夏見光助は、一人「夕闇通り」の入り口に立っていた。
(神屋の奴、こんな所に呼び出して何の用だろう)
夏見は、放課後に大事な話があるからとクラスメイトの神屋裕二に呼
び出された。場所は、ここ「夕闇通り」。
夏見が来た時、神屋はまだ来ていなかった。
それからしばらく待ったが、まだ神屋は来なかった。
待っている間、夏見は今迄のことを思い返した。
夏見と神屋は、親友だった。
だった、と過去系なのは、今、神屋とは、絶縁状態だからだ。
とても、とても小さな、人が聞いたら笑ってしまうくらい些細な事だ
ったと思う。その時、自分も神屋も神経質すぎた。
そんな、自分も忘れてしまうくらいな事で、神屋と言い争いをしてし
まった。それから、すっかりお互い口をきかなくなってしまった。
本当は、もっと早く謝ろうと思った。
だが、何となく話す機会を逃してしまい、今日までずるずる引きずっ
てしまった。
(でも、それも終わりだ)
神屋に呼び出されたのは、絶好の機会だった。
きちんと謝ろう。
夏見は、そう、固く決意した。
(神屋には、悪いことしたよな・・オレはどうかしていた。ちゃんと
謝ればきっと、仲直りできるよな?そうだ、あいつ最近悩んでるみ
たいだから、相談に乗ってやろう。・・オレには、そのくらいしか
できないけど・・)
夏見は、無邪気に信じていた。
「夏見」
神屋が来たんだ。
夏見は、そう思った。
だから、今度こそ、謝るんだ。
また、元通りに一緒に過ごすんだ。
オレさえ謝れば・・
夏見は、一生の間に、きっと数える程しか出来ないであろう笑顔で振
り返った。
「神屋・・ごめん!!」
やっといえた・・
「本当に、悪かった」
夏見は、心から、そう云った。
「そんなこと、ないさ」
「あ・・有り難う」
夏見は、ほっとした。
「許してもらえないと思ったよ」
「・・・・・・・・・・・・・・」
突然黙ってしまった。
「・・・?」
どうしたんだろう?
・・・まさか。
神屋は、夏見を許してなどいなかった。
「僕が、貴様を許したと思ってるのか?」
神屋の顔は、憎しみに満ちていた。
その声には、殺意に満ちていた。
もう、戻ることはできない。
「でもいいさ。君が死んでくれれば許してやるよ」
夏見は、絶句した。
そして。
目の前が、真っ暗になり・・・
その場に座り込んだ。
神屋が・・・あんなこと云うなんて。
「フン。見苦しいな・・もういい、キリサキさん、殺してくれ」
神屋の後ろに、いつの間に、何かがいた。
たぶん、人間じゃない。
夏見は、そう思った。
「本当に良いんだな?」
何かーー人の形をしたーー何かが、口を開いた。
「ああ、かまわない」
神屋は、冷たく言い放った。
「さよなら、夏見」
どうやら、自分は殺されるようだ。
他人事のように思った。
逃げても無駄だろうな・・・
夏見は、目を閉じた。
「神屋、ごめん」
最後に、そう呟いた。
「00プロローグ」END