巻二十「”決戦はアルバーナ”」


第177話 "3000万 VS 8100万" (2001年18号掲載)

   クロコダイルとルフィの直接対決。ひたすら攻撃するルフィと、余裕を見せようとしながら、段々イラツ
  キ始める、小者っぷりを見せ始めたクロコダイル。逆に余裕を持って大物っぽいオールサンデーとの対
  比になっており、以後の展開にうまく流れてゆく。

   しかし、ルフィの攻撃がことごとく通用しないクロコダイル。一体ルフィはどうやってこいつを倒すのか?
  を気にさせられ、素直にルフィが上と喜べない、危うい優越感を感じさせる回である。


第178話 "Level GL(グランドライン)" (2001年19号掲載)

   扉絵のビビのハンドバッグがドスコ"1"パンダじゃないかとかそういうツッコミはさておき。ついに前話
  でうすうす感じていた不安が形になる回。終始攻撃を続けつつも、全く通用しないルフィの攻撃。一方ポ
  イントポイントでルフィを苦しませるクロコダイルの攻撃。

   また、スクリーントーンの見事な使いこなしによる砂の質感の表現が、戦闘の迫力を際立たせている。

   そして、今までなかった衝撃のシーン。いつもなら怒りモードで無敵のルフィが、いっぺんに青ざめて行
  く。連載開始以来一度もなかった、ルフィの敗北。これ以上ショッキングな演出があるだろうか?
   直前まで叫び続け、効果線も多用されて騒がしい感じのコマが続いていたのが、効果線は消え、画面
  は白基調、1コマの情報料は減り、いっぺんに静まって行く。この静けさが、また恐怖と衝撃を倍化させ
  ているのである。


第179話 "決戦はアルバーナ" (2001年20号掲載)

   前話とはうって変わって、ワンピ史上まれに見る、悲しいほどに出来の悪い回。何故、この回が巻二十
  の題名に選ばれたのか、疑問である。

   まず、"素敵マユゲ""まりもヘッド"の言い争い。1コマの情報料が多すぎて処理し切れておらず、サン
  ジはゾロの方を向いていない上、二人の表情がどの時点の表情なのかイマイチ消化しきれない。ナミが
  ブチのめしたおかげでなんとかオチがついてはいるものの、いつもは決まっている「1コマに大量セリフ」
  がキマらない。

   ビビの"一番心配そうな"「だくっ!」も、あまり大して汗をかいているように見えず、"一番心配そう"に
  見えない。

   ナミの"変なネーミング"も、無理にやろうとして失敗している(スベッている)。

   「ユバはまだ生きているよ…」「ユバは死ぬ」の場面転換も急すぎて、イマイチ。クロコとルフィの場面
  は、前回で強烈な衝撃と緊張感を残しただけに、あの場面のテンションほどには、そう簡単に上がらない
  のである。もう一コマ静かな感じのコマを入れるか、コマとコマの間の空白の幅を広げた方が、ほのぼの
  トトさんから、冷たい緊張感にスムーズに移行出来たであろう。

   「待っていろ、コブラ…」や、「戦う者」のコーザも馬鹿デカイ口を開けすぎてて不自然である。(大人にな
  ったコーザは比較的クールなキャラであり、よほど感情的になったときのみ、大口を開けているこれまで
  の演出と一貫制がなくなっている)

   潰しあってはいかん…の、コブラのアングルも、イマイチ作り出そうとしている迫力が、出ていない。

   また、「戦いを嘆く者」「戦う者」と来ているのに、何故か「戦いを煽る者""」として、韻を破壊してしま
  っていて対比に水を差している。

   まだ多少落ちつきが残っている(激突まで時間がある)はずの反乱軍と国王軍の絵に迫力がつけられ
  すぎているのにも違和感を感じるし、普段よりも
心無しか絵が雑にも見える。(クロコダイルやボン・クレ
  ー)

   どうも、全体的にテンションが高いのか低いのかわからず、場面転換も急すぎてうまく消化出来ないで
  終わってしまうのである。そして、多少のストーリーの落ち込みをカバーするだけの画力が、この回に限
  って不足してしまっているのだ。

   プロの漫画家の作品をここまで批判する資格は自分にはないかも知れないが、今回は明かなミスとい
  うか、私でもわかる改善策が多すぎるのである。

   …で、結論としては、「まぁ、こんな時もあるさ」と読み流しましょう、というわけで。


第180話 "アラバスタ動物ランド" (2001年21.22合併号掲載)

   ワニ、ラクダ、ナマズ、ジュゴン、カニ、カルガモ。バラエティ溢れる動物達の饗宴。

   ワンピの魅力の一つに愛嬌溢れる動物たちがいるが、 彼らの存在が、ともすれば硬派な人間ドラマに
  偏ってしまいかねないこの作品に、柔らかさを与えている。この辺のセンスも、乾いた心の現代人に一種
  の安らぎを感じさせ、ヒットの要因になっているのではないだろうか。


第181話 "超カルガモクイズ" (2001年23号掲載)

   この回は高いテンションと話の勢いが素晴らしく、それを支えている画面構成の妙技が光っている。そ
  れについて解説したい。

   この回の最大の盛り上がりは、カルガモ部隊とBWの撃突である。ここでは一貫してキャラが右から左に
  流れて行く画面構成になっている。日本の漫画は右開きなので、こうすると読者の目の動きと連動して、
  非常にスムーズにスラスラと流れて読んで行くことが出来る。

   よって日本の漫画は、味方は右から左、敵は左から右に向かって配置することで、敵味方の演出をす
  るのが基本であり、この回はそれに則っている。しかし、それだけではない。実は、カルガモ軍団のスピ
  ード感の演出のため、
敵までも右から左に動かしているのだ。

   まず、Mr4の砲撃。右から流れてくるカルガモ達を迎え撃つのだから、左から右に向けて撃つのがセ
  オリーなのに、何故か逆に撃っている。(弾丸も右から左に転がって行く)しかしこうすることで、読者の目
  の動きを、妨害しない。

   もちろん、それによって立ち塞がってるはずのMr4の脅威が全然無くなるわけであるが、今回はそれよ
  りも勢いを重視したというわけである。

   そして、ミスメリークリスマス。「となりゃあのどっちかがビビか…?」と、一瞬思案するシーン。画面全体
  (顔の上も)に横向きの効果線を入れて、画面の動きをそのまま保持する。
   で、実はこのシーン、画面構成上メリクリはビビを目で追っているように見えてしまうのだが、よく見る
  と、逆。この位置関係だと、メリクリは右に向かって目をやっていなければならない。

   しかし、そうなってない。何故か。ここでも画面の勢いに沿って流すことを選んだからである。直後のコ
  マでも結局メリクリ&Mr4は左に向かって追っていく。

   西門から入って行く2羽のカルガモを、Mr1が「追うぞ!」と言っているシーンも、コマ割りを横長にして
  効果線を右から左へ強調するように入れていることで、カルガモ達が逆向きになっているのだが、勢いを
  妨げていない。

   このように、一貫して「右から左」の動きを遵守することで、画面の勢いを最後までもたせている。そし
  て、それによって話のテンションを高くキープし続けることに成功しているのだ。

   そして、最高にテンションが上がり切ったところで、メインキャラ6人の見開きドアップ「残念、ハズレ」で
  ある。ここまで横に広がったカルガモ達を描写するためにほとんど「引き」の画面で構成して来た、それと
  のギャップで強烈な迫力を生み出している。

   話のスタートからグイグイ上がってきたテンションを、ここで一期に爆発させたわけだ。カタルシスであ
  る。

   これら画面構成の妙に加え、最終的にどのカルガモに誰が乗っていたのか全部わかるという、マニア
  へのサービス精神、最初のカルガモ登場シーンで、敢えて二羽のカルガモに口を開けさせることで、パ
  ッと見
「カルーがいない」ことに気づかせないという周到な演出。そして、マツゲの存在によってビビが助
  かる展開によって、その話上の存在意義が分からなかったマツゲがついに伏線となって繋がるストーリー
  構成。カタルシスの余韻でBWメンバーと味方の「対戦相手決定」を見せることで次回以降の期待を膨ら
  ませる引き方。

   ありとあらゆる点で、最高レベルのエピソードとなった、秀逸な回。構成もテンションもメタメタだった
  179話と比べ、格段の出来である。


第182話 ”怒号” 2001年24号掲載

   前回に続いて、なかなかテンションの高い回。見開きでアルバーナに攻撃を開始し始めた反乱軍のコ
  マは、階段を駆け上ってゆく
砂粒のような反乱軍を丁寧に描くことによって、緊張感と迫力を生み出して
  いる

   しかし、その一方であまりにも急すぎる展開に、素直について行けない所があるのも否定出来ない。ウ
  ソップがやられ、それをカルガモ達が伝えに来たのでサンジが助けに現れた、というのをセリフだけで説
  明されても、ハッキリ行って容易には受け容れられない。偽ウソップが出て来たあとにすぐ本物ウソッ
  プ、では混乱を誘ってしまうのである。

   前回、折角スッキリ分かれたのだから、こんなややこしいことをしなくても良かったと思うのだが。


第183話 "カルー隊長" (2001年25号掲載)

   緊張感と勢いと迫力に溢れた、良質な回。カルーのボロボロになってまでの健闘ぶりは、感動を誘う。
  (つーか、これは明らかに死んでるだろうと思うのだが…)

   そして、サンジとボン・クレーの対面。サンジが「海の一流コックだ」とカッコよく決めるシーンがあるが、
  どちらかというと、その後の「この国に手ェ出すな」の方が、サンジらしくてカッコイイ気がする。サンジの
  魅力は、初登場当時と違い、今やクールさではなく、いつも騒いでるドタバタっぷりにあると思うので、ス
  カした表情よりも、ワルッぽい感じの方が、似合うのである。


第184話 "モグラ塚4番街" (2001年 26号掲載)

   ONEPIECEは日常シーンの方が面白くて、戦闘シーンがイマイチだと最近まで思っていたが、少なく
  とも作者はかなりノリノリで描いてるのが伝わって来る回。

   個性豊かなキャラクターと多種の能力があるので、一対一にこだわるよりは集団戦の方が戦い方にバリ
  エーションが出て面白みが出る。

   相変わらず効果線なしで動きを表現してしまう手法が冴えている。(Mr4のカッ…→キィン!と打ったシ
  ーンとか)直後のチョッパーの説明も、長い割にだらだらとは感じないギリギリの線でまとまっている。


第185話 "へーそう"(2001年 27号掲載) 

   敵がモグラだけに、モグラ叩きをさせる戦闘は、お約束を守っていて、好感が持てる。

   しかし、"頭脳を使った戦闘"というお株をチョッパーに奪われてしまっては、ウソップはどうすればいい
  んだろうか…?少々、不安ではある。(と、思ったのだが、次の回でしっかり"仲間に勇気を起こさせる"と
  いう、ある意味「キャプテン」ぽい見せ場を作っているので、一安心)

   うーん…あんまり書くことがありません。


第186話 "4" (2001年 28号掲載)

   さて、ウソップの「男には!!…」以下の台詞だが、松本零士ファンなら一発でキャプテンハーロックの
  名台詞、「男には、負けると分かっていてもやらねばならないときがある」と元ネタが分かってしまう。

   「仲間の夢を笑われたときだ!」を最後の決めに持ってくることで、パクリとオリジナルのギリギリの範
  囲に落とし込んではいるが、かなり微妙なところではある。パロディ・オマージュは諸刃の剣。以前も書い
  たが、ONEPIECEほど大作になって来ると、逆に作品の質を落とし首を締めることは明らかである。

   あと、「ウソッチョハンマー彗星」でMr4が吹っ飛ぶわけだが、以前解説した「一貫した右から左の流
  れ」に反して、何故か(コマ割り上必然性もないのに)二コマ目から逆向きに飛んで行く。ただこれは微妙
  なところではあり、1コマ目の大ゴマで4は画面半分より左側に飛んでおり、このまま同じ方向になるよう並
  べ直すと、(2コマ目と3コマ目だけ鏡に映した真反対の絵を想像して下さい)

   (・=Mr4の位置 ←=読者の目の動き)

   1コマ目「 ・←  」
   2コマ目「  ・← 」
   3コマ目「☆・←  」

   こんな感じに4が一回右に戻ることになり、帰って自然の流れにならない。また、1コマ目と3コマ目が殆
  ど同じ絵になってしまう。それならば今回のような並べ方にして

   1コマ目「 ・←  」
         ↓
   2コマ目「 →・  」
          ↓
   3コマ目「  →・☆」

   この方が自然に見える、のかも知れない。絵コンテの難しさを感じさせるところである。


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