TRIP MACHINE




目が覚めると、そこは異世界だった。



……とか落ち着いてる場合じゃなくって!
あたしは慌てて回りを見回した。
確かに昨日は宿で寝た。 木造のちょっと年季のいったその建物は派手に
暴れると(暴れるなとかいうな)ぎしぎしうるさく、あたしはガウリイを
しばくのにも気をつかったもんだった。
ところが。
今いるところといえば、床は……木か?なんだかわかんないような素材で
作られている。木目はあるのだが、みょーにつるつるしてるのだ。
まったくみた事のない素材である。
んで、あたしが一番驚いたのはこれなのだが……なんと窓にきれいな薄い
ガラスがはまっているのだ!! しかもかなりな大きさで!
これをはずして売ったらいくらぐらいになるのかなー……と本気で考えたのも
無理もないことだと思う。

さて。
「現実逃避はこれくらいにして……なんなのこれは」
呟いてみても、返事は返ってこない。
あたしは昨日ベッドに入ったときのままの格好だ。つまりパジャマオンリー。
どうやら身につけていたもの以外全部どっかへいっちゃったようで、部屋を
見回してもマントも、ショルダーガードも、……剣も、ない。
ま、魔法があればなんとかなるか、と考えて――――ある可能性に気がついた。
あたしはいそぎ呪文を唱え――――
「”明かり”!」
――――何も、おこらない。 
「……ちょ……ちょっと、うそでしょ……?」
声が震える。 呪文が正確だったにもかかわらず何もおきないと言うのは――
「……魔法、使えない……?」
体中から血が引いていくのがわかった。
魔法が使えない、というのは、つまり、あたしに自衛手段がなくなった、ということである。
以前にも同じような状態になったことはあった。
でも、そのときは剣もあり、いつもの世界で……仲間もいた。
だが、今回は……剣はなく、そして見知らぬ世界で――――ひとり。
「……どうしよう……っ」
体が震える。 でもどうしたらいいかわからない。
もし、部屋の外に敵がいたらどうしよう?
剣もなく、魔法も使えないあたしは非力だ。
戦いにすらならないだろう。
(どうする……どうすればいい……?!)
必死に考えをめぐらせるあたしの耳に、がちゃっ、という音が届いた。
これは――鍵をあけた音?!
体を強張らせたあたしの目の前でドアはゆっくり開き――――

「おーい、リナ起きたかー?」

「おどかすなぁぁっ!!」

いきなり聞こえたなじみのある声に、あたしは思わず叫んだ。
「おお、朝から元気だなーリナ」
「元気だなー、じゃないっ! 何やってんのよあんたはっ!」
「どうしたんだ、そんなに興奮して……」
「朝起きて知らんところにいたら誰だってこうなるわよっ!
 なんであんたは……あんたは……」
声がかすれていく。 ガウリイの顔を見たらなんだか――
「……お、おいどうしたんだ?! どっか痛いのか?!」
なんだか安心できて――
「……うるさいっ……ばかくらげっ……」
あたしは涙を見られないようにうつむいた。どーせばれてるだろうけど。
「……怖かったのか?」
「……そーよっ……起きたらこんなところで……剣もないし魔法使えないし……
 なんであんたはそんなに落ち着いてるのよっ……」
うつむいたままのあたしを、ガウリイがそっと抱きしめた。
幼児にするように、背中をぽんぽん、とたたかれる。
「そりゃ俺も起きたときは驚いたが……まあリナは無事だし、
この家もざっとみたところなんも危なくなさそーだし。 まあいいか、と思って」
「思って、じゃなあぁいっ!」
あまりにも気楽な物言いに、思わず声をあげる。
なんでこいつはこう……!
「も少し、なんつーかこう真剣に悩みなさいよね!」
「いやー、オレ考えるの苦手だし」
「そーゆー問題かっ?!」
「心配すんなって。 ……何があってもリナは大丈夫だから」
へ?
予想以上に優しい口調の言葉に、あたしはガウリイの顔をみた。
「何があっても、オレが護るから。 だからそんなに心配するな」
抱きしめられたままの姿勢のせいで、いつもより近くでみるガウリイの顔。
優しい視線をまっすぐこちらに向けるガウリイからなんだか目が離せなくて――

ぐぎゅるうぅっ。

なんとなくいいムードをぶち壊したのは、あたしの腹の音。
ガウリイの視線がきょとんとしたものに変わり――
「おまえなぁ……」
「しょーがないじゃない、おなかすいてるんだからっ!」
あたしは顔を真っ赤にして怒鳴った。 くそう、何もこのタイミングで鳴らなくてもっ!
……べ、別に何か期待してたわけじゃないけどさ。
「ほら、朝食。 とりあえずこれ食え」
「……なにこれ」
ガウリイが差し出したのはパンのような物体――ていうかパンにしかみえないけど。
「下の階にあった。結構うまかったぞ?」
あたしはおそるおそる一口、口に入れる。 毒は……入っていないようだ。
うみゅ……結構、おいしいかも……
だがさすがに、この状態下ではいつものような食欲が出るはずもなく、あたしは
5個程度でやめておいた。
一応の食事を終え、あたしは息をつく。
(これからどうしよう……)
状況は殆ど変わってない。ここがどこかはわからず、あたしは魔法が使えない。
でもさっきのような強い不安はなかった。
何故なら――――もうひとりじゃないから。
あたしの隣に、いつものようにガウリイがいる。
それだけで、どうにかなるだろう、という気持ちになっていた。
(現金なものね)
あたしは苦笑する。 それに気がついたガウリイが不思議そうな顔をした。
「なんだ?」
「ううん、なんでも。……ガウリイ」
言葉が、意識するよりも早く口をついて出た。
「そばにいて、ね」
…………は? あ、あたしは今何を……?
ガウリイは一瞬きょとんとした様子だったが、すぐに優しく微笑んだ。
「当たり前だろ。 ……オレのいる場所は、おまえのそばだ」




何時の間にか、あたしとガウリイは見つめあっていて。
でもあたしは不思議とはずかしくもなかった。
やがて、頬に大きな手がそれられると同時にきれいな顔が近づいてくる。
あたしは自然と目を閉じて――――――




ぱち。開いた目に飛び込んできたのは、古そうな木の天井。
慌てて飛び起きて、あたりを見る。
椅子の上に畳んだいつもの服が置かれていて、その上にはショルダーガード
とショートソード、そしてマント。
つまりは、いつものあたしの荷物。
部屋の内装も普段どおりで、窓にもガラスなどはまってはいない。
床に足を下ろすと、かすかに軋んだ音がした。
夕べ寝る前と、なんら変わりない部屋。
「…………ユメ……だったんだ……」
大きく息を吐いた。それから、呟く。
「夢とはいえ……なんであたしはあんなこといってんの……」
最後のシーンを思い浮かべ、赤面する彼女。
しかしその顔はどこか残念そうで。



その隣の部屋で、ほぼ同時に目覚めた彼女の連れが
「どうしてあと数秒夢でいられなかったんだーっっ!」
と心で絶叫していたことを、彼女は知らない。









ダンレボ楽しいですよね。 でもマンションだと出来ない……ツライ(泣)。 リクエスト小説。 いったいいつの話だ(汗)。 こんなに待たせることになろうとは…… あわわわわ。てゆーか夢オチかいっ!


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