カイム、演出にこだわる。

草原の竜騎士
昔、飛べない竜がいた。荒々しい高潔な心を持つ彼は人間と交わることはなかった。だがある日、傷ついた若き騎士と一匹の竜が出会う。
竜は騎士を助けると、彼が目覚めるのを見届け、その場を立ち去ろうとした。翼のない竜は、役立たずと人に忌み嫌われていたからだ。
別れ際、騎士が言った。 「この恩は生涯忘れない」
時が流れ、年老いた竜は人間の軍勢に取り囲まれる。竜が死を覚悟したその時……
「翼なき友よ!長く待たせたな!」あの時の騎士が国王となり、数千の兵と共に現れたのだ。竜は忘れていた牙を剥き出しにして吼えた。
(武器物語より)


『俺もやってみたい』
「なんだ唐突に。今日だけでフリーミッション十個目だろうが」
カイムの藪から棒な発言に、レッドドラゴンがうんざりした口調で返す。やってみたいとは、何を。
『殺ってみたいじゃない。これだ。これ』
「また怪しげな武器を拾ってきたのか。取り憑かれても知らんぞ。今度はなんだ?」
『槍だ』
レッドドラゴンの前に細長ーいそれを立てて見せる。名を、草原の竜騎士と言う。
「して、それと「やってみたい」に何の関係があるのだ」
『この武器物語』
今自分が読んでいたメモを差し出すカイム。次の瞬間、ドラゴンの尻尾で頭をすっぱ抜かれる。
「武器にタグが付いとるか───!!!・・・・まったく、便利な世の中になったものよ。ほとほと呆れる。特におぬしにはな」
『なぜ俺に呆れる。武器にも履歴書があるだろう、よく見かけるぞ。「拾って下さい。持ち主はもれなく呪われますが」と書いてある。この前拾った剣にはそうあった』
「だったらなぜ拾ってくる!?そんな物騒なシロモノ捨てて置け!」
物騒なことを前置きしているにも拘わらず、いろいろ拾ってくる主人公も珍しい。おかげで武器ホイールは満員超過。殺る気満々。タグが付きっぱなしの武器も珍しいが。商品?
とりあえずレッドドラゴンもタグの武器物語を読んでみた。
「・・・・(読み中)・・・・なるほど。こういう経緯があったのだな、この槍には」
『ベストセラーだな』
「誰が読んだッ。他に、誰が!で、ますます分からんのだが、おぬしは一体何をやってみたいと言うのだ」
『ああ。とりあえずは・・・・』
タグの文面を自分の方にひっくり返し、カイムは考えた。そして思い付いた。レッドドラゴンの背中を指さし、
『その羽、要らないよな?』
そして盛大に頭をすっぱ抜かれた。龍の逆鱗に触れるとは、まさにこのこと。
「バカ者大バカ者───ッ!!勝手に他人のものを要る要らないで分けるでない!」
『二回もバカにしたな?しかも大バカ者か。そこまでか。しかし俺にはそんなものがないので』
「ないので、で我が納得するとでも思うのか。人間に翼があるワケがなかろうに。なんだ、おぬし。何がやりたいのだ結局」
イライライラ(三重)するレッドドラゴンの追求に対し、一方カイムは堂々と言い切った。
『俺もやってみたい。草原で傷付いて倒れているところをドラゴンに助けられて、「この恩は忘れない」とかカッコイイことを去り際に言ってみて、年老いた竜が人間の軍勢に取り囲まれ死を覚悟したその時、「翼なき友よ!長く待たせたな!」と、国王になった俺が数千の兵と共に超かっこよく現れてみたいじゃないか。そして竜は忘れていた牙を剥き出しにして吼えるんだ。ドラマチックすぎて死ぬ。死ねる』
「バカ者、激情に走るな!!冷静になれとゆーか、一般的な思考になれ!!一体どこにおぬしが反応しているかも分からんし、我にも周囲にも分からんぞ!?」
『俺は至って冷静だ』
「冷静に見えるから怖い。しかも今の自分を冷静と判断する辺りがなお悪し!」
『いいじゃないか、吠えてくれよ。翼を無くしたドラゴンになってくれ、俺のために。そして草原で俺を助けろ。吼えた時にチラッと覗く牙がかわいいだなんて人前で言わないから。角の丸い曲線がキュートだなんて言わないから。四の五の言わずに助けろ。俺も助けるから。俺だってやってみたい!』
「ふて腐れるな!地面に転がるな!しかも真顔で気味の悪いことを口走るなッ!!」
己の欲望に正直な男である。そんなに助けられたいのか、レッドドラゴンに。
「この大バカ者め。契約者の身でやすやすと傷を負えると思うな。ムダに苦しみたいのなら別だが、おぬしが傷付けば我とてタダでは済まないのだ。いい加減にせんと・・・・」
足下のカイムに向かってくどくど説教を始めていると、そこへレオナールが通りかかる。
「おやドラゴン殿。カイムなら今どこかへ走っていきましたが」
「我の炎で骨の髄まで焼き尽くすぞ・・・・ん?あやつめ、逃げたな。どこへ行ったか知らぬか」
「そう言えば擦れ違う時、『フリーミッション青の丘陵!!』とが聞こえましたね」
「青の丘陵?ああ、あの敵がウジャウジャ出てくる場所か。・・・・って、何───!!?」
「たとえ契約者でも、あのフリーミッションは辛いですよ。千人斬っても終わりませんからねえ。彼は大丈夫でしょうか」
あぎゃぎゃ、と泡を食うレッドドラゴン。何も知らないレオナールは言葉を続ける。
「それからおかしなことも言ってましたよ」
「なんだ!!?」
「確か、『草原で傷付いてやる!!それからレッドドラゴンに助けられてやる!!それから帝国軍皆殺しでハッピーエンドだ!!』・・・・でしたかね?」
「カーイム!!!」
レッドドラゴンは思わずイウヴァルト口調で叫んでしまった。竜の焦った咆吼が地面を揺るがす。
結果がどうあれカイムにとってハッピーエンドなのは分かるが、至る過程がとてつもなく不純な動機である。そこまでして武器物語をなぞりたいのか。演出したいのか。
「あの大バカ者め、敵に囲まれるつもりか!?そんなことをしたら我まで・・・・あいたー!!?」
「ドラゴン殿、頭から血が。どうやらカイムが怪我を負ったようですね。契約者は一蓮托生、早く助けに向かわねばあなたまで死んでしまいます」
「分かっておるわ!!まったくなんとゆー男よ!あいたっ!己の欲を満たす為ならば善悪も厭わぬかあいたたた。我の炎で燃え尽きよ痛ーい!!?」
「ドラゴン殿、そんなことをしたらあなたまで死んでしまうのでは!とりあえず早く青の丘陵に向かった方がいいんじゃないでしょうか」
「分かっとるわァ!!あのバカ者をとっとと助けて、我が人間の軍勢に囲まれたところを助けられてやる!!」
捨てゼリフっぽいが、実際そうでもない。しかし、いろいろと間違っていることは確かだ。
レッドドラゴンは怒号を上げ大空に飛び立った。半径百メートル以内に迫っていた帝国軍の兵士と連合軍の兵士がまとめて吹っ飛んだ。見境ない。
そもそも、武器物語の騎士は帝国軍の軍勢に囲まれて傷付いたとか書いてない。単に石に躓いてこけただけかもしれないだろう。そうならそうと明記しておけ、むしろそう書け。と、レッドドラゴンは思った。
それは、あまりにもショボいのでは。
「そこで首を洗って待っとれカイム!!」
青の丘陵へ飛んでいってしまったレッドドラゴンを見送り、レオナールはうん、と頷いた。(無事だったのか)
「愛ですねえ。人間であれドラゴンであれ、やはりこうでないと。私もいろんな小さな者を愛そうと思います」
「僕セエレ!身の危険を感じます・・・・」
後ろで見ていたセエレ。
「ごちそういっぱい!!」
さらにその後ろで見ていたアリオーシュ。
カイムよりも先に自分を助けてほしい、と切に願うセエレであった。割と仲間内に危険が多いパーティも珍しい。せめて契約者選択で連れて行ってほしかった・・・・






前回カイフリもどきをやった自分にリベンジです。(2005/6/24)
「草原の竜騎士」の武器物語、好きなんですよ!カイムとレッドドラゴンで考えた人は多いハズ。カイムが国王の国もかなり怖い!もしも帝国軍にカールレオンがやられなかったら、カイムが王様になってたんでしょうかね…。ゲーム中のキレた性格も、両親や国を失ったからこそ出来上がったものだろうけど、もしも気さくな性格のカイムになっていたら…!!そっちの方がもっと怖いよね。

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