跡地でバトル!!
「これまでの教訓や前例を活かして、今回はここを選んでみた」
「これはまた・・・・人気のないところですね」
ナキヒトとミズガシはアスファルトの上に立っていた。ミズガシの言う通り、周りに人気はない。まったく寂しい場所だった。鳥さえ飛んでいない。冬眠から目覚めた爬虫類や虫もいないところを見ると、勇者と魔王のバトルに巻き込まれる前に逃げたらしい。本能は等しく正しい。
足元から四方に広がるアスファルトは広く続いて、一方の端で道路と繋がり、別の一方はそこにある建物の外路と合流する。その箱物の中にも外にも人の影はない。二人以外はまったくの無人であった。
周辺の草木を見るからに、どうやらずっと人の手が入った気配はない。荒れた眺めを目の当たりに、ミズガシはナキヒトを見た。
「ここはなんですか?」
「町で経営してた体育館。の、跡地」
「はー、それで誰もいないんですか。で、ここでやっちゃっていいんですかね」
跡地なら無人でもおかしくない。ナキヒトの答えに納得する。しかし、だからって勝手に入ったり壊したりしてもいいのか。今いる駐車場も「立ち入り禁止」の注意があった。なおさらではないのか。
「乏しくなってきたんで、民間に売り払ったんだとよ」
ナキヒトはカタナも抜かないまま煙草に火を点け、煙を吐きながら後ろの廃屋を振り返る。しばらく禁煙していたが、前のゴタゴタも収まったので立ち直っていた。
「売った言っても、取り壊しの工事費用も込みでやっちまったもんだから、なかなか買い手が付かないんだと。入札も始まらないまま今日まで来たワケだ」
「それで壊してもいいと。向こうから?」
「知り合いの役人がな。」
「思い切った選択ですね。どーなっても知りませんけどね」
ミズガシは他人事のように言うが、冗談ではない。故意でないにしろともかく余波がひどい。
大洋を蒸発させ、山岳を平地に変え、エアーズロックまで壊した前例があるだけに笑えない。荒野に成り果てた土地には向こう世紀まで草木さえ生えない場所もあるし、動物も寄り付かない。勇者と魔王が争ったら生態系まで狂う。どこかの荒れ地には巨大バッタまで出るという。
「ナキヒトさまァ、やっぱり誰もいないみたいですよ」
建物の裏手からシロツメが出てきた。いつもの大鎌を携え足元の雑草をつつく。確かに、そんな凶器を持っているサマを目の当たりにしたら、必然的に誰も近付かないだろう。普通に怖い。
「何年も前から誰も寄り付いていないようです。猫の子一匹いやしません」
続いてアサヌマが辺りを見回しながら言う。猫の子一匹いないと言う割に、肩には猫のイイダとウエスギをぶら下げていた。二人は頭数に入っていない。
「だろうな」
二人の部下に興味なさげに言って返す。 今ここにいる頭数の他に人の熱も匂いもない。まともな人間よりも五感の長けたナキヒトは遠くまで視覚が利き、並外れた聴覚は忍び足でさえも聞き取る。地面に耳を付ければ百キロ先の足音まで気付くが、そんな無用なマネは試したことはない。
「ここなら問題ないですね。一応許可もらってきたし・・・・」
アサヌマは封筒から三つ折りの書類を抜いて見せる。長の公印が捺印された正真正銘の許可書である。端的に言えば、「敷地内で何をやってもいいですよ」と。形に残るようにしておかないと後々で面倒を被る。
こんなことはザラではないが、必ず伴う多大な被害を最小限に引き止めるのが部下の役目。とは言っても今まであんまり役目を果たした試しがない。事後処理の方でよく働いている。ラクな仕事じゃない。過去、巻き込まれて「死んだ」同僚も何人か。
上司の争いで死ぬとは穏やかではないが、行き過ぎたことではない。仕事に犠牲は付き物。彼らは危険を承知でナキヒトミズガシそれぞれに従っている。
シロツメを除けば、二人は部下を人間から選ぶ。元は二人自ら選り好みしていたが、今では人間の方から進んで名乗り出てくる中から決めていた。ワケありの人間もいれば、まったくそうでない人間もいる。抜擢の理由は定かでないがナキヒトもミズガシも、その中からすべてを採用するワケではない。二人もワケありだった。
ナキヒトの場合同じくシロツメを除けば、今はアサヌマが一番の古株で、何世代か前からよく働いている。ミズガシの方は実家の地獄に部下が多いが、地上に出てくることはできない。
「それにしても今日は暑いですね・・・・」
ギラギラ照り付ける太陽を見上げミズガシは一人ごちた。ジメジメ湿度の高い薄暗い地獄出身なので、真夏の紫外線に弱い魔王。それにシロツメが応じる。
「ええ、今日は真夏日らしいです。紫外線はお肌の敵ですから~。はい日傘」
「これはどうも。準備万端、さあかかって来なさい!」
「そんなヤツと戦いたくねえなあ」
さァ来い!と日傘を片手に挑んでくるミズガシ。ナキヒトと戦う前に紫外線と戦っている。確かにこんな紫外線対策している人に挑まれたくない。
「日射病で倒れたくないですからね」
「日射病?」
勇者、そんなに弱くない。注意を受けるナキヒトに気付き、シロツメは慌てて別のアイテムを取り出してきた。
「あら私としたことが!ナキヒトさまを忘れていたなんて・・・・どうぞ、帽子です」
「要らん!!余計な気ィ回してんじゃねー」
はいどうぞ!と差し出された麦わら帽子を叩き落とす。夏の必需品。
「それではワタシも手伝いまSHOW!」
どこにいたのかフジワラがしゃしゃり出てきた。あやしい日本語を操る中国人に、いたんだ、と全員の目が集まる。最近よく出てくる。
「日射病でこわいのは脱水症状デス。患者を涼しいところに寝かせて十分に水を与えまショウ」
「妙なことには詳しいですね・・・・」
「魔王さん、大丈夫。心配無用天地無用。もしもの時は任せて下サイ。ワタシがスタンバっておるので」
スタンバっているフジワラの足元には「火の用心」と白抜きで書かれた赤いバケツがスタンバイしていた。よもやそれを。ミズガシはゾッとした。なんという手厚い用心。
地獄の業火は水なんかで消えないが、なんだか自分を否定されている気がしてゾッとした。故意でないにしろ寝首をかかれる気分。何しろミズガシはあんまり水には強くなかった。耐水性に欠けている。
「先手必勝!目先の敵からー!!」
バケツの水が蒸発した。ミズガシは目先の敵から消した。なんという分厚い用心。フジワラは驚愕する。
「おお、不慮の事故!」
「不慮じゃねーだろ」 ←ナキヒト
「でも大丈夫!こんなこともあろうかと予備軍を」
「確信犯!!もう嫌だこの人!」
ズラッとバケツ予備軍を取り出してくるフジワラにミズガシが叫ぶ。部下に踊らされている。
「八つ当たりかよ!」
「日射病にはなりませんよ!火の用心はさておき、まずは燃やす!!」
矛先がナキヒトに向かう。何もないところから現れた獄炎がナキヒトを叩き、足元のアスファルトが力に負けてヒビ割れた。まるで巨大なこぶしに殴られたような成れ果て。
炎に見えるが元は熱のないもの、単なる力押しだが、魔王の才を率直に現す膨大な力の塊。獄炎に舐められたなら跡形もなく蒸発する。抵抗なく受け入れればナキヒトとて体はおろか、核を成す魂ごと砕かれる。
「八つ当たりでやられるかッ!!」
不定形の炎をカタナの斬撃で払う。散り散りにバラされた赤い炎は舌をちらつかせて霧散した。
ナキヒトの持つ刃物は海の荒波さえ割る、起源すらおぼつかないほど昔に神より下賜されたシロモノ。加えて長い間に渡り、魔王の獄炎によって鍛えられたため比の付かない強度を誇る。半ばこの世の造りではない、硬度はダイヤモンドをも凌ぐ。
初撃をいなされたミズガシは素早く腕を振るった。地獄から呼び出された炎は どこにでも姿を現す。音さえ伴わないまま、ナキヒトの見えない死角から迫る。
「そう来るか!」
場所を選ばない背後から狙われ、一瞬躊躇した。先にミズガシを叩くか逃げるか。
ミズガシに向かえば次の炎と後ろから追従される、逃げれば逃げた先を炎で足止めされるのは目に見えている。ナキヒトはどちらも捨て、その場で後ろを振り返る。
「オオッ!!」
ナキヒトは一声吠えカタナを振り切った。裂帛の気合いが獄炎を切り裂き、海をも割る一撃が地面を走る。
ゴン!!ガラガラガラ・・・・
「体育館まで・・・・」
「壊れちゃったね・・・・」
余波が。アサヌマとシロツメの見ている先で体育館が崩れ落ちた。基礎を砕かれて重みに耐え切れず、足元から屋上まで順序に瓦解していく。建築した当初はまさかこんな形で終わるとは思わなかっただろう。見ていていっそ清々しい最期。
「こういうの、映画で見たことあるぞ」
「さすがナキヒトさま、壊し屋ですね」
「さすが勇者サン、いい仕事をなさる」
飛んでくる煙が立ち込める中、フジワラが「あれは!!」と、こぶしを 握る。
「一流の発破師は建物だけを壊して周りに被害を出さないと言いマス。お見事!!」
「いや、後ろの木も吹っ飛んでる・・・・」
アサヌマが指差した先はもはや瓦礫の山だが、見通しのよくなった向こう側では植樹のナナカマドやサルスベリが見事に薙ぎ倒されていた。余波がそこまで。
「ナキヒトさん、庭は壊しちゃダメですからね!!」
「なにー。いちいち注文つけんのかよ!」
「仕様書に書いてあるので」
契約書の後ろから書類をめくって調べるアサヌマ。壊してくれと言ってくる割に役所の注文も多い。
「ガラ空きですよっ!」
ミズガシは日傘を持ったままアスファルトを手で叩く。地面を舐める炎がまたもやナキヒトの背後に向かう。
「見えてるっつーの!!」
二度目、振り返ったカタナで薙ぎ払うが、魔王の力を込められた獄炎は勢いを留めなかった。散らされた炎は輪郭だけで囮に等しい。中身の本命が残っている。赤い牙を剥き、炎はナキヒトに噛み付いた。
カタナと腕で庇うも、まともに堪えるダメージにナキヒトは呻いた。それこそ魂にヒビが入ったような感覚は耐え難い。
ビキッ…バギン!!
「あーあ、やっちゃった・・・・」
「さすがミズガシさま、魔王の名はダテじゃないです」
「さすが魔王さん、アスファルトまで引っぺがすとはブルドーザー要らずですネー」
熱を持たない炎だが、力を現せば膨大な熱量を生む。灰色に遜色したアスファルトは真っ赤に燃え粘土のように柔らかくなった後、固く焼かれて割れてしまった。
勇者さえも窮地に追い込む獄炎の連撃に、それこそ地面が持ち堪えられるワケがなかった。いとも容易くヒビが入る。下の砂利土まで見えた。レンジ用の耐熱皿をオーブンで焼いていきなり水に付けたようなもんである。ひどい取り扱い。
吸い込んだら肺まで焼かれそうな熱風の中、フジワラは「あれが!」と、こぶしを握る。
「一流の陶芸師は己の失敗作を己の手で自ら壊すと聞きマス。なんというプロ根性!そういう原理ですネ?」
「どういう原理が?」
「何も作ってないし、ただ焼いてるだけ・・・・」
破壊活動しかしていない。どういう原理も適用されてない。得たり!と語るフジワラをアサヌマとシロツメはぎょっとした顔で見る。
「ミズガシさん、アスファルトは壊したらダメですからね!」
「ええー、ダメなんですか?もう遅いですけど・・・・」
ミズガシの抗議にアサヌマは再び仕様書をめくって項目を調べる。確かにいろいろ注文が多い。
「えーと、地面は無傷で済ましてほしいそうです。壊すなら徹底的にアスファルト引っぺがしてほしいそうです」
「ならばお安い御用です!そりゃー」
「わー!!」 ←ナキヒト
魔王の実力を以てすればそれくらいお安い御用である。ここぞ!と言わんばかりに景気よく燃やすミズガシ。アスファルトはあっさり負けて溶けてしまった。それに巻き込まれて燃えるナキヒト。泥沼だ。
しかし今のは熱いだけでなんともない。なんともないこともないが、ナキヒトは焦げた髪の毛を振り払い、体をかばっていたカタナで炎を斬る!
「放火魔は地獄に帰れ!」
つまり実家に帰れということである。ナキヒトの烈破が地面を削り、炎は風圧に圧されひとかけらも残さず霧散した。凄まじい剣戟。
「放火魔とは失礼な!!」
飛んできた小石やらアスファルトのカケラを日傘で遮り、ミズガシは相手に向けて手を突き出す。
ナキヒトは身を捻ったが遅かった。燃えるだけ燃えていた炎がありえない密度まで凝縮すると、鋭敏な鞭の様な軌跡を辿り、素早くナキヒトの片腕をもぎ取った。カタナを持っていない左腕の肘から先がすっ飛ぶ。
「ああああ、てめェ、この前生えたばっかりだってのに!!」
宙に飛んだ自分の腕を見送り、苛立った声を上げる。単に腕がもげようが首が取れようが、魂さえ残ればナキヒトに取ってはさして問題ない、しかし今のは効いた。
片手やもめになったナキヒトを見返し、ミズガシは特に大問題でないように鼻を鳴らす。
「自業自得ですよ。一度骨折したところは折れやすいって言うじゃないですか」
「どういう原理だ!!」
前日のイザコザで左腕をなくしたナキヒトは慌てて片割れを探す。しかし見事にすっ飛んでいってしまった腕はどこにも見当たらなかった。
「どこに行ったんだ?」
「あ、ナキヒトさま、あそこに引っ掛かってますよ」
「なにー」
シロツメが指差した先を見ると、少し離れたある木のてっぺんに左手がぶら下がっていた。昼間で良かった。夜に見たら普通にホラーだ。
「しょーがねーな。取ってくるか」
「そんなことしなくてもすぐ生えてくるでしょ」
「ばっかテメー、生えてくるつったって三日もかかるんだぞ。くっつけた方が早いに決まってんだろ」
たった三日で。ミズガシの忠告を却下して、ナキヒトは木に向かう。だいぶ背の高い木で、ナキヒトも片腕では取り付きにくい。まさか無下に切り倒すワケにもいかず地道に登る。
「頑張りますねェ」
ミズガシは日傘を差したまま木の影にしゃがみ込み、その登るサマを見上げている。それを見ていたフジワラが声を掛ける。
「魔王さん、いいんですカイ。今がチャンスなのではないですカイ?」
「チャンスって・・・・はっ!!しまった、見ている場合ではなかった!!」
そうだったー!と立ち上がるミズガシ。こんな手間で頓挫している場合では、ない!
ナキヒトは木の半ば辺りで「なんだ?」と見下ろしている。こっちも緊張感がない。フジワラの言う通り今がチャンス、ナキヒトは動けない。見逃す手はない。
「我が炎の餌食となれ!それー!!」
「おォい、卑怯じゃねーのか!?」
炎に掠められてびびるナキヒト。慌てて幹の後ろに隠れる。生木が燃えた。要らない被害がますます広がった。狙いは悪くなかったが、とうとうミズガシまでやっちゃった。
「ミズガシさんまで」
「さすが魔王、容赦がないです」
「今の時期は乾燥してますからネー」
梅雨を目前にして何を言う。木が獄炎に勝てるハズもなく、熱のない炎にやられたとは言え景気よく燃え盛る。その火事を目の当たりに三人は、しょうがないよネと見学していた。しょうがなくはない。
木から飛び降りたナキヒトは非難の目で目前の火事を見た。
「自然破壊だ」
「何をゆーか!!あなたも先にやってたじゃないですかッ。私だけ責めるとは何事ですか」
「俺のは不可抗力だ!未必の故意だ!!お前と一緒にすんじゃねー!!」
「何をー。あなたが避けるから不必要な犠牲が出たんでしょーが!!何が未必の故意ですか!犯罪には違いない!!」
「なんだとこの放火魔!偽善者!!自然が泣いてるぞ!ナナカマドに呪われろ!!」
「そっちこそ呪われる要因満載じゃないですか!この破壊魔!!」
コノヤローと互いの胸ぐらを掴み合う勇者と魔王。もう目も当てられない。後ろでは今にも炭化しそうな木がボーボー燃えている。ほっといていいのか。
余計な被害がないようにしていたハズが大惨事だ。部下の三人は遠巻きに遠い目で大惨事を眺める。
「フジワラ、こういう時のために防火バケツがあったんじゃないのか」
「そーですよフジワラさん。消火活動用意ですよ」
「オー、そーですネ。私の出番ですネ。こんなこともあろうかと用意していた水分を」
水分と言うには多いんじゃないだろーか。アサヌマとシロツメに促され、思い出しようにバケツを構えるフジワラ。この火事を前にしては極めて原始的なやり方である。
「それでは消火活動ヨーイ!そりゃー」 ザバーン。
「ごふぁ!!?水が!水分が!!」
「オーノー。間違って魔王さんにバケツを引っ繰り返してしまいまシタ。失敗失態!」
日傘を投げ捨てていたミズガシが頭から水をかぶった。水分が。狙いは悪くなかったが、とうとうフジワラまでやっちゃった。とうとうと言うか、目に見える形で予想はしていたが。
「わははは!バカめミズガシ!!呆気なくやられやがって!」
水の苦手なミズガシは無様にも、部下に足元をすくわれた。その失態を指差して笑うナキヒト。笑いすぎである。
「ナキヒトさまァ」
「なんだシロツメ!今いいとこなんだから邪魔すんな!」
「あのー、でも。その、ゴニョゴニョ」
「ナキヒトさんの左手も燃えてますけど」
「あーそーか。燃えてるな。・・・・って、おォい!!そういうことは早く言え!!濁すな!!」
ゴニョゴニョ濁すシロツメの言い分を伝えるアサヌマ。ゲタゲタ笑っていたナキヒトはギョッとして火事を振り返る。
しかし時すでに遅し、鎮火して炭化した木の根元に焼死体が。左腕だけ。獄炎でこんがり焼かれたナキヒトの片腕がグーの形で落ちていた。なんという有様。ホントに笑っている場合ではなかった。
「だから言ったのに・・・・」
「お、俺の左手がー!!」
「あわわ、水は勘弁して下さい!!」
もはやお互いにどうでもいいらしく、ナキヒトとミズガシはそれぞれの事情で一杯いっぱいだった。
「おや?お湯の方が良かったですカイ?
「水分が嫌いなんだよ、ミズガシさんは。熱湯も用意しなくていいから」
「お可哀想なミズガシさま!これでは勝負の付け所が分かりませんわ」
目頭を押さえるシロツメ。これじゃ無効試合だ。キャンプ用のガスコンロを用意するフジワラの手を掴み、アサヌマは「うん、」と頷いた。何が納得?
「勝者、フジワラ!!」
「オー!!まさかのトンビに油揚げ!ありがとうございマス!」
「猫に小判!!それでいいの!?」
トンビに油揚げをかっさらわれた。まさかの漁夫の利にびっくりするシロツメ。ナキヒトとミズガシもびっくりした。
『いいワケあるかー!!!』
ガラガラ、ガシャーン。
二人の怒号がこだまに変わった頃、一拍置いて体育館の残骸がガレキに崩れた。見事に更地へと。
フジワラが勝っても別に利益はないし、まさに猫に小判。ダークホースが。当事者まるで置いてけぼりの無効試合である。
いろいろ壊された挙げ句に誰が得したかって言うと、解体費の浮いた役所が。真の勝者が影にあったと言う。真のダークホースか。
(2006/6/8)