ここは地上7000メートル・・・雲海をはるか下に望むところを飛行する物体があった。
まぁ、俗に言うジャンボ・ジェット機である。
確かに空をジャンボ・ジェット機が飛んでいるだけなら、そんなに珍しい光景ではないだろう。
しかし、このジャンボは何かが違っていた・・・それも決定的に!
問題は機体にでかでかと描かれたイラストである。
ピ○チュウではない・・・
ましてや、デジ○ンでもない・・・
それは、どう見ても納豆であった。しかも、やたらリアルに描かれている。
納豆好きの人なら、機体をおかずにご飯が三杯はいけそうだ。
しかし何を考えて納豆なんかをイラストしたのか・・・理解に苦しむところである。
そしてこのジャンボの持ち主が、機内最前列の席でたそがれていた。
「はぁ・・・なんでこうなってしまったんだ。僕の完璧な計画が・・・僕の青春が・・・」
彼の名は木村 拓郎。学生もどきの大金持ちである。そして、自他共に認めるロ○コン野郎だったりもする。
そんな彼が何故たそがれているかというと・・・
「はぁ〜い、皆さん。機内ではあまり暴れないようにしましょうね〜」
「はぁ〜い♪」
「・・・なんで彼女たちまでついてきたんだ?・・・それに・・・」
「飛行機に乗るのなんて初めてだよねぇ、武。」
「うん、なんかドキドキするなぁ、喜美。」
「(プチッ)なんで君達までついてきてるんだ!!」
怒り心頭のムラタクが、ブキミーズ二人に吠える。
「僕は君達の搭乗を認めた覚えは無い!」
「まぁまぁ、ムラタクさん。そう怒らずに・・・そうだ、メロンパンでも食べて落ち着いて・・・」
「ミナタク君、君もだ!」
本来ムラタクの当初の予定では、この飛行機には彼とぷちこの二人だけが乗るはずであった。
そして二人は遠い南の島で晴れて結ばれる・・・はずだった。
それがいつのまにか、みんなで行こう!という話になってしまったのだ。
なぜこうなってしまったのか?・・・ムラタクは胸のポケットから一枚の紙切れを取り出した。
あの日、自分が気がついた時に手に持っていた紙切れである。
そこには、こう書かれていた。
『わたくし木村 拓郎はゲーマーズのみんなを海外旅行に連れて行く事を誓います』
文章の最後には、しっかり本人のサインまで書かれている。
(・・・っていうか、こんな誓約書を僕はいつ書いたんだ!?)
そしてムラタクにとって最大の疑問・・・
(あの日、店長さんに奥の部屋へ連れこまれてからの記憶が無いのは何故!?)
あれから、医者に逆行催眠までしてもらって過去の記憶をさかのぼったのだが・・・
ちょうど例の所の記憶に辿り着くと急にパニック状態になり、意味不明の言葉をわめきながら部屋をのたうち回ったらしい。
お医者さん曰く、「よっぽど怖い思いをしたんでしょうねぇ。(笑)」
結局あの部屋で何が行われたのか・・・答えは店長さんだけが知っている。でも怖くて聞けない。
(しかし、どう考えても僕が皆で行こうと言った覚えもない・・・はっ!もしかしたら?)
そこでムラタクはある仮説を思いついた。つまり、この誓約書自体が偽造された物なのではないか。
ムラタクじゃない誰かが自分の代わりに書いた、偽の誓約書なんじゃないのか?
(そうだ、そうに違いない・・・そして、こんな卑劣な手段をとる人物と言えば・・・)
ムラタクがキッと後ろの座席を睨む。その視線の先にいるのは、一人のハイブリッド・猫耳娘・・・
(でぇぇぇぇぇぇじぃぃぃぃぃぃこぉぉぉぉぉぉ!!)
ムラタクの瞳にメラメラと炎が灯る。そう、こんな事を企むのは彼女をおいて誰もいない。そうだ、そうに違いない!
そう自分に言い聞かせながら、でじこの居る席へ向かう。
「ちょっと、いいかな・・・でじこ君。」
「?・・・なんなのかにょ?」
あえて冷静な態度ででじこに話しかけるムラタク・・・大人だ。
「実は、この誓約書について少し聞きたい事があるんだが・・・」
「にょ?」
「単刀直入に聞くが、これは君が書いた物なんだろう?」
「なんの事かにょ?でじこ知らないにょ。」
あっさり否定されてしまった。いや、負けるなムラタク!
そっけないでじこの態度に、思わず青筋などを浮かべつつ更に問い詰める。
「しかし、こんな物を僕は書いた覚えはない!でじこ君、君が書いたんだろ?怒らないから正直に言ってごらん。」
「もしかして、ムラタク・・・でじこの事疑ってるにょ?」
でじこはそう言うと、悲しそうな顔をして俯いてしまった。
そんな日頃見せない彼女の姿に、ムラタクの心が揺らぐ。
(・・・なんだ、でじこ君もこう見ると結構カワイイじゃないか・・・ま、僕の言い方も少しキツかったかもしれないし、少し謝っておくか・・・)
「いや・・・でじこ君すまない。僕もちょっとばかし・・・」
「ひどいにょ!」
「えっ?」
見ると、顔を上げたでじこの目には大粒の涙が浮かんでいた。
「で・・・でじこ・・・君?」
「でじこは・・・でじこはそんな悪い事しないにょ・・・うっ、うっ・・・ひっく」
「そうだ!でじこちゃんがそんな事するわけがないじゃないか!」
「そうだ、そうだ!でじこちゃんに謝れ!」
でじこが泣きはじめたのを見て、ブキミーズもムラタクに詰め寄る。
見ると、他の皆もでじこに同情的な視線を送っている。
(な、なんだ?これじゃ僕が一方的に悪者じゃないか!?)
「うっ・・・ひっく、でじこは犯人じゃないにょ・・・うぐ・・・ちゃんと証拠もあるにょ・・・」
「しょ、証拠だって!?」
「(ニヤリ)ぷちこ、例のブツ カマ〜ン!」
嬉々としてぷちこに指示を出すでじこに唖然とするムラタク・・・
「ちょっと待てぇぇぇ!!さっきの涙はどうした!?」
「あぁ、目薬にょ。」
「なっ!(絶句)」
と、ちょうどそこへぷちこが一本のビデオテープを持って現れた。
「例のブツにゅ。」
「サンキューにょ♪」
ぷちこが持ってきたビデオテープを、でじこが機内のビデオデッキに入れる。暫くすると、画面に見慣れた映像が写し出された。
モノクロの映像に映し出されたのはゲーマーズの店内である。どうやら店内にある防犯ビデオの記録らしい。
「!!・・・これは!?」
そして画面の中では、ムラタク因縁のあの日、あの瞬間の記録が克明に残されていた。
(VTR映像実況)
「・・・ムラタクさん、ちょっと奥で話があるので来て頂けますか。(キラン)」
「て、店長さん?僕をどこへ連れてくんですか!?」
「(ズルズル)ちょっと奥までですよ・・・すぐに終わります・・・ふふふ」
「す、すぐ終わるって・・・何をするんだーーーーー!!」
「素直にO.Kと言えば助かったのに・・・」
「ご愁傷さまにょ・・・」
「いぃぃぃぃぃぃぃぃやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
悲痛の叫びもむなしく、店長さんに奥の部屋へと連れ込まれるムラタク・・・
(バタン!・・・カチャ)←扉の閉まる音&施錠の音
そして次の瞬間、すさまじい悲鳴が店内の響き渡る。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
そして突然訪れる静寂・・・それから少しして部屋の扉が開き、店長さんとムラタクが姿を現した。
「いやぁ皆さん、お待たせしました〜」
「あっ、店長さん!説得は上手くいったのかにょ?」
「もちろん!ぼくの真摯な頼みは彼にちゃんと伝わったみたいです。ねぇ、ムラタクさん?」
「(カクカク)ワァーイ、ボクモミンナトイッショニ リョコウニイキタイナー(カクカク)」
「わぁ、店長さん上手ーい。まるで、いっこく堂さんみたい。」
「ははは、うさださん何の事でしょう?」
そんなやり取りを見ていたでじこの顔がニヤリとする。
「そうだ、店長さん!ムラタクに誓約書を書かせるにょ。これで後で知らないなんて言わせないにょ!」
「それはいい考えですね、でじこちゃん。ムラタクさん、書いてくれますか?」
「(カクカク)ハウ・・・オレ・・・カク、セイヤクショ・・・ペン、モッテコイ(カクカク)」
なぜインディアン語!?・・・そんなツッコミはともかく、ぷちこがムラタクにペンと紙を手渡す。
「にゅ!」
「ぷちこちゃん、ご苦労様です。おや?ムラタクさん、手が震えてますねぇ〜、どうしたんでしょう?」
「きっと感激のあまり手が震えてるにょ。」
それは震えてるんじゃなくて、痙攣してるんだよ・・・でじこちゃん。
「しょうがないですねぇ、ムラタクさん。それじゃ私が手伝ってあげましょう。」
そう言いながら、店長さんの手がムラタクの手に添えられる。
「・・・わたくし木村 拓郎はゲーマーズのみんなを海外旅行に連れて行く事を誓います・・・と、はい出来ました!」
店長さんが書きあがった誓約書をみんなの前に掲げてみせた。
「店長さん、さすがにょ!」
「あとは、領収書に書いてあるムラタクさんのサインをパソコンで合成すれば完璧だわ!」
「ははは、後はでじこちゃん達にお任せします。」
「任せるにょ!」
・・・と、ここで画面が途切れて砂嵐に変わる。
(VTR映像終了)
「にょ?」
でじこが”分かったか?”というふうに、ポンとムラタクの肩に手を置く。
「詐欺だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ムラタクの悲痛の叫びは誰の共感も呼ばず、青空のかなたへと吸い込まれていった。
つくづく可愛そうな奴である。
さて、その頃ムラタク機の後方一qの地点・・・そこで巨大(?)な悪の影が動き出そうとしていた。
「・・・ぴょぴょぴょぴょ・・・お姉ちゃん、覚悟するぴょ・・・」
薄暗い室内で一人の少女とおぼしき影が、双眼鏡を手につぶやく。
少女の顔まではわからないが、一つ言える事は声は林原似である。
「余計なお世話ぴょ!・・・ところで、お前たち!」
「はっ!!」
暗くてよく判らなかったが、少女の後ろに三人の男達がひざまづいている。
「例の作戦を実行するぴょ!各自準備に取り掛かるぴょ!!」
「はっ!了解致しました!」
少女の命令を受けた三人が、次々と部屋から消える。
やがて一人になった少女は視線を前方のムラタク機に戻した。
「・・・デ・ジ・キャラットさらって、お金ガッポリぴょ・・・ぴょぴょぴょぴょぴょ!」
薄暗い室内に、少女の高笑いが響く。
むろん、そんな恐ろしい計画が進行しているをでじこ達が知る由もない。
しかし、そんなでじこ達には構わず恐怖の足音は確実に近づいていた。
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