「楓、今日で期末テストも終わったし……。
クラスのみんなでカラオケにでも行こうと思うんだけど、一緒に行かないかな?」
そう香西さんに声をかけられたのは、家に帰る準備をしていた時でした。
「私も……ですか?」
「うん、どうかな? 今日、これから何か予定とかある?」
「いえ、別に…」
「じゃあ、一緒に行かない?」
「……私なんか行っても面白くないですよ?」
「う〜ん。楓の返事で男子の出欠も変わるから…」
「???」
私には彼女の言ってる意味がわかりませんでした。
「楓、男子に人気あるんだよ? 知らなかった?」
「はい……」
人気って……。
少し恥ずかしいです。
「それに…もう今年は受験だから、みんなで騒げるのも夏休み終わったらできなくなっちゃうし…。
思い出作りって言ったら大袈裟だけど、どうかな?」
思い出、ですか……。
「……そうですね」
「来てくれるの!?」
「はい」
「やったね!」
香西さんがクラスメート全員に向かってVサインをします。
『お〜〜〜!!!』
クラスのみんな(男子が特に、ですけど)が歓声を上げます。
「よっしゃ! 早速帰って着替えてこよう!」
「取って置きの服を……」
なぜか男子が張り切っていますが……。
「じゃあ、帰ろうか?」
「……(こくっ)」
私と香西さんは、そんな男子を残し、教室を後にしました。
「それにしても、OKしてくれるとは思わなかったなぁ」
私の返事がよほど意外だったのか、香西さんがそう呟きます。
香西彩花(かさい あやか)さん。
私の友人の1人です。
高校1年生の時からクラスが同じでした。
50音も近いので、席も前後です。
「そんなに……変?」
「ううん、変じゃないよ。ただ、意外だなって」
本当に驚いているようです。
「楓って、あんまりこういう事に参加しなかったでしょ?」
「はい…」
「だから、ね」
そうですね……。
今までの私なら今回も参加しなかったでしょう。
今回参加することにしたのは、耕一さんが前に話してくれたからです。
『たまには友達とハメを外すのも面白いよ?』
以前、そう言っていました。
そのあとに
『俺は外してばっかりだけどさ』
と付け加えていましたけど…。
「クスッ」
「あれ? 私何か変なこと言った?」
私が急に笑い出したのに疑問をもった香西さんが聞いてきます。
「いえ、思い出し笑いです」
「へぇ〜、どんなこと思い出してたの?」
「それは内緒」
私は少し意地悪い顔をして答えます。
「む。白状しなさいっ!」
「嫌ですよ〜」
私は笑ったまま走って香西さんから逃げ出しました。
「あ〜、こらっ。逃げるなっ!」
香西さんも私を追いかけてきます。
(……確かに面白いです、耕一さん。)
私はそう思いながら、香西さんとの鬼ごっこを楽しみました。
「初音、私午後からちょっと出かけるから……」
「うん。どこに行くの、楓おねえちゃん?」
私たちは今、昼食のあと片付けをています。
「期末テストも終わったからって、クラスのみんなでカラオケに」
「あ、そうか。お姉ちゃんたちの学校今日でテスト終わりなんだよね。いいなぁ…」
「ふふっ、頑張ってね、初音」
「うん」
初音が『ハネ』を揺らしながら頷く。
後片付けも終わり、私は部屋に戻って着替えをします。
着替えも終わり、引き出しの奥に大切にしまってある小箱を取り出し蓋を開けます。
中には銀の落ち着いた感じのネックレス。
『これ、楓ちゃんに似合いそうだったから。安物で悪いんだけどね』
と言って、耕一さんが前にプレゼントしてくれたものです。
私の………宝物です。
もらった時に
『大事にしまっておきます』
って答えたら
『できれば、しまっておくより、つけていて欲しいんだけどな…。
アクセサリーってのは、身につけるためにあるもんだと思うからさ』
と、苦笑していました。
……今日、初めてつけます。
もちろん、耕一さんや姉さんたちの前でつけてみましたけど、他の人に見せるのは初めてです。
時計を見るともう家を出るくらいの時間でした。
私は玄関に向かい、靴を履きます。
「あ、お姉ちゃん。いってらっしゃい」
初音が居間から出てきてくれました。
「あれ? そのネックレス……。耕一お兄ちゃんからの?」
「う、うん……。変かな?」
耕一さんの名前を聞くだけで、少し胸が高鳴ります。
「ううん、そんなことないよ」
初音が微笑んで答えました。
「じゃあ、いってきます」
「いってらっしゃい」
そして私はカラオケボックスに向けて歩き始めました。
クラスメート全員が1つの部屋に入るのは無理だったので、2つのグループに分けます。
部屋に入るなり、目の前のステージでは既に通い慣れている人たちが歌っています。
コードを覚えているんでしょうか?
「柏木さん、俺とデュエットしない?」
「いや、お前は引っ込んでろ」
いつの間にか私の隣(香西さんと反対側)に男子が座っています。
「はいはい、あんた達はちょっとどいてなさい」
香西さんはそう言って男子を追い払います。
「楓も何か歌う?」
「あまり、そういうのは得意じゃないけど…」
「まあまあ、そう言わないで一曲くらい、ね?」
「……そうですね」
私は曲のリストに目を通します。
っと言っても、あまり音楽は聴かないので良く分かりませんが……。
ペラペラとページをめくっていると、私の知っている曲名が出てきました。
『 Dearest 』
そのページでめくるのを止めます。
「何かあった? あ、その曲……」
香西さんが覗き込んできます。
香西さんも分かったようです。
「そう言えば……楓、その曲気に入っていたよね?」
「はい」
以前、香西さんの家にお邪魔した時、香西さんから貸してもらったものです。
あるアニメのエンディングの曲です。
私もお邪魔した時に、そのアニメを一緒に見せてもらいました。
愛する人のために復讐をする男性を描いた、切ない話…。
そのエンディングの曲が、いい曲でした。
どこか切ない感じのメロディ…。
そして、私が共感できた歌詞……。
「じゃあ、歌っちゃう?」
「……少し恥ずかしいですけど」
これも経験ですよね。
「じゃあ、コードを入れて……っと」
香西さんがコードを入れています。
…それくらい自分でできるんだけど……。
「準備完了。あと2曲くらいあとだね」
「はい」
歌っている皆さんは結構上手です。
本当に私が歌ってもいいのでしょうか?
そうこうしている内に私の番になってしまいました。
どこか切ないメロディの前奏が鳴り始める。
「お〜〜〜〜!!!」
私が歌いだすと共に男子が異様に盛り上がっています。
……恥ずかしいです。
香西さんは笑っているし……。
変でしょうか?
そして、私が一番気に入っているサビの部分になります。
『♪あなたの声 あなたの髪 もしも
千年たって 会ってもまだ 覚えてる
星の数ほど あの日のこと 未来(あした)の事もっと
想い出下さい 私は あなたを消せなくて Forever Full up My love』
(耕一さん…)
間奏の間に男子からの拍手を受けます。
……だから、恥ずかしいです。
少し顔が赤くなっているのが自分でも分かります。
やがて2番のサビに入ります。
『♪あなたの瞳(め)も あなたの指先も
生まれ変わって それでもまだ 捜せるわ
星の数ほど 愛があって 夢があって、だけど
変わらぬ想いを 重ねて あなたと生きたいの Forever Full up My love』
(耕一さん……)
サビの部分に入ると特に耕一さんへの想いが強くなります。
私には、この歌詞の想いが痛いほど伝わります。
(私も、何年も待っていますからね?)
やがて、歌が終わり、私はステージから降ります。
拍手が凄いですけど……やっぱり恥ずかしいです。
「楓、歌上手いじゃない!」
「そんなこと……ないです」
あがってしまって返事をすることも難しいです。
「それにしても……」
香西さんが『ニヤリ』と意味深な笑いを浮かべます。
「少し感情移入しすぎじゃないの?」
「えっ!?」
「楓の好きな人に向けての歌だったでしょ?」
香西さん……鋭いです。
「………」
「大方、そのネックレスもその彼からのプレゼントなんでしょう?」
私の首に輝くネックレスを指差して言います。
「……(こくっ)」
「やっぱり〜。ちなみに、どのくらいその彼のこと待ってるの?」
「……千年です」
私も仕返しとばかりに笑って答えます。
「冗談でしょ?」
「本気ですよ?」
そう……私は別に冗談で言ってるつもりもありません。
千年以上でも待てますし……。
「そんなにその彼のこと好きなの?」
『やれやれ』といった顔で、私を見ます。
「はい。だって、あの人は……」
私は、この曲が使われたアニメの最後の台詞を借ります。
『あの人は、大切な人だから…』
これ、『 ナデシコ 』知らない人にはあまり面白くないかもしれません。(汗)
知っていても面白くないかもしれません。(汗)
ちょうど『 Dearest 』を聴いていた時、サビの部分の歌詞から思いついたものです。
メインキャラは別に楓じゃなくてもいいんですよね。(爆)
でも、前世絡みとなるとやはり楓が一番いいのかな? と思いましたんで楓にしました。
口調が少し変かもしれません。
楓の口調って難しい……。(泣)
なんかルリっぽくなってる気がしますが……き、気のせいでしょう。(大汗)
何か書いて欲しいキャラとかいたら、掲示板かym2@jmail.co.jpまでご一報を。
なるべく期待に添えるように努力しますので……