史上最大の宗教戦争〜その影で〜

プロローグ
 人類の技術は常に進歩し続ける。
 限りなく貪欲で、限りなく想像力のたくましい彼らは様々な空想、幻想を抱き――そしてそれを時間をかけてだが、実現し続けてきた。
 物理学の不可侵領域である光をすら彼らが乗り越えたのは何時のことだったのか――
 それらの技術を発展させ、超空間航路を見つけだし、惑星の自然をねじ曲げる技術も開発し――人類は宇宙全域へとその生息可能圏を広げていった。
 いくつもの惑星国家が誕生し――暦が新星暦に改められて早半世紀。当然宇宙全域の人口は惑星(ほし)一つに収まっていた頃より遙かに増え――人が増えれば必ず起こるのが争いである。
 惑星国家の独立に伴う母国との諍いなどそれほど珍しくなく、国家間の紛争も標準時間1日に一度はニュースで語られる。
 そんな最中。その戦争は起きた。
 新たな時代に合わせて移されたキリスト教の総本山――惑星ニュー・エルサレム。
 前時代から変わらぬ一神教の代表宗教である彼らが突如――異教徒全てに対して宣戦布告をした。
 他の国家の殆どは、理由も明かさぬまま攻撃をしかけてくる彼らを迎え撃とうとし――自国のキリスト教徒に内側から攻撃され、足並みを乱す。
 こうして――新たな暦になり初めての大規模戦争が、史上最大の宗教戦争として語られることになったのだった。
 この戦いは長引いた。最初にするべき事は当然自軍からのキリスト教徒の排除だったワケだが、その間も当然外からの軍勢は攻め込んでくる。そのためニュー・エルサレムから距離のないいくつもの惑星はあっけなく陥落した。
 キリスト教徒以外の人間は、協力してこれに当たることを全国家間で条約を締結。反撃を開始した。
 初手は取られたが、そもそも物量が違う。この戦いは長引く事はないと考えられていたのだが――それの予想は大きく裏切られた。
 ニュー・エルサレム軍の物量が切れる兆しを見せないのだ。理由は分からなかったが、だからといって悠長に調査している余裕もない。何しろ宇宙空間を、それも超空間航路を利用されているから、調査範囲が膨大になりすぎる。
 さて…戦争が始まり10年が経過した頃、事態はさらなる混沌を見せ始めた。イスラム達が他の宗教と共に戦うことを拒否し始めたのだ。彼らは独立した軍を形成し、かつての盟友も、元からの敵も滅ぼす為に戦いを始める。
 人々はいつ終わるともつかない戦争に、疲弊し続けて行った――
 さて、そんな情勢を背景に――殆どその影響のない辺境である地球圏。そこで、信仰心など欠片も持ち合わせていない気楽な二人の傭兵を舞台の中心に据えて、この物語は幕を開ける。