キス。




「……あーつかれたー……」
そんな呟きがかなめから出たのは昼休み、生徒会室でのことだった。
二人を呼び出した生徒会長も今は席をはずし、部屋にはいまかなめと宗介の
二人だけである。
「何がだ、千鳥」
「さっきの体育。なんでいきなり人工呼吸なんか教え出すのよ……」
「救急隊の到着より前の手当てが生死をわけることもある。 人命救助の点から
みれば正しい方法を知ることは必要だ」
「あっそう……あんたは知ってるんでしょ?」
「肯定だ」
「キスとの違いはわかるようになった?」
多少のからかいを含む声でかなめが問うと、宗介は咳払いをしてこたえた。
「うむ。クルツに思い切り馬鹿にされた」
「そりゃそうでしょ。 フツーはわかるのよ。
で、どーゆーのがキス……な、わけ……?」
言ってる途中で、かなめは今自分のしている質問がなかなか際どいものであることに
気づいた。 微妙な恥ずかしさがこみあげてくる。
自然と、語尾も小さくなった。
(ああああたしってばいったい何を?!)
あははは、ジョーダン。 
そういって話を終わらせようとかなめが口を開きかけた瞬間、宗介の返事が聞こえる。
「――――君としたい、と思うほうがキスだ」
(!!!)
思いもよらなかった返事。 一気に顔に血がのぼる。
何か言おうと口を開く。が、何を言えばいいのかわからない……。
まさかソースケからこんな返事がこようとは。 本気なのだろうか?
彼が、あたしを――その、好いていてくれているということだろうか。
どうなのだろう?
しかし次のセリフは。
「……と、クルツが言っていた」
脱力。
(ああ、そーゆーこと……そりゃそーよね……この朴念仁にそんなセリフが
吐けるわけないもんね……)
マジメにとらえてどきどきした自分が馬鹿みたいだ。
ちょっと考えればわかりそうなものなのに。
なんだか疲れに拍車がかかったような気がして大きく息をつく。
そのおかげで宗介の次の一言への反応がおくれた。
「……俺もそう思う」
「……へ?」
思わず宗介の顔をまじまじと見る。 いつもと変わりない表情。
いや、いつもより少し……緊張しているのだろうか?
「……そ、それもクルツくんが言ってたの……?」
問い掛ける声がうわずるのも仕方のないことだろう。
「……いや、俺の意見だ」
「って……」


いきなり場に緊張が走る。
どう反応すればよいのやら。パニクッた頭で考えるが、よい答えなどでるはずもなく。
ああせめて教室に二人きりでさえなければ。いや、他の人がいなくてよかったのか……?
混乱し、百面相を見せるかなめに対し、宗介は普段とまったく変わらず……いや、何か言おうと
口を開き――――
がらっ。
「……どうかしたかね? 二人ともなにやら顔が赤いようだが」
「いいえええっ、何でもないんです! いやホント!」
いきなり戻ってきた部屋の主にかなめはヘンにはきはきした声で答え、勢い良く立ち上がった。
「それじゃ、あたし教室もどりまっす!」
と言い残し、返事も待たずあっという間に姿を消す。
「……ふむ。邪魔をしてしまったようだね」
生徒会長――林水の言葉に、「問題ありません」と答える宗介の声がいつもより
若干元気がなかったのは、まあ仕方ないことだろう。



いえなかった言葉が発せられたのは、もうしばらく後のこと――――。







あとがき:ほんとはも少しシリアスな感じに書く予定だったんですが、途中で飽きたので
     こんな終わり方に。 でもこっちでよかったな。
     宗介が何を言ったのかは、ご想像におまかせしますvv

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