【Merry X'mas!!】



いつも仲良し六角中。
今日はよい子のお楽しみ、クリスマスだ。
六角中テニス部にはなぜか毎年、部長がサンタクロースに扮してオジィのアスレチック場に遊びに来る子供達にプレゼント(もれなくオジィの手作りラケット)を渡すという行事があった。(学校は既に冬休みに入っているというのに関わらずである)
もちろん今年も例にもれず、今はその準備に大忙しの六角中テニス部部室(大掃除をしたほうがいいともっぱらの噂)、その中で。

「うわー!僕がこれやるなんてー!」
「剣太郎は去年までもらう側だったからね」
「うん!もう今から凄いプレッシャーだよ!上手くサンタになれるかなー!」

今年入部。さらに今年いきなり期待の一年生部長になった剣太郎は晴れてこの大役に、昨夜もろくに眠れ…ないことなどなかったようだ。
快眠した翌日の笑顔で、サンタの服をつまんだりした。
そんな部長の姿に、できばえをチェックしていた佐伯もにこにこと上機嫌で言葉を返している。

窓の外、さらにテニスコートより奥にあるアスレチック場には既に子供達が集まってきている。
それを窓からそっと剣太郎が眺めていると、その背中にドシッと何かがのしかかった。

「うわっ!」
「そら、剣太郎。忘れんなよ」

剣太郎が驚いて振り向くと、そこにはサンタの定番白い袋を持った黒羽が立っていて。
ぐいとその袋を剣太郎へ手渡した。
慌てて受け取ったその重みに、再びサンタクロースをやり遂げる事が出来るかどうかのプレッシャーがかかり、剣太郎の口元はそれとは逆に嬉しそうに緩んだ。
部室を見回すと他の部員達も(実際は黒羽や佐伯は既に引退しているのだが、六角中にそんなことをこだわる空気は微塵もなく)剣太郎を励ますように笑顔を見せ頷いたので。

「よーし!それじゃあ行ってきま…」
「ちょーっと待ったぁ!!」

白い付け髭の下、『行ってきます』と剣太郎が言い切るより早く。
まるでネルトンの告白タイムを遮るかのような声で、ふいに飛び込んだ叫び声。

「…ダビデー…?」
「や!バネさん、ちょっと待てって!」

足を振り上げモーションに入りかけた黒羽を焦った声でとどめる。
天根だった。
どうにか黒羽をいさめて、剣太郎へと向き直った視線は真剣そのもので。

「どうしたのね?ダビデ」
「俺、剣太郎にどうしても外せない大切な用事がある」

天根がここまで流暢に言葉を発したのを、その場にいた全員が『初めて見た…!』と驚嘆していた。黒羽一人を除き。
黒羽は生憎とその流暢さを以前も耳にした事があって、天根の視線のまっすぐさに眉間に皺を寄せた。
そんな黒羽の変化には誰も気付かず、剣太郎はまっすぐな天根の視線にさらにまっすぐな視線を返して向かい合う。

「なに?ダビデ?」
「これ、剣太郎に…」

一歩剣太郎の前に歩み寄り天根が差し出したのは、スーパーのお肉売り場でおなじみの薄いパッケージに包まれたハム三枚。
剣太郎の目がぱちりと瞬きする。
天根の瞳が剣太郎を凝視する。
その場にいた他の部員(もちろん黒羽は除く)も天根の手にあるハムを見つめた。

「くれるの?」
「ひとつだけ、選んで」
「え?」

ひとつ、と天根は指を立て選ぶよう剣太郎に催促する。
みな、わけがわからず首を傾げるばかりだ。
誰もが天根と剣太郎のやりとりに注目し、そして黒羽は部室の端のほうで足を何度も振り上げて下ろすという練習を始め。

「ひとつだけ選ぶんだ?」
「そう。だって、剣太郎はサンタクロースだから」
『はぁ?』

その場の誰もが思わず口をぽかんと開け、そのよくわからない理由に考える力を奪われる。
天根はそんな場の一瞬あった沈黙の後。

「サンタクロースの三択ロース(ハム)…プッ」
「つまんねえんだよ!てめぇの駄洒落はよ!!!」

(((やっぱり駄洒落だったんだ!!!)))

ゴガッ!バキッ!ぷぎゅっ…

漫才ペアを除く部員が総じて心の中で突っ込みを入れる(または駄洒落と気付いた)瞬間には既に黒羽は怒号とともに跳躍しており。
なぜかラスト一発のみ謎の音をたてて、見事に天根にその足技はオールヒットしていた。
天根の手にあったハムは3つともいつのまにか樹が低姿勢で拾っていた。

『さすが樹っちゃん!』

とりあえずみんなの第一声はどこか的はずれであったような気もするが。
あえて誰もそれに気付かないふりをして、剣太郎へ向き直る。

「頑張って来るんだよ、剣太郎」
「みんなが待ってるのね」
「剣太郎ならできるよ」
「ガッツだぜ?」

「うん!みんな、ありがとう!僕頑張るよ!!」

皆からの激励に、剣太郎もにこっと最高の笑顔で答えて。
そして部室の扉前まで確かな足とりで進むと、ドアノブに手をかけた。

「サンタクロース!行ってきまっす!!!」

『おう!』


笑顔の送り出しが行われるその端で。
部室のそれこそ陰っこのような部分で、いまだ地べたにふしたままの天根がその言葉にもぞりと動く。
そして少しだけ顔を上げて、ポツリと。

「赤いのに、葵(青い)サンタ…プッ」
「五月蝿い」

ドギャッ

それこそ容赦の無い黒羽の踏みつけに。
今度こそ、天根はマットならぬ部室の床に散ったのだった。





由来なんて随分前に形をなくしているけれど。
それでも今日はメリークリスマス!
プレゼントを貰って、ケーキを食べて、一日大はしゃぎをしようよ!





オワリ










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2003年のクリスマスに日記にアップした六角SS。
スマッシュヒット2で剣太郎可愛い節が大爆発して、いてもたってもいられず剣太郎を愛でる為に書いた一品。
のはずが、見事にダビデ色。
六角の仲良しっぷりはいっぱい書きたいんですが、どうしても二人だけの世界になりがちなりがち;;(バネダビのネ)
ほのぼのももっと頑張ろうと思うこの頃です。(なんで近況みたいなあとがきに?)