薔薇十字団

Brotherhood of Rosy Cross



= 薔薇十字団 =


 クリスチャン・ローゼンクロイツ(以下CRCと略)を創始者とするドイツの秘密結社。

 CRCは、1378年から1485年にかけて生きたと伝えられるが、本当に実在したのかは 謎とされている伝説中の人物である。

 CRCが、中東よりもち帰った秘教的知識を分かちあうにたる8名の同志と結社を組んだ目的は、 秩序と博愛の理念のもとに、秘教的知識を善用して社会改革をおこない、万民を幸福にするため であった。その存在を見事なまでに隠蔽していた、本当の意味での「秘密結社」だったため、 活動の具体的内容はわからない。が、CRCをのぞいた弟子たちが各地を放浪したとされている ので、団の規約にあるとおり、重病人の無料治療を通じて人々に博愛の精神を教え、ひそかに 賛同者を募っていたのではないかと思われる。また、CRCの没後は、残された秘教知識を 継承することも、重要な役目となったにちがいない。

 完全にアンダーグラウンドな存在であった薔薇十字団の名が人々に知られたのは1614年と 1615年に匿名の著者が書いた「一般的改革」「同志的薔薇十字団の伝説」「団体の告白」という 3冊の書物が公表されたときのことだった(著者の正体は、団員で神学者のJ・V・アンドレーエ だったといわれている)。この古代からの魔術的英知を伝えるとまことしやかに噂された団体は 一躍評判をよび、各国の知識人たちは接触をもとうと躍起になった。ロバート・フラッド、 シェイクスピアなどが、この時期に団員になった、といわれている。

 匿名性を重視した薔薇十字団の実体は、現代にいたるまでわかっていない。だが、その伝統を 受け継いでいる、とする結社は数多く、フリーメーソンは現実にその影響を色濃く受けた。 また高名な魔術結社である黄金の夜明け団も、魔法技術の起源を薔薇十字団に求めた。





= Christian.Rosencroitz =
クリスチャン・ローゼンクロイツ



 伝説的秘密結社、薔薇十字団の創立者として知られる、謎めいたドイツ人。14〜15世紀に かけて生存したという説をはじめとして、その生存時期については諸説がある。また、後世の 人間が薔薇十字団の理想を体現する理想的人物として創作した、とする意見も根強い。実在した 確証があるわけではなく、17世紀に匿名で出版され、ローゼンクロイツの名をヨーロッパの 知識階級に知らしめた「同志的薔薇十字団の伝説」という薔薇十字団の起源を説明した書物が、 そのまま彼の生涯についての最大の資料となっている。

 この「同志的薔薇十字団の伝説」によれば、クリスチャン・ローゼンクロイツ(以下、魔術師の 慣例にしたがってCRCと略す)は、ドイツに生を受け、修道院で育った。CRCは、16歳のときに 聖地巡礼を志し、中東に旅立ったが、不幸にも病に倒れ、念願を果たすことはできなかった。

だがそのかわりに、彼は古代からの膨大な知識を受け継ぐ賢者たちに出会い、その知識と 「Mの書」という秘教的書物を授けられた。

 ドイツに戻ったCRCは、獲得した知識を現実世界の改善に生かすべく努力したが人々に 受け入れられなかった。そこでCRCは、「聖霊の家」という建造物を建て、ごく少数の弟子と ともに魔術の研究に専念した。

 時が流れ、彼の存在を知った弟子が1人、また1人と集まり、最終的に弟子が8人になったとき、 CRCは薔薇十字団を興し、会議のすえに以下のような規律を定めた。
・我々は無償で病人を治療することを活動の目的とする。

・我々は特別な服を身に着けない。

・我々は毎年、「聖霊の家」で会合を開く。

・団員は、死ぬまでに自分の後継者を選んでおかなければならない。

・「RC」の文字が、我々をあらわす唯一の記号である。

・今後100年のあいだ、薔薇十字団の存在を秘密とする。

 弟子たちはこの掟にしたがって諸方に散り、貧困にあえぐ病人を無償で治療した。一方CRCは 「聖霊の家」にとどまってさらなる魔術研究に励んだという。彼らの意図したごとく、CRCの 存命中は薔薇十字団存在は公からは完全に隠し通された。

 そして120年後、団員の1人が偶然その部屋の隠し扉を見つけることになる。扉には 「120年後にあらわれるであろう」と記されていた。勇気を奮って部屋に足を踏み入れた団員を 待っていたのは、腐敗もミイラ化もせず、眠るように横たわっているCRCの遺体と、超越的な 技術が駆使された数々の副葬品(永遠に光るランプや歌う機械など)だったという。

 CRCはカバラ、錬金術、スーフィズム、エジプトの魔術、占星術といった東方の知識に加え、 最先端の西洋哲学・魔術をも修め、それらの融合に成功した人物だったとされる。フリーメー ソン、黄金の夜明け団といった秘教的秘密結社のすべてに影響を与えた薔薇十字団の秘技・ 秘伝は、すべて彼のもたらしたものであった。その思想・研究は、結社の活動を通じて、後世の 魔術界のみならず、政治・思想の世界にまで、幅広く影響をおよぼした。伝説の名に恥じぬ、 たんなる魔術師という枠をはみだした達人であったといえる。


参考文献  「魔法事典」  新紀元社