前回の続きです。レッドドラゴンひとなる小話。
カイム、首を絞められるかもしれない。
赤の旋風 Crimson Gust
数百年前、赤装束に身を包んだ義賊がいた。悪徳商人から奪った財宝の使い道に迷った義賊は集めた金銀を溶かし煌びやかな斧を作り上げる。
初めは財宝の使い道に満足していた義賊であったが、斧がより豪華になるにつれ欲望に心を囚われ、罪のないものからも財宝を奪うようになった。
ある日、王国一の魔術師の屋敷に乗り込んだ義賊は一枚上手であった魔術師に捕まってしまう。真の義賊だった頃に戻るように促す魔術師。
しかし義賊の病んだ心はもう戻せないことを悟った魔術師は、彼の身を真紅の宝石に封じ込め、その自慢の斧に埋め込んだ。
(武器物語)
砂漠の端っこ。
辿り着いた捕虜収容所からは火の手が上がっていた。砂漠の牢獄。
赤い光が届くか届かない場所でカイムは立ち止まる。その背中に拘束されているレッドドラゴンはもちろんぐったりんこ。R1L1で水平反転する余裕もなかった。
『火事か』
「うぬぬ・・・・人間の三半規管というものが・・・・」
ドラゴンの時は飛んでも急転回しても直滑降してもなんともなかったが、今では上も下も分からない。そうですね、乗り物酔いですね。(乗り物 : カイム)
ヨロヨロしながらカイムの背中から降りる。燃える建物らしき残骸を見ると、どうやらただの火ではない。質が違う。
「これは単なる火事ではないぞ、精霊の仕業だ。一体どこから湧きおった」
精霊と言えば、ご存知フェアリー。そう、あの瓶詰めにされたフェアリーだね。(未だ脱出できず)
隠れ里のフェアリーは風の精霊。ここには火の精霊が降り立ったらしい。なぜ帝国軍の捕虜収容所に?
「帝国軍によって捕らえられている人間がいるはず。探すのだ」
『さっきの声か。ダニ共の気配はない、勝手に逃げるだろう。俺は無益な殺生はしない』
「正気か!?おぬしの精神に何か重大な欠陥が!?」
レッドドラゴンはびっくりしすぎてちょっと飛んだ。まともな発言に対し、自分の耳とカイムの神経を疑う。なん、だと・・・・!?
無益な殺生はしないて。世界が破滅してもカイムが言うことではない。そりゃ弱ったエルフをも足蹴にするよ。その言葉一体どこから出てきたの。復讐鬼ご冗談を。
『帝国軍のダニがいなければ用はない』
「・・・・敵は亜人だけだ。精霊は人間の負の感情に引き寄せられる。でなければこのような不浄の地に来ないだろう」
『分かった』
ホントに分かったのか分かってないのか。燃えている辺りを探し始めるカイム。
亜人とは、人間に近い姿をしているモンスターの総称。
ゴブリンや巨躯を持つオーガ、トロル、エルフもこの中に含まれる。より人間に近い姿を持つエルフは他種に比べ、遥かに卓越した美貌と心身能力を兼ね備えている。あと耳が長い。
エルフと言えば、思い出される事情がある。彼らの隠れ里は帝国軍によって破壊され、住人の多くが略取された。運よく逃れた一人は、カイムによって蹴られた。
帝国軍は何を目的にエルフを連れ去ったのか。おそらくろくな目的ではない。
レッドドラゴンがエルフ達の行方について危惧を抱く一方、カイムはどんどん違う方向へ進んでいた。
「って、おぬしはァア!!どこへ行く気だ!?山か!?山へ行きたいのか!?」
『違う、こっちに亜人共がいる』
「亜人はいい!いいから、収容所の中を・・・・ぬああ!!」
言葉が追いつかなくなったレッドドラゴンは追いかけた。徒歩でカイムを追いかけた。二足歩行のダッシュでカイムの後を追う。
慣れぬ二足歩行で、砂漠を疾走。レッドドラゴン、意外と速い・・・・物陰から見ていたゴブリン達が驚愕した。
「待てー!」
『こっちだ!意外と楽しい』
「我は楽しいわけあるかー!!」
レッドドラゴンが追いつく微妙な寸前でスピードアップを繰り返すカイム。いつもだったら焼かれるか尻尾で叩かれている。もしくは踏まれる。
調子に乗った復讐鬼ほど手に負えない。調子が乗らなくても手に負えないことには違いないが。レッドドラゴンはめまいが起きてきた。(急激な運動、酸欠)
こうなったらレオナール直伝・簡易ドラゴンブレスで焼いてやろうかと思ったその時、前を走るカイムが急に止まった。
「ぐあ!急に止まるな!!」 ドギャン!!
思いっきりカイムにぶつかる。衝撃が・・・・骨に堪える・・・・。
『何か踏んだ』
「何を踏んだと言うのだ・・・・ん?」
二人が足元を見下ろすと、カイムの足元に何かいた。だから何?
「帝国の兵士だな。なぜこんな場所に一人でいる」
辛うじて兵士だと分かる。スピードアップしたカイムに踏まれて、ちょっと大変なことになっている。
気の毒だが帝国軍には容赦の一ミリもないカイム。特に気にしない。
しかし、山中に向かう寂しい場所に一人だけいるとは妙だ。直後、疑問を解消するお知らせがマップに出た。
『宝箱が出現した。きっと武器が入っている』
「そういう段取りか」
宝箱出現の条件がこの兵士。兵士は犠牲になったのだ・・・・まさか戦わずに終わった兵士。まだ踏まれている。
ええ、上司にここにいろって言われて待ってたんですけど、まさか復讐鬼にぶつかってやられるとは思いませんでした。(笑)かっこ笑いでは済まされぬ過酷な労働。
『刃物と聞いたら黙ってはいられん。戻るぞ』
疲弊したレッドドラゴンを抱えて元来た道を戻る。なされるがまま搬送されるレッドドラゴン。もう・・・・こういう生き方でいいのだ・・・・。
燃える牢獄の傍を通り過ぎると、不自然に置かれている宝箱を発見した。これで回復オーブだったら、かっこ笑いでは済まされぬ。すぐさまオープン。
『出てこい刃物』
「刃物と言うか、斧であるな」
『斧か。フリアエにやれば喜ぶだろう。薪割りがラクになる』
「妹に!?なぜ女神にそんな重労働を課しているのか連合軍!!女神を守る連合軍!!」
連合軍の存在意義を空に向かって問い質すレッドドラゴン。大丈夫です、私、女神ですから。(女神のアンサー)
魔剣で薪割りをらくらくこなす女神。
ちょっと見たくない。帝国軍が見たら誘拐をためらってしまうほどの迫力である。
『フリアエが言っていた、働かざるもの食うべからず、と。自分にできるのは薪割りくらいしかないとな』
「女神に課す労働にしては重いのではないか・・・・」
女神、か弱い。その前提がぶっ飛んでいる。薪割りする前にご自愛なされ。
「斧はまずさておき。今のおぬしの存在意義はなんだ、捕虜を救出することではないのか」
『そうだったのか』
「今頃思い出すな!!」
カイムをせっついて炎の牢獄へ押し込む。大丈夫、これくらいで復讐鬼は焦げたりしない。厳しいドラゴンブレスを耐え抜いてきた耐火性は並じゃない。
一応は火を避けながら進む。壁はすでに焼け落ちているが、燃え残る柱や炎そのものが迷路を成している。レッドドラゴンはカイムを盾にして後から付いていく。
どんどん炎の勢いが増していく。熱源に近付いているのだ。
「よし、精霊の居場所は近いぞ。そこに人間がいるに違いない」
小部屋らしき空間に辿り着く。元は牢であっただろう場所だが、壁も檻も吹き飛んでいる。黒い煤にまみれたの地面には一人の女がいた。
『あれが人間か』
「うむ・・・・」
二人は部屋の入り口だったところで立ち止まる。どうにも入りづらい。
女は精霊に囲まれながら止まらぬ哄笑を迸らせていた。どうにも近寄りづらい。聞こえた声と同じ声だから、本人には間違いはない。
いろいろ疑問はあるが、人間ではなくエルフだった。ご存知、耳が長い。エルフでも契約者の対象に選ばれるのか疑問だが、それもさておき、精霊は単体ではなく二体いた。
正気を失った笑い声を上げる女エルフはそこから依然として動かないが、精霊達が先に振り向いた。火の元である。
『火の元と、あの水の塊はなんだ』
「精霊サラマンダーと精霊ウンディーネだ。見ての通り火と水の精霊であるが、一対で行動を共にする」
『火と水同士で消えないのか』
「精霊とは気難しいのだ。我らが関与するところではない。世の理とはおぬしら人が考え得るだけではないと知れ」
『そうか。笑える』
「今の話に笑いどころがあったか!?」
レッドドラゴンの説明を勝手に笑い話にすり替えるカイム。この人には話も常識も通じない。いつもだったら三回ドラゴンブレスで焼かれている発言である。
「我々はエルフと契約を果たした。見知らぬ契約者よ、何用だ」
全身に火の粉をちりばめた赤い精霊、サラマンダーがどこからか厳かな声を発する。人の形をしているが口がない。同じく人型のウンディーネだが、無言でエルフの傍を漂う。
何をしに来たと言われれば、声が聞こえたので契約者を仲間に引き入れるために来たと答えるしかない。
『火事場から声が聞こえるので来た。その契約者をひっ捕らえ』
「ドラァ!!そこにいるエルフの尋常ならざる声を聞き参上した。我は危害を加えるつもりはない」
いきなり加害発言のカイムを横から突き飛ばしてカットアウト。エルフに危害は加えないが、危険の芽は摘んでおく。ひっ捕らえてどうする気だ。煮るの?焼くの?
『脇腹がへこんだ』
あっという間に戻ってくるカイム。今のレッドドラゴンにやられたくらいでは凹まない。石かなんかで殴った方がよかった。
サラマンダーの注意がカイムに向く。そう、注意すべきはこっちの方です。
「声を聞いたと言うことは、お前達は契約者か」
『契約というか見ての通り結婚している』
「コラァ!!我は帝国軍に抗う連合軍の者と契約したドラゴンだ」
カイムのアゴを下から突き上げてシャットアウト。こう、手刀的な感じで。レッドドラゴンの指が折れそう。
「ドラゴンだと。お前は人間ではないか」
「今はかくかくしかじか!!そういうわけで、我はレッドドラゴンだ」
『そして俺がその契約者、わが名はカイム』
「連合軍の契約者よ、事情は分かった」
相変わらず立ち直りが早いカイム、下顎は無事だった。レッドドラゴンの端的な説明により、サラマンダーは事情を理解した。こっちは飲み込みが早い。
しかし当の契約者、エルフは未だに状況を理解していない。目の焦点が定まらず明後日の方を見ている。精霊が主導を握っている、会話の。
見れば、エルフはぐるぐる巻きの拘束で縛られ、容易に手足を動かすこともできないようだ。捕虜収容所、恐ろしい。
「カイム、エルフを自由にしてやるのだ」
『分かった。この世のしがらみから自由にしてやる』
「違う!!縄を解いてやれと言っているのだ!」
剣を振り上げるカイムを寸前で止める。いちから十まで言わないと伝わらないのか。
エルフを縛る拘束を剣でブチッと切る。平和的な刃物の用途ですね。
ようやく鎮火の兆しを見せる瓦礫。帝国軍の廃れる箱物を見回し、レッドドラゴンはサラマンダー達に問い掛ける。
「この収容所はお前達が燃やしたのか」
「ここにいたエルフは連れ去られた。お前達の言う帝国軍か連合軍かは知らんが、人間によって爆破された」
ちなみに爆破よーい!発破ー!したのは連合軍。アリオーシュはぐるぐる巻きにされていたので逃げられず取り残された。
「やはり帝国軍はエルフを何かに使うつもりなのか。不穏だな。このエルフの名を聞いていなかったが、アリオーシュと言うのか」
彼女は何も語ろうとはしないで笑ってばかりなので、名も知らずにいた。
そう言えば笑い声が聞こえなくなっている。気付いたレッドドラゴンはカイムに振り向き、
「カイム、このエルフは、って首絞められてるー!?」
振り向いた先では、自由になったエルフ、アリオーシュがカイムの首を絞めていた。明らかに常軌を逸脱した光景である。
ミッドガルドの復讐鬼と呼ばれたカイムを標的に選ぶとは、頼もしいエルフだ・・・・。
『まさかこの俺の首を狙って来るとは。行く末が頼もしいな』
「明らかに頼もしい、が!!感心している場合か!!抵抗などしろ!」
未来に希望を託すより今の悪い状況を鑑みるべきである。首をゴキッとやられたら未来も将来もない。
「アリオーシュは家族を帝国軍に殺された惨劇から正気を失った。言葉は通じない」
『そうか。言葉が通じなければどうにもならんな』
「意外とおぬしと気が合うかもしれんな・・・・」
言葉が通じない同士仲良くして頂きたい。だったら同じく腕力に訴えればいいじゃない。
『よし、俺も負けじと抵抗するか』
「抵抗するのが遅いぞ!」
やっと抵抗を始めるカイム。狂気の契約者同士の対決。
しかもカイムは両手に刃物、さっき見付けたばかりの斧とカイムの剣(武器名)。どっちも危ないが、身の危険としてはアリオーシュの方が危ない。
なんだか忘れている気がする。レッドドラゴンはふと思い出した。人数が一人足りない。
「あやつはどうした。神官ヴェルドレはどうした。姿が見えんな」
『なにドレは、走っている内に置いてけぼりにした』
「なーにィー」
女神を保護しようと言っておきながら失敗した挙げ句、エルフを保護しようと言った張本人がいなくては話にならない。カイムだけでは話にならない。
砂漠ではぐれては再会することも難しい。空からは見付けられるが、今のレッドドラゴンにはできない。とりあえず暗い地平線を探してみる。
「まったく、一体どこで迷子になったのか」
「フゥ!!神官・参上!!齢七十二歳にして渾身のラストスパート、どうやら限界が近いようだ」
噂をすればヴェルドレ参上。汗まみれで足がガクガクしているが、元気なご様子で。
「無事だったか。どこかで行き倒れたかと思ったぞ」
「何を仰るレッドドラゴン殿。老いても枯れても神官、私も契約者ですぞ」
※ただし契約者のドラゴンは石化している。
「おお、カイムは契約者を発見したようだな。カイムの首を絞めているのが、その?」
「その。見ての通りエルフだ」
「何やら盛り上がっておりますな」
「盛り上がってるか!?どうだ!?」
さすが神官長、若い者達のぶつかり合いを邪魔しない。しかしこのままでは共倒れになる。レッドドラゴンはヴェルドレにヒジでぶつかる。
「早く止めんかっ!今となっては保護指定生物だぞ!!」
エルフはもはや存続危機に瀕したレッドデータ種族である。首を絞められたところでカイムは死なないだろうが、いつ刃物でアリオーシュに斬りかかるか分からない。
誰もあてにならないので、そこら辺に落ちている棒かなんかで叩こうかと思った。
アリオーシュを刺激しないようにそっと近付くと、何事か呟いている声が聞こえてきた。
「子供はいないの?なら、あなたで我慢するわウフフ」
「子供?」
謎の発言。正気を失ったアリオーシュは子供を殺そうとしている?
余りものでいいわということで、消去法で狙われたカイム。確かにカイムは子供ではないが。レッドドラゴンはカイム(絶賛・首絞められ中)に問い掛けた。
「ちなみにおぬし、年齢は」
『二十四歳』
「知らんかった」
「奇遇ね、同い年だわウフフ」
『だからと言って人の首を絞めていいことにはならん。入荷したばかりの斧で斬る!』
美しき未亡人(エルフ)と同い年だと判明したが、だからと言って争いが収まるわけでもなかった。とうとうカイムが斧を振り上げた。それって魔剣。
「お金大好き!!金銀財宝を奪えー!」
『喋る斧は要らん。こうしてやる』
「ギャアアアー!!」 ←斧
「ウオオオ!!」 ←ヴェルドレ
カイムが投げた斧がヴェルドレの顔を掠めた。斧は地面に埋まる勢いで刺さった。
「土に興味はNEEEE!!」
「あっという間に成仏したか・・・・短い出番であったな」
物欲に溺れ病んだ義賊の魂があっという間に消えた。この忙しい時に入手しただけあって、出オチという気も否めない。
あっという間に斧を捨て、カイムの剣(武器名)を振り上げるカイム。
『いくら戦力になるとは言え危険人物は生かしておけん』
「その言葉我が身に跳ね返ると思え」
同い年、危険人物、ちょっと他に類を見ない同士。しかしそこで、神官長の出番ですよ。
「お待たせしました、ここで私の出番!!」
「待たせ過ぎだ!!」
斧の恐怖から脱したヴェルドレがご自慢の杖を振り上げる。どこまで引っ張るのか。さっさとどうにかしてほしい。特にカイムの方を。
ヴェルドレはアリオーシュを刺激しないようにそっと近付き、封印の呪文を唱え始める。
「ク・アボーイル・レヴェ・ヴォーレー以下略!」
「省略するな!!効き目はあるのか!?」
「うっ。あああ」
「効いた!!エルフの荒ぶる心が静まったようだな・・・・」
封印の呪文が働き、アリオーシュの手がカイムの首から離れた。省略してもいいのか。
「ヴェルドレよ、これで大丈夫なのか」
「ひとまずのところは。今このエルフは心を失っていますが、命は助けなければ」
これで一安心。斧を捨てたカイムが戻ってくる。
『待て。まだ勝負は着いていない。首を絞められっぱなしで黙っていられるか』
「おぬしも少しは静まれ!!」
今度こそドラゴンブレスが火を噴いた。アルコールをぶっ飛ばされた炎でカイムが焦げた。表面からカリッと香ばしい匂いが・・・・
「焦げ臭いわ」
「急に冷静になったな」
アリオーシュの感想。特に香ばしい匂いではなかった。カイムが焦げてもしょうがない。
『やはり火力不足だ。本物とは一味違う・・・・残念だ』
「何が残念なのだ。我がドラゴンであったなら骨まで焼き尽くす気持ちだったぞ」
『分かった。ならば俺に直接火をつけろ。百歩譲ってこれで妥協する!!』
「妥協!?直火は妥協なのか!?百歩譲って悲惨な目に遭いたいのか!?」
『遭いたかった!!』
急に元気になるカイム。燃やされることに対してこんなに執念を燃やす人、見たことがない。ただしレッドドラゴン以外に燃やされたら復讐鬼と化す。
へんな会話をしている二人に、落ち着いていたアリオーシュの視線が動き出す。のみならず手が動いた。
「若い子がいるじゃないの」
「エルフが!?我の首を絞めるなああ!!」
封印によってカイムの首を諦めたはずのアリオーシュが元気を取り戻してしまった。
見た目は子供!中身は一万歳。見た目が重要なんですね。レッドドラゴンの首を狙いに行く。人間にとってこんな弊害があるなんて聞いてない。首を掴まれたレッドドラゴンは怒鳴った。
「ヴェルドレ!!まったく効いておらんではないかッ!!」
「おかしいですな」
「おかしいですな!?」
「ウフフ若い子の肉はやっぱり違うわあ~。今夜のお肉はあなたでいいわ」
『 異議あり!!その消去法による発言断じて許さん。俺は生まれる前から決めていた!!前世辺りから!!』
「気持ち悪い思考に走るなバカ者!!」
首を絞めてくるアリオーシュよりカイムの方にゾクッときた。激情に走りすぎである。
レッドドラゴンは吠えた。
狂ったアリオーシュを千切っては投げ (比ゆ表現)、剣を構えるカイムを千切っては投げ (比ゆ表現)、おそらく呪文を以下略したことが原因であろうヴェルドレを投げ飛ばし (現実)、ハイパーお説教タイムです。
「静まれーい!!絶滅危惧種のエルフだからと言って甘やかさんぞ!我は食肉ではない!!」
『ちなみに俺は肉食だ』
「人間だからと言って図に乗るな!!野菜も食え!」
「かく言う私は菜食主義者でしてね。ドレッシングは主に焼肉のタレですが」
「それがどうしたァアア!!」
各自の食の方向性など聞いていない。レッドドラゴンは吠えた。今度こそ自力で火を噴きそうになった。その激昂をカイムが止める。
『落ち着け。髪が乱れるぞ』
「・・・・・・。分かった、おぬしらの方向性を組み合わせて解決する。カイムはヴェルドレを焼いてアリオーシュに差し出せ。ただしアリオーシュは文句を言うな。それですべてがよくなる」
『分かった、任せろ』
「私は急用を思い出したので、これで失礼をば」
「高齢者に興味はないわ」
保身に余念がなく超特急で逃げるヴェルドレ、逃げる者は反射的に追いかけるカイム。ちなみにブレイジングウェイブで焼く。
興味を示さないアリオーシュはその場に留まる。ということは。
「・・・・我がピンチであるな」
「ウフフ。こんにちは柔らかお肉!」
砂漠をダッシュで駆け抜けるレッドドラゴン、若いお肉に目がないアリオーシュがエルフの駿足で追いかける。これを狂った食物連鎖と呼ぶ、いろいろと。
追い付かれるのは時間の問題だが、気付いたカイムが戻ってきた。
『ピンチに颯爽に登場、俺!!』
「助かった!!が、ギャアアー!!」
なぜか肩車でレッドドラゴンを連れ去る。きっつい。これはきつい。(レッドドラゴンが)
『危ないところだった。あのエルフは肉食のようだ、ここは退却する』
「もう少しまともな退却はできないのか!?しかも置き去りにしてどうする!」
『追いかけてくるようだが』
後ろを見ると、アリオーシュが満面の笑みで走ってくる。狙いはレッドドラゴンのお肉。
「世界の食物連鎖の頂点に立つ我が、まさか食肉として見なされるとは・・・・なんという体たらく、無様すぎる。世も末だ・・・・」
『別に終わってもいいが』
「ちょっとは抗えーい!!」 ドス!!
カイムの頭めがけてチョップ。世界の終末に対する態度が軽すぎる。もう少し危機感に対して重い見解がほしい。何せ肉食エルフの脅威から肩車で逃げるほどの軽さ。
しかし、レッドドラゴンは考え直した。生きてるだけで素晴らしいんじゃないかって。肩車されながら首がガクガクしている己だが、よく首がもげなかったと思う。
いや、これそろそろもげるよ・・・・首だけどこかに飛んでいくよ・・・・。上下からくる衝撃がすごい。
「止まれええーい!!世界が終わる前に我の首が落ちる!」
『そうか。胴上げの方がいいか?そーれ、』
「ソイヤァアア!!」 ドスン!!
胴上げに移行する直前でカイムに制裁を下す。なんで逃げるために胴上げになる。
しかもこぶしでカイムの頭を殴ったら、手がボキッといった。分かっていたことだが激情に走ってしまった。
「いた、痛い・・・・」
『大丈夫か。殴るならこれからは石か何かを使え』
「怖!!おぬしの頭は石か何かなのか!?」
冗談ではない。カイムの言っていることは冗談ではないので、なおさら怖い。
そう言えば結構前から硬いなあ・・・・とは思っていたが、怒るたびにいちいち石を探すのも嫌だ。しかも砂漠なので砂しかない。
カイムの石頭と石の調達について考えていると、急に歩みが止まった。ダッシュで急ブレーキ。首がもげる。
『今の内に手頃な石を拾っておくか。砂を掘れば、どこかによさそうな石が・・・・』
「止まるな!!探すな!!走れえーい!!」
レッドドラゴンは空き瓶でカイムの頭をゴスゴス殴った。手頃な鈍器があった・・・・。
すぐ後ろまで狂気のアリオーシュが迫っている。百メートルくらい離れてみたら、あっ!とてもいい笑顔ですね。と言いたくなる表情だが。三メートルくらいまで近付いたら、あっ!すごく危険そうなエルフですね。
『解決したところで先を急ぐぞ』
「根本的な解決は程遠いが・・・・ヴェルドレが倒れているぞ」
『落ちているな』
「せめて文法くらい人間らしくしろ、人間扱いしろ」
砂の上で倒れているヴェルドレは、完走した走者の爽やかな笑顔だった。でもここゴールじゃない。
言わずもがな通り過ぎるカイム、さらにリアクションなく通り過ぎるアリオーシュ。この場合、カイムはフリアエくらいを持ってこないと立ち止まらなかったし、アリオーシュのストライクゾーンに適うくらいの人材でないと難しい。
レッドドラゴンも再び止まれとは言わなかったが、どちらも酷い・・・・契約者達の業の深さを改めて思い知った。
後日、「遭難者を投棄していかないで下さい。(帝国軍)」 との注意書きが立てられたが、当事者達が見ることは二度となかったという。(フリーミッション除く)
カイムとアリオーシュは同い年、という設定に驚きを隠せないまま迎えた2011年。(2011.05.18)
さらに自由な発言に磨きが掛かるカイムです。そうです結婚してます、前世から!もう危ない人ですね!元からだけど。そんで武器物語の重要性がなかったですね!
目録 | DOD小話。