’99 12/1 up date
カタリストの部屋U
              To Heart 恋愛ギャルゲーの彼岸」
 
To Heart
製作:アクアポリス(PC版・リーフ)
価格:6,800
ジャンル:ヴィジュアルノベル


私の先輩は、このゲームについて私が尋ねた時こう述べた。
「これで萌えなきゃ漢ぢゃ無い」
私の後輩は、このゲームを私に貸す時こう述べた。
「僕のまるち(ひらがな以外は不可、なのだそうだ)
に手を出さないでください」(注1)
そして中世、欧州の詩人はその作品の中でこう言葉を残している。
「(前略)一切の望みを捨てよ 我をくぐる者」(注2)


Opening 「この文章の趣旨と取扱説明」
竜牙兵:やっぱいいんちょ萌え、でしょう。(注3)
みねこ:は?
竜牙兵:いやぁ、やっぱかぁいぃよ、いいんちょ。無口でクール、一見
とっつきにくいという見た目。
みねこ:あの〜?
竜牙兵:しかし、その実意地っ張りで寂しがりや、それを表に出すの嫌う
かわいさと言うか、なんと言うか。
みねこ:……。
竜牙兵:信用する、出来る人間の前でポロッと見せる姿がまた印象的なん
だよなぁ〜。やっぱ本質的に甘えの強い人なんだろうねぇ。
みねこ:…こう、柄を両手で持ち、右手を上に左手を下にする、っと…。
竜牙兵:自分を知る人の前でしか見せない、本来は多いはずの感情の数々。
それ見た日にゃ、オレは、もうッ、もうッ
!!
みねこ:大きく背中から振りかぶるッ!!!
ドガン!
>>>しばらくお待ちください<<<
竜牙兵:…痛たたたた…。ひ、ひどい目にあった。
みねこ:当然の報いです! 人に載せてもらうテキストで、なぁ〜にを
やっているんですかッ
!!(注4)
竜牙兵:い、いや、まぁねぇ。それにしても16tハンマーとは古典的な。
みねこ:なんならもう一発行きます? (いえ、結構ですと首を振る竜牙兵) 
全く、メガネ娘にこけるなんてそんなにイメージを落としたいんですか?
竜牙兵:い、いや、別にメガネ娘で関西弁で三つ編みで李紅蘭と同じだから
とか、声優が久川綾さんでとかいう訳ではなくどっちかというとあかり役の
川澄さんの方が好きだったりとかいやそんな事を言いたんじゃなくてやっぱ
アニメ版もそこそこ面白くて全話見てなかった事を悔やんだりする事も少し
(注5)
(注6)
みねこ:あの〜、思考が垂れ流しになってますよ?
竜牙兵:はッ! ま、まぁそれはともかく! 今回のネタは「るろうに
剣心」の作者、和月伸宏氏をはめた事でも有名な魔性のゲーム、「
To 
Heart」です。
みねこ:本当にやるんですか?
竜牙兵:いいじゃない、ここに来る人でやった人少なそうだし(笑) 
じゃ、いつものお願い。
みねこ:それではっ!
>>>CAUTION!!<<<
この文章はネタバレ文です。出来ればゲームをやった人、クリアーした人、
やる気の無い人、別にネタバレでもいいやっ!て言う人以外には勧められま
せん。気をつけてくださいね? 
(でも今回はそれほどでもないです)


Chapter 1 「ギャルゲーとヴィジュアルノベルの幸せな関係」
竜牙兵:「To Heart」は定義上、ギャルゲーに属するゲームだ。ジャンル
としては最初に書いた通り、ヴィジュアルノベルということになる。
(注7
みねこ:はい、まぁそうですね。
竜牙兵:ギャルゲーというと「恋愛シミュレーション(以下恋愛SL)」が
第一に幅を利かせているけど、多分これからはヴィジュアルノベルが主流と
なる、あるいは一つの流れとして残ると私は考えているんだ。
みねこ:それは、何故ですか?
竜牙兵:恋愛SLは恋愛をテーマとするには大きな、言ってしまえば構造上の
欠陥があるんだ。これは恋愛
SLの発生に絡むものなんだけど、もともと「ナン
パゲーム」として作成されたものなんだ。これはゲーム的な要素が強すぎると
いう「欠陥」も併せ持つ事になる。(注8)
みねこ:ゲームで「ゲーム的要素」が強い事がマイナスになるんですか?
竜牙兵:う〜ん。「恋愛」をテーマとする以上、一つの事が非常に重要に
なってくる。それはプレイヤーと
PC(プレイヤー・キャラクター)との
「同一感」なんだ。「ゲーム的要素」はその「同一感」を阻害するように
思えるんだ、私には。
みねこ:それは、確かに。
竜牙兵:ヴィジュアルノベルはその点、「表に出てくるゲームとしての
情報量」が極端に少ない事もあり、「ゲームをやってる」感覚が少ない。
また、ノベルであるため、周囲の情報やキャラクターの細かな描写を描く
のに優れているという特性を持っている。一見似ている
ADVだけど、ADV
基本的に台詞のみの描写しか出来ないしね。
みねこ:周囲描写能力に優れるヴィジュアルノベルは恋愛ゲームに向いている、と?
竜牙兵:うん。それにユーザーが恋愛ゲームに求めているのは「思春期時代の
恋愛」のような気がするんだ。そう言う意味でも匂いや雰囲気を醸し出すのが
得意なヴィジュアルノベルはやはり恋愛ゲームに向いていると言えると思う。
その優秀な成功作が「
To Heart」だと言えるんだ。


Chapter 2 「To Heart、その成功の秘訣」
竜牙兵:「To Heart」の成功の秘訣はズバリ、マルチシナリオ、マルチエン
ディングだろうね。
みねこ:…ヴィジュアルノベルをジャンルに選んだ時に、すでに決まってる
んじゃないんですか?
竜牙兵:いや、まぁ確かにそうなんだけれどね。ここで言ってるのは「一シナ
リオで落とせるキャラクターは一人である」という事なんだ。
PCが同時に
幾人もの異性に迫るというのは…まぁ無いとは言わないけどあまり現実的
<リアル>ではないでしょ?
みねこ:はい。
竜牙兵:シナリオに三角関係が出てくるというのなら、話は変わってくるけどね。
みねこ:ふんふん。
竜牙兵:後もう一つはキャラクターの性格付けと個性化に有ると思う。「To 
Heart」に登場するヒロインたちというのはその設定上、お約束なキャラや
ケレン味が異様に強いキャラが多数を占めるんだ。前者で言えば、「かわいい
幼馴染」や「メガネのお下げ少女」、後者なら「格闘少女」や「黒魔術師」、
果ては「メイドロボ」なんていう字面だけ見ればいかにもヲタクに媚を売って
いるように見える。
みねこ:媚を売っているように「見える」、つまり実際は違うと?
竜牙兵:うん。実際にやってみると分かるんだけど、作品中でそのキャラ
クターの性格付けの「地味さ」「リアルさ」がにじみ出て来るんだ。まぁ、
ゲーム内のキャラクターだからある程度デフォルメしてはいるんだけど、
現実を見れば居てもおかしくなさそうな限度に抑えられている、と思う
(注9)
みねこ:はい。
竜牙兵:これは作品が地味目の物になってしまうという弊害をもたらす
んだけど、作品全体がごくごく日常的なシナリオと空間を大事にしている
ため、全体のトーンとして良質な世界観を作り出していると思う。
みねこ:「地味目な世界」がですか?
竜牙兵:現実の世界ってその「地味目な世界」でしょ? 「To Heart」は
もともと
PCゲームとして製作され、そのユーザーは多くが(と言うか法律
上)成人である。そしてゲームのテーマが「思春期の恋愛」である以上、
その舞台装置はユーザーの思春期に沿ったもの…ノスタルジーを感じさせる
「地味目な世界」であるべきなんだと私は思うんだ。
みねこ:地味な世界、ありふれたキャラクターこそが作品のテーマに沿った
ものであると言うわけなんですね?
竜牙兵:そういうこと。


Chapter 3 「<地味目のシナリオ>考察」
竜牙兵:先に述べたように、この作品はシナリオ・脚本がかなり地味目に
作られている。で、それが現実的<リアル>に感じられる…と述べたわけ
だけど…。キャラクターがデフォルメされているように、世界観もまた
デフォルメされているんだ。ただ、その日常の描写が非常に細かに出来て
いるのがこの作品の良質な所だと思う。
みねこ:具体的にどんなところですか?
竜牙兵:う〜ん、例えば…。この作品では帰り道を一緒に帰る人を選べると
いうドリーミーな(笑)システムになっているんだけど、その中で行われる
会話が意味無いようなものが多い。やれ「貧乏性について」やら「寝癖の直
し方」やら…。はっきり言って色気が無い(笑)
みねこ:はぁ、確かに。
竜牙兵:でも、そう言った日常の一コマ一コマを描く事によって微妙なそれ
ぞれのヒロインの性格を書き分けているんだ。それぞれのキャラクターが世話
好きであったりクールであったり天然ボケであったりする。でもそれがキャラ
クタープロフィールに書かれるような「典型」としてではなく、どう個性を
持った人間であるかを理解するために用意されているんだ。製作者の愛のよう
なものさえ感じる。
みねこ:あい…ですか?
竜牙兵:好きで作っているんだろうねぇ(苦笑) 一方でゲームとして
「理想の思春期」を提供しようとしているわけで、その点は架空の存在と
なる。都合よくかわいい幼馴染がいる人なんてごくごく(←このへん力強く)
少数派であろうし。
みねこ:(妙な力に圧されて)は、はぁ。
竜牙兵:その辺の「理想」と「現実」の折り合いの上手さが「To Heart」の
シナリオ・脚本の巧妙さと言えるんだろうね。


Chapter 4 「ゲーム自体としての評価と体系(コード)の中での位置」
竜牙兵:章を改め、今度はこのソフトのゲーム自体としての評価について
述べたいと思う。
みねこ:つまり、面白かったか否か、ですね。
竜牙兵:ヴィジュアル・シナリオは文句のつけよう無し。システムはやや
レスポンスが遅いような気がするけどまぁ個人の体感差でしょう。2回目
以降の「早送り」がもっと早くてもいい気はするけど。音楽・
SEは優秀。
やや抑え目に作っているけど作品によくマッチしているだろう。はっきり
言って文句無しの秀作だね。「心に残る感動」みたいなものを求める人に
は関係無いけど、優等生的にまとまってるソフトであると言える。人に
十分薦められるよ。(注10)
みねこ:なんか手放しの誉めようですね。
竜牙兵:ワンゲームの時間が少ないと言うこともあるんだけどね。何回も
出来るからストレスがかからないんだ。大作
RPGに疲れた時には良いかも
しれない。
みねこ:(ゲームに疲れてゲームをやるってなんか間違えてる気がする…)
竜牙兵:ゲームの体系(コード)の中での評価なんだけど…PS版に
おいては「ヴィジュアルノベル」というジャンルにおける初の準メジャー
として残ると思う。今まで
PSでのヴィジュアルノベルってメジャーでは
なかったからね。
(注11また、さらに言うと最初の方で書いたように、
ギャルゲーという分野において一つのフォーマット(形式)として残る
可能性すらある力量を持っていると思う。
みねこ:ヴィジュアルノベルには可能性がある、と?
竜牙兵:うん。ストーリー志向のゲームとしては大きな、ね。


Chapter 5 「ゲーム外の要因に対する言及」
竜牙兵:上で暴走状態の時に言ってたような気がするけど、「To Heart
には一クールの
TV版が存在するんだ。その事にも少し触れておこう。
(注12
みねこ:はぁ。
竜牙兵:主な相違点はゲーム版がマルチシナリオになっているのに対し、
TV
版では連続して同一性のある世界となっているのが大きな特徴。また、
季節がゲーム版では春(
34月)であったのがTV版では秋(912月)に
なっているのも大きな変更点。最初は秋に放送する予定だったんだけど、
製作が遅れて六ヶ月ずり落ちゲーム発売と時期が重なってしまったらしい(笑)
みねこ:シナリオの変更はやっぱりアニメの形式に合わせた結果なんでしょうか?
竜牙兵:そうだろうね。普通この手の…つまりギャルゲーのアニメ化は
ゲーム世界を崩壊させるものが多いのだけど、あえて別物であると視聴
者に知らせる事により、ある程度の自由度を得ている感がある。
みねこTVでマルチシナリオは難しいですからね。
竜牙兵:主人公をPCである「藤田弘之」とメインヒロインの「神岸
あかり」とし、毎回違うキャラクターにスポットを当てるシナリオ構成
となっている。この点、特にゲーム版と違うのは「スポットキャラクターが
必ずしも主人公(藤田)の事を想っていない」という事。ゲームと
TV
それぞれが必ずしも同じモノではない証拠として使われている。ゲームに
おいてだって最初から藤田の事を好きなキャラクターは少数だしね。
みねこ:ふんふん。
竜牙兵:で、ここでも重要なのは、やっぱり「地味な脚本」「地味な演出」
(笑)これが「
To Heart」の特徴だしね。ここでもそれを丁寧に描く事に
よって「日常」を描き出す事に成功している。ノスタルジーを描き出すこと
にもね。
みねこ:やっぱり地味ですか(笑)
竜牙兵:うん。製作者も言ってるしね(笑)あとは(ゲーム版もだが)
豪華声優陣かなぁ。キャストを選ぶときにしっかりと考えたようで、
ミスキャスティングと思われるキャラクターがまったくいない。違和感を
覚える声が無く、逆にそれぞれのキャラクターの個性を助長している。
見事だね。
(注13
みねこ:ううん、なるほど。
竜牙兵:ま、薦める訳ではないけど、一見するのも良いかもしれない。


Chapter 6 「最終的結論」
みねこ:最後に一言、お願いします。
竜牙兵:私がここであえて「To Heart」のテキストを書いたかというと、
このソフトを「ギャルゲー」として敬遠する人が少なくないということから
なんだ。確かにこのゲームは「ギャルゲー」に属するゲームではある。しかし
良質のソフトである事には変わりない。良質なシナリオを持つ事も。
みねこ:それはよくわかりました(笑)
竜牙兵:敬遠することなく、やってみて欲しい。それだけの価値はあるソフト
だと私は思っているから。
みねこ:なるほど。
竜牙兵:最後に私事だけど一言だけ良い?
みねこ:はい?なんですか?
竜牙兵:私の後輩に一言。すまん、H本、このテキストを書くためにおまえの
まるちを落としたわ(笑)
みねこ:(爆)そ、それではアドバイザーはわたし、みねこと、
竜牙兵:解説は竜牙兵でした。それではまた会いましょう。
this soft estimation
システム・環境:☆☆☆
シナリオ・脚本:☆☆☆☆
グラフィック:☆☆☆★
音楽・SE:☆☆☆★
 
注1:ヒロインの神岸あかりと肩を並べる(というか、それを越える)人気を
誇る「
To Heart」の人気キャラクター、HMX12型こと「マルチ」の事。
リーフ社のゲームでは伝統的なロリータ系の造形であり、「メイドロボ」という
ケレン味の強いキャラクターでもある。
注2:ダンテ=アギリエ作、「神曲・地獄編」より。
注3:ファンの間でカルトな人気を持つ、「いいんちょ」こと「保科智子」の
事。眼鏡・三つ編み・関西弁とその道の人にはたえられない魔性の魅力を
持つ、らしい(笑) キツイ言動とミーイズムな性格が特徴。
注4:当初、このテキストは天城龍哉さんのHP「是之樹」に置いてもらうために
作成されたため、このような台詞が出てきた。
注5:「李紅蘭」……セガサターンを代表するゲームの一つ、「サクラ
大戦」のキャラクターの一人、李紅蘭の事。眼鏡・三つ編み・関西弁という
保科智子との共通性に気がついたのは後の事であり、自分の嗜好について
しばらく悩んだりしたりした。
注6:人、これを墓穴を掘るという(笑)
:「ギャルゲー」の定義は難しいが、ここでは便宜上「主体から見て
異性、あるいはそれと同等と思われる存在と交遊関係を持つ事を第一義の
手段・目的としているゲーム」とする。また補足としてコンシューマー
ゲームのみのジャンルとする。これはいわゆる美少女ゲーを加えたくない
ためである。
注8:恋愛SLの発祥はエルフ社の美少女ゲーム、「同級生」であると私は考え
ている。「同級生」はゲーム史を語る上では外す事の出来ない重要な作品では
あるが、「恋愛」をテーマにした作品としてはまだ発展途上の作品であったと
いうほかない。
注9:こうは書いたけれど、やっぱり現実世界にどうしてもいない性格の人間は
やっぱりします。他のゲームと比較対象して、ということで。
注10:私のゲーム評価方法については「ゼノ語り」内にある私のテキスト
「私的ゲーム論の展開」を参照の事。
11PSにおけるヴィジュアルノベルとしてはゲームマニアの中において
伝説的ともいえる人気を持つ「久遠の絆(製作:
FOG)」がある。売れる
ソフト(メジャー)が面白いソフトではない、という存在する証明でもある。
ドリームキャスト版が新たに発売されたので、ぜひ試していただきたい。
12TV番「To Heart」はTVK(神奈川放送)といった地方六局でしか
放送が行われなかったため、
OVAと思われる事も多いようだ。一クールは
3ヶ月・13話の事。
13:ニュータイプ、998月号参照。