| 幸せなクリスマスの過ごし方 |
彩られた街並み。きらめくイルミネーション。 いつもと同じ場所が、この時期はいつもと違った場所になって、 道行く人々はみんないつもよりどこか楽しそうにみえる。 こんな雰囲気、お祭り前みたいな特有の空気。 私はこんな気が大好きで、だからこの時期が大好き。 ここ新宿はいつだって人が溢れ返っているけれど、 今日は特別に多いように見える。 華やかに飾られた駅前で、私は人を待っていた。 人の波はどんどん流れるから、ずっと同じ場所で待っていても飽きることもない。 人間観察もなかなか楽しいな、と再確認してみたりする。 こういう風に時間を潰すのも、案外楽しいものだ。 「そこのお父さん、ケーキ安いよ!」 ふと顔をあげると、向こうの通りで サンタの格好をしたお兄さんがケーキを売っていた。 声をかけられた、会社員風のおじさんが ケーキを見ながらしばらく悩んで、「1つください」と言う。 家で待ってる子供のことを考えたのかもしれない。 だって、渡されたケーキを、すごく嬉しそうに受け取っていたから。 あれは、「お父さん」の顔だった。きっとそう。 (・・・これであのおじさんが一人暮らしだったら・・・ とか考えるのは自主規制) そういうのっていいな〜とか思って笑ってしまう。 うん、いいな、こういうの。 人がみんな幸せそうで、だからそれを見ているだけで 自分も幸せな気分をお裾分けしてもらってるみたい。 まぁ、今日は特別な日だしね。 今日は・・・なんてったってクリスマスだもん。 クリスマスなんて、今まではたいしたイベントでもなかった。 いつも友達とわいわい騒いで過ごしてたし、 誰も捕まらなくて一人寂しくケーキとか食べた時もある。 もちろんそのことを寂しいとか思うことも特に無く。 みんな上手いことやってくれちゃって…とか思いつつ テレビ見て、ほら、私はこんな雰囲気が大好きだから、 一人でだってそれなりに楽しいクリスマスを過ごしてた。 ああ、そういえば去年は大変なことになってたんだっけ。 自分死にかけるとは思わなかったな〜。 あれはびっくり思い出のベスト5に入るね。うん。 でも…去年のこの時はまだこんな気持ちを知らなくて、 彼のことも一緒に戦う仲間としか思ってなくて、 …いや、気づいてなかっただけか。 ま、まぁとにかく。 ―――まさか自分にも世間一般で騒がれているようなクリスマスを 過ごす日がくるなんて思わなかった。 そんなことをぼんやり考えていたら、 交差点の信号で足止めをくらっている待ち人の後姿を見つけた。 なんとなくいたずらしたい気分になって、 ダッシュで駆け寄り後ろから飛びつくと、 彼は予測していなかった衝撃に驚いて振り返った。 「・・・まったく、人違いだったらどうするんだい」 そして首だけ振り返る形の(私が後ろから抱き付いているためだ) 如月翡翠が呆れたように言った。 「私、翡翠のこと見間違えたりしないもん」 くすくす笑いながら私は更に言葉を繋げる。 「でも、間違ってたら私すごく恥ずかしい奴だよね」 「・・・まったくだよ」 呆れ顔だった翡翠が、ふと微笑んだ。 間近でその笑顔を見てしまった私は恥ずかしくなって (だってあの如月翡翠の笑顔だよ?やっぱ・・・照れるよ…) ぱっと飛びのいた。 やっぱ翡翠は綺麗だと思う。 男の人に対して綺麗って言うのもどうかと思うけど、 私なんかより全然綺麗。 腹立つのも通り越して、人に自慢したくなるくらい。 ああ、まいった。 こういう時思い知らされてしまう。 私、この人にべた惚れしてるんだって… って、あぁっ恥ずかしい!! 「龍麻、顔が赤いよ?」 笑顔のままで、翡翠が私の顔を覗き込んでくる。 くぅ…意地悪… きっとこいつはわかってて言ってるんだ。 絶対そうだっ。 ああ、やだやだっ確信犯はこれだから!! でも、そうは思っても顔はものすんごく熱くて、どうしようもなくて… そのまま何も言えなくなって俯いていると、 翡翠がそっと私の手をとった。 「随分…待たせてしまったようだね。すまない…」 そう言いながら、私の手を優しく握る。 確かに、無駄に早く待ち合わせ場所に来てしまったから、 手が冷たくなってたのは認めるけど・・・ 「わわ…翡翠、は、恥ずかしいってばっ!!」 「でも、こんなに手が冷たくなっているよ」 「大丈夫だからっ…」 「手も温まるし、はぐれなくて調度いいと思うけど」 「うー…で、でもっ…」 「僕と手を繋ぐのは嫌かい?」 「・・・っっ!そんなわけな……っ…うぅ〜っっ」 …やられた。 翡翠にはいつもこう上手いこと丸め込まれてしまう気がする。 うーっ、私が馬鹿なの?(泣) これ以上顔が熱くなったら、ほんとに火吹く自信あるよ… た、確かに…暖かいし… …て、手を繋いで歩くってのも…ちょっとやってみたかったことだけど… まだ納得してなさげな私を見るとため息を一つついて、 奴は最語の駄目押しをした。 「さっき公衆の面前で抱きついてきたのは君だろう? それに比べたら手を繋ぐことなんてそんなに恥ずかしいことではないよ」 ……あああっ!!!ああぅあああっ(大混乱) そういやそうだった、私こんな公衆の面前で 如月さんちの翡翠さんに抱きついてみたりしてみちゃったわけで、 あわわわわっ、 「わ、私すでに恥ずかしい奴じゃんっ…(涙)」 大混乱大パニックの私をよそに、翡翠は平然と歩き出した。 ――手は、繋いだままで。 「さぁ、時間がもったいないよ。 せっかくの『クリスマス』を楽しまないとね、龍麻」 …もう、いいや。 そうだよね、今更、だよね。 それに…今日は『クリスマス』、だもんね。 これくらい…普通、だよね…。 私はぎゅっと手を握り返すと、隣を歩く翡翠を見上げた。 「ねぇ、私ね、今までこういうクリスマスの過ごし方したことなかったの」 「ああ、僕もこういう過ごし方は初めてだね」 「ねぇ……こんなクリスマスも楽しいね」 「ああ……こんなクリスマスもいいものだね」 そう言って二人で笑った。 もう恥ずかしいって気持ちはなくなっていて、 その代わり、なんとも言いがたい気持ちが胸に溢れていた。 ・・・繋いだ手の温もりを感じながら、幸せだなぁって思う。 隣には愛しい人。 私は、くすっと笑って、翡翠に話し掛けた。 「あのね、今日は、今までのクリスマスの中で一番楽しい日になりそうだよ」 |
★スノー様、ありがとうございました! くり坊 ← |