前回の続きです。レッドドラゴンひとなる小話。
カイム、幽霊を切ったり突いたりする。




赤い兵士をむりやり押しのけ、カイムとレッドドラゴンは砂漠の神殿に辿り着いた。敵を押しのけたり蹴り倒したのはもちろんカイムで、レッドドラゴンはその背中に乗っている。ここまで上下関係(位置の)が逆転した契約者も珍しい。
レッドドラゴンはやっと地面に降り立ち、青い顔で神殿を見上げる。乗り物酔い甚だしい。吐きそう。
「ここが砂漠の封印か。連合軍の兵士が一人もおらぬ、やはり襲撃されたか」
『ダニ共も一匹残らずいないぞ。どこへ行った』
「おぬしがさっき無理に突破したせいだと思うが・・・・」
後ろを振り向くと、置き去りにされた帝国軍の兵士達が追いかけてくる。割り込み厳禁です!先に神殿を占拠したのに、いきなりカイムに押しのけられた。
神殿の周囲には大きくて強そうな黒い兵士が関係者以外お断りしている。近付こうものならぶっ飛ばされてしまう。(すごく面白い格好で)
手堅い守り、来るべきカイムを待ち伏せしていたか、それとも神殿の内部を守っているのか。カイムは険しい顔で辺りを見回す。
『フリアエがいない』
大問題が発覚した。先に出発したフリアエの姿が見えない。
時すでに遅し、神殿は帝国軍の手に落ちた失態は火を見るより明らか、おそらくフリアエも捕らわれたはずだ。所詮この世のどこにも安全な場所は残されていない。
連合軍も帝国軍も行き着く先は同じ、女神と封印を守るか奪うかの違い。まんまと誘い込まれたわけである。
『どこだ、フリアエ!!』
「よせ、おぬしの声は届かん」
声なき声で怒鳴るカイムをレッドドラゴンが諌める。それにあんまり大声で叫ばれると耳が痛い。
「そうそう遠くへは行っておらん。行く先は分からんが追えば間に合う。まずはその前に、こやつらを突破せねばならんな」
二人の目の前に後ろに、赤い兵士が取り囲む。魔法は効かない。うかつに逆転を狙えば魔法を反射されて痛い目を見る。
『ようやくダニ共が出て来たな。一匹残らず駆除してやる』
レッドドラゴンを背に守り、カイムはカイムの剣(武器)を構えた。その時、レオナールの声が聞こえてきた。本人はまだ遠くにいる。
「カイム、魔法は効きません!!フィニッシュブローですよ、フィニッシュブローで攻撃す」
シャットダウン!!ダニ共は焼却処分だ!!』
「アドバイスくらい聞けー!!」
そもそも声をシャットダウンできるのかとレッドドラゴンはびっくりした。その証拠にレオナールの声はそれっきり消えてしまった。可哀想なレオナールの話。
カイムはいきなりブレイジングウェイブ(魔法)で目の前を薙ぎ払う。もちろん反射されてダメージを食らうが、復讐鬼そんなこと気にしない。頓着なさすぎだろう。
レッドドラゴンはカイムを盾にして無傷だが、こんなギリギリのハイリスク・ローリターン戦法は認めたくない。
「魔法を使うなと言っただろうが!おぬしは何を聞いて生きているー!!」
『案ずるな、生きている』
「結果的にな!!」
赤い兵士も驚きを隠せない。いきなり魔法ですよ?ええ・・・・この赤いヨロイがあれば魔法を反射できると聞いたんですが、ええ、突然なんでビックリしちゃいましたよ(笑) 完全に反射できるわけじゃなくて、ちょっと痛いんですよね。あ、着てみますか?いやいや、冗談ですよ(笑) 自分、この仕事に命かけてますからね!(封印騎士団新聞のインタビューより)
初仕事に命を懸けて挑んだ赤い兵士Aは吹っ飛んだ。ああ、これってちょっと痛いんだ・・・・というわけで、カイムの正面に活路が開けた。
『今だ!!』
「本当に今か!?」
レッドドラゴンを抱えて走り出す。魔法を受けてよろけた赤い兵士はもれなく蹴り倒していく。両手が塞がっている時に足でドアを開けるラフな感じで。しかも容赦ない。
神殿の封印がすでに壊されているかは定かでないが、帝国軍をのさばらせておくわけにもいかない。しかしフリアエを探す方が先決だ。
その逡巡がカイムの油断を生む。振り払った赤い兵士が一斉に襲い掛かってきた。
『邪魔をするな!!』
フィニッシュブローの一閃で近くの兵士を薙ぎ倒すが、いかんせん数で押される。攻撃が届かない後続の群れがなだれ込んでくる。もう大混雑。押さないで下さい!
判断力を失った赤い目の兵士は、判断力がないなりに考えた。
話には聞いていたが、大きなドラゴンも今は等身大である。そんな、声まで変わって・・・・。カイムには敵わないので、その傍にいるレッドドラゴンを捕まえる。
「カイム!!」
レッドドラゴンは咄嗟に手を伸ばしたが届かなかった。間に割り込まれ引き離されてしまう。しかしカイムが黙っちゃいない。
『おさわり厳禁!!』 ゴス!!
赤い兵士の頭頂部にゴスンと剣が振り下ろされた。さよなら、初仕事・・・・。剣にかすめられたレッドドラゴンは息の根が止まるところだった。
この赤い兵士はのち、普通の黒い兵士に降格されたのであった。(空中要塞の辺り)

ドスドスドス!!ドスンバタン!散れ!!キャー!!

残りの兵士を斬ったり突いたり踏んだり蹴ったり、カイムはレッドドラゴンを取り戻す。
『危ないところだった、俺が』
「我も相当危ないところだった」
レッドドラゴンと離れたらレッド欠乏症で死ぬカイム。怒る意気地をくじかれたレッドドラゴンは乾いた声で答える。怒りに力を回すほどの余裕がない。
『フリアエを奪われた以上、この害虫共を生かしておくわけにはいかん。フリアエを追う前に皆殺しにしてやる』
元気のないレッドドラゴンとは反対に元気いっぱいのカイム。その元気の源が殺戮衝動でなかったらもっとよかったのに。
その時だ。契約者の声が聞こえてきた。カイムは当然のように無視したが、レッドドラゴンが気付く。
「お待ち下され!!私は先ほどの神官ヴェルドレ。今まさに神殿の中にとっ捕まっている最中!!助けて下されば幸い」
「なんだと」
とっくにいなくなったものと思っていた人物の存在が浮上する。正直、フリアエの影に忘れていた。
「カイム、神官はまだこの神殿にいるらしいぞ」
『何どれと言うヤツか。フリアエを保護するなどと言っておきながら捕まるとは、とんだ役立たずだ。俺達はヤツの口車に乗せられた』
「まあ、口ほどにもないが・・・・」
そこは同意する。帝国軍の包囲にフリアエを放り込んでしまったようなものである。
「お願いです、助けて下さい!帝国軍の捕虜なう」
「割と余裕があるようだ。放っておいても害はないが、得もない」
『放っておくか』
「そんなことを言わずにお頼み申し上げる!それに女神は、」
「兄さん!!私はここです、帝国軍の捕虜なう」
『フリアエか!?』
契約者の声を遮ってフリアエの声が割り込んできた。声を妨害してきた。むしろ肉声である。ものすごい大声に、帝国軍の兵士達がビクッとする。今の大声、何!?
誘拐されたと思われたフリアエもここに留まっている。神殿の中から声が聞こえてきたので、おそらくヴェルドレと一緒だろう。
「女神は無事のようだ。神官はさておき、一刻も早く助けるのだ」
『何ドレはさておき、そうなれば話は早い。皆殺す!!』
活き活きとして皆殺しにかかるカイム。その活力、九割が殺戮衝動でなかったらもっとよかったのに。
『オラァアア!!』
「稀に見るほど活き活きしておる」
よかったのは、元気の残り一割がフリアエを助けるという理由であること。この一割がなかったらいつもと変わりない。神殿の入り口で護衛部隊と押し合いへし合い。やめて下さい!関係者以外立ち入り禁止ですァ!!
などとぼんやりしていると、再びカイムとはぐれてしまった。レッドドラゴンは一人でポツンと立っている。帝国軍のチャンス!チャンスなう!
「我がピンチであるな・・・・」
あっという間に周囲を塞がれる。カイムはと言うと、神殿の上でレイスを斬ったり突いたりしている。移動が早い。
と、そこへようやくレオナールとフェアリーが駆けつける。息切れでハアハア言っている。
「来たか!」
「お待たせしましたゴフェア!!と、徒歩はなかなかキツイですね」
「オッサンだからな・・・・」
すでに疲弊しているレオナールだが、彼の大量殺戮魔法によって駆逐される赤い兵士。出番すぐに終わるよオガーザーン。
「助かったぞレオナール。礼を言う」
「礼には及びません。ところでカイムはどこに・・・・」
「神殿の上で活躍中だ」
殺戮中なう。勢いで封印まで壊しそう。斬ってもあまり効き目のないレイスに対しブレイジンウェイブ、なう。
「最強のドラゴン様も人になっちまえばモロいもんですなあ。飛べないドラゴンはドラゴンですかー?」
「口が減らぬなフェアリー。しかし見くびるな。たとえ弱い人間に身をやつそうとも、こういうことはできる」 ギュー。
「ギャアアア!!ギブギブ!!なんかそれ嫌ァアア!!」
フェアリーを鷲掴みにするレッドドラゴン。フェアリーの嫌がり様は、詳しくはDエンディング。(自爆コース)
「ひー、死ぬかとおもた・・・・」
「口は災いの元ですよ」
「だが、戦えぬ我にできる術は何もない。分相応に引っ込んでいるかと思った矢先、ここまで強制連行されたわけだが・・・・」
無理矢理カイムが連れてきたわけだが。ちょっと後先考えてない。
「そこで!レッドドラゴン殿によい物を持ってきました。護身のためと思ってもらえれば」
「先に言っておくが、我は武器など使えんぞ」
「そんな物騒な物ではありませんよ」
言いながら取り出すレオナール。そこへ理性を失った赤い眼の兵士達が群がってくる。なになにー?いい物ってなにー?
「今が絶好のチャンスです!」
「オレ様ちゃんは一応止めたからな、なっ!」
一応言い訳してからフェアリーも物品を取り出す。何これ。受け取ったレッドドラゴンは、純粋な疑問から尋ねた。この瓶に入った物、何?水かと思われた。
「なんだこれは」
「世界最強のアルコール度数(96%)を誇る蒸留酒、スピリタス」
「なぜ酒を・・・・」
「オレ様ちゃんに聞くなァアア!!そーれ、イッキ!イッキ!!」
「の、飲めるかァアア!!吐くわ!!」
ヤケになってイッキコールを繰り出すフェアリー、もちろん拒否するレッドドラゴン、すかさず火の元(チャッカマン)を差し出すレオナール。
「さあドラゴン殿、騙されたと思って!ファイアー!!」
「何が勇ましくファイアー!!、だ!!どうなっても知らんぞ!」
※真似しないで下さい。
ヤケになってスピリタス一気飲み、ではなく口に含んでから、アルコールぶっ飛ばしてファイアー。簡易ドラゴンブレス。
周囲に群がっていた兵士達は、もれなく炙られた。表面をジュッと焦がされた。近くいたフェアリーもまつげがチリチリになった。眼球痛ァアア!!
まさか宴会芸でやられるとは思わなかったよオガーザーン。犠牲者と一緒に倒れ込むレッドドラゴン。
「に、苦ァアアア!!吐くわ!!」
「よかった、成功ですね!」
「喜ぶな!!」
「お悔やみ申し上げるぜよ・・・・」
「哀れむな!!」
『勇ましかったぞ・・・・』
「泣くな!!見ていたのかっ!!」
神殿の上から見下ろすカイム、目頭を押さえている。感動するところではない。しかもレイスに突き飛ばされて無様にこけた。こっちが泣きたい。
レッドドラゴンの偽ドラゴンブレス、思ったより成果が上がったようで、兵士達は一掃された。レア加減に焼き上がっている。お肉の状態こちらでよろしかったでしょうかー。
レオナールとフェアリーとレッドドラゴンの奇妙な連携技はさておき。
「帝国軍が退いたぞ。突入するなら今だ」
『フリアエ!!』
「階段下りるの速ァ!!」
レイスをざっくばらんに斬り飛ばし、神殿ピラミッドからダッシュで駆け下りてくるカイムを見てビクッとするフェアリー。
ビクッとしたまま黙っているわけにもいかないので、レッドドラゴンと愉快な仲間達も神殿の入り口に向かう。
「ここに神官ヴェルドレ様がおられるわけですね」
「捕虜だがな。割と余裕があったから生きているだろう」
「聞こえてたぜ、捕虜なう!って。捕まった分際で余裕かましてるヤツを助けるなんて怒れるわあ」
「人間とはそういうものだ」
『フリアエ!!』
さっきからフリアエ!しか言ってないカイム。他に言うことはないのか。
踏み込んだ神殿の奥もまた砂地で、捕虜となった二人がガッチリ掴み合っていた。互いの両手を全力でホールド状態。なんでレスリング体勢。
謎の状況を見ているカイムに気付いたフリアエは、拮抗のホールド状態からヴェルドレを投げ飛ばし、慣れた感じで砂地にヨロヨロッと倒れ込んだ。恐ろしい子。
『フリアエ!!』
いろいろ疑問に思うことはあるが、とにかくカイムはフリアエに駆け寄る。もうほんとにフリアエ!しか言ってない。声のみならず構文能力までどうにかしたのかと思われる。
「兄さん、来てくれたんですね」
『大丈夫か。ケガはないか』
「帝国軍の拷問・・・・とても恐ろしい目に遭いました。私はもうダメかもしれない。寿命が縮みました」
寿命が縮んだのはこっちである。女神の凄まじい演技力を見せ付けられたレッドドラゴンと愉快な略はゾゾッとした。
ちなみに投げられたヴェルドレらしきハゲたオッサンは頭から砂に突っ込んでいる。女神の腕力も凄まじい。寿命が縮んだとか絶対ウソ。
ちなみにフリアエが凶行に及んだ理由は、自分を差し置いて出しゃばるなという怒りの力。思いっきり肉声でカイムとの会話に割り込んできた。
「お二人共、無事のようですね・・・・」
「我は無事だと思っていた」
「今日も世界は平和です」 ←フェアリー
と、そこでフェアリーが気が付いた。カイムの謎のベルトのフックに何か引っ掛かっている。
「カイム坊ちゃん、何か引きずってるぞ。砂漠で引っ掛けたのか?」
『なんだこれは。見覚えのないハープだが』
「おぬし、そこまでハッキリ言うか・・・・」
言われないと思い出せないカイム。そう、イウヴァルトのハープだね。思いっきり目の前で見てたはず。(例 : 死屍累々の状況でハープを取り出していきなり歌う。IN女神の城)
「イウヴァルトが持っていたハープである。・・・・そう言えば、あやつも砂漠に向かったのだったな」
レッドドラゴンも思い出した、今。フリアエばっかりで忘れていた。圧倒的な女神の存在感。他の面々も、あー・・・・と思い出す。ちょっと記憶が曖昧。
ハープだけがあって、持ち主がいないとなれば。
「あれだけ息巻いておったイウヴァルトはどこへ行ったのだ?」
『失踪か』
「行方不明とは謎ですね。もしや、ハープを捨ててアカペラに移行したのでは?」
「いや、ちょっとは考えようぜ・・・・」
おそらく帝国軍に連れ去られたのだろう。ちょっと考えたら分かる。カイムはフリアエに尋ねる。
『フリアエ、イウヴァルトはどうした』
「さあ・・・・ちょっと分かりません」
「イウヴァルトは帝国軍に連行されました」
ヴェルドレからのアンサー。なんで分からないフリしたフリアエ。
「人質となったか。おそらくは女神をかばってのことだろう」
「そうだったかもしれません」
他人事のように言うフリアエ。ちょっと目に余ると思っていたイウヴァルト(注記 : フリアエの元婚約者) だが、ちょっと同情する。報われぬ。
しかも途中で逃げる余裕もあったフリアエだが、ちゃっかり捕まっている。計画通り。(悪い顔で)
『人質?しかし臆する俺ではない。イウヴァルトもフリアエを守っての最期、本望だろう』
「少しは心配しろ!」
テキトーなことを言うカイム。イウヴァルト?ああ、死体の群れの中で突然歌い出す人のことね。その時のインパクトが強すぎる。
イウヴァルトの安否よりまず、フリアエは無事だった。帝国軍に捕えられていた連合国の兵士達がゾロゾロと出てくる。意外とたくさんいた。
「ありがとうございますカイム様。そして並びにレッドドラゴン殿と愉快な仲間のみなさま、助けて下さり感謝です」
「己の性癖を隠して生きる者、略して森の隠者レオナール殿、ありがとうございます」
「先ほどのドラゴンブレス、最高でした」
「うわァアアア!!妖精フェアリーだァアア!!みんな気を付けろォオオ!!容赦なく罵倒されるぞォオオ!!」
「驚くとこ間違ってねーかァアア!!」
フェアリーだ、ヒィイイ!!と恐れおののく兵士達。もっと他に驚く点があるだろう。
捕まってた割に情報が早い。一体どこからどこまで見ていたのか。隠者のことは知ってるのにフェアリーを知らないってどうなってるの。
「オッサンは知っててもこのオレ様ちゃんを知らないとは、タコ!アサリ!!鮟鱇!!」
「ヒャァアア!!」
「ギャアア!!」
※鮟鱇。あんこう、内臓もおいしい非の打ち所がない魚。
罵倒文句が魚介類オンリー。特に罵っていないのに悲鳴を上げて逃げられる。フェアリーはまったく達成感のない表情で呟く。
「いい仕事したぜ・・・・」
「魚介類に迷惑な話であるな・・・・。まあよい、我々も一旦引き上げるとしよう」
レッドドラゴン、早くもイウヴァルトの存在を忘れている。安全第一、女神第一。
「そうそう、砂漠の封印はすでに破壊されてしまったのです。もっと早く駆け付けてくれればよかったのだが」 ザス!!
今頃大事なことを言い出すヴェルドレ。いけしゃあしゃあと文句を垂れるその頭頂部にカイムの剣(武器)が打ち下ろされる。神官の頭にいい攻撃入りました。
「ぐわあああ!!毛根にダメージが!頭皮にダメージが!!」
『毛根も頭皮も死んでいるヤツが何を言う。しかし、俺の剣を受けて死なないとは何者だ。謎だからもっと斬らせろ』
「やめんか」 ドゴス!!
スピリタスの瓶でカイムを殴る。復讐鬼の頭にいい物理攻撃入りました。
レッドドラゴンが言ってた、神官ヴェルドレは契約者だもっとも相手のドラゴンはすでに石化しているがな、と。引き換えに失ったものは・・・・誰も言わないが、それは優しさからではなく一目瞭然であるから。(答え、毛)
「封印の森に続き、砂漠の封印まで破壊された。残るは海上神殿だな」
これまでのまとめ。封印の森はフェアリーの里である。フェアリーの百万倍は罵詈雑言に定評のある妖精の王が治める土地だったが、封印解除を企む帝国軍によって焼き払われた。
「海上ですか。ならば帝国軍も容易には近寄れないでしょう」
「うむ。広き海の上、どこにあるかは知らんが・・・・。その封印は水を祀る神殿だと聞いたことがある」
ドラゴンネットワークで耳にしたことがある。空を飛ぶドラゴン族ならば世界を巡る内に見付けられる。人は近寄れないがドラゴンならひとっ飛びだ。
問題が露呈してくる。空を飛べないレッドドラゴンでは海上に辿り着くことができない。
帝国軍が封印に押し寄せたら最後、今のカイム達ではどうすることもできない。場所も不明なのでむやみに航海もできない。後悔してしまう。
誰もその重大な問題を口にしないが、沈黙が逆に事の重大性を際立たせた。嫌な沈黙に耐えかねたフェアリー。
「航海したら、後悔するな」
「ええ・・・・後悔する前に遭難しますね」
「そうなんです」
『フリアエ・・・・』
レオナールの苦し紛れのパス。そして最後まで〆たフリアエの肩に手を置くカイム。無理するな・・・・。
「とにかく戻るとしよう。封印が破壊されてしまったのは致し方ない。体制を整える方が先決であろう」
レッドドラゴンの言葉に異を唱える者はいない。しかし、静寂を破る新たな声が響く。
声は遠いが、その場にいた全員が耳に鋭く聞き取る。声は間違いなく契約者から発せられていた。レッドドラゴンは眉をひそめる。
「悲鳴・・・・ではないな」
絹を裂く様な叫びは常軌を逸脱した声音だが、助けを求める言葉ではなかった。
言葉の形を成さぬ声は人の喉から迸る騒音。狂った笑い声だと気付くまでにしばしを要した。息継ぎしてる?何しろ正気の沙汰ではない。
「なんとかしろよおー。これシャットアウトできねーのかよおー」
フェアリーが気味悪そうにぼやく。契約者の声は耳というか頭に直接響くので、聞く側も参ってしまう。一方レッドドラゴンは気合でなんとかした。
『何か面白いことがあったかもしれん。行ってみるか』
「絶対違うと思うが。我は気が進まんな」
面白いとか面白くないとか、縁遠いカイムが一番先に言い出す。どちらかで言ったら、面白くない方である。
もっと深刻に考えた方がいい。契約者?そう、イコール普通の神経じゃない人。
「神官としての役目を果たさせてくれぬか。ここは多数決を取る」
行く気満タンのカイムの肩を押さえるヴェルドレ。多数決を提案するのが神官の務めなのか。
「確かに、新たな契約者は我々の戦力になるかもしれん。しかしこの声は危険すぎる。行く者は挙手を」
「オレ様ちゃんはぜーったい行かねーぞ!」
「私も行かない方を選びたいですね。女神を危険に晒すわけにはいきません」
「我も行くことには反対である」
「私は兄さんについていきます」
『分かった。俺は敢えて行く。挙手!!』
五本の腕が挙がる。ジャッジメント、5対3で行くことになった。
カイムばんざい、レッドドラゴンばんざい、フリアエ含む。※ただしレッドドラゴンはカイムに無理矢理バンザイさせられている。ちなみに反則である。
「我を引き込むな!!離さんか!!」
『高いたかーい』
「はーなーせー!!」
強制たかいたかい。足が地に着いていない。腕がもげる。
カイムの反則技により、強制的に行くことになってしまった。しかし反対陣は納得しない。特にフェアリー。
「それでいーのかよッ!!なんとか言えよ神官長サマよお!!」
「これも神のお導き」
「髪の毛ねえーヤツが何をッ!!オッサン!!」
「世の中はマイノリティーに厳しい仕組みなのです。特にこの私、許されざるマイノリティーなる性癖を持った隠者には住み辛い世間、ここは耐えるべきだと思います」
「マイナー好きだよなあホント!!」
minor : 未成年者。
「どいつもこいつも役立たず!みすみす地雷踏むマネはしたくねーし。行くなら坊ちゃんだけで行ってきやがれ。オレ様ちゃんはここからテコでも動かねー!」
カイムはフェアリーを鷲掴みにすると、空き瓶に詰めて密閉。そして砂漠にポイ捨て。所要時間1.3秒。
『フリアエはここで待っていろ』
「兄さん気を付けて」
「我もできれば待っていたいがな・・・・」
そう言うレッドドラゴンを早くもおんぶ紐で背中に拘束しているカイム。所要時間0.2秒。早くも諦めているレッドドラゴン。
「では行くとしよう。迷える契約者を保護しなければイカン」
「私はここで女神をお守りしています。レッドドラゴン殿、これを・・・・」
レオナールは新たなスピリタスとライターをおんぶ紐の隙間にそっと差し込む。その差し入れ要らない。
「ちょっとおおおお!!オレ様ちゃんこのまま!?何これ、開かねー!!」
「これはちょっとテコでも開きませんね」
「輪ゴム使ってえー!!」
フェアリーの助けを求める声は無視し、カイムは徒歩で出発した。そのカイムにライドオンしたレッドドラゴンは頭がガクンガクンしている。もっとゆっくり歩いてえー!
「時速三キロ以下で、いや、せめて未満にしろ・・・・!!」
『これが俺の基本速度だ。ちなみにL1R1同時押しで水平反転できる』
「我が操縦するのか!?」
コントローラーどこ!?手綱がないも同然のカイムは早くも全力ダッシュ。
神官長?もちろん置き去りである。






ドラゴンブレスが復活したようでしていない、かわいそうなドラゴンのお話。(2011.01.14)
途中で気付いた間違いを修正せず、お詫びします…。本当は、フリアエは途中で逃げて、ヴェルドレだけが掴まっています。イウヴァルトはフリアエを庇ってうんぬん。
勢いでフリアエまで捕虜になってるんですが、見逃して下さい。「私を助けにくる兄さん」という設定ですね、女神。次は砂漠の牢獄でエルフ人妻とドキューン。
 
目録 | DOD小話。