第一回:素間瑠市平坂区2-3-4 コーポフヘンノムイシキ210号室 フィレモン様へ〜ユング心理学編〜
テーマ:
ユング心理学とペルソナ
CAST:
リサ・シルバーマン
三科栄吉
「レイホゥ(漢字が出ないよう)! リサのペルソナde心理学講座の時間がやってきました。ペルソナシリーズのあれこれを心理学ちっくな視点から学んでみようっていう無謀なコーナー。講師兼司会進行を務めるのは、セブンス1イケてる女子高生! リサ・シルバーマンでーす♪
さっそく記念すべき第一回のゲストを紹介しちゃうね。ほら、ちゃんと挨拶しなよ、パンツ番長」
「嫌だな、パンツ番長だなんて呼んで欲しくないものだね。ビジュアルバンド・ガスチェンバーのリーダーであるボクには、ミッシェル栄吉ってビュリホーな名前があるんだから。そうだ、自己紹介代わりに、ここでボクらの新曲を披露……って、いってえなギンコ、耳を引っ張るなっての」
「なぁにがビュリホーよ、バカパンツ! マイク構えてどうすんの、悪魔との交渉じゃあるまいし。あんたは私と、今日のテーマについて考察するためにここにいるんだからね。ちゃんとわかってんの、そこんとこ?」
「わかってるよ、わかってるから手を放せって。ちょっとした冗談だろ」
「真面目にやりなよね、もう」
「OKオーケー。ったく、相変わらず乱暴なオンナだな。んで、今回のテーマって何なんだ?」
「今日はユング心理学と【ペルソナ】、それから【フィレモン】についてだよ」
「あのお面オヤジのことまでやんのかよ。しかし、ギンコじゃイマイチ心配なんだよな……」
「なんか言った? 声が小さすぎてよく聞こえなかったんだけど」
「な、何でもねえよ。少林寺の構えはよせって。ほら、んなことより、進行進行」
「とにかくこの講座では、ゲーム中のフィレモンが誰かってことより、心理学ちっくな視点でのフィレモンの位置づけを探ってみようと思うんだ。ちゃんとペルソナとも絡めて考察していくからね。じゃ、栄吉、準備はいい? 初回なんだからね、気合入れていくよ!」
「望むところだぜ! カモンエブリバディ、さあこのミッシェル様と一緒に!!
ホォォォォォォォォォォウ!!!!」
「激氣! ラダマンティス召還してどーすんのよ、このバカパンツ!! 会場が壊れちゃうじゃない!!」
「だからってお前こそペルソナ発動するのはやめぅわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
(1)ペルソナって何?
「ふうっ。やっと会場の復旧が終わったよー。パンツ番長のせいで大幅に進行が遅れちゃったけど……。
気を取り直して、まずはシリーズの要、【ペルソナ】のことから始めるね。
栄吉、私達の使ってるペルソナのこと、フィレモンが何て呼んでたか憶えてる?」
「つーか、会場がぶっ壊れたのは、お前のフォーミーラバーのせい……」
「なぁに、栄吉?」
「ああ、何でもねえ、何でもねえよ!
ペルソナだな? 確か、『心の奥底に潜む、神や悪魔のごとき、もう1人の自分を呼び出す力』だろ。
あと、『神のように、慈愛に満ちた自分、悪魔のように、残酷な自分…。人は、様々な仮面を着けて生きるもの。今の諸君の姿も、無数の仮面の一つに過ぎん。ペルソナもまた、数多ある君の姿の一つなのだ』とも言ってたな。
しかし仮面を着けて生きるって、そりゃ俺達じゃなくてフィレモンだろってんだ」
「ペルソナは、もともとはユングって心理学者のおじさんが提唱したものなんだ。
あたし達、普段からいろんな人達に囲まれて生活してるでしょ。でも、その人達の前でいつも同じように振舞ってるわけじゃないよね。クラスメートの前ではみんなへの気配りを欠かさないまじめな学級委員長として。小さな弟や妹の前では、ちょっぴり威張ったリーダーとして。好きな人の前では緊張して、自然とおとなしくなっちゃったり。
決して意識してやっているわけでもなく、あたし達は普段からそうやって、自分の『顔』をいくつも使い分けてるんだよね。ユングおじさんはそれを【仮面(ペルソナ)】って呼んだんだけど」
「要するにウラオモテのある奴ってことか?」
「そういう悪い意味でもなくて。もっと自然なことだよ。だって、受験当日に面接官の先生に『っていうかー、アタシがこのガッコに入りたいのはァー』なんて友達とおしゃべりする感覚で臨んじゃったらマズイもんね?
それにほら、栄吉だっておじさんと私達の前とじゃ態度が全然違うじゃん。あと、ハナジーの前だとかっこつけたりしちゃうでしょ」
「お、俺のことはいいんだよ! お前だって達也の前じゃ急にしおらしくなりやがって」
「あったり前でしょ。だって達也は私の情人だもーんv。
とにかく、時と場合にふさわしい言動=『仮面』、これが【ペルソナ】なんだ。ペルソナの使い分けができるから、私達は対人関係をスムーズに行うことができちゃうってわけ」
「俺達の言う『ペルソナ』と、ユングのおっさんの呼ぶところの『ペルソナ』っつーのは、ちょっと違うってことか」
「そ。神だの悪魔だのなんていう、大げさなものじゃないはずなんだよね。
むしろあたし達の『ペルソナ』っていうのは、ユングおじさんの言うところの【元型】っていうやつに近いんだと思うの」
(2)元型について
「ユングは、全ての人間の心には普遍的な【元型(アーキタイプ)】っていうイメージが存在すると考えたの。
例えば巨人や鬼、小人みたいに共通のモティーフからなる伝説が世界中で見られるのも、この【元型】のせいじゃないかってね。
いつの時代のどこの場所で生きてても、人類の心は同じイメージを生み出す元を共有してるって言うの」
「俺とギンコの心もか」
「うん。淳や舞耶ちゃん、情人、みんなともね。
私達のペルソナは、むしろこの元型の具現化した姿じゃないかなあって思うんだ。だからみんなで同じペルソナを共有できるし、同じペルソナは一度に一体しか召喚できないの」
「待てよ。そうすると、降魔できないペルソナはどうなるんだ?
人類共通のイメージだったら、俺達全員、全部のペルソナを降魔できねえとおかしいだろ?」
「そこなんだよねえ問題は(笑)。
元型っていうのは一つじゃなくって、様々なタイプがあるんだけど。ユングはいろんな元型と、その人がどうつきあっていくのかも重要だって考えたの。
自分の中にある元型を、『こんなのは私じゃない』って無意識のうちに突っぱね続けていたり、うまくコントロールできなかったり。
そういうことで、使えないペルソナ=元型が出てきたりするんじゃないかな」
「……ちょっと苦しい気もするけどな」
「う、うるさいなっ。
ちなみに元型と上手に付き合えないのは、ユング的にはあんまり健康的じゃないってことみたいだけどね。
とにかく次っ。次はフィレモンのことにいくよ」
(3)フィレモンて誰なの?
「で、お前はフィレモンもその元型ってやつの一つだって言いたいのかよ、ギンコ?」
「すごーい、栄吉! どうしてわかっちゃったの?」
「ペルソナ使い全員がフィレモンに会ってるわけだしな。そうするとやっぱ、俺達全員が共有してるもの、つまり元型だってことだろ」
「そうなの、まさに私が言いたかったのはそこなの!
元型にはいろんなタイプがあるっていうのは、さっきも言ったでしょ? その元型のいちばん奥に、『完全なるもの』として【自己(セルフ)】っていうイメージがあるの。
【自己】から生まれるのは、神聖なもの、尊いもののイメージなんだって。本来は神様とか天使のイメージらしいんだけどね。フィレモンに限っては、文字通りの『自己』=自分自身の容姿で現れたんじゃないかな」
「天使ィ? あの変態っぽい仮面スーツがかよ」
「まあまあ。でもフィレモンのいた場所って小さなホールだけどギリシャ神殿みたいな柱があって、厳かな雰囲気があったじゃない」
「ああ、蝶の光る鱗粉があいつのシルエットをぼんやり浮かびあがらせてたな。ま、幻想的って言やあそうかもしんねえ。俺様をとりまくゴージャスかつノーブルな空気にゃ及ばねえけど」
「よく言うよね、アゴに手を当ててポーズとってるあんたのどこがノーブルなんだか。
あ、それからその人がその人らしい生き方をしていくための選択を迫られた時、手助けをしてくれる存在が【自己】だって言われてるんだよ。あと、その人が生きる意味を教えてくれたりもするんだって」
「自分らしい生き方ねえ。俺らの場合にゃずいぶん手荒い助け方をしてくれたもんだ」
「確かにね。私、舞耶ちゃんをずいぶん傷つけちゃった。それに……」
「ギンコ……」
「舞耶ちゃんは、私達のために……」
「――泣くんじゃねえよ。お前が泣いたら、舞耶ネェはどう思う? 俺らに何も告げず、一人で戦ってくれてるタッちゃんは?
お前の言ったとおり、俺達にゃ二人の力になることはできねえんだ。けど……いや、だからこそ、だな。泣いてねえで見届けようぜ。舞耶ネェが、この世界をどんなふうに導いていってくれるのかをよ」
「うん。そうだよね。私、信じてるもん、舞耶ちゃんのことも情人のことも」
「だろ? だから泣くなって。お前がそんなだと、俺も調子出ねえよ。ギンコはやっぱ凶暴じゃねえとな」
「凶暴ー!? 人が悲しんでる時に……それじゃお望みどおり、ペルソナ、ヴィーナス!」
「うわ、要らねえよ、要らねえって、よせぇ!」
「俺が降魔してんのは初期ペルソナなのに、なんでお前のはLV.63のヴィーナスなんだよ……」
「備えあれば憂いなしってね♪ ……あ、時間? はーい、わっかりましたっ。ちょうど終了の時間となりました。それでは、また来週ー! 次回もよろしくねv!」
参考:
個性化とマンダラ C.G.ユング 河合隼雄訳
心理学 鹿取廣人・杉本敏夫
心理学辞典 有斐閣
ユングと心理療法(上)(下) 河合隼雄
図解雑学 ユング心理学 福島哲夫
……辞典を参考文献としてもいいのだろうか……まあいいか(^^;)