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 農地をぐるりと回って、鬱蒼とした木々の間を抜ける。表の道からかなり奥まった処に、黒い扉があった。
 森の中―――その場所のみ奇妙な違和感。
 扉には目の高さに鋼のプレートが打ち付けてあり、それにはこう書かれていた。



      『漆黒堂』



 ドアノブに手を掛けると、ひやりとした質感が掌に伝わって来た。力を入れて回す。
 蝶番の錆付いた音を予想したが、それに反し扉は滑る様に開く。

 一瞬息を呑んだ。
 中は一面の闇。床と壁、天井の境目さえ見えない。
 かろうじて足元に差し込んでいた外光が、すうと細くなって消える。扉が閉じたのだろう。矢張り音はしなかった。

 後には上下の感覚すら失いそうな空間が広がるのみ。

―――否。

 外光が失せて、初めて気づく。
 茫漠と広がる闇、その一面に―――数多の剣が浮いている。

 否、剣だけではない。槍、斧、鎌。およそあらゆる武具という武具があるものは手の届きそうなところに、あるものはかなり離れたところに迄静止していた。
 釣るものなど見えないのに、全て武具達は闇に身を横たえたまま。ひたり、と眠ったように空中で微動だにしない。
 明かりも無い筈であるのに、何故か一つ一つの刃の打紋までが明瞭に見て取れる。

 半ば圧倒されながら、それぞれの武器に目を走らせる。
 数と種類に眩暈がしそうだったが、やがてやや離れたところにある一振りの大剣に目を止めた。

 取ろうとして手を伸ばしかけ、そう云えばと先にこの『店』の人間は、ということに思い至る。

 辺りを見回そうとした時に、声が掛かった。

「残念。黙って持っていく奴なら面白い経験が出来たと思うが」

 振り向くと、何時の間にか。
 更なる奥の闇にカウンターがあった。その奥で、若い男が椅子の上に鷹揚な態度で腰を掛けている。
 男は口の端に薄い笑みを浮かべて居る。残念、と言いつつまるでそう言う気配は無い。
 記憶を遡っても覚えは無いのだが、カウンターも男も最初から当然の如く其処に居た様な風だった。

「ま、一度きりで済むがね。・・・その剣がいいか?」

 そうだ、と応える前に反応があった。
 例の剣が、くるりと宙で向きを変える。そのまま目の前まで滑るように動くと又静止した。
 驚きつつも手を伸ばし、柄を握る。
 と、急に糸が切れたように、鋼の重みがずしりと手に掛かった。
 どうやら店主の魔力で操って居るのだろう・・・とするとこれで契約完了といったところか。


 代金はそこに置いていけ、と店主は顎でカウンターの上を示す。
 そしてそれ以上客に対する興味を失ったらしく、椅子に座りなおすと一つ欠伸をした。



 結構な額の対価を支払った後。闇の中にこれまた浮いて居るような黒い扉に手を掛ける。
 ふと好奇心から背後に向かって尋ねた。

「黙って持っていったら、どうなる?」


 ―――瞬間。激しい音。

 浮いていた武具の幾つかが、足元に突き立っていた。
 一つは・・・靴の爪先との間僅かの隙間も無く。

 店主は微動だにした気配は無い。
 ただ、僅かに皮肉な笑みを浮かべて椅子に腰掛けたままだった。
  a to ga ki by ryusera
■〆(’’(おわってみる。(ぁ■