十一章第、リテイク集。
「天使は笑わない。天使は起こしてはならない・・・・」
「うっ・・・・」
空中要塞、祭壇。そこにカイムとフリアエはいた。そして幼い司教、マナが現れる。
無邪気な表情に不気味な赤い双眸を湛え、子供のものとは思えぬ声を発しと共にフリアエを突き飛ばす。触れもせず、どうやって。カイムもまた、突然の経緯に手が出ない。
天井に伸びる柱に背を預け、不可視の力によって押さえ付けられるフリアエ。そこへマナが責めを始める。
「ラララララ、ララ、ララララ・・・・私は女なのに。普通の女なのに。どうしてこんな・・・・ちぇっ、ちぇっ、クソが!」
「やめて・・・・」
苛立たしげに、心底楽しそうに罵りを続けるマナ。心の内を暴かれ、フリアエは苦しげに身をよじった。
心身共に清廉でなければならない女神にあるまじき思いが並べ立てられる。マナは彼女の閉じられた部分、もっとも脆い点をいとも容易く突いた。
他人の口から語られる自分の本音、聞きたいはずがなかった。耳を塞ごうにも腕を押さえ付けられ、身動きが取れない。カイムはマナの狂気じみた言動に圧され、振り上げかけた剣を引かざるを得なかった。
「再生の卵」を出現させる為には五つの封印をすべて破らなければならない。四つ存在する世界の封印と、最終封印である女神。すでに解かれた前者に合わせ、残されたフリアエが自らの命を絶てば今の世界は終わる。
あとは、女神フリアエのみ。
彼女を絶望の淵に追い込むのだ。二度と立ち直れぬ醜態を暴いてみせるのだ。
フリアエの心はもはやマナの目の前に晒されている。楽しそうに笑い、なおもマナは歌い続けようとする。
「封印が何だってんだよ!私を助けろよ!役に立たない男ども・・・・うぐっ!!?」
マナの体がビクッと竦む。快活だった喋りもそれっきり止まってしまう。
役に立たない男ども、でどうした。その続きは?カイムは続きが気になってしょうがなかった。(妹は?)
「どうしたカイム。司教の「声」が聞こえなくなったぞ」
外で待機しているレッドドラゴンが問い掛ける。そんなことを言われてもカイムにも分からない。
『舌でも噛んだんじゃないか』
「そんなワケがあるか!!ええーい、今の内に女神を救出せぬか。好機だ」
『いや、待て。さっきの続きが気になる。もう少し』
「我の炎で骨の髄まで焼き尽くされたいかこのバカ者」
『すいません』
当のマナは青い顔でガタガタ震え、白い顔にはビッシリ冷や汗が浮かんでいる。舌を噛んだだけではこうも酷くならないだろう。カイムは自説を却下した。
マナはひとしきり震え、打って変わって弱々しい口調を紡ぐ。
「こ、この女の心・・・・うう、自主規制ー!!!あんなコトやこんなコトなんて言えないよオガーザーン!!」
「あら・・・・子供にはまだ早かったかしら。あんなコトやこんなコト」
『司教が逃げた』
「女神、おぬし一体何を考えていたと言うのだ・・・・」
泣きながら逃げていくマナの背中を見送り、カイムは「続きは?」と思った。聞かない方がいい。
撮り直し。テイク2
「天使は笑わない。天使は起こしてはならない…』
「うっ・・・・」
「ラララララ、ララ、ララララ・・・・私は女なのに。普通の女なのに。どうしてこんな… ちぇっ、ちぇっ、クソが!」
「やめて・・・・」
「封印が何だってんだよ!私を助けろよ!役に立たない男どもめ! 助けてください。お願い。助けて。抱きしめて。お兄ちゃん」
「いや!」
心の深層を暴かれ、フリアエは叫んだ。誰の目を見ることもできず、自ら双眸を閉ざす。
女神は揺るぎなき封印の枢軸で在る為に、心身共に純潔を守らなければならない。しかし行き過ぎた束縛は心の平穏を徐々に乱していく。抑制された心は圧迫された箱の中で反動を付けて膨れ上がる。
「わたし、あなたの心が読めるの。ふふ、うふふふふ!」
もっとも暴かれたくなかった本音を明かされ、フリアエの口調は徐々に沈んでいく。
「違うわ、私・・・・そんなこと思ってない」
反対にマナの口は一層滑らかにエスカレートする。神のように人の心を覗き、子供の無邪気さで以て人の心を抉り立てる。この世でもっとも忌むべき存在。カイムは剣を握る手に力を込めた。
あと一歩でフリアエの心は落ちる。
最後の一手を繰り出そうと、マナは口を開く。が、フリアエが遮る。
「私、そんな生易しいこと思ってない!!」
「めがみー!!?」 ←マナ
「女神ー!!?」 ←レッドドラゴン
『フリアエだな』 ←カイム
一斉に叫ぶ三人。カイムは納得しているが。
「私、そんな生ぬるいこと考えていません。前言撤回して下さい。訂正して下さい」
ジリジリとマナに詰め寄るフリアエ。前言も結構なインパクトがあったが、それを生易しい生ぬるいと言われては、マナも立つ瀬がない。
「前言撤回しないと怖いですよ。私、女神ですから」
「うわーん怖いよー!!オガーザーン!!」
『また司教が逃げたぞ』
「カイム、連れ戻してこい。話が進まん」
泣きながら逃げていくマナを追いかけ、カイムは「フリアエはR指定?」と思った。少なからず君もだが。
※DODは暴力的・グロテスクな描写を含みます。主に主人公が残虐です。
撮り直し。テイク3
「わたし、あなたの心が読めるの。ふふ、うふふふふ!」
「違うわ、私・・・・そんなこと思ってない」
「憎い、憎いよ、クソ野郎! こんな世界滅びればいい!」
「違う!」
フリアエは悲壮な声を振り絞って叫んだ。マナの「独白」は止まらない。
「汚いの。私、汚いの。女神なんかじゃない。諦めてるだけ。お願い、お兄ちゃん。私に・・・・」
「ごめんなさい!!」
堪らず声を荒げるフリアエ。実の兄に対する恋慕を暴き立てられ、彼女の理性はズタズタに引き裂かれる。
自責と自嘲に打ちひしがれるフリアエに、マナは楽しそうに言葉を突き付ける。
「はい、女神失格。・・・・どうする?」
「・・・・・・」
理性を打ち砕かれ、目の前の判断などつかない。フリアエは半ば無意識、縋るような目でカイムを見る。
双方、兄妹以上の愛を向けられ平静でいられるはずがない。マナはそこに付け込む。
カイムがこれまでフリアエの愛情を無意識に享受していたとしても、今は現実が見えてしまった。彼女の向ける愛情は次元が違うのだ。何よりも、肉親が互いに引き合い、同じく反発し合う本能的な感情を受け止めることは遙かに難しい。
決して許されることのない現実を突き付けられたカイムが頷くことはない。その時こそ、女神フリアエの命が終わる時。すべての封印は破られる。そして、その時こそ「再生の卵」が
『俺は別に構わないが』
「ウヴォゲー!!?この人アッサリ受け入れちゃったよオガーザーン!!」
フフフとほくそ笑んでいたマナは血を吐く様な叫びを上げた。いっそ吐いたかもしれない。イウヴァルトも吐血したかもしれない。レッドドラゴンは炎を吐いていた。このバカ者を骨の髄まで焼き尽くす為である。
「バカ者!!激情に走るな!冷静になれ!妹相手に何をやっておる!!」
「ありがとう兄さん!私、幸せです」
『ははは。ハネムーンは帝国軍の連中を皆殺しにするまで待て』
「あは、あはは。ラララ、ラララララ、ララ。お幸せにヴェヴォゲー」
互いにがっしり抱き合う二人の横では、半ばヤケになったマナがくるくる踊りながら花を撒いていた。
「相変わらず容赦のない男だな。世界の危機は救われたが、おぬしのバカさ加減だけは救いようがない」
『俺は自分の心に素直なだけだが』
「なおさら悪いわ!!・・・・ええい、乗れ!!ハネムーンでも帝都でも海上都市でも何処へでも好きな場所へ連れていってやる!!途中で振り落とされるなよ!」
『望むところだ。まずは帝都上空でエンシェントドラゴン狩りだな。進行的に』
ハネムーンが帝都(壊滅状態)とは。だとすると、フリアエは進行的に邪魔なのでは。とゆー疑問は放りっぱなしであった。
ドラッグオンドラグーン、(一部分の人間だけ)ハッピーエンドルート!(大うそ)
2節と3節勝手にリテイク集。ドラカイ派の皆様に申し訳ないです。兄妹も好きですが、やっぱりドラカイ(カイドラ?)派。今日はネタの為にね!(2005/6/14)
ホントはテイク4まであったのですが、3で終わらせたらまさしくハッピーエンドじゃない!!?と激しく興奮して、ブチッと切りました。幻のハッピーエンド。私の脳内で終わります。マナのセリフが大好きで、名言を使えて楽しかったー!ウヴォゲーとか。オガーザーンはもう必須。フリアエの言う「生易しくないこと」は皆様の想像力でカバーして下さい。容赦なく。テイク4はそのうち書きたいです。フリアエの黒ドレス、すげえかわいくて。