〜 白に彩られる街へ 〜




 ――――― 1月6日
 俺がこの街を出て、水瀬家に行く日の朝
「じゃあ、相沢。元気でな」
「かわいい娘がいたら、紹介しろよな」
「時々は遊びに戻って来てね?」
 駅のホームに、クラスの友人たちがわざわざ見送りに来てくれた。
「ああ、みんなも元気でな」
 電車のドアが閉まる。
 ゆっくりと、でも確実に速度を増していく。
 女子の何人かが手を振ってくれた。
 俺も少し恥ずかしかったが手を軽く振って別れを告げる。
 やがて、みんなの姿は見えなくなった。
 これから何時間か知らないが、結構な時間になるはずだから、座っておきたい。
 空いている座席を探す。
 運良く、窓側の席に座ることが出来た。
 バックからCDプレイヤーを取り出し、再生ボタンを押す。
 いつも俺が聞いている曲だ。
 窓から外の景色を眺める。
(今見ると、なんかいろんなことを思い出すな……)
 仲間とふざけてあって登校した学校。
 よく、暇つぶしに行った商店街。
 特に何も考えて通っていなかった道さえ、懐かしい。
 柄にもなく感傷に浸る。
 やがて見慣れた街並みが遠ざかり、見知らぬ風景が広がる。
 不意にCDが止まる。
 全曲演奏し終わったので止まったのだろう。
 そうすると1時間近く物思いにふけっていたのか……。
 昨日買ったばかりのCDをセットする。
 ふと、窓から景色を眺めるとなにやら雲行きが怪しくなって来ている。
(そういえば、向こうって寒いんだよな……もっと着て来れば良かったか?)
 済んだことを言ってもどうしようもないので、考えるのをやめた。
(名雪、口聞いてくれなかったらどうしよう……)
 暑中見舞いや年賀状の返事を一回も出さなかったからな……。
 出そうとは思うけど、はがきに何か書こうとすると、何も書けない。
 書く内容なんて何でもないことでもいいはずなのに……。
(ま、自分で蒔いた種だ。自分で何とかするしかないか……)
 名雪……か。
 俺の同い年の従姉妹。
 7年前に一度だけ冬休みに『あの街』に行ったことがあったっけ……。
 でも、何も覚えていない。
 その冬の記憶がすっぽりと抜け落ちている。
 従姉妹なんていうのは案外こんなもんなのかも知れないな……。
(もしかしたら、あの街に行けば何か思い出せるかも知れないな)
 別に思い出したところで何もないのだが、思い出さなきゃいけないような気がする。
『ピー』
 不意にその音が聞こえて、音楽が止まる。
 CDプレイヤーの電池が切れたらしい。
 バックの中に替えの電池がないか探してみるがなかった。
 仕方がないのでCDプレイヤーをしまい、窓の外の景色を眺める。
 今まで考えごとをしていたので気がつかなかったが、既にこの辺りは雪が積もっている。
 腕時計を見る。
 ……そろそろ着く時間だな。
 やがてアナウンスが聞こえてきた。
 駅に着き、電車から降りる。
 辺りを見回す。
 見覚えがあるような……ないような。
 改札口を抜けて、少し立ち止まる。
(約束の場所と時間は………)
 時間はまだ大丈夫のようだ。
 駅を出て、空を見上げる。
 やはり少し雲行きが怪しい。
 約束の場所のベンチに座る。
(降ってこなきゃいいけどな……)
 ―――2時間後。
「…遅い」
 雪が空からひらひらと舞って落ちてくる。
 まだ夕方と言うには早すぎるのに、既に街灯には明かりが灯っている。
 何度目かわからなくなるほど見上げた空を、また見上げる。
 ふと、視界を遮る1つの影。
「……」
 少し見覚えのある顔の少女が、俺の顔を覗き込んでいる。
 そして、その少女―――名雪が口を開いた。
『雪、積もってるよ』

 ――― 白に彩られる小さな街で、今、1つの物語が始まろうとしていた ―――

  〜 To be Continued 『 Kanon 』 〜





   〜 あとがき 〜

   はい、ヘタレSSです。
   自分でも十分に分かっております。
   なら載せるなと?
   更新ネタがないもので……いっぱいいっぱいです。

   さて、いつもは本編の後の出来事を書いているんですが
   今回は本編の前の出来事を書いてみました。
   そして、なんと今回は名雪が出てきません!(笑)
   ym2は名雪萌えなんで、名雪が出ていないSSは珍しいかも知れません。
   ま、作者自体も作品もヘタレなのでどーでも良さそうですね。(笑)
   感想・批評などあったら掲示板、もしくはym2@jmail.co.jpまでメールをください。


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