Crystal Nights Story

第1回              レグス村でのある日の日常

「ファイヤー!」

 ボゥッ、と手からが飛び出した。 は一直線に・・・いや、大きく的を<外れて地面に落ちた。
また失敗してしまった。僕はおそるおそる後ろを振りむく・・・そこには、難しい顔をした僕の先生がいた。

「アルス君、君はどうしてそうなのかね!いつも言っているでしょう?
魔法を使うときは強く念じなさいって!」

 あ〜あ、また先生の小言が始まったよ。これが始まると1時間は終わらないんだよなあ。

「いいかね、アルス君!魔法というものはだね、集中力だよ、集中力!
君の当たれ!という力が足りなりから当たらないんだ!
そんな単純なことが君にはできんと言うのかね!
まあ、単純かつ奥が深いのが魔法の難しいところでもあり、また、素晴らしいところでもあるのだがね。
そもそも魔法というのは・・・」

 次はレグス村名物、ドメイン先生の魔法理論だ。これが11分ほど続く。
 先生によると、魔法というのは人がもともと持っている魔力を「集中力」 とやらで増幅させて放つものらしい。
その「集中力」が強ければ強いほど、その威力は強くなる。それ は黒魔法白魔法も原理は同じらしい。

ただ違うのは、白魔法は相手に対して優しい気持ちにならないと使えないってところかな。
黒魔法はただ「出ろ!」とか「当たれえ!」とか思えばいいんだけどね。

「しかし、最近の若い者には根気というものが足らん!少し厳しい修行をさせると、すぐ逃げ出す!
この私の若い頃といったらもう、毎日が我慢の日々で・・・」


 で、次に始まるのは昔話。はい、はい。先生は1日に100回も魔法を使ったことがあるんでしょ。
でもね、僕はせいぜい20回が限度なの。これは才能の違いなんだからしょうがないでしょ。

「90回を終えたときは、さすがに私も駄目かと思ったものだ。だが、師匠は全く止めさせる気配を見せなかった。
本当にあれは地獄のような毎日で・・・」


 そういえば、先生って確かまだ30過ぎだったはず。だから、昔話っていってもせいぜい10年ちょっと前の話だ。
前に呼んだ本によると、人間、昔話をするようになったらもう年だってさ。

「ドメイン先生。どうでもいいけど、もうすぐ日が暮れますよ。」

「何!アルスよ、どうしてそれを早く言わん!さあ、こうしてはいられない。早く帰るぞ!
我が愛するシェラのスープが冷めてしまう!」


 シェラさんって言うのは先生の奥さんで、2人はまだ新婚ほやほやだったりする。
最近は奥さんの作るかぼちゃスープがお気に入りで、それを思い出すと何があってもすぐに家に帰ってしまうのだった。

「アルス、何をグズグズしているのだ!今日の修行は終わりだ!早く村に帰るぞ!」

「は〜い、先生。」
 そうそう、ここは村外れの空き地だった。黒魔法の実技はいつもここでする。
さて、僕も帰るか。兄さんももう帰ってきているはずだ。



「ただいま〜!」

「おお、アルス、お帰り。いつもどおりの時間だな。」

「そりゃあ、あの先生だもん。

 レグス村の中央広場から、ちょっと西にいったところに僕たちの家はある。ちょっと狭いけど、2人で住むには十分だ。
お父さんとお母さんが死んじゃってからは、兄さんが毎日食料を持ってきてくれる。
兄さんは何でもできる。森で狩りもできるし、剣の腕もこの近くでかなう人はいない。
もちろん、僕にはとっても優しくしてくれる。だから僕は兄さんが大好きだ。

「アルス、今日はこいつだ。」

「わあ、おいしそうな匂い!」

 兄さんは桃ウサギを2匹、火にくべている。兄さんの唯一の弱点っていうか、できないことは魔法だ。
だから火打石でつけている。僕の魔法もたいしたことはできないけど、火をつけるぐらいならできるんだよ。
まぁ、飛ばすのは苦手だけど。

「よし、焼けたぞ。ほらアルス、おまえの分だ。」
 そういって、兄さんは大きいほうを僕に渡した。

「ええ、いいの!大きいほうをもらっちゃって!」

「何言ってんだ、おまえももう15歳だろう。たくさん食って、強くならないとな。
今のままじゃ、いつまでたっても村の外には出られないぞ。」


「大丈夫だよ、兄さん。この当たりは強暴なモンスターも出ないし。」
 実際、村の周辺にはゴブリンすらでない。とても平和だ。

「確かにな。でも、森の奥には行くなよ。どんなモンスターがいるかわからないからな。」

「は〜い、兄さん。わかったから、早く食べようよ。」

「そうだな。よし、食うか。」

「いっただきま〜す!」

 桃ウサギからは香ばしい匂いがして、味もすごくおいしかった。僕は耳も含めて全部食べた。
あ、そうそう。兄さんはこの耳が苦手らしくて、いつも残してるんだ。こんなにおいしいのに、何でだろう。
もったいないので僕がいつも2人分食べるんだ。

 食事の後、僕たちは眠りについた。さあ、明日もがんばるぞ〜〜〜!
(第1回、了)

       

登場人物紹介

アルス(男)
 本編主人公。もうすぐ15歳。レグス村で平和に暮らしている。5年ほど前に、流行り病によって両親を亡くす。
アルスもかかったが、奇跡的に助かった。肉体労働は苦手。黒魔法が使えるが、命中率が悪い。
ドメイン(男)
 レグス村で唯一の黒魔導師(アルスはまだ見習い)。30歳を少し過ぎている。何人かの弟子を取っているが、授業料などは一切ない。
でも実技指導は厳しい。奥さんをとっても愛していて、彼女のためならたとえ火の中、水の中って感じ。
シェラ(女)
 ドメインの奥さん。25歳。とっても気立てがよく、また料理が大得意。昼間は畑で野菜を栽培している。
村の食料はこのおかげでかなり助かっている。
ブラック(男)
 アルスの兄。18歳。鍛えた体のおかげで、生まれてこの方病気にかかったことがない。
村の剣術大会で4年連続優勝している。家族で唯一生き残ったアルスを大事にしている。


・・・ええと、どうでしたでしょうか。とりあえず今回はここまでということで。
ご意見・ご感想をお待ちしております。それではまた次回をお楽しみに!