・計算違い・


「バネさん、キスしよう」

「お前のネタは変わり映えしないのか」

至極マジメな顔で告げられた言葉にデジャヴを感じるほど、黒羽はロマンチストではなかった。
というよりも、忘れ去るにはあまりにも最近の記憶であった。
同じような、というよりもまったく同じ言葉を天根が黒羽に伝えたのは。

「3回目…」

「え?」

「その前振りなあ、3回目だっつってんだよ!!
いい加減、もすこしひねりぐらいいれらんねーのか!」

叩きつけるように怒鳴られても、天根はきょとんとしている。
言うだけ無駄、とわかってはいてもついつい言わずにはいられない。
黒羽はこめかみが痛むような気がして幻の痛みを指で押しながら目をつぶる。
と、その口に何かが触れた。
しかも1回出なく、ちょん、ちょん、ちょんと3回。
自分以外の体温が触れては離れを繰り返し。

「…で、なんだったんだ…」

口付けというにはあまりにもあっさりとした、例えるなら鳥のクチバシが触れ合う程度のもの。
時間も数秒だろう。
それでも珍しく天根からのそれに、黒羽はいまだ憮然とした気持ちを隠せないままに聞いてみる。
と。
天根は前回、前々回と同じように真っ直ぐに黒羽を見た後。

「キスが3回。奇数のキス…プッ」

「…ほぉ」

いつもと同じように無表情で告げられた駄洒落に、黒羽はにっこりと笑みを浮かべ。
やはりいつもと同じように、強烈な一蹴をプレゼントしたのだった。





追記。

「ところでな、今更なんだが」

「…何」

黒羽の言葉に、地面とマブダチと呼んでも差し支え無いほどに仲良くなった天根は顔を上げた。
ぱちぱちと目を瞬きしながら見つめた視線の先でふう、と小さな溜息。

「奇数だったら1回でもかまわないんじゃねーか?」

「……あ」

「気付かなかったのか…」

ぽかんと。
本当に今気付いた、というのがありありとわかる天根の表情に。
なにより、その脳みその出来具合に。
黒羽はもう一度、深く深く溜息をついた。




web拍手用に以前アップしていたものでした。
キスにまつわる3つのCPと言う事で、バネダビ・サエマレ・千南を書いたなあ。(遠い目)
恥ずかしくて、見返すのもやっとこです。