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- 業火と闇と黒い剣 -
静かな、夜の音。

見上げれば、銀色に浮かぶ円形の月。

そこには不釣合いな禍々しい城が浮かんでいた。



「ったく、こんな月夜だってのに。」



月下の下、静かに刃を引き出す。

周囲には、亡者の影。

「隠れてないで出てくればどうだ?」

いやに、皮肉を込めて言う。



瞬時に飛び出してくる亡者ども。

それを、俺は切り払い、そして貫く。

恍惚とする戦闘とは異なって、ただの骸を切り裂くだけの行為。

「・・・っち!」

一瞬、判断のスキが生まれる。

単純に切り裂くだけの行為に生まれる隙間。

瞬時に剣を召還して、その亡者に向けて飛ばす。

その繰り返し。

夜という闇は、亡者を延々と現の世界に呼び戻し、俺はそれらをただ、無言で切り裂く。







―――しかし、

   その姿は見られたい、と思うものではない。






「・・・想・・・・!」

一瞬、判断が鈍る。

けれど、この声はリュセラの声。

亡者もそれに反応し、ひとつがリュセラの背後から剣を振りかぶる。





―――スイッチが、アタマの中で、

   静かに、ただ、カチリ、と入る。




そこからは、更に圧倒的になった。

リュセラまでの目算、20mの距離を一瞬で埋め、その亡者の首を掴み上げる。

ただ、冷たく、

「・・・・お前、誰に手出した?」

とだけ、呪詛のように呟いて、その頭部を一気に握りつぶす。



「さぁ、リュセラ、ここはリュセラの居ていいところじゃない。

 こういう・・・荒事はな、俺の範疇だ。」

会話すら出来ないほどに襲い掛かる亡者。

ただ、一つ、俺には枷があった。







   破壊の、あの状態には、絶対にリュセラの前ではならない、という誓い。






多分、それは他人からすれば、酷く無意味で。

それを守る俺は滑稽なのだろう。

けれども、俺はそれを守り続ける。

そのために、リュセラの退路をインフェルノで空けて、

「さぁ、早く!」

とだけ促した。



けれど、リュセラの声は・・・・・



「いやです・・・・。」

静かに、肩を震わせながら、リュセラは俺に告げた。

「・・・どうしてだ?こういうことは、俺に任せればいい。リュセラには・・・」

「いやなんです!」

言いながら、俺の背中につくリュセラ。

「・・・どうしても・・・なのか?」

自分の禁を守るためだけに、俺は静かに、不思議なほど穏やかに聞いた。

「はい。」

その答えに、真っ直ぐに応えるリュセラ。





 ―――多分、俺にはそれだけで嬉しかったのだろう。





「そう・・・か。」

俺は一気に踏み出す。亡者に向かって、矢のように。

楽に勝てると思った。

所詮は亡者で、俺には、能力を解放するまでもない相手だと。



「では、私も行きます。想。」

静かに、剣を握り締め、亡者を貫くリュセラ。

しかし、それだけで終わらない日は、まだ、続く。

















―――もうどれくらい、刃を振りかざした。

―――もう、どれほどの亡者を葬った?





まだ、空に浮かぶのは月。

しかも、満月。

狂気、というものは、どうやら、満月がお好みらしい。





「くっ・・・!」

リュセラの剣が弾かれる。

それもそうだろう。

日ごろを考えれば、無理もない数。

「いくぜ・・・!」

一気にインフェルノを振りかざし、5体の亡者を狩る、俺。





「ククク・・・。」

チッ・・・と舌打ちするヒマさえも与えず、一気に真っ青な剣気が俺を掠める。

「想?」

気づけばリュセラのほうにいた亡者は引いていて、どうやら、目的は俺のほうらしい、

と嫌でも気づく状況だった。





「そう・・・か。お前も亡者なのか。」

つい、先だっての冥界で、俺が貫いた男が、そこには居た。





容赦のない剣戟が飛ぶ。

それは一撃、そしてまた次の一撃がおそらくは即死に繋がるであろう剣戟。

俺はその一撃一撃を避け、男に叫ぶ。

「お前!この前のケリのつもりか・・・!」

その俺の問いに、

「―――――!」

ただ、叫び声だけで、返答する剣士。

「・・・・ッチ!」

避けているだけで、他の亡者はどんどん出現する。

「面倒だ。開け・・・!」

一気にリュセラまで下がって抱き寄せると、俺の周囲、全てを埋め尽くすほどの刃を出す。

「・・・喰らい、そして塵とせよ。我が刃たち・・・!」

瞬時に亡者を喰らう刃。

しかし、剣士に向かった剣はその鋼のような体の前に脆くも崩れた。

「・・・なんつー身体してんだ?」

横柄な態度で前に出る。

リュセラは未だ動かない。

どうやら動けないのかもしれない。

これだけの殺気の数。特に過敏な精霊種だ。

動けなくなったのかもしれない。

「―――――――!!!」

既に人の解る言葉を忘れた剣士が突っ込んでくる。

「常人離れも、ここまで来ると傑作だ・・・!」

瞬時にインフェルノを最大値に近いほどにまで純度を上げ、その刃に向かう。



  『ガァァァァン!』



魔力同士の激しいぶつかり合い。

「―――――!!!!!!」

「はぁぁぁぁ!!!!」

剣士と戦士の二人の剣戟は未だ終わらない。





それは、静かに「開く」前触れのようだった。





「――――!!!!」

咆哮と叫びが木霊する。

「はぁぁぁぁぁぁ!」

そして、烈風と、凍てつくような風が周囲を交互に包み込む。

「お前!まだ終わらないのか!」

過去に戦った青い剣士の姿ではない。

全てが狂ってしまった、バーサーカーのようで。

「―――――――!!!!」

ただ、叫び、剣を振りかざしてくる。

「ッチ。」

一瞬、剣が俺のジャケットを掠めた。

「まだだ!」

一気にインフェルノを突きこむ。

その体に刺さることはなく、こちらも掠めるだけ。





それが何度続いただろう。





クスクス、という、女特有の笑いが、その戦闘轟音の中、木霊した。

















「――――――!!!!」

振り下ろされた刃の向こう側。

黒いエナメルのスーツによく似た風の女が軽く立っていた。

「・・・・お前は?」

睨みながら言う。

「名乗れと?貴様。すぐに死ぬのだから、名乗る必要もあるまい。」

冷淡に言う女。

見れば、その目は鋭く、隻眼。

「・・・・そういうことか。ったく、あのジジィ。」

ひとりごとのように呟く。





―――後ろにはリュセラ。

   退くつもりなど・・・・・・皆無。





「リュセラ。本当の、俺の力だ。それ以上は君が判断してくれ。」

出来る限り優しく、少しの微笑みを浮かべていった。

「遺言か?その女も・・・」

「黙れ。」

瞬時に周囲の空間が溶解する。

いや、溶解している、と錯覚するほどの殺意。

「おい。覚悟いいか?今度はその魂ごと、全て燃やし、消し去る。」

蒼の騎士は躊躇わず、一気に突っ込んでくる。

「は!遅い。」

瞬間、炎が巻き上がったかと思うと、蒼の騎士は消え去った。

そこに浮かび上がるのは、金色の髪と頬に竜の印をした男。

「ぉい。そこの女。」

隻眼が歓喜の表情を浮かべる。

「何だ?」

見上げる男の視線は殺意そのもので。





「もう一度、名乗るチャンスをくれてやる。」





そう、虚空に響かせた。















「名乗るチャンスをもう一度くれてやる。」

俺が、冷酷に告げると、女は、それを鼻で嘲笑い、

「私か?私は・・・レジーナ・・・。」

刹那、俺を囲むように全ての包囲から鎖が襲い掛かる。

「っち・・・。ざけんな!」

剣を地面に突き刺し、一瞬で型を形成、そのまま爆風を上げ、

その鎖全てを払う。

「くす。」

その瞬間、背後に女の吐息が当たる。

「ンだと・・・。」

どうやら、閃光が上がった瞬間らしい。

いや、その知覚できない早さは・・・・。

と考える間もなく、一気に飛びのく。



―――ビシッ!



その俺が居た場所には鞭がたたきつけられ、その鞭の当たった跡は、

大きな何かで削り取られたような、恐ろしい傷跡があった。















鞭を持って、女はクス、とだけ笑う。

嘲い。

見下した笑い。



―――ウットウシイ。



そして、その姿を捉えられない俺。



―――ジャマクサイ。



その俺の急所が開くのをただ、待ち構える女。



――ーココデ、止マルツモリナド、ナイ!



一気に空気が一変する。

おそらくは、地獄がこの世界にあれば、こういう状態だろう。

真っ赤に、そして、黒い炎が巻き上がり、姿を覆う。



「ほぉ・・・。」



女は歓喜の表情を浮かべる。

その余裕など、ありはしないというのに。









・・・・・

羽がちくり、と傷む。

見れば意識していないのに羽は開き、その翼の先の焔が光っている。

そして、熱い。

ただ、温度が上がっていく感覚。

風の精霊でも、その温度には、少し眩暈を覚えた。

・・・・・







「さて、二度目。」

刹那、ともつかない間に俺は一気に間合いを詰める。

それを読んでいたかのように、合わせてよける女。

俺はその眼帯を・・・・。













「ふっ・・・!」

俺はその女の眼帯を握って手繰り寄せる。

「貴様・・・!」

咄嗟に叫んだ女の片目は何もなく、ただ、闇が渦巻いていた。



――ほう。虚無か。面白い。



昂ぶりが更に加速する。

「面白い。それでこそ・・・この力を試すことが出来る。」

瞬間、さっきの突進よりも早く、一気に間合いが詰まる。

「クス。」

笑った、瞬間の声は鈍い音で消える。

その刹那、女の体からは無数の剣が生えていた。

いや、実際、体内から「生えている」状態だ。

「ふん。」

くだらなさげに俺は跪いた女を見下す。

「お前では、ここまでだ。お前の主を言え。」

静かに、殺意と止めの気迫を持ってそう告げた。















「ふぅ・・・・甘く見られたものだ。私も。」

女の笑みは耐えない。

そのはず、流れ出すはずの血液は結束していて、体から無数に触手が生えたよう。

触手たちは陣を描く。



 ―――それは、今までに見たことが無いくらい、憎悪の篭ったものだった。



「それで?」

その陣に対抗すべく、こちらも陣を描く。

シンプルなそれは、空間を歪ませる陣。

途端、飛んできた触手は、俺の前で停止する。

そのはず、全て飲み込まれているのだから。

「な・・・んだと。」

初めて、その女は隻眼に恐怖を浮かべた。

いや、本人にその認識はないのかもしれない。

けれど、俺は、既に二個目の陣を踏み、形成も完了していた。



―――残すはただ一言。



「やれ。」

シンプルな二文字。

それで、俺の陣から大量に湧き出した剣たちは女の体を、

今度は容赦なく、打ち抜いた。









***********************************









・・・・静かに、向かい合う。

多分、俺には少しの後悔があった。

今、髪の色も元に戻っているし、それはいつもとは変わらない。

けれど、纏う、その殺気だけは、かき消せるものではなかった。

「・・・大丈夫・・・か?」

放心した状態の彼女に呟く。

「・・・・・」

彼女は何も応えない。下を向いたまま。

―――あぁ、そういえば、羽、綺麗だな。

澱みない思考がそう感じる。

彼女の翼は透明で、自分のせいでその翼に少しの焔が走ったのが憎い。

「それじゃ、アレの所為ではないようだから、乗り込むな。」

そう言って俺は、静かに彼女に背を向ける。





「待って・・・ください。」

風に乗って、耳に響いた言葉はそういう音だっただろうか・・・・。





何故だろう。

凄く、静かに沈む言葉。

「・・・あぁ、約束したよ・・・な。」

遠い、多分、過ぎた記憶の中から手繰り寄せた言葉。

「だから、今回は私も・・・。」

そう呟いたリュセラの手には剣が。

その目には決意が。

その左手には、あの日の約束があった。







「わかった。では、行こうか。」

そう、俺は言って、冥界の城門を潜り抜けた。







進んだ先は、その実、地獄のようだった。

亡者朽ち果て、そのまままた別の亡者は生まれる。

見ているだけで吐き気のする光景だった。

「大丈夫・・・なわけないか?」

静かにリュセラに振り返る。

けれど、その眼はただただ、真摯に真っ直ぐで、

「えぇ。大丈夫です。」

という返事が俺の耳に響いた。







其処に、大きな真紅の扉があった。

そして、俺たちを迎えるようにして、その扉が重い音をあげた。







扉が開く。

蜃気楼のように部屋が霞む。

いや、温度差はそれほどあるのだろう。







そして、佇むは金色の暴君。

 黒の鎧を纏い

 真紅の宝石の瞳を称える暴君が告げる。







「ようこそ。狂乱の間へ。」

その優雅さに、妙に苛立つ。

「リュセラ、手、出すな。」

刹那、一気に間合いをつめて、剣を振り下ろす。

手加減はない。





「・・・!」

「フン。」

いとも簡単に捌かれる剣。

余裕の表情の暴君と、俺は対峙し、そして言葉が通う。





「お前・・・誰だ?」

俺が告げると、

「クリスだ。それ以上の名前もない。ここに在る、それが俺の存在。」

真紅の瞳はそう応えた。

「そう、君は、俺と同じ。」

刹那、3方向から襲い掛かる暴君の刃。

俺はそれを二回、インフェルノで弾き、一個は剣を呼び、そしてしのぐ。



「ふざけんな・・・。」

再度、今度は剣を5本呼び出し、襲い掛かると同時に俺自身も間合いをつめる。

けれど、先ほどの繰り返し。





「・・・だから、同じ故に、未完成の君とは違う。」

そう、男は告げた。













「未完成とは違う。」

その刹那、俺が斬りかかった。

両手から、刃を出し、獰猛な獣のように襲い掛かる。



―――理性などない。



ただ、この目の前の男に憎悪した。

「・・・るせぇんだよ!」

剣戟を弾かれ、その刹那、相手に向かって膝を入れ、そのまま蹴飛ばす。

しかし、すぐさま、男は戻って俺に対して剣を振るう。

「君では、勝てない。」

俺の視界の外からの、大振りの攻撃・・・!

「・・・んだとっ?!」

俺もフットワークのみで避けた。

見れば距離は一足以上の距離。

「・・・ッチ。殺すつもりなら出来るってか?ぁ?」

苛立ちをぶつけるように睨む。



そして、次の瞬間、俺の竜の烙印が、黒い光りを浮かべた・・・。

















「そんな無駄な力の使い方を・・・。」

その声が後ろから、不意に届く。

―――繰り出される斬戟は鋭く。

防ぐ間もなく、俺の右腕の手甲の縁を抉り取る。

「・・・ッチ・・・!」

更に後退することになる。俺。

「想・・・・!」

後ろでリュセラの叫ぶ声が聞こえる。





「―――そうだ・・・な。無様なのは似合わん。が、足掻くのは嫌いじゃネェな。」

妙な気迫は消え、そして、俺は皮肉めいた笑いを浮かべた。





















―――何度の剣戟を放った?







    さぁな。そんなもの、回数じゃねぇ。







―――何度の剣戟をその身に受けた?











     知るか。まだ動けて、奴を斬ることが出来れば、それだけで。











―――何度、その存在をわずらわしく感じた?

















   さぁな。今はそんなことはどうでもいい。















「いくぜ。」

ポツリ、と呟いた一言の後、炎は巻き上がる。

そこに現れたのは、金色の髪と紅蓮のスーツを纏った悪魔のような存在。

「ほぉ・・・。」

クリスは初めて焦りと興奮の入り混じった声を上げた。

「さて、第二ラウンドだ。今度はタダじゃ済まさネェ。」

紅蓮を纏った暴君は、その剣という名の死神の鎌を、悠然と構えた。



















「へぇ。それじゃ、楽しませてもらおうか。俺も。」

クリスは、瞬時に剣を抜く。

それは今まで見たこともない、純粋な黒の剣。

「は!ようやく出したか。」

接近して、インフェルノを打ち出し、そして弾きあう。

さながら、剣戟は早く、そして軌道は光の型をだけ残し、その場所に剣はない。

「くっ・・・。」

おそらく初めてだろう。クリスと言う男が、この表情をしたのは。

けれど、そこで止まらない。





―――止まってるわけにはいかないんでな。





無慈悲に加速する。

剣戟は、袈裟を浅く切り裂き、そして、再度二人は対峙した。





恐らくは、ここが最後の攻撃。





「さぁ、次は、俺の最高の一撃だ。君はさっきのアレかい?」

「そうだナ。これだけで、この一振りだけで十分だ。」





お互いの構えは一足で事足りる10m。

そして、同時に崩れて行く、冥府の城。



「想!城が。ここがっ!」

思わずリュセラが叫ぶ。

「あぁ、そう。親衛隊も不甲斐無い。僕らの決着もここで終わる。だから、慌てなくていいよ。・・・そして、君も冥界に引きずり込んであげるから。」

クリスがおかしそうに言う。









―――何かが焼ききれる音がした。











  ―――そんなマネさせるとでも思ったか?













クリスですら、怖気を表面に出すほどの殺気。











「いいだろう。この城もろとも、テメェを貫いてやる。」











魔力を流したインフェルノは普段よりも大きい。

そして禍々しい魔力を放ちながら、その剣に向かって、暴力的な熱が集まり始めた。

















「やってみろ・・・。俺を斃して・・・な。」

クリスは俺のインフェルノの構えと同じ、弓を射るような構えをする。

熱風を瓦礫が舞い散る部屋。

「想・・・。」

後ろで、リュセラが呟く声が聞こえる。

「・・・・・いくぜ!」

一気に巻き上がる紅蓮と魔力の渦。

その黒い波動は、クリスから発せられたものだけではない。

俺のインフェルノからも、凶悪なまでの波動が生まれていた。

「・・・デス。」

クリスがそう呟くと、真っ黒な刀身から、悪夢のような怨念が発せられる。

「へっ。冥界の直結のエナジィか。」

「その通り。」

対抗するように、

「・・・インフェルノ。」

炎と魔力が暴発しそうになる感覚。





―――いくぜ・・・。





どちらが先、なんてのはない。

同時に二人は間合いを詰める。

「このデス。貫けないものなど・・・!」

「ぐっ。」

明らかに押される俺。

「想・・・!」

リュセラはこちらを呼ぶが、動けないほどの魔力。

「・・・・ぐあっ・・・!」

とうとう、デスの魔力が俺の腹部に刺さる。



―――けれど。それが狙いだったのは、誰が予想できただろう。



「へ・・・。確実に当てるには、こういうことだってするぜ?」

先ほど、右腕から、繰り出されたインフェルノ。

未だ、その右手にはそれがある。



「ごぼぉ・・・。」



クリスの身体を貫く、真紅の刃。

左腕にもインフェルノ。

その刀身は、右腕のそれよりも巨大だった。



「だから・・・切り札は確実に・・・極めるために・・・隠すんだぜ・・・。」

そう俺は告げて、ニヤリ、と嘲った。

















―――意識が薄れる。





   それはそうだ。





   腹部に剣が刺さったのだから。

















「ほほほ。貴様の意思はその程度か?」

いつかの、俺を戻した老人が俺を嘲笑った。

「けっ・・・。まだやることがあるだろう、ってか?ジジィ。」

老人は、ニヤリ、と笑って、

「あの女子はいい。・・・ワシの・・・」

「それ以上、喋るな。」

意識は老人の身体の急所、頭部、首、心臓、腹部を貫いた。

「ほほほほほ。愉快愉快。貴様のその力の源、もう少し見せてもらいたいもんじゃ。」

笑いながら去る老人。

















「想・・・!」

呼ぶ声が聞こえる。

















―――あぁ、そうだな。

   こんなところで眠るヒマなんて、俺にはネェな。

















「ったく・・・。面倒くせぇ。」

目を覚ました俺は、起き上がって、よろめきながら、辺りを見回す。

そこは崩れて行く、そして闇に飲まれていく城。

「・・・・さて。もう一発か。」

















―――闇の中に眠る魔炎を司る者共よ。

   孤高の力となりし、紅蓮の炎の中。

   その魔刃の・・・力を求め。

   さすれば、炎、答えたり。

   我が魔炎の命運、果てるまで。

















そう告げた瞬間、インフェルノは赤黒く、柄は黒に、刀身が朱に染まる。

















「穿ち抜くぜ・・・・。カリドゥス・オブ・インフェルノ・・・!」

その光りは城を貫いた。

















―――・・・・あ、そういえば、俺、飛べネェんだった。

















意識は地表が見えるまであり、そのまま落下するような感覚に襲われた。















―――――――――――――――――――眩しい。

・・・けれど、身体を包むのはゆっくりとした、そして懐かしい匂い。







「・・・ん?」

見ればリュセラが羽を出して、その身体で懸命に俺を支えている。

「・・・何を?」

「貴方を。」







落下していなければ、なんてドラマチックな光景だろう。

けれど、今は落下中。

二人を支えるには、難しい。







「・・・できるか判らんが・・・。」

構造を構築するのは、翼。

闇の翼を創造する。







「頼むぞ。」

独特の詠唱と同時に、背中から生える黒い翼。

「動け。」

同時に、羽ばたく翼は、何故か深い闇の色をしていた。











「これで、多分大丈夫だ。」

「えぇ。」

後ろを見れば、闇に浸食されていく冥府の城。





その向こう側、邪悪な老人の瞳を見た気がした。







    −終−
  a to ga ki
これは日記の纏めたもの。
実際、ちょっとなぁ、と反省点も沢山あったり。
でも、こういう書き方出来たのか、自分、みたいな面もあって、個人としては大変だったけど、楽しい作業でした。
< 何度もやめそうになったんだけど、色々意見をくれた人、この場で有難う。

では。