真夜中に響く歓喜の声

好きなのかどうかわからないままこうして彼女を抱くのは何回目であろうか
最初はわずかばかりの罪の意識からその数を記憶していたが
その行為自体が彼女をより穢すように感じられ数えるのをやめた
それから何日も夜を共にしたのだけは確かだ

「‥‥っ‥んっ‥‥ダメッ‥‥っっ」
出会った頃からまるでそれが当たり前のように
毎日僕の部屋を訪れていた龍麻とこういった関係になったのは、
戦いの終幕がおりてすぐ

「‥くれ‥っ‥そんな‥あっ‥やあっ‥ああっ!」
舌で首筋をなぞりながら撫であげていた房の先端を指の腹でこねあげると
甘い吐息は大きな喘ぎ声に変わりさらに追い立てるように
その固く尖った先端を口に含み甘噛みし舌で転がすように舐めあげると
声は更に大きくなっていった


『‥‥!?ダメ!!‥‥紅葉‥っ‥やああっ!!』


はじめて交わった日の欲情が今またこうして蘇る
少し乱暴に房を揺らしながら舌を下の方へ‥‥茂みの中へと移動させる

「‥‥ん‥あ、あああっっ」
皮で覆われた敏感な部分を舌で探りあて龍麻のいいように刺激すると
腰がビクンと大きく揺れ、歓びの声をあがった
揺れる腰を押し付けそこにわざと音をたてながら喰らいつくと
喘ぎ声はより一層艶を帯びたものになっていく‥‥‥

はじめての情交の時から変わらず、
することに逆らうことなく受け入れてくれる龍麻に壬生の心がチリリと痛む

『好きではない』

そう思える、そう言える
そんな相手に何故自分は交わろうとするのか?

あの時、訳もわからず身体が暴走し、部屋に訪れた彼女に乱暴をはたらいた
にもかかわらず、次の日もそのまた次の日も‥‥
それまでと変わらず龍麻はこの部屋にやってきた
変わったのは時間の使い方だけ
‥‥こうして交わる時間が生じたことぐらい


「‥‥くれ‥は‥‥っ‥?」
熱を帯び怒張する一物に避妊具を施し
龍麻の下腹部にあてがい一気に押し入った
「‥っん‥あ、やああっっ」
背をそらせ大きな異物の侵入に
神経をすべて奪われたかのように反応する姿は
幾度見てもゾクゾクする
「‥‥動くよ」
それは相手への承諾ではなくただの合図

ゆっくり引き抜き一気に押し込む
「‥‥あっ‥あ、‥んっ‥ひゃぁっ‥!!」
龍麻の声は次第に大きくなり、膣にこもる熱もまた‥‥
一物を溶かそうかという程熱いそこを何度も往復し内壁を擦っているうちに
舌で刺激していた時の比ではない量の蜜が奥から溢れ出て
交わりをよりスムーズなものにした
高まっていく快楽にまかせ打ちつけるスピードを速めていくと
それに応えるかののように膣も収縮していく
それは龍麻もまた頂きに昇りつめようとしていくことをそれは知らせてくれた
「‥あ‥っ‥ダメ‥ッ‥はげ、しくし‥ちゃ‥っっ」
「‥‥っ‥いくよ‥」
「んっ‥‥わ‥たしも‥もうダ‥メ‥‥っん‥や‥あああっっ!!」
「‥‥っ」


そして二人の荒い息づかいの音だけがしばらくその部屋を占領する


−−−−それが今の常−−−−






「へぇ‥‥」
電車の始発を待つ間、
龍麻はたいてい部屋にある本や雑誌やらを手にと無言で眺めていた
そんな彼女が喋ったとは言いがたいが‥とにかく珍しく口を開いたのだ
「‥どうかしたのかい?」
気にするなという方が無理であるこの状態で、
なるべく無関心を装い用意したコーヒーを差し出しながら聞いてみた
差し出されたカップを受け取り一口、くちをつけるとそれをテーブルの上に置き
雑誌のある記事を指差し面白そうに喋りはじめた

「ん、あのね『光』っていろんな色を混ぜ合わせていくと、白に近付くんだって。
絵の具だとどんどん黒くなっていくのに、反対なんだな〜ってね」
「‥‥そう」
そこに何を見い出しこうも微笑んでいられるのかわからなかった


‥‥光り?‥‥‥−−白‥‥‥
「君のようだね」
自然とこぼれた言葉に龍麻が少し首を傾けながら聞き返してきた
「私?」

そう−−何も知らな無垢な白ではなく全てを受け入れ強く輝く白い光り
あの『戦い』が君を大きくさせた
それは皆が認めることーーーーだがーー‥‥

“人”が持つには強すぎる輝きだ

不安が壬生の襲う
龍麻の服を引き破り肌を貪った時に彼を支配したのと同じ不安が‥‥

黙して動かない壬生に気づいているのか、龍麻は小さく一言呟いた
「紅葉は綺麗な黒だよね」
「‥‥‥?」
綺麗な黒?どす黒いの間違いではないだろうか
‥‥‥どちらにしても龍麻は僕を黒と言い表わした
白とは対極の‥‥黒と

好かれているのか嫌われているのか今までわからなかったがこれで結論が出た
僕は彼女にきら‥‥‥

「綺麗な漆黒。この世の全てを包みこんだ、そう、宝石みたいだよね」
思考を遮ったのは龍麻の嬉しそうな表情と声

意味がわからない−−リカイフノウ−−

「楽しいことも苦しいことも、あったこと全て受け止めて‥
ここで混じり合ってぎゅっとッ閉じ込められてるから‥‥
だから誰よりも心が輝いてるんだよ、紅葉は」
僕の胸の辺りを指さし綺麗に笑う姿が、何故か滲んで霞んで見えた
「‥“人”の規格から外れた私に気づいたのはだからなのかな?
この世に引き止めてくれた紅葉に感謝♪」
そう言って龍麻がくれたのは涙をぬぐうようにそっと触れるだけのキス
はじめての、彼女からされる優しいキス

‥‥−−ああ、そうか‥‥
大きい‥ともすれば押しつぶされそうな程大きな不安の正体
“光”を有した人間の不安定さ
崩れいくその身体を引き止めるために差し出したのは

自分の心と身体

対であるからこそできたのであろうが‥‥

糸口がみつかると『答え』の道筋は簡単に見つかった
何故、こうも彼女に固執していたのか‥‥

「僕は‥君を好きではない」
「‥‥そう」
寂しそうに微笑むその身体を抱え、あの部屋に向う
彼女が生きていることを感じれるように‥

「‥‥私は好き。私の持っていないものを持ってる紅葉が好きだよ」
はじめて会った時から惹かれていた笑って告げるその口を塞ぎ、もう一度告げる

「君を『好き』ではない」
白いシーツの海にそっと下ろし服をたくしあげ直にその肌に触れ思いを浸透させる
彼女の芯に届くようにと

『好き』なんかで片付けられるものではない
龍麻を失ったとき、自分は狂ってしまうであろう程強い思いをどう伝えよう
どう告げよう

「‥龍麻‥‥君を−−−−」



そして部屋はまた荒い息使いで占領される

真昼の歓喜の声が響きわたる‥‥






(終)







もそ様、ありがとうございました! くり坊