※やっつけですので色々許してください
一人での帰り道である。
「うーん、どうすっか」
交差点に立って、しばし考える。
ここを右手に折れれば俺んち、左手に折れれば春乃んちがあるのだが。
「寄るべきか、寄らざるべきか」
別に呼び出しもかかってないし、事前に寄るとも言っていない。単純な思いつきである。
数瞬の思考時間を経て、俺は左に曲がることにした。
さて、勤勉な桜木さんは、またしてもマンガを描いているのであろうか?
チャイムを鳴らす。が、返事はない。
もう一度慣らしたが、やはり駄目だ。どうやら留守らしい。
「む?」
何の気なしにドアを掴んでみると、妙に軽いドアノブ。
力を入れずにひねってみると、なんなく玄関は口を開いた。
「……さて、どうすっか」
1.入る
2.入らない
俺は1の選択肢をプレイヤーの手によって選択することにした。
ちなみに2の選択肢の結果は用意されていない。自己完結してください。
ということで、俺は春乃んちに勝手に上がらせてもらいました! お終い!
というのは嘘で、靴をぬいで部屋に入る。
見慣れた部屋だが、主がいないというのは妙な違和感を感じる
同じく妙なデジャヴュを感じるのは、この間の夢のせいだ。それは間違いない。
「おや、これは」
机の上になんか置いてある。
原稿だ。
まだ書きかけのようだが、8割がた完成している。
や、見るしかないだろコレは。
ということで、何もかも勝手に春乃の新作マンガを手に取る。
「こ、これは……!」
──一人での帰り道。
「うーん、どうしよう」
交差点に立って少し考える。
ここを左手に折れれば神山んち、右手に折れればウチんちなんだけど。
「寄るべきか、寄らざるべきか」
別に呼び出し──以下略。
数瞬の思考時間を経て、左に曲がることにした。
さて、ただイケの祐一くんはハウントの子とニャンニャンしてたりしないだろうか?
※ただイケ……ただしイケメンに限るの略だよ念のため
チャイムを鳴らす。
「はあい?」
出てきたのは「元」幼女のエリスちゃんだった。
「こんちゃ、エリスちゃん」
「やや、春乃ちゃんだ。どうしたの?」
「別にどーしたというわけでもないんだけどね。遊びに来たの」
「そーなの。でも今、ゆういちいないんだ」
「あら、お出かけ?」
「うん。コンビニに行ったよ」
「へー。うちもコンビニに行った帰りなの」
セブンの袋を前に掲げて見せた。
「コンビニならすぐ帰ってくるよね。上がらせてもらっていいかな」
「うん。どーぞどーぞ!」
快いエリスちゃんの返事とともに、ひとまず上がらせてもらうことにした。
「……」
ヤツの部屋を覗いてみると、そこは雪国……じゃなく、カーテンに光をさえぎられた薄暗い空間だった。
「あれ?」
薄闇の中、パソコンのCRTだけがこうこうと光を投射している。その様は、なんとなくトンネルの出口から見える光を連想させた。
てゆーか、いまどきCRTってなかなかすごい。さすがはペンタブ推奨の同人ヤローだ。
誘蛾灯に照られるように、画面の中を覗き込むと──
「こ、これは……」
こ、これは……。
手に持った原稿を持って、つい独り言が口をついた。
これは、間違いなく春乃の新作である。そしてコーラを飲んだらゲップが出るってくらい当たり前に、BLだ。
しかしコレ、題材がすげえ。
だってこれ、福本作品が元ネタじゃん……。銀と金だよ。
うっわ、なんだこれ! このイケメン誰? え、く、くくく蔵前!?
あの醜悪なじじいがコレ!? 嘘付け!!
じゃあこっちの攻められてるのは……森田か!? 蔵前が攻めで森田が受け……
どうやら設定的には、マージャン勝負で負けて、森田が蔵前に飼われてるって感じのようだ。
檻に閉じ込められ手錠で縛られ、されるがままだが決して抵抗の意思を失わない森田。だが少しずつ感じてきているらしい。悔しいっ……!
一方蔵前は余裕の表情で攻めている。「人が壊れていく様は……楽しい」じゃねーーよ!
こないだはテニプリっつー王道で攻めてたが、こっちが本当の想像力なんだろうか?
恐ろしいな腐女子って……。
こ、これは……。
画面に映っているのは「黒歴史」と書かれたフォルダ。
ダイアログが出ていて「このフォルダを消去しますか?」となっている。どうも、「はい(Y_)」を押し忘れて、そのまま出かけちゃったような感じだ。
もちろん「いいえ」を押して、フォルダを開く。出てきたのは、大量のHTMLだった。
それを開くと、出てきたのは。
「……ブログの記事?」
日付を見ると、今から3年前。えーと、アイツが高二のときかな?
その記事の内容は。
「今日学校行事で東京に行ったんだけど、途中で友達と一緒に班行動から抜け出して、秋葉に行ってきたwwww
もちろんエロゲーと同人ショップに行ったぜwww 聖地巡礼ってヤツ?w
制服のまんまだったけど、別に誰も気にしてねーよなwww むしろ周囲のキモオタたちを俺たち制服組が圧倒してた感じwww ウハ、俺たちいきなりプロじゃんwwww」
「うわぁ(笑)」
「ん、まだ続きがある」
福本BLを読み終えると、次の作品が出てくる。
今度は何が題材だ?
「えっと……「今回は稲葉サン×山中サンですw(核爆) あのオブラートに包まない物言いに惚れちゃいました(ぉ←」」
え、それってこの世で最も合わせちゃいけないカップリングじゃないの?
完全に火と油でしょ? 違うの?
あらすじ
「あんな歌うたって売れてるからっていい気になってんじゃねーよアイウエ。なんだ、感じてんのか? Can you feeeeel!!!!」
「ショッ、ショータ゛ウンッ!!」
「連れてってやるアイウエ、この世の果てまでアアウアアウイエ!!」
「アイノハ゛クタ゛ンオッコトシテクレ!」
愛の爆弾って、ものすげー嫌な例えだな
「まだある……今度はmixiのログだ」
別のファイルを開くと、今度は「カンノ」名義でmixiにログインした状態だった。
「mixiデビュー!(0)
今日は僕の誕生日です!(0)
みなさんはどう思いますか?(0)
あけましておめでとう!!(0)
マイミクの皆さ〜ん!お知恵拝借!(0)
mixiプレミアム入っちゃいました!!(0)
皆様にアンケートです(0)
最近めちゃくちゃ落ち込んでいます…(0)
手首切りました…(0)」
「ププッ、完璧メンヘラじゃないコレ(笑)」
「……まだあんのか」
今度は何だ? ケンシロウ×ラオウか? それともジャギか? もう何がきても驚かんぞ。
非常灯「やばい火事だ! みんな逃げろ! 早く! 何やってんだよ消火器!」
消火器「俺にはやる事がある。先に行ってろ」
非常灯「おまえ……まさか……」
消火器「火を消すのが俺の仕事だ」
非常灯「バカ野郎! おまえ使い捨てなんだぞ!意味わかってんのか?」
消火器「火を消せない消火器に何の意味がある? 俺は俺の義務を果たす」
非常灯「ふざけんな! かっこつけんなよ……」
消火器「火を消さなきゃ、おまえが焼けちまうだろ?」
非常灯「!?」
消火器「好きな奴を守って死ねるなら上等だ」
非常灯「消火器? 消火器ぃーっ!」
もはや人間ですらないんですけど。
「見てるこっちが、枕に顔埋めてバタバタしたくなるよコレ……面白いから見ちゃうけど」
さぁて、これが最後、どんな中二病体験を告白してくれるのかな?
「桐夏!桐夏!桐夏!桐夏ぁぁぁぁぁうわぁああああああああああああああああああああああん!!!
あぁああああ…ああ…あっあっー!あぁああああああ!!!桐夏桐夏桐夏ぁううぁわぁああああ!!!
あぁクンカクンカ!クンカクンカ!スーハースーハー!スーハースーハー!いい匂いだなぁ…くんくん
んはぁっ!峰岸桐夏たんの栗色ブロンドの髪をクンカクンカしたいお!クンカクンカ!あぁあ!!
間違えた!モフモフしたいお!モフモフ!モフモフ!髪髪モフモフ!カリカリモフモフ…きゅんきゅんきゅい!!
アニメ12話の桐夏たんかわいかったよぅ!!あぁぁああ…あああ…あっあぁああああ!!ふぁぁあああんんっ!!
アニメ2期放送されて良かったね桐夏たん!あぁあああああ!かわいい!桐夏たん!かわいい!あっああぁああ!
コミック2巻も発売されて嬉し…いやぁああああああ!!!にゃああああああああん!!ぎゃああああああああ!!
ぐあああああああああああ!!!コミックなんて現実じゃない!!!!あ…小説もアニメもよく考えたら…
桐 夏 ち ゃ ん は 現実 じ ゃ な い?にゃあああああああああああああん!!うぁああああああああああ!!
そんなぁああああああ!!いやぁぁぁあああああああああ!!はぁああああああん!!広陵高校ぉぉぉああああ!!
この!ちきしょー!やめてやる!!現実なんかやめ…て…え!?見…てる?表紙絵の桐夏ちゃんが僕を見てる?
表紙絵の桐夏ちゃんが僕を見てるぞ!桐夏ちゃんが僕を見てるぞ!挿絵の桐夏ちゃんが僕を見てるぞ!!
アニメの桐夏ちゃんが僕に話しかけてるぞ!!!よかった…世の中まだまだ捨てたモンじゃないんだねっ!
いやっほぉおおおおおおお!!!僕には桐夏ちゃんがいる!!やったよ綾!!ひとりでできるもん!!!
あ、コミックの桐夏ちゃああああああああああああああん!!いやぁあああああああああああああああ!!!!
あっあんああっああんあ涼子様ぁあ!!は、白露!!綾乃ぉぁああああああ!!!武田ァぁあああ!!
ううっうぅうう!!俺の想いよ桐夏へ届け!!広陵高校のの桐夏へ届け! 」
「なんか八頭身がアイナ様でオナってるAAが浮かぶなぁ、これ……」
「帰ってこねーな、春乃」
もう新作は読み終わっちゃったし、春乃も帰ってくる様子がないし。
帰ろうかな、俺も。
「あれ、春乃ちゃん帰るの?」
「うん、帰ってこなさそうだしね。どこかで寄り道してるんでしょ、きっと」
「ごめんね、せっかく来てくれたのに」
「ううん、いいの。また来るから。それじゃね!」
「ばいばーい」
──そして、さっきの交差点に差し掛かったとき。
祐一「桜木!?」
春乃「神山!?」
「「フッ……」」
目の前のあいつに一瞥をくれただけで、その場を去る。
祐一(フッ、バカだな、腐女子って)
春乃(バカネー、オタクって)
去り行くあいつが、どんな顔でアレを書いてたのかと思うと……
「プッ……」
「クスクス……」
どうしても笑いが止まらなかった。
┼ヽ -|r‐、. レ |
d⌒) ./| _ノ __ノ
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企画・製作 NHK
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