- 141 名前:1/3 ◆660/7Q/21k [sage] 投稿日:04/04/20 22:43 ID:UKGEjJiw
前スレ >660-663 >678-679 >718-719 >751-752 の続き
会話も無く文字通り味気ない昼食も終わり、リビングに移動して腰を下ろすなり兄は口を開いた。
「チョコありがとな。付いてたカードも見た」
落ち着いていたはずの動悸が一気にピークへと達する。
間違いなく顔色に出ているはずだけど、兄は特に触れることもなく続ける。
「……で、思わず学校休んでしまうくらいびっくりした」
予想通りの反応だけど……そこまで驚かれると、解っていてもやはり忸怩たるものがある。
こちらは男としてずっと兄を見ていたのに、
あちらは女としてずっと私を見ていなかったということだから。
「お前だけどうこうじゃなくて、年下をそういう目で見たことがないからってのが大きいと思うけどな」
長年見ている兄には僅かな表情の動きで判るらしく、すかさずフォローを入れてくれた。
あまりフォローになっていない気もするけど。
それでも気を遣ってくれているのだから、少なくとも悪い気はしなかった。
元々望み薄だったのだから、否定材料が増えたところで結果に大差はないのもある。
―――それなのにどうして? 胸の奥から熱いような痛いような何かが……
- 142 名前:2/3 ◆660/7Q/21k [sage] 投稿日:04/04/20 22:44 ID:UKGEjJiw
表情筋を使うのも面倒なのか、鉄面皮一歩手前の難儀な妹だが、伊達に長年兄をやってはいない。
首や眉の角度、口元の緊張度などで感情の動きくらい把握は出来る。
だから妹の眉の角度が微妙に下がるのを見て慌ててフォローし、元の角度に戻りほっと一息吐く。
全く傷付けずにやんわり断るなんて器用な芸当が出来るとは思えないが、
与える被害を最小限に食い止める努力を惜しむつもりは無い。
注意すべきは「兄妹だから」を言い訳に使わないこと。
これを持ち出すと変に思い詰めさせる危険性がある。
普通に告白を断るつもりで進めれば問題ない……はず。たぶん。
最大の不安は今まで告白を断った経験がないという事実だったり。
……本当に大丈夫か俺。
「相手が嫌いなタイプとか年齢的に守備範囲外とか男とかでない限り、好きと言われるのは嬉しい」
女はどうだか知らんが、男ってのはこういう生き物である。
「ウホッ(ry」な人種に関してはその限りではないが、それはそれ、これはこれ。
「ただし、こっちも好きになるかどうかってなるとまた別問題だな」
うむ、見事なまでに正論。
相手が妹でなければ、この後「もっとお互いを知る時間が必要」とかもっともらしく言い逃れてしまえるくらいに。
知りすぎるくらいお互い知っている相手にこの言い訳は使えない。
……つか、そんな言い訳が通用する相手なら、最初から後腐れないようにきっぱり断ってるような気もする。
妹も人並みの良識は持ち合わせているから、この調子で懇々と説けば納得はせずとも理解はしてくれるはず
―――っていきなり涙ぐんでますよおい!
- 143 名前:3/3 ◆660/7Q/21k [sage] 投稿日:04/04/20 22:47 ID:UKGEjJiw
姉さん、想定外です(居ません)。
フランダースの犬でも泣かなかった女が、まさかこの段階で泣き出すなんて!
「俺のシナリオにはないぞこれは」と左様の人もとい某副司令っぽく言ってみても、
妹が潤んだ瞳で俺をじっと見詰めている現状は一向に変わらない。
(それでも表情は変わっていないので、あまり萌えとか感じさせないのがせめてもの救いか)
少し前までの余裕もすっかり失せてしまい、元々プレッシャーに強くない俺は途方に暮れてしまった。
嗚呼、女の涙なんかに動じないようなハードボイルドな男になりたい今日この頃。
とにかく何か言わなければ。
こんな時こそ偉大な先人の言葉を……さっき役に立たなかったなこれは。
とにかく何か、伺かもとい何かを……
「……き、嫌いだからこんな事言ってるんじゃないぞ」
―――ナニイテンダ!!
出来るだけ傷付けないように、しかしきっぱり断るんじゃなかったのか俺!
「……でも、好きになるかどうかは別問題だって……ひくっ……」
「あー泣くな泣くなってだから嫌いじゃないって言ってるだろ」
「……でも……ぐす……こんな兄さん困らせることして……私……」
「泣くなよ頼むから……こんな事で嫌いにならないって、な?」
うわ焦ってる焦ってるよ俺。
何か嫌な方向に足を踏み入れつつある悪寒がひしひしと。
……こっちが泣きたいです姉さん(だから居ないって)。
- 207 名前:1/3 ◆660/7Q/21k [sage] 投稿日:04/04/29 06:53 ID:w6COlFZ6
前スレ >660-663 >678-679 >718-719 >751-752
>141-143 の続き
我ながら見苦しい程おろおろと、それでいて必死に妹を宥め賺し続けてどれだけの時間が経過しただろうか。
つくづく女が泣くのは反則だと思う。嫌いな相手でない限り絶対勝てん。
どこのどいつだ女に涙なんて装備させたエロい奴は。
そしてようやく我に返ると、既に妹は泣き止んでいた。
だが何故か俺はその妹に膝枕され、あまつさえ耳掃除の真っ最中だった。
……ひざまくら? みみそうじ? ンナヅェダァ! ンナヅェダァ! ナヅェダァ!
「動かないで」
「あ、悪い」
散々泣いた後で目元は赤いものの、珍しく親しい人間でなくても判別可能なくらいの笑顔
(それでも一般的にはせいぜい微笑レベルだが)を浮かべて飛び切りご機嫌な妹に頭を押さえ付けられる。
うわ、ぷにっとしたふとももの感触が……じゃなくて。
「……つか、どうして俺は膝枕されているのだろう」
「兄さんが「お前の気持ちに応える以外なら何でもするから泣くのだけは勘弁してくれ」って言ったから」
混乱すると記憶が飛んでしまう事のままある俺に、それを良く知っている妹が即答して下さいました。
ここは人としての尊厳だけは守り通した自分を褒めるべきなのか。
それとも、ここまで事態をややこしくした自分を叱咤すべきなのか。
……微妙だ。何もかもが微妙すぎて、俺は耳掃除を甘んじて受け入れる他に為す術が無かった。
無論、頬に感じる温かくて柔らかくてそれでいて弾力に富む感触から離れ難かったのも否定はしない。
だって前の彼女のそれよりうわなにをするqあwせdrftgyふじこlp
- 208 名前:2/3 ◆660/7Q/21k [sage] 投稿日:04/04/29 06:56 ID:w6COlFZ6
やっぱり何を口走ったかも憶えてなかったのね、兄さん。
今度は吹き出すのをどうにか堪えることが出来た。
そのまま兄の髪の感触を掌に、体温を太ももに感じながら耳掃除を続ける。
まさに至福の一時。
取り乱していながらも最後の一線だけは決して譲ってくれなかった。
けど、最悪兄妹関係に致命的な亀裂が生じる覚悟までしていた事を考えると、
こうやって好きな人に念願の一つである膝枕と耳掃除が出来るのだから、そんなに悪い結果ではなかったと思う。
仕上げにふっ、と耳に息を吹き込むと、兄はウヘァとか何とか奇声を漏らしつつ身体を仰け反らせた。
もう一度息を吹き込んでみる。また仰け反った。
……これ面白い。癖になりそうで怖い。
「じゃ、次はこっち」
もっとやってみたかったけど、調子に乗ると怒られそうなので止めた。
兄が私に怒る事なんて滅多に無いけど、だからこそ怒った兄を鎮めるのはとても大変で面倒だから。
それに、もう片方の耳でも出来るのだから。
結局ふられた事に変わりはないのに私の機嫌が良いのは、念願が叶ったからだけではない。
気付いてしまったから。
兄に対してとてもとても有効な武器の事に。
今まで考えもしなかった最強の武器の事に。
- 209 名前:3/3 ◆660/7Q/21k [sage] 投稿日:04/04/29 06:57 ID:w6COlFZ6
止めとばかりにまたも耳に熱い息を吹きかけられて、ようやく気持ちいい拷問の時間は終わった。
――と思いきや。
「耳掃除したい時はいつでも呼んで。またしてあげるから」
まだ終わってはいなかった。
「……何と仰いました?」
「聞いてなかった? また耳掃除してあげるからいつでも呼んで、って言ったわ」
「いや結構。つか遠慮する。耳掃除くらい自分で「駄目」」
あにはにげだした! しかしまわりこまれてしまった!
「これからも耳掃除させてくれないと……」
「くれないと?」
聞きたくない。続きなど聞きたくもないが、聞かないと話が進まない。
「させてくれないと……泣くわ」
――――なんて、卑怯。
捨て台詞を残して小悪魔と化した妹がリビングを去った後、俺は沈みゆく夕日に向かって男泣きに泣いた。
しかし野郎の涙は武器にならない。あくまでも世界は不公平だった。
もしかしなくても、今後ずっと泣き落とされ続けるのか?
もしかしなくても、今後更に要求はエスカレートしていくのか?
こうして人としての尊厳を賭けた終わりなき戦いは始まった。
……いきなり挫けそうです、姉さん(何で居ないんですか?)。
- 224 名前: ◆660/7Q/21k [sage] 投稿日:04/04/30 03:16 ID:q7qVV9K3
朝起きたら妹に
「乙。続きキボンヌ」
と言われた。
激しく欝になった。
危惧していた通り、あのバレンタインの悲劇以降、妹の泣き落とし攻勢は止まるところを知らなかった。
たまの膝枕と耳掃除程度ならまだ許せなくもない。人目に触れたりしないし……その、結構気持ちいいから。
だがしかし。
やれ買い物に付き合ってだの(当然の事ながら隙あらば腕に絡み付いてきた)
やれ遊園地に連れて行けだの(当然の事ながら何かに付けて抱き付いてきた)
やれ久々に背中流させろだの(当然の事ながらこれだけは断固拒絶してきた……今までのところは)
そして今、寝起きにつき目付きの悪い妹が、俺と布団を共有しているのもその一環だった。
今更説明するまでもないとは思うが、ついに床を共にするところまで事態は悪化していたのだ。
……まだ人の道に背く真似だけはしてません。限りなくそれに近い処まで来ているのは否定しませんけどー。
重ねて言おう。同じベッドで寝ていただけだ。
この光景を見られたら間違いなく誤解されるのは目に見えているが、
きちんとパジャマは着ているのだから抗弁は許されると思う。いや思わせてお願い。
両親だって「ほんと仲が良いんだから」と生暖かい目で見ているだけ……つか少しは問題視しろよあんたら。
さらに妹は
「ネ申認定!イイ(゚∀゚)」
と言った。
……まだ半分寝てやがるこのアマ。
人が聞いたら間違いなく誤解するような寝言だけは勘弁してくれ、頼むから。