「夕暮れとあなたと違う人」





外は寒くて立っているだけで指先が凍るようでした。
だから手を握っていて欲しかった。

名前も知らないあなた。
あなたは私の名前をしらない。
だけど二人で寒い空の下にいました。

あなたは月曜の夕方にいつも来るね。
私はあなたがそれ以外の時をどのようにして
過ごしてるのか知らない。
どんな人?
どんな家族?
どんな家?



でも会ったときは私との時間を過ごしてくれる。



私が話しをする時あなたはよく瞬きをする。
私はよく髪を触る。
そんな何気ないことを見るのがたまらなく嬉しい。

手を触れて体を寄せて抱きしめてくれた時
説明のつかない感情が涌き出て来た。
離れたくない。


あなたを知りたくなりました。


私から見たあなたは
とても無口で子供みたいで
瞬きをよくする人ですね。


これは本当のあなたですか?



あなたは突然ここにこなくなりました。
月曜の夕方私はいつもここであなたを待ってました。
でも来ない・・・
私はもう要らないのでしょうか・・・


今日はとても寒かったので
私は自分の体を抱きました、
ぐっと力をいれて抱きました、
少し温かくなりました。
あなたを思い出してしまいました。
だから私は自分を抱きしめるのをやめました。


どうしようもなく苦しいから
私は自分の腕に爪を立てました。
どうして寂しいのでしょう
どうして寂しいのでしょう


私はあなたがいなくても生きていけるんだ・・そう思うようにした。
だから待つのをやめました。



何年か後の月曜の夕方
あなたはあそこにいましたね。


私は気付かないふりをして通り過ぎようとしました。

あなたは私の姿を目で追ってきました。

私は通り過ぎようとしました。

あなたは私の腕を掴みました。

私は目線を合わせないように振り向きました。



「ここにいたらあなたに会えると思いました。」

私は聞きなれない声を聞きました。
あなたは無口でした。
正確には私に話したことがなかった。

「あなたに会って見たかったんです。」
「・・・・・」
「いつも僕ではないときにあなたと会っていたから、
僕として会うのは初めてです。」
「・・・・」
「僕の名前は・・・・・・・・」

聞きたかったはずのあなたの名前が聞けたのに
聞きたかったはずのあなたのことを聞けたのに。
もうあなたではないから私は何も感じない。

あなたの顔を見たら
瞬きをあまりしないようになった。

私は微笑ました。話しをしました。
「すみません。突然のことなのでびっくりしてしまいまして
御病気のほうはよくなられたんですね・・よかったですね。」

「はい・・もうすっかりよくなりました。・・・あの
すみません・・僕あなたのことをあまり覚えてなくて、今日来たのも
あの時いつも月曜の夕方ここに僕が来てあなたに会っていたと
聞いたものでお会いしたくなりまして・・・。」

「いいです。あの時いつも会って御話ししてただけでしたから。
私も月曜の夕方いつもここを通りますから・・・
でも本当によかったですね。」

「はい。ありがとうございます。」

「では私はこれで・・
お会いできて本当によかったです。」

「僕もです。又ご縁がありましたら一緒にお食事でも・・」

「はい。喜んで・・では。」



あなたはこんなに沢山話す人だったんですね。




もう・・本当のあなたには会いたくない。



私を忘れて消えていった、
あなたは私の中に残ったまま


話しなんかしたことなかった
笑いかけてもらった事なんてなかった
名前なんて教えてもらったことなんてなかった。

ただ・・一緒にいただけ。

手を握って
抱き合って
髪に触れて
熱を分け合って

私がそれ以上を望んだから
あなたをもっと知りたいと思ったから
欲張りだったから
求めすぎたから
だから・・・
いなくなったの?


私は白い息をはきながら少し歩いた。
寒いからコートのポケットに手をいれた。
ほんのり温かかった。

私は人が行き来する道でうずくまってしまった。
立てなくなってしまった。
その温かさがまたあなたを思い出したてしまったから・・


あなたがいなくなって寂しかった。
又あなたは現れたのに
もう・・あなたじゃない。


ただただ溢れてくるものを
抑えるのが必死だった。

あなたがいなくて
寂しくて
寒くて
悲しくて
辛くて
恋しくて


やっと会えたあなたはあなたではなかった・・・



頭の上から声がしました。

「大丈夫ですか?」


あなたはやさしく声を掛けてきた。
「・・・大丈夫ですか・・屈んでいらっしゃるのが見えたから・・」
・・あなたのやさしい言葉かよけいに辛いです。
「ええ・・大丈夫です。少し気分が悪くなってしまって・・」
「立てますか?」


あなたの手は変わらないですね・・。
私の手をぐっと掴んだその手・・
あの時私の手を握り
私の髪に触れ・・
私の頬を撫でてくれた
あなたの手・・・・


「家まで送りましょうか?」
「・・・・・」
「もし歩けないようでしたら車で送りますし・・」
「・・・・・」
「あの・・・大丈夫ですか?」
「・・・・」


私はあなたの手を握り返した。
私はあなたにもたれかかった。
涙が溢れた。


どうして手はあのままなの?
どうして温かさはあのままなの?



「・・どうして私を忘れてしまったの?」


あなたは黙ったままでした。


「私を忘れないでよ・・」


あなたは黙ったままでした。











寒くて寒くて指先が凍るようでした
あなたは私の手を握ってくれました。
月曜の夕方
あの場所で
変わってしまったあなたと
変わらない私

あなたは私に言いました。
「あなたのことを忘れてしまったけれど
教えて欲しいんです・・
あなたと僕のことを」
私は頷きました。




■終わり■





「あとがき」
ちと展開早かったかしら・・・・
だめね・・もっとがんばりましょう。
忘れられることは辛いことですよね・・・。
皆様身近な人を忘れないで下さいませ。
ここまで読んでくださって有難う御座いました、