彼に会いに行こう


外の世界から戻って、リナさん達と別れて数ヶ月。
セイルーンの姫としての仕事もある程度片がつき、自分の時間が持てるようになった頃。
私は、ふと『彼』のことを思い出した。 ……別に、忘れていたわけではないけど。
銀色の髪に、岩で出来た身体。 不器用だけどとても優しいあの人。
「今ごろ、どこで何をしてるんでしょう……」
ため息一つ。
ほんとは、ついて行きたかったのだ。 リナさんとガウリイさんみたいに二人で旅が出来たら……と、思ったりもした。
けれど、私にはやっぱり王族の仕事があって。彼には目的があって。
だから、別れた。 別れのとき、思わず泣いてしまって……あの時の慌てた彼の顔が頭に浮かぶ。
『お、おい。どうした』
『しっかりしろ、姫がそんなことでどうする』
それでも私は泣き止めなくて――――困った彼が最後にいった言葉。
『お前が待っててくれるなら――いつか迎えにくるから。だから、泣くな』
初めてくれた約束の言葉。 それが嬉しくてまた泣いてしまったっけ。
ほんの数ヶ月前のことなのに、ひどく遠く感じる。
会えない日はとても長くて――今ではその寂しさに慣れてしまったけど。
でも、やっぱり。
「――会いたい……」
無意識に口から出た言葉に、抑えてた気持ちがあふれてくる。
ひとめでいい、会って、声を聞かせて欲しい。
「ゼルガディスさん……」
名前を呟くだけで、せつなさが募る。
こんな気持ちで、いつになるかわからない迎えを待つしかないのだろうか?

――――いや。 違う。

顔をあげて前を見る。
彼を信じないわけではない。 必ず迎えに来てくれるだろう。
だが――それまで待てないのなら、自分から行くしかないではないか。
待つのが辛いなら――追いかけて、自分から捕まえにいけばいいのだ。
「なんだ……そうよね。 そんな簡単なコトなんだ」



「決めました、あたし! また、旅にでます!」
朝食の席でそういうと、皆が慌てた。 それはそうだろうと思う。
だが、もう決めたのだ。
「ひ、姫! 政務はどうするんですか?!」
「なんとかなります!」
きっぱり言うと、側近その1は絶句した。
「……いいですよね、父さん」
「うむ、自分の信じた道を行け、娘よ!」
「父さああぁぁんっ!」
ひしっ!




荷物をまとめて、城を出る。
彼の行方はセイルーンの情報網を使ってある程度把握してある。 見つけ出すのはそう難しくないだろう。
私が会いにいったら、どんな顔をするだろう? 驚くかな、それとも「仕事はどうした!」って怒るかな?
でも、どっちにしても、少し困ったような顔で、『まったく……』とかため息ついて、でも拒むことはないだろう。
不器用で、無愛想で、でもとても優しい人。


それが、私の好きな人。


「待っててくださいね、ゼルガディスさん」
私は、どこかにいる彼を目指して歩き出した。






あとがき:初ゼルアメ。 といってもゼルはでてきませんが。
     たまにはこういう一人称ものもいいかなーと。
  BGMは坂本真綾「アルカロイド」

     気に入っていただけると嬉しいです。
    感想とか良ければ下さいな。