グライド 「痛え・・」 背中にべったりと張り付く、自分よりも体格の良い体が少し鬱陶しい。 背中から抱かれている格好のためにゾロの右腕はサンジの頭の下に、 左腕は腰の辺りに廻されている。 「くそっ・・やり過ぎなんだよ。3回もしやがって」 サンジはその腕から抜け出しながら1人愚痴る。 腰やら背中やら口に出して言えないような場所やら、とにかく全身が痛い。 ベッドの端に座り、 木の床に足を着けたところで振り返るとゾロは静かに寝息を立てていた。 何だか腹が立った。 この島に着いた時、ゴーイングメリー号航海士のナミは嵐が来ると言った。 その言葉通りにその日の夜、・・昨日の夜は風も雨も激しくなった。 同じように嵐を避けるためにこの島に船を停めるものが多く、 そのため宿と言う宿はほとんど埋まってしまったために、 ゴーイングメリー号の船員は幾つかの宿に別れて泊まることになった。 サンジとゾロが同じ宿になったのは意図的ではない。 ナミとビビは必然的に同じ部屋、カルーは別として男はくじ引きと言う形を取った。 取れた部屋は別々の宿に3つ。 1つ目はシングル、2つ目はツイン、3つ目は今2人が居るダブルの部屋だった。 誰もが狙っていたシングルの部屋はなぜかくじ運のいいウソップ。 2つ目にはルフィとチョッパー。 カルーは部屋の大きさからここに入ることになった。 残ったダブルに、という訳である。 脱ぎ散らかしてある服の中から上着を探し、 ポケットから煙草を取り出しながら下着とズボンを身に付け、 シャツは腕を通し羽織るだけにしてまたベッドに腰掛ける。 ゆらりゆらりと立ち上った煙は、 窓から入ってきた風に流されて部屋の中へと押し戻される。 白々と陽が昇り始めた空はスカイブルー。 秋の中頃に入ったこの時期、開け放たれた窓からは冷たい空気。 今はサンジの目の前、ベッドのすぐ横にある窓からは海が見えた。 昨日の嵐の名残か、まだ波は高い。 短くなった煙草を指で弾き、窓の外に放る。 「火事になったらどうすんだよ」 背中に投げかけられた言葉にサンジは振り返りもせずに答えた。 きっとゾロは、寝ていたときと同じ姿勢のままで、 目だけを開けて話しているんだろうとサンジは想像する。 「昨日雨降ったから大丈夫だろ。下、川だし」 「・・ああ、晴れたな」 「今はな」 ナミ曰く、今は晴れていても海上は荒れている。 それにまだ近くに大きな嵐があり、 しかもこの島に向かっているために今海に出たら間違いなく船は沈む。 そのためしばらくはこの島に停泊して様子を見ることになっていた。 サンジは新しい煙草に火を点け体を後ろに倒し、 寝ているゾロの腹を枕代わりにしてそのまま一服する。 ここは夏島。11月と言っても気温は高く、朝の冷たい空気は肌に心地よい。 煙草を口に挟んだまま、 両腕を体の横にだらりと置いておくとうっかり眠りそうになる。 ゾロはサンジの口に銜えられていた煙草を取り自分の口に持っていく。 「てめえ、人の取るんじゃねえよ」 天井を見つめたまま、 特に体を動かすことも、顔を向けることもしないままでサンジは言う。 ゾロは腹の上にあるサンジの頭に手を置きながら一口だけ煙を吸い込み、 吐き出しながら煙草をサンジの口に戻す。 手は変わらずに頭に置かれているが、サンジはそれを振り払おうとはしなかった。 ゾロが体を起こすと、 サンジの頭は少し下に移動して膝枕をされている状態になった。 ゾロはサンジの銜えていた煙草が短くなったのを見て、 何も言わずにそれを取り窓の外に投げ捨てる。 両腕を一度天井に向けて伸ばし、 それから前方に突き出すようにしてまた伸ばしてから体を支えるために 後ろに突いた。 「何時だっけ?」 「ああ?何が?」 「これからの進路話し合うって、どっか集まるんじゃなかったか?」 「あぁ・・・ああっ!?そうだ!おい、今何時だ!?」 サンジは言うなり体を起こしてゾロに向き合う。 ベッドサイドに置かれている ランプテーブルの上にあった時計にゾロは目をやった。 「・・9時30分」 「なんだ・・、11時にすぐそこのレストランだからまだいいか」 「そうか?」 ゾロはサンジの着ているボタンの留められていないシャツに手を入れる。 するりと肩から外し、首筋に口付けた。 「・・てめえは何やってんだ?」 「ん・・」 ゾロはサンジの腰を引き寄せて、自分の足の上に体を乗せさせる。 見上げるようにして覗き込まれるゾロの、たまにしか見せない柔らかい表情。 キスをされて、それに応えるように首に腕を廻しながらも、 「溜まってんだったら自分で抜け。俺はお前と違って体力バカじゃねえからな、 昨日の今日で体が堪たねえ」 と、唇が触れ合うほどの距離で冷たくあしらう。 背中に這い上がってきていたゾロの手を掴み、外させて、 足の上から降りようとした時、 すかさずにまた腰を抱き留められた。 「嫌だ」 言いながら鎖骨の辺りに鼻を押し付けてくるゾロは子供のようだった。 ベルトのバックルに手をかけられたところで、 サンジはそれを止めるためにゾロの手首を掴んだ。 「おいこら!間に合わなくなるだろうが!」 「んなの行かなくてもいいだろ」 「お前がどうしようと勝手だけどな、 ナミさんに怒られんのは俺も同じなんだっつうの!」 一瞬後、ゾロの手から力が抜け、サンジがそれを離すと腕は背中に廻った。 そのままぎゅうと抱き締められる。 「なあサンジ」 「あ?」 「・・やっぱなんでもねえ」 名残惜しそうに一度だけ肩口に口付けてから体を離したゾロの表情を サンジは窺おうとするが、いつもと変わらずに口元だけで笑う その表情からは何を考えているのかが読み取れない。 「ゾロ?」 「なんでもねえって。シャワー浴びてくるわ」 体を下ろされたサンジは、ベッドから降りたゾロの腕を掴みこっちを向かせる。 「おい」 「・・んだよ」 「んだよじゃねえ。言いたいことがあるんなら言えよ」 「・・・」 腕を掴んでいた手の力を緩め、下ろし、そのままゾロの手指を軽く握りながら、 何も言わずに目線を逸らしたゾロを見てサンジは1つ溜息をつく。 「俺がなんかした?」 「違う」 「じゃあなんだよ」 「・・・」 「おい」 「っつうかさ」 自分の手指にあるサンジの手を力を込めずに握り返すゾロは、 照れくさそうに空いている右手の人差し指で頬を掻く。 「・・誕生日なんだよ、今日、俺の」 「は?」 意外な言葉に思わず上ずった声を上げてしまったサンジは、 恥ずかしそうに顔を逸らしているゾロを見て少し笑う。 「・・そういうことはもっと早く言えっての」 「んな恥ずかしいこと言えっかよ」 「ってか言ってんじゃん」 「るせえな」 「ははっ。・・・あー、じゃあプレゼントやらねえとな」 と言ってサンジはズボンのポケットを探って何かを取りだした。 手の中に収まるその小さな大きさの物をゾロは何かと確かめようとしたが、 すぐにサンジの口の中に消えてしまった。 「ゾロ」 「あん?」 サンジは掴んでいたゾロの手を引いて、 近づいてきた唇に薄く口を開いて噛み付くようにキスをする。 そのまま口に入れたものをゾロの口の中に置いてくる。 「な、んだ?甘え・・」 「プ・レ・ゼ・ン・ト♪」 「・・飴1コかよ」 「んだ足りねえのか?」 サンジはくすくすと笑いながら、また手を引いてキスをする。 後頭に手を添えて体を倒してくるゾロに合わせて、 誘うように首に腕を廻してそのまま後ろに倒れ込むと、 ゾロはサンジの頬に音を立てて口付ける。 耳元にもキスを落とし、 相変わらずくすくすと笑い続けているサンジの耳朶を甘噛みした。 「間に合わなくなるんじゃなかったのか?」 「・・脱がせながら言う?そういうこと」 首元に顔を埋めるゾロの耳の輪郭をなぞりながら、 サンジは思い出したことを言った。 「あー、だからか・・」 「何が?」 「なんかお前さ、昨日もだったけど、さっき、甘えてる感じがしてたんだよ」 「あまっ・・俺がぁ?」 「無意識なんじゃねえの?ヤるのひさしぶりだったし」 「・・まあ、確かにな」 ゾロは顔を上げて、顔を覗き込んでいるサンジにキス。 犬がじゃれ合うようにベッドに転がり笑い合う。 とりあえず今は 何も考えずに 朝っぱらからだけど キスをしよう ――――――――――――――――――――――――― alice1127様、ありがとうございました! くり坊 ← |