「darling」
スコットが女の瞳に揺れる狂気を愛したように、
ゼルダは男の唇に残るウィスキーの味を愛した。
そんな瞬間が二人の間にも訪れるなんて、
僕たちは考えてもいやしなかった。
スコットが女の瞳に揺れる狂気を愛したように、
ゼルダは男の唇に残るウィスキーの味を愛した。
そんな瞬間が二人の間にも訪れるなんて、
僕たちには想像もできやしなかった。
どこかで、なにかを間違えてしまったわけではない。
どちらかが、どちらかを駄目にしたわけでもない。
ただ、二人とも一眠りをしている間に、
相手の夢に深く潜り込み過ぎてしまっただけのこと。
目が覚めたとき、互いの姿が見分けられなくなるほど。
もう、互いを必要としなくなるほど。
別れの際、それ相応の愁嘆場がなかったわけではない。
でも、それは操られるマリオネットのように、
二人が、演じてみせただけのもの
なるほど、僕は他の女を身ごもらせ、
彼女は他の男に身ごもらされたけど、
両方の友人や家族たちが言うように、
それが二人が別れた理由ではない。
間に二人の堕ろされた胎児を挟んで、
罵りあう僕たちに、
もう、互いの見分けはつかなくて、
そんな二人に訪れる結末は、
どうしたって、
不幸なものにはなりやしない。
二人の間には、もう問題すらありはしないのだから
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