夢見る佳人
















しなやかで力強い両手が、明確な意志を持って小さな背を撫で擦った。
「太公望師叔・・・・・・」
熱い吐息とともに、響きのよい声が太公望の耳から身体の中に染み込む。
なめらかな指の動きは、その形を確かめるように背骨をゆっくりと降りていき、そして一番下までたどりついたところで楊ゼンはその華奢な身体を抱え上げて寝台に横たわらせた。
欲情に濡れた瞳をきらめかせながら、自らも寝台に膝をついて、月明かりに青白く照らされた滑やかな頬をなぞる。
「・・・・・・のう、楊ゼン」
楊ゼンが見下ろす大きな翡翠の瞳が躊躇うように左右に動いて、それから言いにくそうに小さな唇が動いた。



「何ならよい店を紹介してやってもよいぞ」
「・・・・・・」


言われた意味が分からずに思わず手が止まる楊ゼンを気にせず、太公望は真顔で話し続ける。
「仙道としてはあまり感心できぬが、生理的欲求の充足は人として大切なことだ。かといって、女官らに手を出させる訳にはいかんからな」
こんなに手近な性的魅力の欠片もない自分に手を出すほどタマっていたのかと、同情する太公望。
「違います。僕はあなたがいいんです!」
太公望はその言葉に少し思案したが、やがて楊ゼンを見て一つため息を吐いた。
「おぬしに休みをやれなかったのは、上司であるわしの責任。こんな身体で満足するならば・・・・・・」
仰向けのまま二つ折りになるように脚を上げて、膝を胸にくっつけた。
「ほれ、使え」
常と変わらぬ調子で「ほれほれ」と言いながら腿の裏側を平手で叩く。
「・・・・・・」
「ほれほれ」
「・・・・・・・・・」
「どうした、どうした」
「・・・・・・・・・・・・もう、いいです」
萎えた顔の楊ゼン。
「何だ、本当にいいのか?」
「・・・・・・・・・」
太公望は起き上がり、床に足をつけると、寝台に両手を突いて力なくうなだれる楊ゼンの肩を一つ叩いて慰める。

「姫発が行き付けの店があるのだ。今度何とか休みを作ってやるから、そこへ行くといい」



扉の閉まる音に押されて、楊ゼンの身体はゆっくりと寝台に撃沈した。
























――了





−−−

何をコメントしたらいいのやら。
楊ゼンさんはすっごくムードにこだわる人だと思う。





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