前回の続きです。レッドドラゴンひとなる小話。
レオナール、見えてはいけないものを見てしまう。
(進行:アリオーシュの奇)



アリオーシュの生還はすでに諦めていたので、その活躍ぶりは予想外だった。予想外に元気、想像以上にアクティブ、前代未聞のプログレッシヴドラマチックアクション。
狂ったエルフの跋扈によって、戦艦は上へ下への大混乱らしい。上下左右、縦横無尽、通常攻撃三連斬りからのフィニッシュブロー。一方こちらは、ブラックの声が追い討ちを掛けてくる。
「女神はどこだ。さっきまでいたはずだ」
「ちょっと黙ってくれ。惨事が・・・・」
『何時?』
「三時だ!!」
そうね、大体ね。午後三時。なんで惨事を三時だと思った、特にカイム。カイムらしからぬ平和な通常変換。
「カイム。今すぐ戦艦に乗り込んで、アリじゃなくて、フリアエを連れ戻してくるのだ」
『最期は好きにさせてやるんじゃなかったのか』
一応ひそひそ声で話し合う。都合よく戦艦の方から大爆音が轟き、ドーン!バーン!ギャー!オタスケー!などの悲鳴も上がり、ブラックに届く声を妨げている。
「ブラックの狙い、もとい司祭の狙いは女神だ。女神の存在がなければ要塞に入ない。司祭のかけた呪いを解かなければ、我はドラゴンに戻れんのだ」
『戻りたいのか?俺はどちらでも構わんが』
「かまえ!!ドラゴンでなければ戦えんだろうが!おぬしは誰と契約したと思っている!?この、我が!」
バン!と胸を叩くレッドドラゴン。この、地上最強なおかつ空中戦においてもプログレッシヴなアクションを可能とする生物最強なレッドドラゴン様であるぞ。プライドの高さは成層圏を突き抜ける。
「よっすよっす!無敵のドラゴン殿!無敵に素敵!」
「イエス!火炎で薙ぎ払う様ドラゴン様!!ウェイウェイ!」
合いの手を入れるレオナールとフェアリー。真剣な表情だし、いい感じの後押しだが、ノリが軽すぎる。もう一声!
「はいはいはい!司祭の呪いで非力な少女!だけど中身は1,000歳ドラゴン!繊細な神経で逆ギレモード!!マジで乗り切れ非情な現状!」
「ヘイヘイヘイ!飲んじゃってノッちゃってドラゴンファイアー!いつか夢見るマジギレブレス!多重なロックオンで焼き切るブレス!ヘイカモン!」
キメ決めポーズでカモンと言われても。中腰の両手鉤爪ポーズでキメられても困る。もうこの多重殺戮魔法の契約者ペア、ノリノリである。
とにかく、カイムに対してドラゴンの強さをアピールしないことには。人間モードのままでは、カイムがよくてもその他大勢が困る、特に本人のレッドドラゴンが。ドラゴン不在でAtoEエンディングは迎えられない。
『分かった。アリ、フリエアを連れ戻してくる』
「分かってくれたか・・・・くれぐれも、頼むぞ」
この、頼むぞ、の一言にすべてが集約されている。カイムも分かっている。ブラックに向かって言い放つ。
『俺はこれから女神を回収してくる。何があっても途中を見るな』
「何が起きるのか知らんが、そう言われては興味が湧くな」
『そう言うだろうと思った。だが見せるわけにはいかん。待っている間、回想エピソードでも楽しんでおけ』
言うなり、カイムはザブンと海へ飛び込んだ。戦艦までの移動手段、やっぱり水泳なんだ。すごい水陸両用契約者。
残されたレッドドラゴン、レオナール、フェアリー、ブラックドラゴン。この上なく気まずい。誰の回想エピソードを披露するかって?決まってるじゃない、レオナールのだよ。彼は沈痛な面持ちで咳払いする。えー、マイクテス。
「では、しからば。私がフェアリーと出会う前後をお話しましょうかね」
「レオナールとフェアリーの出会いか・・・・我も知らんが」
「闇が深い!!しからばおのずとヤバイっつーか、とにかくヤバイ!!
フェアリーの言語能力が限界を迎えるほどにヤバイ。闇の深さナンバーワン、エピソードナンバーワン。
在りし日の狂った宴・エピソードを今、挿入する?挿入されなさるの?
フェアリーは全身全霊に気合を入れた。ヨッシャア!!
「うなれオレ様ちゃんの筋肉!くらえ!全身全霊の画面外押し出しアタック!!」
「おっと、その技は見切りましたよ」
レオナールは身軽なバックステップ(回避)でフェアリーのアタックを無に帰す。しかし熟練の契約者同士、そんな回避は最初からお見通しだ。
「あっ!!海のど真ん中にマイクロビキニの少年がいる!!」
「えっ!?どこですか!?」
「こっちに手を振っている!!」
「見えました!!」
「今だブーメランアタック!!」 ドスン!!
海のど真ん中(どこでしょうね)に注意が逸れたレオナール、その隙にすかさずブーメランアタックをくらわすフェアリー。全身全霊のブーメランアタックを受け、レオナールは海に落ちた。
彼はとてもいい笑顔で海中に没した。見えたんだ、こっちに手を振っているビキニ少年が。レッドドラゴンはゾッとした。彼は、見えてはいけないものが見えてしまったのだ。
ひと仕事終えたフェアリーは指二本を立ててバキューン、略式敬礼。海のど真ん中に向かって苦い笑みを送る。
「あばよ、オッサン。まぼろしのビキニ少年に抱かれて眠りな・・・・」
「海に葬らねばならない過去があったのだな」
「契約者ってのは、そういうモンなのさ」
真面目な顔で何を言ってらっしゃる、このフェアリー。一番海に葬り去りたいのはこの自分さ。内心、激しくドキドキしている。
森のど真ん中にヤバげな人間がいると嗅ぎ付けて、ノリで契約したのが最後、予想外にヤバイ人間だったから。アリオーシュよりもこいつの方を砂漠の牢獄に縛すべきであると、直近でひしひしと感じている。いい加減に落ち着いてよ、オッサン。血の海のど真ん中にマイクロビキニの少年がいるわけないでしょ、そうでしょ?海のど真ん中(だからどこでしょうね)に向かって絶叫する。
「しっかりしろ、オッサーーン!!」
契約する人間まちがえたーー!!




(2018.11.2)


DOD小話