悪夢



忘れることの出来ない景色。
手に伝わる、人を斬る感触。
そうして、昔の仲間はあたしの前で消滅した。
――――あたしが、殺したのだ。



「リナ!」
「……ガウリイ? どーしたの、こんな夜中に人の部屋で……?」
「どうしたのって、お前……」
ベッドに手をついて心配そうにリナを覗き込んでいたガウリイはため息をついた。
「お前の部屋から悲鳴みたいなのが聞こえたから、なんかあったのかと思って……」
「え? そんな大きな声だった?」
きょとんとした顔。 そこには先程まで見せていた苦悩の色など微塵もない。
「別に大声ってわけじゃ、なかったけどな……」
「あー……ちょっと夢見が悪かっただけだから」
そういってリナは半身を起こして髪をかきあげた。 いつもはふわふわと広がる栗色の髪が
今は汗でまとわりついている。
「そうか……」
何の夢をみていたのか、などとガウリイは聞かない。 聞かなくてもわかるからだ。
最近彼女は同じ夢でうなされているのだから。
先日、二人はある騒ぎの末、一人の『敵』を倒した。
いや、一人という言い方は正しくないかもしれない。
それは人ではなかったのだから。
だが、元は人で――仲間だったことも、あった。
それを、二人は――正確にはリナ一人で――倒した。
そのことで彼女はひどく傷ついていた。
他に方法がなかったことは理解しているが、それでも――――
「やっぱ…………少しキツくって、さ」
ガウリイはただ黙って彼女の髪を撫でていた。
「……どうして」
「え?」
彼が唐突に呟いた。
「どうしてお前は泣かないんだ? 泣きたい時は泣いてもいいって言っただろ?
 なのに――なんで我慢してるんだ?」
「う〜ん……我慢ていうかね……」
ガウリイの言葉に、リナは困ったように微笑んだ。
泣き出す寸前、といった笑顔だが、そこに涙の気配はない。
事件の直後に彼の前で少し泣いて以来、彼女はまったく涙をみせなくなった。
――――悪夢にうなされる夜でさえ。
ガウリイにはそれがひどく気がかりだった。
「無理してるんじゃないか?」
「我慢してるわけじゃないの。ただ――」
いつものように優しく髪を撫でている感触を確かめるように目を閉じて、
「涙が出ないの」
再び目を開ける。 今にも泣きそうな顔をしているが、それだけだった。
「泣けないの」
ガウリイの肩に額をくっつけて、黙り込む。
「……オレはどうしたらいい? 何か出来る事はあるか?
 心配なんだ……このままじゃ、リナが壊れてしまいそうで」

しばらく沈黙が続いて――リナは言った。


「なんにもしなくていい。 普通に――いつもどおり、あたしの側にいて。
 それだけでいいから」


「そうか?」
「うん。……あたしは大丈夫よ。

 …………ガウリイが、いてくれるなら」



「……オレはどこにもいかないよ。ずっと、リナの側にいる」
「約束する?」
「ああ、絶対だ。なんなら指きりでもするか?」
「いいわよ、子供じゃないんだから……」
リナがクスっと笑った。

「……ほら、明日も結構歩くんだろ? もう寝ろよ」
「目ぇ覚めちゃった」
「いーからほら、布団に入って、目を閉じて。そーすりゃすぐに眠くなるって」
「えー?」
「いーから。 ……それとも添い寝しなきゃダメか?」
夜目にもはっきりわかるほどリナの顔が赤くなった。
「なっ……結構よ! あんたこそさっさと部屋もどんなさいよ!」
「戻るさ。ただし、リナが眠ってからな。 お前が寝付くまでは側にいるよ」
「…………ガウリイ」
「ん?」


「…………ありがと



あとがき:なんかわけわからん話になった。 つまらん。
     やっぱシリアスはむすかしいっス。特に締めがね。
感想っつーか批評してください。人の意見きかんことには
     文章も上手くならないような気がするし。