Crystal Nights Story


 

第4回                 最強の兄


「アルス〜!も、もう僕だめだよ・・・」
「何を言ってるんだよ、だ、大丈夫・・・」 そういう僕の手も震えてる。

目の前にはゴブリンが5〜6体。後ろは壁。右隣にはもう泣きはじめているポール。
僕も泣きたいよ・・・
なんていってられない。ポールの武器は重そうな槍。こんな洞窟で振り回したら、
どこかの壁に当たってしまい、とても扱えそうに無い。
頼りは僕のファイヤーだけだ。なぜか良く当たる。

もう一度・・・・・「ファイヤーーー!!!」
またもや僕の手から真っ赤な炎が・・・・・出ない。アレ?

「アルス〜?どうしたの・・・?」ポール、だめだよ、もう魔力がない・・・
炎を恐がっていたゴブリン、しばらくするとニヤリ。理解したらしい、もう炎は出ないと・・・
ジリジリと近寄ってくる。マズイ。何とかしないと・・・
僕は途方にくれながら、いつしか目を閉じていた。
覚悟していた・・・・・「死」を。


「ビュンッ!!!!」何かの音がした。

「ゴンッ!!!」何かに当たる音がした・・・

「ビュンッ!!」「ゴンッ!!」「ビュンッ!!」「ゴンッ!!」
「ビュンッ!!」「ゴンッ!!」「ビュンッ!!」「ゴンッ!!」


さっきから同じ音が繰り返される・・なんだろう?
「・・・・ポール?何があったの?」
「わかんない、目をつぶっちゃって・・・」ポールも同じか。でも無事だ。良かった。
目を開けてみようかな・・・ゴブリンはどうしたんだろう?何もしてこない・・
「アルス〜〜!!無事か!?」・・・・・あれ?
「兄さん!!来てくれたんだ!!」僕はすぐに分かった。
目を開けてみると、ゴブリンはもう一匹もいない。いや、地面に倒れている。
そばには石ころはいくつかあった。まさかこれで?

「いやぁ、うまく当たってよかった。急いできたから武器が何もなくてな!」
「兄さん・・・どこから投げたの?」
「ん?いや、そこの岩陰から・・・・・」まさか。10メートルは離れてるぞ・・・

「・・・ていうかなぁ、アルス!!お前、なんでここにいるんだ??ぜったい行くなっていっただろう!!」
兄さんはすごく怒ってる、と思う。でも、その表情はすごく穏やかで、安心しているようだ。
「ごめんなさい・・・ほんと、ごめんなさい・・・」
だからこそ、僕も心から謝った。本当に悪いと思った。迷惑をかけた。
「ブラックさん、ごめんなさい、僕が最初に・・・」ポールも本当に悪いと思っている。
「まぁいい。とにかく無事でよかった。はやく帰るぞ!」と、兄さんは先に歩き出した。
そういえば、朝から歩き(走り?)通しなんだよな、兄さんは。
さて、僕も帰るか。僕とポールは兄さんの後を追って歩き出した。




アリーナは、どこか不安を覚えた。今日会ったばかりのブラック。1週間後にまた来るという。
でも、もう会えないような、そんな不安を覚えていた。
「私ったら、何を考えているのかしら。あの人が危険な目に会うわけないのに・・・」
そう言い聞かせても、なぜか不安は消えない。

病気になるのかな・・・それとも、見たこともないようなモンスターに・・・
なぜ?なぜこんなに不安なの?女の勘?でも私は決して鋭い方じゃない。
アリーナは言われようの無い苦しみを覚え、今日は早めに寝ることにした。

明日、早起きして運動でもしよっと。最近は剣の扱いにも慣れてきたし、けっこう上手いかも。
そんなことを思いながら、アリーナは布団に入った。



次回は・・・新年になるかな。それでは。