望郷
ゆっくりと地平線に視線を這わせた。
自分を中心に大地が円を描いている。
視界を遮るものは何もない。
行く手を阻むものは何もない。
吸い込まれていきそうな静寂。
少年の身体が、立った姿勢そのままでふわりと宙に浮きあがった。
そのまま当てもなく飛び始める。
どこまで行っても赤茶けた不毛の大地。
生けるものは存在しない。
次に少年が足をつけたところも先ほどと何ら変わりのない風景。
それでも彼は周囲を見渡す。
無駄な事だとはわかっていた。
たわむれに少年は、自分を守る領域から指の先を出した。
たちまちそのほっそりとした白い指先は水ぶくれを起こし、爛れていく。
手を引き寄せると、眼前に持っていった。
そしてめずらしげに眺めやる。
この感情は、・・・・・・感傷か。
今まで何度と見てきた光景なのに。
永き時をかけてこの星は自らを浄化し、新たな生命を宿す。
再び、あの懐かしい世界が構築されるのだ。
今まで幾度となく繰り返されてきた事。
何を哀しむ必要がある。
少年はため息を吐いて、後ろを振り返り、天を仰ぎ見た。
白獣に乗った蒼い髪の青年が浮かんでいた。
その端正な顔は、困ったような、何だか泣きそうな感じに歪んでいた。
少年もつられたようにちょっと困った顔をして、それでも迎えに来てくれた彼に笑みを返した。
その笑みに引き寄せられるように、青年は少年の頭の高さまで下りてきて、手を伸ばした。
少年も手を伸ばしかけて、指先の痛みに気がついて、逆の手を差し出した。
気がつかないふりをして、青年は少年のその細い腕を掴み、自分の乗る白獣の背に引っ張り上げる。
上昇し、徐々に遠くなる大地をぼんやりと眺めながら、少年は気がついた。
そうか、もう彼女はいないのであったな。
これから作られる世界は、自分が知っている世界とは全く異なるもの。
それは、自分が慈しんだ者が存在しない世界。
ふいに視界が蒼く閉ざされた。
故意にされたそれを機に、少年は覆い被さるようにして自分を抱き寄せるしっかりとした腕にもたれかかる。
青年のきれいに整った両の手が、彼の爛れた指先をやさしく包み込む。
少年は自由な方の手を、自分の手を包み込む少しつめたい手に重ねた。
そして、もう一度だけ蒼い髪の隙間から下を盗み見て、ゆっくりと瞼を下ろす。
遠ざかる愛おしい彼の星への餞別は、微笑みであった。
ほんの少しだけ郷愁をふくませて。
――了
−−−
またもや意味不明の暗いものを・・・。
ねこは実はシリアス物書きだったのでしょうか? 知りませんでした(笑)
師叔を迎えに来る楊ゼンネタは、実は後もう2つくらいあります。
しかし、『あとしまつ』も入れて、彼が楊ゼンの元に戻ってきてくれたのは、これだけだったりする。
なかなか戻ってきてくれないんですよ。
おかげで、新仙界ネタも書けやしない、まったくもう。
この後に及んで何ですが、これは書きかけのような気がする(分からないんですかい!)
そのうち、また書き直しそう・・・。
つくづく読者さまにやさしくないサイトです(失格)
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