前回の続きです。レッドドラゴンひとなる小話。
アリオーシュ、主婦のこだわりを発揮する。
(進行:アリオーシュの奇)
空を行くブラックドラゴンは豪速で海へ向かう。全員の前髪が頭皮からオサラバしてしまうようなスピード。
「ではここで、ヴェルドレ神官長様のお言葉を代弁したいと思います。抜ける髪があるだけ、いいじゃない。とのことです」
「オッサン、自重せよ」
ようやくレッドドラゴンの握力から解放されたフェアリーが呟く。現在はレッドドラゴンとレオナールの間に押し潰されている真っ最中。今何してる?って聞かれたら、圧搾されてる最中かな!って答えるしかない。そろそろ空中で胃袋が飛び出そう。
海の神殿に飛び立ったブラックドラゴンはそれっきり、背中の多人数に話しかけることもない。今話しかけられても、え!?何!?聞こえない!!
「それよか、神官長ヴェルドレじいさんは連れて来なくてよかったのかよ。封印が壊されたら修理できるんじゃないのか?」
「まともなことを言うな、フェアリー」
感心するレッドドラゴン。フェアリーは胃袋が飛び出しそうになった。
「オレ様ちゃんの他に、この多人数の中にまともなこと言えるヤツがいるかっつの!!ドラゴンの腹にでも括り付けときゃバレねーよ!」
「そんなことより、お腹空かない?ウフフ。カレー鍋を持ってきたのよ、主婦として」
最前列から振り向くアリオーシュ(フリアエ扮装)。全員はワッとなった。カレーに対する感動の声ではない。
超バランスが悪いドラゴンの背中で、突然の方向転換、しかも手放し、髪の毛バッサァ。多角方面から心臓に悪い。奥さん、ここ、空中ですよ。なんでカレー鍋を持参なんですか。あとそれ、食べられる肉ですか?
まず先に、すぐ後ろにいたカイムがとばっちりを食う。
『あっつい!!』
「カイム!?」
熱せられた鉄鍋が顔にジュッといった。レッドドラゴンはギョッとした。
「こんな上空で、鍋が熱い!?」
「ウフフ。サラマンダーの弱火でコトコトしてたのよ。とてもお肉が軟らかく煮えたわ」
「契約者としてあるまじき行為・・・・この法なき世界においても違法と言っても過言ではない。だが認めざるを得ないな。さすが火の精霊サラマンダー、火力調節ができるとは」
「文武火の調節はバッチリよ」
「ぶんぶか?」
「煮詰めすぎたらウンディーネで水が調達できるもの。まさに主婦の味方だわあ」
「そのための契約か?」
『熱い。早くどけてくれ』
狂気の瞳に主婦の一片を漂わすアリオーシュ、なんとなく納得しそうになっているレッドドラゴン、なおも鉄鍋を押し付けられているカイム。そろそろ焦げる、顔面が焦げる。上は大水、下は大火事、これなーんだ!って言われたら、今は契約者主婦アリオーシュとしか言いようがない。
レオナールは、それ食べられるお肉なんですか?と心臓に悪い問い掛けを発する直前、大変なことに気が付いた。
「カイム!!髪の毛が!!」
大変なこと。カイムの髪の毛ではなくて、後ろを向いたアリオーシュの髪の毛が後頭部からの風に乱され、エルフ耳がバッチリ丸出しになっている。
それを聞いたカイムが一番先にしたことと言えば、レッドドラゴンの髪の毛チェック。ちげーよ!とフェアリーが怒鳴り、アリオーシュを指差す。契約主婦のことだよ!
『前を向けアリ、フリアエ』
「何かしら」
『速やかに前を向け。とにかく俺の目の前からカレー鍋を離して、正面に向き直れ。そして俺に後頭部を見せろ』
カイムにしては珍しく詳しく喋った。話が通じそうで通じないアリオーシュを相手に、言葉による説得を試みた。そんなちょっとしたカイムの成長に、レッドドラゴンは込み上げてくる熱いものを抑えきれない。
「カイム、よくぞ成長して・・・・」
「ドラゴン様、泣いてる場合じゃねーっすよ」
「フッ。我も涙もろくなったものだな。あと胃袋がキュッとして何か出てきそうなのだが」
「それ吐き気!!ドラゴン酔い!!」
緊急ー!!と叫んでエチケット袋か何かを探す。レオナールが後方から箱ティッシュとビニール袋を差し出し、事なきを得た。
「乗り物酔いを防ぐためには、遠くを眺めると効くそうですよ。近くばかりを見ていると視界が大きく揺れますからね」
「それな。オッサンナイスアドバイス」
常に浮かんでいるフェアリーに乗り物酔いの辛さは分からない。だがよい助言だと思われる。
「ドラゴンだった時のことを思い出して、遠くだけ見てればいいんだよ。カイム坊ちゃんの背中ばっかり見てるから吐き気を催すんだよ。なんかよく見ると、いつかしらの血痕が付着してる・・・・」
「これはまた、別の気持ち悪さがありますね・・・・」
「恐怖、謎の血痕。さすがにオレ様ちゃんも引くわ・・・・」
「分かった。謎の血痕から目を逸らし、遠くを見ればよいのだな」
前方、アリオーシュの耳を髪の毛の中に押し込んでいるカイム。それは無視して。
視線を遠くへ向け、遥か海の彼方を凝視する。水平線、青い空、青い海、白い雲、黒い影。空を飛び回る無数の黒い影。
レッドドラゴンが声を上げるより先、ブラックドラゴンは察知している。太い声が告げる、そろそろ出て来る頃だろうと。
「エンパイア・ドラゴンだ」
遠くからでも聞こえる群れのはばたきが迫る。鳥の影よりも大きく、足場のない空中を木の葉のように舞い踊る。決して気まぐれな自由落下ではなく、空間を思いのまま行ったり来たりしている。
エンパイア・ドラゴンが縦横無尽に飛び回り、軽々と何百メートルの距離を詰めてくる。小さな黒い影はあっという間にブラックドラゴンの周りに蟠る。
水平線には赤い点がいくつも連なって見える。ドラゴンブレスに焼かれた帝国軍の船。縄張りを荒らされ、早くも報復を始めている。はやぶさの如き滑空を繰り返すエンパイア・ドラゴンは砲撃では仕留められず、帝国軍の戦艦は逆に沈められる。空から落ちた火球が海に着火する度、水柱と火柱が同時に立ち昇る。
眺めている場合ではない。遠くの火事より近くのボヤ。
巨大なブラックドラゴンに比べればカラスのようなサイズだが、小回りは侮れないよ、ちょっと。
ドオッと重低音が迫る。接近を仕掛けたエンパイアの群れがブラックの傍ギリギリをかすめ、後方へ飛び去る。ものすごい風圧で全員の髪の毛がオールバックになった。
ブラックは振り返りもせず、真正面から突っ込んできたエンパイアにドラゴンブレスを浴びせる。弾けた一匹は煤も残さず空中で四散する。
「羽虫が俺に挑むつもりか」
後方へ飛んだ群れは囮。次々と別の数匹が前方から迫り来る。
激しい揺れが巨大な背骨を揺さぶり、乗っているカイム達は堪ったもんじゃない。海に落下したらバカンスどころじゃないよ、今の状況。
生きた心地のしないレッドドラゴンはカイムの背中に叫ぶ。
「振り落とされるぞ!」
カイムはブラックドラゴンの表面を掴み、もう片方の手でレッドドラゴンを抱える。
『俺から手を離すな。アリオーシュも俺に掴まれ。後ろは創意工夫しろ』
「オレ様ちゃんは飛べるからいいとして、オッサン、さようなら。死なないとは思うけど溺れるなよ。オレ様ちゃんも死ぬからな」
「これもまた不甲斐ない私に課せられた試練というわけですね。水責めとは・・・・ワクワクするじゃないですか!!」
「イヤーー!!イギャーー!!両手を離すなーー!!」
「大量の水が私を待っていますよ!!今か今かと!」
「喜び過ぎだろ!?」
空中で諸手を挙げるレオナール、叫ぶフェアリー、耳を塞ぎたいが両手でカイムにしがみ付いているので地獄状態のレッドドラゴン。
『アリオーシュ、俺に掴まれ』
「ここはとても危ないわ。そうさせてもらうことにして、この鍋は諦めましょう」
エルフの耳を顕わにしたアリオーシュは冷静に、あつあつのカレー鍋をブラックドラゴンの上に置いた。ギャッと悲鳴。ブラックに熱ダメージ。
「い、ギャッ!!」
ドラゴンのぶっとい悲鳴が大空にこだました時、カイム達は大空に放り出された。
何もない空を切り、体が真下へ引きずられる。翼を失ったレッドドラゴンは気を失いそうになる。あまりの恐怖に体が硬直し、目を閉じられない。落下する最後が水面とは言え、確実に死ぬ!!
ダバーン!!と物凄い水音が聞こえた時、レッドドラゴンは確実に気絶していた。しかしすぐに目が覚め、息苦しい海中に潜り込んだ事態に気が付いた。
「がぼごぼ!」
『神殿の上に落ちることは回避できたようだな』
「ごぼごぼ!」
『海面まで十メートルほどのようだ』
「げぼげぼ!」
「ブクブク(アリオーシュ:実は私、泳ぎが得意なの。エルフの里のトビウオと呼ばれし私に任せなさい。ウフフ)」
「がぼがぼ!」
レッドドラゴンの苦しい断末魔と、契約者の声による会話をお楽しみ下さい。
しばらくして、アリオーシュの素晴らしいトビウオのような泳ぎが功を奏し、カイムとレッドラゴンは海面に引き揚げられた。
なんとか建造物の縁まで辿り着き、カイムはレッドドラゴンを壁面の梯子に捕まらせる。あるのか、ハシゴが。
『さすがだアリオーシュ。俺が見込んだメンバーだけある』
「あらやだウフフ。おだてても肉しか出ないわよ」
『肉は収納しておけ。大丈夫か』
「げーほげほ!・・・・生きてるのが不思議なくらいだ・・・・」
恐怖のドキドキが止まらず、胃が引っくり返って嘔吐感、飲み込んだ海水を吐き出す。ドラゴンの時は海に落ちたことがないので、こんなに辛いものとは思わなかった。体が干乾びるくらいしょっぱい。
『アリオーシュ、水を出せ』
「お肉?」
『水、H2Oだ』
さっきまでカレー鍋の水分調整を行っていたウンディーネ。レッドドラゴンの体に真水をザブザブ振り掛け、塩分中和。ようやく潤いが取り戻された。
辺りを見回す余裕はなかったが、近くに帝国軍の兵士はいない。エンパイア・ドラゴンとの戦闘に掛かりっきりのようだ。
高速接近したエンパイア・ドラゴンの急襲を受け、ブラックはドラゴンブレスで応酬した。しかしアリオーシュによるカレー鍋(灼熱の鉄鍋)にびっくりして背中の乗員を振り落とした。海の神殿に送り届けるはずの人間達、及び契約者達は、海に落下。
こうして振り返ると、バカみたいな経緯ですね。レッドドラゴンは空を見上げた。青空に踊る陰影、ブラックとエンパイア・ドラゴンの群れが空中戦を繰り広げている真っ最中にある。
神殿に辿り着いたからには、成すべき仕事が待っている。フォアリーに語った、嫌な予感が的中する。見えなくとも、感じる気配。
「ここには司祭が待ち受けている。「天使の教会」の司祭が出て来たのだ」
『俺達を殺すためにわざわざ出て来たのか』
「そうだ。だが、好機だ」
つまりは殺し合いの現場と成り得る舞台。黒幕の司祭が登場したならば、同じ意図を以てこちらから出向く。刺し違えてでも相手を殺さなければ、女神フリアエの命に関わる。
海上の戦艦を見渡す。上空のドラゴン戦とは対照的、不気味なほど静かだ。エンパイア・ドラゴンの攻撃がブラックに集中しているせいなのか、神殿の近くから逃げる様子もない。
視界の上下を交互に見やる内に、妙な動きが目に入る。おぞましい光景が始まろうとしていた。止める術がない。
「カイム!!」
レッドドラゴンの叫びを受け、カイムはアリオーシュの目を塞いだ。しかし一瞬遅れた。
赤い目の兵士達が甲板から身を乗り出し、担ぎ上げた荷物を海に放り込む。無造作に落とされたものが悲鳴を上げ、数秒後には水飛沫を上げ、ふっつりと声が途切れる。
断続的な悲鳴がいくつも続く。兵士達はエルフの子供を海に投げ入れていた。
みるみる内に戦艦の周囲が赤い海に変わっていく。もはや生存の見込みのないことは一目瞭然。子供達は剣で切り裂かれ、泣き叫ぶ間もなく、遥か下の海面へ投げ込まれてしまう。
たとえ海の中で生き延びたとしても、剣の傷がすべての血を吸いだす。兵士に掴まれても動かない子供はすでに死んでいる。
潮風に混じる血臭が空気を汚す。抵抗できない子供を感情なく処理する手際。カイムさえ手出しができない。数多の兵士を斬り殺した戦場とは、まったくかけ離れた別世界。
「なんという真似をしおった。戦争ではない、種族の虐殺だ」
レッドドラゴンがカイムの言葉を代弁する。
海の神殿の封印破壊の手段。奥深い山里に住むエルフの血、絶海の孤島、二つを隔てる距離という名の障壁が崩される。
帝国軍の襲撃を受けたエルフの里を訪れた時、子供の姿は一人もなかった。生存者も死体も消え失せていた。大人達が逃がしたり隠したわけではなかった。
アリオーシュは死の砂漠の牢獄に捕われ、子供達は故郷からまとめて攫われ、助けの手もなく恐怖に捕われた。こんな場所で殺されるためだけに、生かしたまま連れて来られたのだ。絶望の悲鳴と助けを求める泣き声が重なり、波消音に連なり、最後はドラゴンの咆哮に噛み砕かれる。
視界を遮るカイムの指の間から見えた惨状は僅かなりとも、世に現れた地獄の全貌を映し出す。子供達の絶叫がアリオーシュの耳に届く。
サラマンダーとウンディーネ二体掛かりでも吸い尽くせなかった狂気が噴き出す。アリオーシュはフラッとした足取りでカイムの腕を逃れた。
「アリオーシュ・・・・」
二人に背を向けた表情が見えない。レッドドラゴンの呼び掛けにも応じない。カイムは今一度を引き止めようとしたが叶わなかった。アリオーシュには目の前しか見えない。素早い動きで海へ飛び込み、赤い水域を掻き分けながら泳いでいく。
空振りした腕を下ろし、カイムは眉根に皺を寄せる。生き残ったエルフが再び死地へ赴いた。
「もうよい。アリオーシュのさせたいようにするがいい」
『生きては帰らないぞ』
「死ぬのなら、選び取った末だ。止めるな」
運命と言いかけ、レッドラゴンは口を閉ざす。
アリオーシュは最初からこの地獄に捕われ続けていた。己が生き永らえた世界へ戻っただけだ。失われた子が待っている道をひたすら辿り、自らの心に従う。
水に溺れた甲高い声が聞こえる。赤ちゃん!私の赤ちゃん!と、発しながら。
現実とは隔離されたところから鳴り響く絶叫。聞く者は戦慄した。赤い目の兵士は動きを止め、カイムは見送り、レッドドラゴンは感情を殺した。
ドラゴンは他の種族にまったく関わる存在ではない。しかし、か弱き命が罪もなく奪われていく様を直視し、こころよいとは考えない。翼と炎があれば、残虐な仕打ちを止めることができた。そう思うのは、不甲斐なさから来る一時の気の迷い、憐憫だろうか。
できないことを想像しても、成せる手立てはない。レッドドラゴンは無言のまま、海の惨劇を看過する。
『俺の魔法で戦艦を沈められる』
カイムは魔剣を構える。ゆりの葉の剣は光の刃を前方に撃ち出す魔法、バスタードウィングを使う。
カイムの剣(武器名)のブレイジングウィングと似ているが、これは炎の魔法なので、間違いなく爆発する。当たった瞬間に、文字通り戦艦が沈む。いろいろ使ってみたけど、結局はブレイジングに落ち着くよね、という使い勝手のよい魔法。
どちらにしろ戦艦にはダメージを与える。赤い目の兵士は身を省みないが、エルフの子供達は溺れて死ぬ。また、目視さえ難しい場所から敵兵士に魔法がヒットする保証はない。
ドラゴンもカイムも人助けはできない。エルフの里が襲撃に遭った時、今の瞬間まで、帝国軍の企みを阻止できなかった。代償は計り知れない。
「神殿の結界が消える」
海から溢れんばかりの血溜まりが波に弾け、潮風が逆流する。血の霧が掛かっていた視界が音を立てながら晴れる様が見て取れた。
自分達が立つ地面とは別の建造物が蜃気楼のように現れた。海に対して平面の広さは驚くほど巨大だ。代わりに高さはなく、海抜いくらもないほど平たい。人の手に因って建設された封印の神殿。
神殿自体が複雑な紋様を表し、絶海の真ん中に発見したとなれば、不気味な芸術を生み出す。周囲には群れ成すエンパイア・ドラゴンが巣食う。
カイムは足元と遠くの神殿を交互に見やる。ここはどこだ?
海の神殿だと思い込んでいた。色褪せた神殿とはまったく違う、真新しい硬さが残る。
『帝国軍の要塞だ』
「これが?海の中に・・・・島を造り替えたのか」
海の神殿近くに存在する島に手を加え、帝国軍の駐留地として機能している。船の発着所をいくつも拵え、まさかと思われる海の側から急襲を仕掛けてきたのだろう。疲弊した連合軍など、背後からあっという間に破壊される。
巨大な二枚貝が上半分だけを海上に浮かび上がらせたような造形。だとすれば、下半分が海中に没しているはずだ。
司祭の姿は見えなくとも、この海上要塞の地下で手をこまねいている。なんとなく分かる。レッドドラゴンはギュッとこぶしを握る。
「司祭を倒せば、我はドラゴンに戻れる。なんとしても逃すな!」
力強く断言した時、後ろの方でザバーッ!と水音が聞こえた。振り向くと、ずぶ濡れの人影。
「ギャーー!!うわー!?」
レッドドラゴンはびっくりしすぎてカイムにぶつかる。カイムは躊躇なくゆりの葉の剣を振り切った。
「成敗!」 ザス!!
「うはあ!水責め直後の物理攻撃はご褒美です!!」
「ウットリ喜んでんじゃねーよオッサン!!」
ブラックドラゴンから転落したレオナールとフェアリーがようやく上陸。そしてレオナールは即座に斬られた。フェアリーはびっしょりな体でハアハア言う。
「ああ、もう、死ぬかと思ったぜ・・・・このオッサンがなかなか予想以上にしぶとくて、リザルト的には助かった・・・・」
「契約者はなかなか死なんからな。リザルト的にはよかったではないか」
「初心者には厳しい試練だったようですね」
海水と鮮血を滴らせながらピンシャンとした足取りで向かってくるレオナール。契約者なので丈夫、大丈夫。可愛くて可憐が売りのフェアリーは憤怒の表情で咆哮する。
「なーにーがー初心者だッつーのッ!!黒の竜の背に乗って浪漫飛行中にイントゥザブルーして死ぬ目に遭う体験は二度としたくねーっつーの!」
「海水は私も初めての体験でした。しかし、海中十メートルに没した瞬間の水圧がなんとも言えず、超よかったですね」
「超よかったですね!?」
「ヤバイ?みたいな」
「みたいな!?」
隠者の軽いノリに付いていけず、フェアリーは血を吐いた。海水とゆりの葉の剣のダメージが一気に来た。対するレオナールは爽やかな表情。
「何事も経験です。経験値が人を成長させると、私は信じます」
リザルト的な哲学。ミッションが終了した時の、経験値取得画面。
話の経過的にもそろそろリザルト間近。なんと言っていいか分からないレッドドラゴンは、カイムに話の矛先を振る。
「ではカイム、まとめてくれ」
『マジウケ』
「マジウケ!?」
カイムの軽い締めに付いていけず、レッドドラゴンの口から小魚が飛び出した。飛び出しただけに、トビウオ。
(2017.1.5)
DOD小話