- 288 名前:1/6[] 投稿日:04/05/10 06:16 ID:atSz0BGQ
歳。
日本ほどコレに拘る国も珍しいのではないだろうか?
長男、次男、三男。長女、次女、三女。
他には、叔父、伯父と云うのもある。
生まれてきた順番。たかだか365日。8760時間。525600秒。
それだけで、日本と云う国は区別を行なう。
別に文句があるわけじゃない。
昭和以前は「家」が中心だったから合理的と云えば合理的だ。優越を付けることによって、差別化を図る。「家」を守る為に。
――けれど、今の日本は昔ほど「家」が中心ではない。
長男が「家」を必ず継ぐわけでないし、次男が「家」を継ぐ場合もある。
――ああ、認めよう。
あくまでこれは高校生の戯言。
私が気にしていることに対する逃げ。
私が――妹であることに対する逃げ。
- 289 名前:2/6[sage] 投稿日:04/05/10 06:16 ID:atSz0BGQ
私、「鷹奈 葵」と兄、「鷹奈 拓」は二歳しか離れていない。
そう、二歳「しか」離れていない。
大体、兄妹と云うものは歳が比較的離れている場合が多い。
実際、兄が居る私の同級生も四歳は離れている。
多分、理由としては一人目の子供の面倒が掛からなくなるから。幼稚園、もしくは保育園に入れるからだろう。
今は核家族が多い。それは育児に祖父、祖母が手伝えないと云う事。
だから、手が掛からなくなる四歳以降から二人目を作る。
- 290 名前:3/6[sage] 投稿日:04/05/10 08:04 ID:atSz0BGQ
けど、私たちの場合は避妊に失敗したらしい。
なんで、こんなことを知っているかは黙秘権を使いたい。――いや、正直マジで勘弁して欲しい。あの二人は異常だ。親だけど、異常だ。肉親を貶めたくないけど、異常だ。
兄さんの部屋でエロ本を見つけて大喜びするような親だ。――拓も異性に興味を持ったか! なんて発見したエロ本を読みながら言わないで欲しい。
お母さんもお母さんだ。お赤飯を炊こうかしら? なんて兄さんに聞いてどうする。あの時の兄さんはホントに可哀想だった。
――結局、その日の夜ご飯にはお赤飯が並んだ。
蛇足だけど、兄さんは次の日部屋から出なかった。
- 291 名前:4/6[sage] 投稿日:04/05/10 08:08 ID:atSz0BGQ
まぁ、私自身「この親にしてこの娘あり」。を体現していたりする。
なぜなら、私は兄さんが好きなのだから。
前読んだ本に「娘は父親をまず好きになる」と載っていた。
それが偶々兄さんで、十数年私は恋心を兄さんに抱き続けてきただけのこと。
一時期、私はかなりやばかった時がある。
知識を身に付けた子供ほどキケンな存在は無い。私は兄さんを自分のモノにしたくて、その――間違った知識をもとにいろいろなことをした。
ソレの説明にも黙秘権を使う。兄さんが女性恐怖症になった、と云えばその恐ろしさが伝わるだろうか?
今は兄さんも女性恐怖症ではない。
というか、その時のことを兄さんは全く覚えていないらしい。あまりにキケンすぎて脳が記憶を消し去ったのだと思う。
- 292 名前:5/6[sage] 投稿日:04/05/10 08:12 ID:atSz0BGQ
今はそんなことも無い。
暴走は一度きり、二度と起きない。
適度にブラコン。近所からは仲良し兄妹、と云う評価。
学校でもベタベタしないように気をつけている。
まぁ尤も、兄さんは周りからシスコンとか妹依存症とか言われているらしい。
それは私としては嬉しい。兄さんは意外とモテると思う。
けど、「シスコンとか妹依存症とか言われている」男とは付き合いたくないだろう、女の子の立場からすると。
いつか兄さんも誰かと付き合うだろう。けれど、それは「いつか」。今じゃない。
だったら、私はそれで良い。未来のことを考えてもしょうがない。私は兄さんが好き、その事実こそが重要なのだし。
293 名前:5/6[sage] 投稿日:04/05/10 08:14 ID:atSz0BGQ
あっと、もう時間が無い。兄さんを起こしに行かないと。
朝、兄さんを起こすのは私の役目。
妹としてゲットしたポジション。
さあ、ドアを開けてサクサク兄さんを起こしますか――!
- 299 名前:1/8[sage] 投稿日:04/05/10 21:05 ID:atSz0BGQ
「兄さん。朝。起きて、兄さん」
ゆさゆさと兄さんの体を揺する。いつもどおりの朝。
そして、いつもどおりに無反応な兄さん。
「兄さん。そろそろ危なくなるよ? 早く起きて」
ぺちぺちと頬を叩く。うーん、なんて云いながら寝返で回避しようとするけど、
私には通用しない。ぐ、と毛布を掴む。同時にがっ! なんて声。
兄さんは毛布に絡まって寝る癖がある。だから、寝返りをうつときに毛布を掴めば、
毛布が兄さんを起こしてくれる。具体的に云えば、毛布で首が絞まる。
「兄さん? 起きた?」
ゲホゲホ、なんて咳き込んでいる兄さんを眺めながら微笑みかける。
兄さんは文句でもあるのか私をじと目で睨むけど、
「おはよう、葵」
なんて、律儀にあいさつをしてくれた。
- 300 名前:またミスった。293続きの2/8[sage] 投稿日:04/05/10 21:06 ID:atSz0BGQ
「おはよう、兄さん」
私もあいさつを返す。これも、いつもどおり。私が兄さんを無理やり起こして、
兄さんが恨めしそうな顔であいさつをする。
――私だって実力行使はすきじゃない。けど、こうしてでも起こさないと、
兄さんと同じ朝食の席に座ることが出来ないのだから仕方が無い。それに、兄さんが
私以外に最初にあいさつするのが嫌なのだ。
ちょっとした独占欲。兄さんのあいさつの権利を持っているような優越感。
もちろん、兄さんには秘密だけれど。
けど、兄さんも私の心情を察してくれないだろうか? と思わないでもない。
二重否定による強調が、私の心情を的確に表してくれる。
- 301 名前:293続きの3/8[sage] 投稿日:04/05/10 21:07 ID:atSz0BGQ
そう――兄さんは気付くべきだ。
平日に限らず、休日でも私と朝食を取っている、と云う事実に。
毎日、私に最初に会っている、と云う事実に。
鈍感、と胸の中で呟く。理不尽な怒りが込み上げるけれど、
あくまでソレは理不尽――道理をわきまえていない。
物事の正しい道筋、正しい論理、条理をわきまえていない。
だから兄さんに当たるのは間違っている。――間違っているけれど、
だからこその理不尽。
- 302 名前:293続きの4/8[sage] 投稿日:04/05/10 21:08 ID:atSz0BGQ
急にムスッとした私を不思議に思ったのか、
「どうかしたか?」
と、兄さんが問いかけてきた。
胸に手を当ててよく考えて下さい、兄さん。
貴方のような天然の女たらしに、私は被害を被っているのです。
「なんでもない。部屋が汚いな、って思っただけだから」
コレは嘘。兄さんの部屋は汚くない。机にベッドに本棚。必要最小限に抑えられた部屋は、
汚いどころか機能美を讃えている。
だから、あくまでコレは、兄さんを困らせるための方便。
気付いてくれない兄さんに対する意趣返し。
- 303 名前:293続きの5/8[sage] 投稿日:04/05/10 21:09 ID:atSz0BGQ
けど、意趣返しは更に強い恨みで返されることがある。
確か――陰陽術の本に載っていた。自分より格上の相手に呪法を掛けた場合に、
「呪詛返し」として更に酷い目に会うのだとか。
つまりは――自業自得。
「汚いか? だったらさ、葵が掃除してくれないか?」
「え?」
「うん、良い考え。葵の部屋はいつも綺麗だし、掃除嫌いじゃないんだろ?」
うんうん、なんて頷きながら話を進める兄さん。
「もちろんタダ、とは云わないよ。何時だったかに服が欲しいって云ってただろ?
ソレを買うってのでどうだ? ちょうど、バイトで初給金が出たんだよ」
――ソレはデートと呼ばれる行為では?
「今は木曜だから――土曜日でどうだ? 掃除は今日か、明日にでもして、
土曜に服を買いに行く。良い案だろ?」
- 304 名前:293続きの6/8[sage] 投稿日:04/05/10 21:10 ID:atSz0BGQ
兄さんを困らせるために言った言葉は私に返ってきた。――ああ、顔が熱い。
多分、顔は真っ赤だろう。兄さんと二人だけ。しかも、服を買いに行く。
困る、困る、困る、困る、困る困る困る――!
ぼーっとした感じで地に足がついていない気分。
体は熱を帯びているかのように灼熱。――兄さん、止めて。お願い。本当に、止めて。
「どうだ? 葵もそれで良いだろう?」
兄さんが何かを尋ねてくるけれど、よくワカラナイ。
だから、返事だけでもしておかないと。
「分かった」
云った言葉は素っ気無いし、何を「分かった」のかも、あやふや。
- 305 名前:293続きの7/8[sage] 投稿日:04/05/10 21:11 ID:atSz0BGQ
「そうか、ありがとう」
だから、何で兄さんが礼を私に云うのかも分からない。
けど、気付いていることが一つある。
今の私はキケンだ。兄さんに触れたくてしょうがない。
兄さんにキスをしたくてしょうがない。兄さんと――がしたくてしょうがない。
――なんでこんなことになったの? そう、私は兄さんを起こして、兄さんが
私に部屋を掃除して欲しいと頼んだだけ。
ただ――それだけのはず。なのに、この胸の苦しさは何なの?
解らない。判らない。分からない。ワカラナイ。
- 306 名前:293続きの8/8[sage] 投稿日:04/05/10 21:12 ID:atSz0BGQ
混乱し続ける私。
それをどう受け取ったのか分からないけれど、
「それじゃあ、着替えるから葵は下で待っててくれ」
そう云い、制服を着始める兄さん。
私はソレを後目にし、兄さんの部屋から出てキッチンに向かった。
そして、私は初めて兄さんよりも――早い朝食を取った。
- 336 名前:葵タン1/4[sage] 投稿日:04/05/14 03:09 ID:lzzZsoJs
「なるほど。ブラコンの妹の立場からすると、朝っぱらからデートの話は刺激が強すぎると。
そうゆうわけですか、そうですか」
「嫌な言い方しないでよ。兄さんはデートだ、なんて考えてないだろうし」
時刻はだいたい七時四十分。
家が出たのが二十分だったから、学校に着いたのは意外と早かったみたい。
それで教室に入るなり、こうして詰め寄られてるワケだ。私は。
「うー。なんか気に入らない!」
がーっと騒ぎ立てるヒト。あ、人じゃないから。あくまで、ヒト。
ヒトは生物学的に動物を指すらしいし。よく知らないけど。
「何よ、何よ、何よー! その達観したような眼つきは! 襲うわよ!」
- 337 名前:葵タン2/4[sage] 投稿日:04/05/14 03:10 ID:lzzZsoJs
「落ち着け、弥生。洒落になってない」
冗談にもなっていない。今月に入って、何回「女生徒」と問題を起こしているのか。
問題とは「不純同姓交遊」。――ああ、頭抱えたくなって来た。
今日は、五組の女子に呼び出されている。昨日は二組だったっけ?
「洒落じゃないわよ。――ねえ、本当にわたしのものにならない?」
「去ね」
妖艶な笑みを浮かべたアクマに、回し蹴りをお見舞いする。
説明させて貰うと、初心者の行なう回し蹴りほどキケンなものは無い。
受ける相手ではなく、行なう本人が。
空手では「最も多用される足技であり、なおかつ華麗な技としても好まれる技」
だけれども、足腰の鍛えられていない初心者では重心がずれ易く、振りが大きい。
他にもいろいろ何で駄目のか、理由があるのだけれど、省略。
つまり、私がコレをやるのにはソレ相当の理由があると云うわけで。
- 338 名前:葵タン3/4[sage] 投稿日:04/05/14 03:11 ID:lzzZsoJs
剣道ではなく剣術を習っている弥生には、間合いを詰めると云う選択肢はない。
分かっているのだ。間合いを詰め、重心をずらした場合に私が怪我をする事が。
それが――決め手。さあ、受け取りなさい。弥生。
長年の恨みをね――!
「わ。ち、ちょっとした冗談じゃない? ほら、意思疎通の乱れ、みたいな?」
く。外した。回し蹴りからのフック。ジャブって持って行ったけど、完全に見切られてる。
「や、止めましょう? ね?」
止めるか。このアクマが。
「仕方ない無いなあー。あ、後ろに拓先輩がいる!」
今気付いた! ってな感じで私の背後を指差す弥生。
何を言うのか。兄さんとは別に登校してきたし、ここは一年三組の教室。
ここに兄さんが来るはずない。
- 339 名前:葵タン4/4[sage] 投稿日:04/05/14 03:12 ID:lzzZsoJs
「あー。葵、そろそろ良いか?」
来るはず、ない?
ゆっくりと、振り返る。
「あ、あ、あ、あ、あ、あ、あああああああああああああああああああ!」
「葵うるさーい」
そこには、果たして兄さんが居た。
耳を塞いで文句を云う弥生は無視、ってか折檻決定。
「弁当忘れてただろ? ほら、自分で作っておいて忘れるなよ? それじゃ」
ポン、と弁当を私の手に置いていく兄さん。――あ、いや、ちょっと待って欲しいんですけど。
言い訳ぐらいさせてくれても良くないですか?
ゆうかなんで微笑ましいモノを見るかのような眼つき?
お願いです、兄さん。戻ってきて下さい――!
- 351 名前:葵タン幼少期1/4[sage] 投稿日:04/05/14 22:13 ID:lzzZsoJs
鷹奈 拓にとって、鷹奈 葵とはどんな存在なのか。
血縁関係で云えば、妹。
単純な一文字。ある意味で一番近く、遠い。
「おにぃちゃん?」
幼い日の葵が問い掛けてくる。片言のようにぎこちなく。
この問い掛けに意味はない。いや、あるにはあるだろうけど、それは
葵にしか分からないのだと思う。
肩まで伸びたツインテ−ルを靡かせながら葵が笑う。童女のように邪気の
無い笑み。全てを無条件に愛するような。
- 352 名前:葵タン幼少期2/4[sage] 投稿日:04/05/14 22:14 ID:lzzZsoJs
「へへ。どーしたの?」
ぺたぺた、とサンダルを鳴らしながら葵が近づいてくる。
サンダル――? 周りを見渡す。セミの鳴き声。高い太陽。雲一つ無い空。
四季の中で夏と呼ばれる季節。ソコは確かに夏だった。
「こっち向いてよぉー」
葵が腰に抱きついてきた。引き剥がそうとするけれど、びくともしない。
葵が着ているのは白いワンピース。
よく似合っていて可愛らしかった。――って兄が可愛らしいとか言ってもな。
グリグリと顔を捻じ込ませてくる。いつものスキンシップ。
- 354 名前:葵タン幼少期3/4[sage] 投稿日:04/05/14 22:16 ID:lzzZsoJs
ああ、よく考えると、昔の葵はお兄ちゃん子だったな。
最近は冷たいと言うか、冷めてると言うか。
寂しいと言えば、寂しい。未だ、妹に朝起こされている兄が何を言うか! なんて
周りの奴は言うけど、葵が朝に俺のことを起こすのは寝起きが悪いだけだし。
まぁ実際に、目覚まし時計が通用しないんだからしょうがない。
母さんも父さんも仕事があるから、自然俺を起こすのが葵の役目になっただけ。
「うー。へんじはぁ?」
抱きついたまま見上げてくる葵。
「っ!」
「へんじはぁ?」
- 355 名前:葵タン幼少期4/4[sage] 投稿日:04/05/14 22:20 ID:lzzZsoJs
目を逸らす。ヤバイ。かなりヤバイ。
今の葵は小学より下。そんな葵にコンナ感情を持つなんて。
「おにーちゃんは、あおいのこときらい?」
抱きつく手を更にキツクしながら葵が聞いてくる。
目には涙が浮かんでいる。
あ、なんか微笑ましくていいかも。
「う――――!」
そんな感情を幼いながらも読み取ったのか、目に大粒の涙を浮かべた葵が
「兄さん。朝。起きて、兄さん」
と、なんか相応しくないことを口にした。