カイム、嵐の神と勝負する。


嵐神の閃撃 Thundergod
破壊的な風を巻き起こす嵐神の怒りが込められた槍。運悪く、この突風を受けてしまった者は、骨だけ残し血と肉が吹き飛ぶ。ある村に風を自在に操るやさしい青年がいた。青年の評判を聞きつけ彼の前に現れた嵐神。
「お前の力がどんなものか、わしと勝負じゃ!」
道行く剣士の外套を風の力で脱がせた方が勝ち。強烈な突風で外套を吹き飛ばそうとする嵐神だが勝負は暖かいそよ風で薄着にさせた青年に。
「人間の分際で、このわしに勝つな!」怒り出した嵐神は成年の血と肉を吹き飛ばす。そのときの怒りが剣士の持つ剣に刻まれたという。
(武器物語より)



その日はいやに風の強い天気だった。地上に降りたレッドドラゴンは空を見上げる。
「妙な風だ。嵐が来そうだな」
『いや、向かい風に負ける俺ではない』
ミッドガルドいち逆境に強いと評判のカイムの力強い宣言。火に油を注ぐようなシチュエーション。
『たとえ風速百メートルの暴風だとしても負けない』
「それは実在する風か?」
現実問題、秒速百メートルは観測されたことがない。山が吹っ飛ぶ。封印が壊れる以前に世界の危機である。
しかし実際、連合軍キャンプのテントは今にも吹き飛びそうだった。あちこちから悲鳴が上がっている。うわー!!ジャックが!あんな高いところに!高い、高ーい!!
とにかく危険なことは確かだ。ジャック(連合軍の兵士。32歳独身)が危うい。なかなか落ちてこないほどに。別な場所に移った方がいい。
「これでは我も飛べんな。風当たりが強すぎる」
『よし任せろ、俺が風除けになる。これですべてがよくなったはずだ』
「確かに局所的に風は当たらんが・・・・おぬしは実在する人間か?」
よーし来い強風!風上に立ちはだかるカイム、ひと一人分のピンポイント風除けである。もろに暴風を受けてなおよろめきもしない。
足腰が強いね!では済まされない。レッドドラゴンは疑いを抱いた。本当に人ですか?分類は人類ではなくカイム。(単種)
疑問はもう一つあった。遠くの木々を見ると、なぜか静まり返っている。こことは違い無風のようだ。
「というか、妙だぞ。ここだけが暴雨風域ではないか」
カイムも気付いた。まるでこのキャンプだけが台風に巻き込まれている・・・・。
「ぎゃーーー!!」
二人が見ている前でフェアリーが飛ばされていった。たぶん軽いのだろう。特に感想はない。
「異変はここで起きている、自然現象ではないぞ。何か心当たりはないか。いや絶対にあるはずだ、特におぬしに関して」
有無を言わさずカイムに容疑を絞る。いつものことながら怪しい物品を入手した経緯があるに違いない。カイムは頷いた。
『なるほど、事件は現場で起きていると。むしろ俺が事件だと。調べてみるか』
「そのー!!怪しい槍がー!!」
遠くからフェアリーの悲鳴が聞こえてきた。その怪しい槍が?
手掛かりはすぐに見付かる。カイムは武器ホイールから怪しい槍を取り出した。槍だが、もちろん魔剣である。強い魔力を感じる。
『これは・・・・紅き山のコロシアムで十五分以内にダニを殲滅した時に入手した武器だ』
「入手時の詳細はさておけ。確かにその槍が怪しいようだ・・・・」
『うむ。この怪しい槍から風を感じる、風速百メートル』
「風を操るとは、怪しい槍だ」
『怪奇現象だ』
怪しい槍がブルブルと震える。次の瞬間、一際強い突風と共に怪しい槍が飛んだ。
「人間の分際でこのわしを怪しいなどと呼ぶな!許さんぞゥオオオ!!」
さらに怪しき事態が起きた。怪しい人物が件の怪しい槍を携え、胡散臭い台詞を言っている。怪奇現象の他なんでもない。カイムは叫んだ。
『怪しい人物、怪物が!!略称怪物が怪しい槍を、うわああう』
「どさくさに紛れてしがみ付くな!!鬱陶しい!!」 バシン!!
レッドドラゴンの咆哮、カイムごと尻尾を地面に叩き付ける。怪物の登場すら霞む一撃必殺。ちなみにカイムの叫びは棒読みだった。わざとらしい。
いつの間にか風は止んでいる。やはり怪しい槍、怪しい人物が関係していた。
「何者だ貴様。この魔剣、怪しい槍に憑り付いた怨念か」
無風の中、やたら風になびく怨念(仮称)は睨んで返す。
「なんだとゥ、ドラゴンの分際でわしを怨念呼ばわりとは重ねて許さんぞ。わしは神だ。嵐の神である。一人でも嵐である」
そうですか。
「己を神と呼ばわる者ほど愚かしいことはない、信じるに値せんな」
「所詮はドラゴン、神の使いっ走りよ!」
「自称神だとしても、貴様に仕えた覚えはないな」
フンと一蹴するレッドドラゴン。この世には疑わしいことはたくさんある。しかし一人だけ信じる者がいた。
『いや、俺は信じる』
カイムである。レッドドラゴンはさらに疑わしい目付きでカイムを見る。こいつ・・・・正気か?
「よせ、まともに取り合うことはない」
『ダニは腐るほど斬ってきたが神は斬ったことがない、斬らせろ!!
「ぬぅおお!!人間の分際でこいつ正気か!!」
カイムの剣(武器名)で斬りかかるカイム、怪しい槍で必死にガードする自称嵐の神。復讐の鬼に対していい勝負を見せた。勝てるかどうかは別として。
「ぬがくぅあああ!!人間の分際でやりおる!」
「もうよせカイム。その自称神の上半身、曲がってはいけない方向に折れそうだ」
『なんという柔軟性。この俺の剣を受けてなお折れないとは、もしや本当に神か』
「今頃気付いたか、おゥファアア!!」 メリメリ。
斬る前に折れそうだ。鳴ってはいけない音が聞こえてくる。しかし折れない。なんという柔軟性。
これでもかとゴリ押しするカイム。ギリギリ押され仰け反って、えび反り体勢でカイムの剣を受け止める自称神。しかし今にも腰からボキンといきそうだ。
自称神vs復讐の鬼のバトル、急に風が止んだことで、何事かと兵士達も集まってきた。がんばれカイム様!!
「我らがカイム様がピンチだ。応援をしなければ」
「いや、ピンチなのは相手の老人だ」
「この場合、どちらを助けたらよいのだろうか」
意外と冷静に現場を見つめる兵士達。冷静と情熱の間で意見が分かれる。
とりあえずこの場合・・・・高齢者を助けるのが先だと、多数決で。このままでは折れてしまう。兵士達は老人に体当たりした。
「カイム様、失礼します!」 ドカ!!
「大丈夫ですかご老人!」 ドス!!
「お二人共、落ち着いて下さい!」 ギャー!!
上から兵士A to Cの救援。自称神はタックルを仕掛けられ、地面に引きずり倒され、兵士Cは空振りしたカイムの剣に斬られた。(悲鳴)救援、だと思う。
三人の捨て身アタックによって、この戦いは一旦の終焉を迎えた。カイムは叫んだ。
『邪魔をするな!!俺の戦いを邪魔するとは許さん、こうしてやる!!』
「ありがたき幸せ」
カイムの声は兵士には聞こえないので、いきなり心臓マッサージをする人になった。こうしてやる!と言いながら蘇生術を実行する人もいない。
「いやあ、ヨロイで助かりました。致命傷は免れました」
「よかったな」
「本当に」
「本当にそれでよいのか・・・・」
レッドドラゴンの疑念をよそに、兵士CはAとBによって担架で運ばれていった。どうやら心臓マッサージが功を奏したようだ。本当かどうかは分からない。
しかしここからが二次会の始まり、狂った宴の本番である。レッドドラゴンはハッとした。
地面に転がった自称神の背中に向け、カイムが助走付きでジャンプした。あれは伝家の宝刀、人の背中ふみふみ攻撃。静かなる実行に、気付くのが遅れた。
しかも今回は高いところから失礼しますバージョンだ。あれでは背骨が砕けてしまう。
「やめろ」 バシン。
振りかぶった尻尾で叩き落す。地面が抉れて、老体ごと吹っ飛んだ。
『いきなり何をする。いくら俺でも小骨が折れてしまう』
「貴様は魚か。まずは話をしろ、いきなり背中を踏み砕くヤツがあるか」
タフネスぶりをいかんなく発揮して立ち上がるカイム。この程度ではカイムを倒せない。
『相手が戦う意思を見せた以上は問答無用。仇為す者は砕く』
「人として間違ったコミュニケーションを取るな。背骨を踏み砕くな。まずは話し合え」
『分かった。話し合ってみるか』
頷くカイム。しかし剣は引っ込めない。それは話し合いとして正しい姿勢ではない。
『会話をしよう怪しい者。貴様の要求はなんだ』
ようやくヨタヨタと起き上がる自称神に向けて言い放つ。自称神は息も絶え絶えながら、槍をドンと地面に突き刺す。
「にっ、人間の分際で、よくもぬけぬけとゥ。骨さえ残さず消すぞ」
交渉決裂!!さあ殺し合おう』
「振り出しに戻るな!!」
はい決裂したよ!再び剣を構えるカイム、その上からレッドドラゴンの前足(サイズ計測不能)がギュギュッと押し潰す。話が進まない。
「いきがるな、怪しい怨霊よ。我らの前に現れたということは目的があってのことだろう」
「ドラゴンは少々話が分かるようだな。まあいいだろゥ」
話の邪魔をする元凶はレッドドラゴンの足の下にいる。自称神はせいせいとした顔で宣告する。宣戦布告。
「わしは嵐の神だ。この槍はわしの武器だ。この武器を使いたければ、わしと力比べをしろ」
「力比べだと?」
「そうだとも。力なき者、ましてや人間が扱うなど以てのほか。値すべき己の力を示せ」
『話は聞いた。受けて立つ!!』
レッドドラゴンの下から受けて立つ!!レッドドラゴンの足(重量計測不能)が少し持ち上がった。嵐の神はぶっ飛んだ。
「すごい力だ!!貴様、人間か!?」
『いかにも。この程度がなんだ、己の契約者を持ち上げられずして復讐の鬼が務まると思うな!!』
「いいから早く出てこんか!!」
自分の足の下からカイムの声だけ聞こえてくる。そんな落ち着かない場所で話をしないでほしい。慌てて足をどける。そして契約者としての規則はそんなものではない。
踏み潰された割にピンシャンしているカイム。腰を抜かす嵐の神の前に立つ。
『この程度で驚くようでは、神というのも疑わしい』
「おかしいとは思ったが、契約者であったかァアア。ではなおさら並の力ではあるまい・・・・ナイスガッツだ、ハードルは高いぞ!!」
『OK!!』
「何がOKだ」
なぜ急にフランクになった。しかし両者が承諾したため新たな戦いが始まってしまった。


「勝負は至って簡単だ。わしと風で勝負だァアア!!」
『分かった、かかってこい!!』
どうにもやり取りが簡単すぎて詳細が伝わってこない。シンプルにも程がある。
「道行く無関係なる者をターゲットとし、風の強さで外套を剥ぎ取る」
『街灯?』
「つまりコート、上着である」
ようやく詳細が明らかになった。二人でてきとうにやってほしいが、なぜ無関係な歩行者を巻き込むのか。
聞くところ、なんだか穏やかに終わりそうだ。待機するレッドドラゴンは不思議に思った。嵐の神は不敵にほくそ笑む。
「わしは嵐の神、うっかり外套どころか皮や血肉まで剥ぎ取るかもしれんな」
やはりそういうことか。神と名乗る中には、名実が伴わず所業の荒い者もいる。自称嵐の神はその類である。レッドドラゴンは納得した。
このままでは無関係な歩行者が死に至る。だがそこは復讐の鬼、負けてはいない。
『ではこの勝負、無関係な歩行者を斬った方が勝ちだ』
「違う!!おぬしは第三者の声を聞け!!」
第三者、レッドドラゴンがまず口を出した。いきなり何を取り違えている。
『何が違う?』
「何かが違う」
冷静に話し合うレッドドラゴン。激情に走ってぶっ飛ばしても話が通じない。諭しにかかる。
「結果的にそうなるかもしれんが、それは防げ。あやつの口車に乗るな。無関係な第三者を殺してどうなる」
『そうか・・・・ということは、第三者の身ぐるみを剥ぐ、そういうことだな?』
「身ぐるみだけ、だぞ。分かっておるな、いいか、皮まで達するな」
もう突き詰める努力はやめた。噛んで含めるように言い聞かせる。いいか、皮まで剥ぐなよ。肉体には手を出すなということです。
『よく納得した。よく分かった』
「本当に分かったのか」
カイムは深く頷く。この男は時々アテにならない返事をするから信用ならない。
『刃物を突きつければ一発だ。簡単すぎて勝負にならん』
「か・ぜ!!ウィンドゥ!!Wind!!」
訂正したのは嵐の神。先に言ったよね?風で勝負、風の強さで剥ぎ取るって。途中から手段が無差別になっている。
「それは単なる追い剥ぎだァアアア!!蛮族なる人間よ!」
『最初からそう言え。では俺からやる』
嵐の怒りもなんのその、カイムは先攻する。しかし第三者の存在が必要である。誰か都合よく通りかからないものか。
「おやカイム、そちらのご老人はどちら様ですか」
何も知らないレオナールが都合よく通りかかった。罠にかかったようなもんである。標的が決まった。
『よし、この隠者を標的とする』
「おやおや。一体なんの標的ですか?確か、今日の背中ふみふみは済んだはずですが・・・・」
日課と化しているのか。レッドドラゴンは不憫に思った。カイムはうちわを取り出した。
『今日は暑いな。扇いでやる、脱げ
「おやおや、一体なんの罰ゲームですか。いきなり脱げと言われても分かりませんよ」
戸惑うレオナール、執拗に扇いでくるカイム。暑くはない、むしろ寒い日だ。それに隠者の厚着スタイルは安くない。
『いいから脱げ、己の性癖を隠して生きる者、略称隠者。この衆人環視の中で己のすべてを曝け出してしまえ。口では嫌だといっても実は見られるのが楽しいはずだ、そんな自分が好きなはずだ、そうだと言え!!
「いやいや、そう来ましたか。強引にそんなことを言われては、これは新たな快感の予感・・・・!!」
もらった!!こぶしを握るカイム、要らない!!と叫びたいレッドドラゴン。レオナールは陥落一歩手前だ。彼の新たな一面が幕開ける瞬間である。
焦ったのは嵐の神。こんなにも簡単に要らないストリップショーが幕開けしてしまうとは。阻止せねば!!
冷たい風が吹き付け、分厚いINJAスタイルを開放しかけたレオナールは我に返る。
「はっ!?私は今、何をしようと・・・・!?危ういところでした、心が折れるところでした」
そそくさと身嗜みを整えてしまう。心は開けても彼の着衣までは開けなかったようだ。実に強き隠者の精神。乱れるまでには至らなかった。
『くっ!あと一歩のところを・・・・』
「惜しむなカイム。これでよかったのだ・・・・」
悔しがるカイムに同意しないレッドドラゴン。心の底から、これでよかった・・・・と噛み締める。
おそらく嵐の神の仕業だ。カイムは憎々しげに相手を睨む。当人は涼しい顔でいる。さすが嵐の神、風を操るなどお手の物。ズルしちゃ困る。
「次はわしの番だな。では見よ、わしの風の力をゥオオ!!」
「ぬっ!!」
『風速百メートル!!』
「暴風が!!」
レッドドラゴン、カイム、レオナールは驚愕した。まさに風速百メートルのごとき突風が巻き起こる。疑うことなき確かに神の力である。
標的はレオナールだが、カイムまでもが吹っ飛びそうになる。針のような鋭い風には堪らない。背後で連合軍のキャンプが壊滅している。予期せぬ天災である。
「どうだ!怪しいなどと散々ぬかしおったが、わしの力を思い知るがいい!!」
『怪奇現象だ』
「超常現象と言ってもらおゥ!!スーパーナチュラル!!」
勝ったも同然の余裕しゃくしゃく顔で威張る。これでは上着どころか人そのものが飛ばされてしまう。勝負はいかに。全員の視線がレオナールに集中する。
「これはすごい風ですね!こんな寒い風では露出もままなりません、しっかりガードしなくては」
「な、なんだとゥオオ!?このわしの風を受けて踏み止まるとは!!」
嵐の神は驚愕した。何事も力任せでは思い通りにならぬ。かえって相手の心を閉ざすことになる。心までは奪えない。
『よし、かなりいいぞ。隠者の理性が最後の一線で踏み止まったぞ』
「理性、か・・・・」
こぶしを握るカイム、疑うレッドドラゴン。寒くなかったら露出するのかと問いたい。
隠者のガードは思ったより堅い。そして強靭な足腰で地面に踏み止まった。今こそ反逆の時!
「今だカイム、反撃の時だ」
『よし、唸れ!俺の復讐の刃!!』
カイムは剣を構え、目にも留まらぬ素早さでレオナールに斬りかかる。結局斬るのか!レッドドラゴンが止めようとした時すでに遅し。
『終わりだ』
「なんですと・・・・」
レオナールは呻いた。しかし無傷。カイムの剣が交錯した直後、彼の厚着がボサッと落ちた。そう、服だけ。
「はあー、ようやく戻ってこれた・・・・なんでオレ様ちゃんがこんなひどい目に遭って、って、ほげえええ!!」
序盤で吹っ飛ばされていたフェアリーが帰ってきた。そして目の前に惨状にぶっ飛んだ。
「どうしたのですかフェアリー、私に何か不審な点でも」
「躊躇なく近付いてくる前に何か言い訳を考えろォオオ!!」
全裸でズンズン距離を詰めてくるレオナール。不審は点に留まるどころか、全面が。まともに喰らったフェアリーの精神が崩壊した。三十分かそこらの間に何が起きた。
そう、森の隠者は脱いでからがすごい。せめて風呂入る前でした!とか言ってほしい。そういう努力がほしかった。
「か、カイム坊ちゃんよ・・・・オレ様ちゃんが不在の間に、一体何が・・・・」
『見ての通りだ』
「見ても分からんし!!マジで!あなたの足元に散乱する衣服と思しき布切れは何!?あとはその老人誰!?」
レオナールの視界的破壊光線を受けたのはフェアリーだけではなかった。嵐の神は両手で我が目を覆っている。死ぬんじゃないかと思うほどブルブル震えている。
「ぬがァアア。この神たるわしが負けるとはァアア人間の分際で・・・・目に毒!!」
「よく分からないけど逃げたぞ!?気持ちは分かるが!」
『逃がさん!!』
「いや、逃がしてやれ」 ドギュ。
追いかけようとするカイムを引き止めるレッドドラゴン。前足でふみふみ。
『なぜ逃がす。逃げる者は叩き潰す信条の俺としては見過ごせん』
「触らぬなんとやらに祟りなしだ。妙な関わりを持つでない。何をするか分からん」
『それもそうだ』
むしろカイムが何をするか分からない。来る者も去る者も武力で追い詰めかねない。物陰に追い込んで背中をふみふみする。
『ではこの勝負、俺の勝ちということだな』
「勝者なき戦いとは虚しいものよ・・・・」
剣を振り上げるカイム、しみじみ呟くレッドドラゴン。一体誰が得をしたと言うのだ。カイム以外の全員が心に傷を負った。運悪く目撃してしまった兵士達が担架で運ばれていく。
「うおおお、森の隠者がすべてを包み隠さず披露を・・・・!!」
「包み隠さぬ者、隠者が見せ付けてきた・・・・女神、女神よ・・・・!!」
「しっかりしろ!逆に考えるんだ、大自然の中ですべてを開放した隠者なんだと!そう考えれば、やっぱりダメだ!!」
斬新に前向きな考えではあるが、やっぱりダメだろう。事実はご覧の通りである。未だに全裸の隠者、それがレオナール。服はない。
「私もこんな開放感は生まれて初めてです。しかし寒いですね」
「寒いですね、で終わる神経が図太い!!繊細なる神経の持ち主のオレ様ちゃんの心・崩壊寸前!!」
ボトッと音がした。フェアリーが地に落ちた。
「大丈夫ですかフェアリー。開放感に満ちたこの私に何か不審な点でも?」
「ふへへ・・・・飛べない妖精はただのブタさ・・・・」
『俺にはまだやるべきことがある。この全裸の不審者を葬らなければならない』
「元凶が言うでない。まあ正直、レオナール本体を斬らなかっただけよいが」
『不審者を斬るのは得意だ。斬らせろ!!』
「激情に走るな!!ばっかもーん!!」
レッドドラゴンのカミナリが落ちた。しかし一歩遅く、カイムの剣がレオナールにヒットした。脇腹にドカンといった。
「アウチ!!こ、これは・・・・素肌にダイレクトヒットする衝撃もなかなか乙ですね」
『さすが不審者、この程度では逆に喜ぶだけか』
「おぬしらがそれでいいなら、我はもう何も言わん」
一体誰が得をしたかと言うと、レオナールが。彼が新たな快感に目覚めてしまっただけのこと、それでいいじゃないか・・・・。レッドドラゴンはそう考え、やっぱりダメだろう。
我ながら前向きすぎる解決だと思ったが、なんで好意的に捉えてしまったのか。
『全裸の隠者よ、そのまま森に帰るがいい。お似合いだ』
「はっは、それもそうですかね。森林浴でもしますか」
「いや、服を着ろ!!」
怒りのドラゴンブレスがカイムと全裸の隠者を一掃することで、すべて丸く収まったと思われる。






レオナール、全裸のまま終了です。しかし動じないカイム。それでいいんです。自分とレッドドラゴン以外に興味ないから!(2010/5/3)
他にも詰め込みたいことがあったんですが、長くなるので後にします。武器物語の「剣士の剣」と「嵐神の閃撃」がイコールではないと思うんですが。関係ない旅人かわいそう!!

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