおまえ等がここにいるんだ?」
「いや、婦女子の夜中の一人歩きは危険だからな……」
 と、北川。
「だから、そういうことじゃなくてだな……。
 斉藤はここにいるのが納得いくが、なんでお前がここにいるんだよ?」
「フッ、美坂への愛があれば俺に不可能はない!」
「そーかそーか、そらよかったな」
 もう、こいつの相手をする気力もない。
「じゃ、いきましょう?」
「もうクタクタです〜」
 香里と栞は既に歩き出している。
 北川は香里を追いかけていく。
「相沢、変わろうか?」
 斉藤は心優しい言葉をかけてくる。
 心なしか、名雪が回す手に腕に力が込められているようだが……。
「いや……こいつは俺の荷物だから」
「そうか……」
 斉藤もそう言うと、3人に続いた。
「これでいいんだろ?」
 名雪の方に顔を向け、呟いてみる。
 返事をする変わりに、腕に力が込められる。
「恥ずかしいなら、店に着いて、俺が席に下ろすまで寝たフリしてるんだぞ?」
「……うん」
 名雪が小声で返事をした。
「相沢君、モタモタしないのっ!」
「祐一さん、遅いですよ〜」
「いつまで待たせる気だよ……」
「やっぱり俺が変わろうか?」
 俺は苦笑しながらみんなの元へ歩き出す。
 今まで花火で気がつかなかったが、今日は満月だ。
「今日は満月だな……」
「……そうだね」
 名雪も小声で同意する。
 そして喫茶店で時間を潰し(花火大会なので臨時営業らしい)、電車に乗る。
 親戚の家に泊まると言う斉藤と別れ、電車に乗り込む。
「やっぱり空いてるわね」
「まあ、この時間までくれば……な」
「眠いですぅ……」
「私も……」
「俺は全然だけど……」
 北川は何か元気だ。
「眠いなら寝たらいい。駅に着く頃に起すから」
「うん……じゃあ、お願いするね」
「祐一さん、すみません……」
 右に名雪、左に栞の絵で2人は俺の肩に寄りかかり、眠りにつく。
「私も……少し眠らせて……」
 香里は北川の肩に寄りかかる。
「………俺、生きててよかった」
 北川は眼から滝のような涙を流す。
「よかったな」
「おうっ!」
 まぁ、俺も悪い気はしないが……。
「お……」
 窓から月が見え、思わず声を上げる。
「今夜は月も綺麗だな」
「そうだな。花火も綺麗だったしな」
「まぁ……な」
 花火よりも、月よりも……。
「でも、俺にはお前が一番綺麗に見えたよ……」
 名雪の耳元に呟いてみる。
「ん? なんか言ったか、相沢?」
「いや、何も言ってないぞ」
「そうか……。気のせいか」
「そうだろうな」
 苦笑しながら答える。
 しばらくすると、俺たちの街の駅までもう少しだと言うアナウンスが流れた。
「じゃあ、そろそろお姫様たちを起こすか?」
「そうだな」
 3人を起こし終わったとき、ちょうど電車は俺たちの街の駅に到着したところだった。






   〜 あとがき 〜

  『 テーマ・夏 』の第2弾です。
   う〜ん、結構テキスト量書いた割には中身がスカスカ。(泣)
   まだまだ未熟ですね……。
   さて、話しは変わって題名ですが、皆さんはなんと読みましたか?
   正しくは『 かび 』と読みますが、ym2としては『 はなび 』と読んで欲しいです。
   名雪に花の模様の浴衣を着せたのですが……どうも上手く表現できません。(汗)
   その浴衣(花)が花火の光で様々な色彩に染まる……。
   時間があるときにでも国語辞典等で『 華美 』を調べてみてください。
   ym2の意図(そんな大層なものじゃないですが)に気づいてもらえると思います。
   さて、一応次回で『 テーマ・夏 』を終わらせたいと思います。
   ………また中身のないテキストになるんだろうなぁ。(ボソッ)

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