カイム、利害関係が一致する。 <1/2>


日出国の魔刃  tha raikuni
東方の大商人が贅沢の限りを尽くし作り上げた至高の刀。その鋭い切れ味は空気をも切り刻み、斬られた者は痛みも感じずに絶命していくという。
しかし、持ち主の業の深さが乗り移ったせいなのか刀身に映る己の姿は醜い魔物の姿をしている。欲深いものが覗くとその姿はより醜く映るらしい。 商人も自らの姿が誰よりも恐ろしく。目も当てられぬほど醜く映るので、できるだけ見ぬようにしていたのだが…。
ある日、魔が差して覗いてしまったその姿は、この世のものとは思えぬほどの醜い姿だっため呆然自失となり、その場で自ら首をはねた。
(武器物語より)



『ふむ』
カイムは剣の刀身を目の前に立て、矯めつ眇めつ傾け、その側に布きれを置いた。その声に気付き、後ろで寝ていたレッドドラゴンが首を上げて見る。
「武器の手入れをしておるのか」
『うむ。これだけあると一日がかりだな』
一番手前にあるカイムの剣から始まって、その奥、同じく剣や斧や槍やこん棒がズラッと並んでいる。反対側の列にもまだまだある。
磨いたヤツはこっち、まだ磨いてないヤツはあっち。丁寧に仕事しているようで、中身がほとほと血生臭い。手入れの行き届いていない武器は血まみれなヤツもいる。
自分のところでお店屋さんを開いているカイムを見下ろし、レッドドラゴンはつむじ風のような溜め息をついた。
「流れ作業は結構だが、一日がかりでも終わらん気がする」
『俺もそう思う』
「見境なく集めるからだぞ。少しは使えるものと使えないものを選り分けたらどうだ」
中には、集めたのはいいが一度も使ってない武器もある。部屋に持ってきたけど使い道がなくて溜め込んでる人みたいである。その内どこに行ったのか分からなくなるのがオチだ。
商人じゃないんだから、こんなに持っていても重たくなるだけだ。レッドドラゴンは首先で一個の武器を指した。
「これはもう使っていないだろう。捨てるかどうかして・・・・」
『 嫌だ!!匠さんは捨てないからな!』
五つ先にあった匠のつるはしを抱きしめるカイム。つるはしと言えども刃物を抱きしめるのは大変危険な行為です、カイム以外はマネしない下さい。その他手前の四つはガシャーンと散らばった。もう匠さんしか見えていない。
「 匠さんはもういいだろう!!レベルを上げるだけ上げてそれっきりだろうが!もうどこかに捨ててこい!!」
『嫌だ!!匠さんはまだやれる。今は使っていないだけでいつか使う時が来るかもしれない』
「そう言っていくつの武器がお蔵入りになっておるものか」
武器を匠さん呼ばわりする二人。長いこと一緒にいると物でも愛着が湧く。しかしイムはそんなレベルじゃなかった。抱きしめるほどに。
最初は使いづらいリーチが短いといろいろ文句を付けていたが、イザ使えてきた頃には敬遠していた気持ちが反動になって、すっかり愛用の武器になっていた。他の武器のレベル上げですっかりお暇を頂いていたが、ここでまた匠さんが出てきた。
『匠さんはだめだ。他の武器も惜しいが、匠さんは手放さない!』
すっかり匠さんに取り付かれている。魔剣の類ではあるが、匠さんのどこにそんな魅力があるのかレッドドラゴンには分からなかった。そりゃ、つるはしだもの。ドラゴンには分からない。
「むむ・・・・いいか、よく聞けカイム」
だがレッドドラゴンは根気強く諭した。
「匠さんのつるはしは元々工事道具だ。それで人をザクザク殺めているおぬしにいつまでも扱われておるのは匠さんの思うところではないぞ」
『そうか・・・・』
カイムの意見が揺らいだ。抱えた匠さんを見つめる。
『それなら今日から匠さんのつるはしは、岩を砕いたり邪魔な帝国軍の兵士をどかすのに使うことにする。それでいいだろう』
「物分りのいいことを言ったフリで誤魔化されるかー!!結局は変わってとらんだろうがっ」 ゴゴー。
思わず火を噴いた。青の丘陵の原っぱが焼け焦げた。赤の丘陵になりそう。
二、三十本もある武器を広げる仕事にはうってつけの場所だったが、風通しのいい草原が仇となった。近くのテントまで火が燃え移って大変なことになった。テントにいた連合国の兵士が諸手を挙げて飛び出してきた。
危うく火から逃げたカイムを見下ろし、レッドドラゴンは煙を吐いた。
「おーのーれーはッ。己の私利私欲のために匠さんの意志をムダにするつもりかっ!」
『お前に匠さんの何が分かる!匠さんはなあ、腕のいいつるはし職人だった・・・・戦争に駆り出されてもなお、職人である誇りを捨てずに最期まで人を殺めなかったんだぞ!!その職人気質が、分かるのか!』
「正反対のおぬしが言うなー!!」 ゴボー。
別のテントが炎上した。大変である。中にいたヴェルドレが「燃えるー!」と叫びながら見たこともないスピードで飛び出してきたが、兵士に「大丈夫です。あなたにもう燃えるものはありません」と説明されていた。ショッキング。何がないって、体毛が。
そんなこともさておき、サイズが違うだけにピンポイントで足元を狙えないレッドドラゴンは口頭でカイムに怒った。
「匠さんのことは分かっておる!タグで読んだ!!」
『死してなお自分の作品に取説を付けておくとは、見上げた職人根性だ』
「いや、匠さんが付けたワケではないと思うが」
タグ、武器物語。匠さん本人が付けていたのだとしたらハナシが違ってくる。自画自賛である。
ともかくカイムは匠のつるはしを手放す様子はなかった。どうしたものかと思う。
たくさんあるものを片付ける時、まずこういう気持ちが邪魔をする。愛着がいつの間にか執着にすり替わっている。レッドドラゴンは唸った。
全部持って行きたい気持ちは分かるが、はっきり言って、二十本も三十本もあると邪魔だ。よく一人で持ち歩いていた。
背中に乗せた時、明らかに重い。カイム一人しか乗っていないのに、なんだかもう五、六人乗っている気がする。この前はうっかり落とした槍が背中に刺さった。びっくりした。
「潔く手放さぬか。道具だろうが武器だろうが、使わねば匠さんが泣くというもの」
『そう言われればそうだな』
今度はカイムの切り裂き魔の根性に働きかけてみたが、うまく効いたようだ。
『しょうがない。しかし捨てるのは忍びない』
「ならば誰かに譲ればいい。・・・・とは言うものの、魔剣だぞ。たやすく他の人間に扱えるとも限らんぞ。レオナールかアリオーシュに譲ったらどうだ」
『そうしよう。使わなくなったものはこっち、俺が使うものはこっち』
「うむ、最初からそうすればよいのだ」
早速選別を始めるカイム。目星を付けたものから順番に片付けていく。これで少しは自分の背中も軽くなる。
『斬れなくなったものはこれ。刃こぼれしたものはこれ。斬れるものはこっちに』
「随分あっさり選ぶものだな」
『斬りすぎて斬れなくなったものはこれ。折れたものはこれ。存分に血を吸ったものは俺の・・・・』
「いちいち怖いわー!!」
スパーンと羽でカイムをはたく。豪風で火事が消し飛んだ。洗濯物も飛んでいった。
いろんな意味で魔剣に取り憑かれている。存分に血を吸ったものは俺のってなんだ。選定基準が甘いし怖い。
「そんな呪われた武器こそ捨ててしまえ!」
『 嫌だ!!これは百人斬りを達成した記念すべき武器だ、みすみす手放すなんて俺にはできない!』
「思い出に取り憑かれておるのか!?」
青の丘陵フリーミッションにて。小回りが利いてあんまり攻撃力のない古の覇王はチェインを稼ぎやすいので、百人斬りにうってつけです。(宣伝文句)
カイムとレッドドラゴンが古の覇王を挟んでギャーギャー(文句)ゴーゴー(ドラゴンブレス)騒いでいると、そこへレオナールが通りかかった。
「おや、武器の手入れですか。精が出ますね」
「む、ちょうどよいところへ来た。おぬし新しい武器は要らぬか?」
「新しい武器ですか?そうですねえ・・・・」
『フィニッシュブロー!!誰にも渡さん!』
「意味が分からない!!」
ズバァ!!と古の覇王のフィニッシュブローで薙ぎ倒されるレオナール。まだ何も言ってないのに薙ぎ倒された。この展開が分からない。
「カイム、人の話は最期まで聞け」
『しょうがない。この魔剣がこの変態を生かしておくなと俺の情熱を駆り立てたのだ。最期に言い残しておくことはあるか?』
「死んでませんよ、最期じゃないですよ、今いいフィニッシュブロー入りましたよ・・・・!!」
変態でも契約者、契約者でもレオナール、この程度で最期を迎えるほど弱くない。五メートルくらい吹っ飛んだ先で血を吐きながらニコーリと笑って立ち上がる。強靭だ。
「今の謎、私の心の眼で以て解き明かして見せましょう!!これは・・・・フリマですね」
カイムが手持ちの武器を一直線に並べている様は、まさにフリーマーケットだった。お店屋さんにしてはものすごい殺伐としている。誰もお客さん近寄ってこない。そして最初のお客さんは出品者に斬り飛ばされた。
レオナールが心の眼で解き明かした謎はフリマだった。カイムは頷いた。
『そうだ、フリマだ』
肯定した。レッドドラゴンが訊いた。
「フリマとはなんだ?」
『フリルマーケットだ。フリル商品を扱う市場のことだ』
即答した。だとしたらものすごい商品が限定されてくる。なんでそんなものすごいウソを言う。
「なるほど。人間は珍しい市場を展開するものだな・・・・」
「ドラゴン殿、それは嘘ですよ。フリーマーケットは個人が不要になった物を安値で売り買いするもので、決してフリルの売買では、」
「フィニッシュブロー!!」 ズバァ!!
二度目のフィニッシュブローが入った。レオナールのセリフの途中でまたもや吹っ飛ばされて今度は七メートルくらい空を舞った。近くで見ていたボブさん(コックさん)が「新記録!!」と判定した。何の。
「か、カイム、虚偽はいけませんよ・・・・!!」
「虚偽なのか」
『とんでもない、フリルマーケット』
疑うレッドドラゴンにとんでもない!と速攻で否定するカイム。とんでもないのはお前だ。
『実は俺はフリルも扱っている。これを付けてやろう』
「なんだ?」
『うむ!』
どこからか取り出したフリルのリボンをレッドドラゴンの尻尾に結んで頷くカイム。満足したらしい。
「あーれー?何をカワイコちゃんしてるのドラゴンさまはー」
飛んで行ってしまったレオナールと入れ替わりにフェアリーが飛んできた。いつものすっとぼけた喋りで、うろちょろとレッドドラゴンの周りを飛び回る。
「ええい、子虫がやってきたな」
「ええ、そーですとも、かわいこちゃんの子虫のオレ様ちゃんですよー。そう言う誇り高きドラゴンさまは、あれー?尻尾にこんなもの付けておめかしですカー?」
「我の尻尾?」
「まあこんなの今さらってカンジですけどねーぎゃん!!?」
『まあ気にするな』
側にあったポールアックスの先でフェアリーを叩き落した。のはカイム。ものすごい早ワザ。
「我の尻尾がどうかしたのか」
『気にするな。この羽虫は自分にないものを妬んでいるだけだ』
「確かにフェアリー族には尻尾はないが」
『そういうことだ』
「そういうことか?」
カイムのテキトーなごまかしで丸く収まった。レッドドラゴンが尻尾で地面を叩くと、フリルのリボンがパタパタとなびいた。気付いていないのは本人だけ。
「うう、カイムぼっちゃんのばーかバーカ!!」
『騒ぐな』
「ぎゃあ!!」 ザス!
地面から顔を上げたフェアリーのすぐ横に刃物が立った。今し方フェアリーを叩き落したポールアックスの刃先がギラリと光る。
「人間はすぐに刃物出すんだから・・・・ん?」
光を反射する刃に一瞬、自分の顔が映る。フェアリーはギョッとした。
「わっ、うおわああああ!!?なんだそれ!?誰だコレ!?ばけものー!!」
カイムが地面を見下ろすと、フェアリーは飛ぶのも忘れて這いずって逃げている。
『ん?』
刃は当たっていないハズだが、まるで斬られたような驚き様で慌てている。化け物?何かを見て驚いたようだが。
地面から刃を抜いて持ち上げて見る。・・・・しかし何もなかった。
『これがどうかしたか』
「こっ、こっちに向けるなぁー!!」
フェアリーはようやく飛んで逃げる。カイムは何もしていないが、フェアリーはこの武器を嫌っている。
しかし、やはりカイムには何も見えない。刃には自分の顔しか映って見えない。ただの普通のポールアックスにしか見えない。
「なんの騒ぎだ」
『いや・・・・何か見えるか?』
レッドドラゴンの目の前に出して見せるが、やはり同じく首を傾げただけだった。
「?何を見ろと言うのだ」
『俺にも分からん』
「なーんーでー見えないんだよっ。よく見てみろよ節穴ッ!!目ェ悪いんじゃないのか!?うわーこっちに向けるなー!!」
騒ぎ立てるフェアリーに振って見せると、今度は一目散に逃げて行ってしまった。
「ウフフ血の匂いがするわァ」
入れ違いにアリオーシュがフラフラと近寄ってきた。武器に染み込んだ血の匂いを嗅ぎ付けてきたらしい。エルフの未亡人、血の匂いには目がない。
「エルフよ、血もいいが自粛せよ。おぬしの方がよっぽど血生臭いぞ」
どこかで殺戮って来たのか、彼女は返り血ベッタリだった。レッドドラゴンの忠告にアリオーシュは力強く頷いた。
「大丈夫よ。お肉も大好きだから!!」
『いいことだ・・・・』
「よいことあるか!!」
賛同するカイムを尻尾ですっぱ抜く。鉄分のみならずたんぱく質の補給も怠っていない。
「あら、きれいな武器ね。ちょっと拝借」
カイムが持っていたポールアックスを覗き込むアリオーシュ。刃に映った自分を見て髪を直している。遠くからフェアリーが叫ぶ。
「わっ、やめろエルフのねーちゃん!!それはー!」





かつてないほどフェアリーが出張りました。なんだフェアリー…割と、大好きだ!!(2006/12/4)
ゲーム中だと殺したくなるほど殺したい(二回言ってる)種族ナンバーワンのフェアリーですが、自分でねつ造したら「ものの哀れ」的にかわいく思えてきました。そしてブローされまくるレオナール殿。カイムが目立っていない…!!


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