ゼノギアス考察 キャラクター別T



シタン=ウヅキ 「異母兄の眼差し」



今回からようやく本題である、キャラクター別の考察に入る。



最初の対象者の選択には頭を悩ませたが、「人気があり、かつ考察型の
キャラクター評が行われていない」点と私自身にあまり思い入れが無いと
言うことから、シタンでこの項をはじめたいと思う。


シタンのこの物語における役割は、一言で言えばストーリーテラーに近い。
他のPCと比較し、全くの相違点が存在する。簡単に言うと、彼は「当事者
ではない」のだ。

確かに彼自身はPCであり、プレイヤーの駒として行動する。しかし彼は
登場のそのときから、プレイヤーの知らない情報を有している事をプレイ
ヤー側に伝えている。彼はその登場のそのときから、PCでありながら
プレイヤーの手を離れた「第3者」的な立場を有していたと言える。

結果、彼は物語内に於いてPCサイドにいるにもかかわらず高みの見物を
しているような、一種特権的な位置にいるように思わされる(また事実、
その事自体間違いではない)。


全章の「総論U」において述べたように、シタンと他のPCとでは家族構成に
おいて違いが見受けられる。簡単に言うと、他のPCが家族の中で「子」に
あたるのに対し、シタンはすでに既婚者で子を持つ「親」であるという点だ。

これはまさに「家族という庭から出た」という事であり、他のPCの先輩格と
言うにふさわしい資格である。「家族の檻を壊す」というこの物語において、
彼は経験者であり、すなわち「当事者ではない」。文字通り、彼は仲間たちの
「先生」なのだ(注1)


しかし一方でシタンには家庭の主催者としてやや問題があるのも事実である。
何しろ、「子に認めてもらえてない」のだから…(注2)。これは彼が父親であろう
とする以前に、自分に課せられた任務に忠実であろうとした結果であろう。

彼に課せられた使命。それは言うまでも無く、「守護天使」として天帝から
授かったものの事(注3)。すなわち「接触者」ウォン=フェイフォンの監視と
その指導、及び非常時の抹殺に他ならない。


その「監視者」及び「抹殺者」としての側面をを示す最も良い手がかりは彼の
乗機たちの名である。言わずと知れた「ヘイムダル」及び「ELE・フェンリル」、
両方とも北欧神話に登場する重要な神格の名である。


「ヘイムダル」は北欧神話の主役たるアース神族の一神。全世界を監視し、
最終戦争であるラグナロクの到来を告げる角笛を吹くという重要な役回りを
持っている。ちょうど新約聖書の黙示録に登場する「ラッパ吹き」と同じ役だ。
また北欧の神らしく放浪者としての役も持ち合わせている。監視者としてフェイに
付き従うシタンにふさわしい機体の名ではなかろうか。

また「フェンリル」は冬至の象徴であり、ラグナロクの時にアース神族の長で
ある主神「オージン」を食い殺す巨大な狼の事である。こちらはより直截的な
名であろう。と言うのもフェイの乗機である「ヴェルトール」の開発時の仮名称が
「オーディン」なのである(注4)。まさにシタンが天帝より賜った機体の名に
ふさわしい。


北欧神話のテーゼとは季節の輪廻と言う「絶対的な(神さえも逃れられない)
運命の存在」である。ラグナロクという「冬」を告げるヘイムダル、そのターニング
ポイントである「冬至」の象徴であるフェンリル…。彼等はその運命の歯車の一つ
であり、その名を持つギアの乗り手であるシタンもまた、運命と言う歯車の一つに
過ぎない。彼は自ら運命に立ち向かわない程度には、大人なのかもしれない。



(注1) こういう事は年齢によって規定されるものではないらしい。一応リコの
方が年上なのだが…。


(注2) これは私の解釈。シタンと口をきこうとしないのは「シタンを父親と
認めていないから」であると考えている。


(注3) 「守護天使」は十中八九間違い無く<Guard Angel>の事であろが、
意外と「天帝の使い」の事かもしれない、と思う。


(注4) 「オーディン」は英語読み。本来の発音は「オージン」ほうが近い、らしい。