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「バネさん、今回これでいい?」
ごとり、と天根が手にしたものを無造作に机の上に置く。
タバコの吸殻が山となった味気ないデザインの灰皿と、いつ食べたのかもわからない即席麺の容器に、底に少しだけ水滴の残る酒瓶。
それらがガサガサと手で机の端に寄せられる。
「俺のと、バネさんの」
二つの黒光りする塊を目にして、黒羽は眉間に皺を寄せた。
「…必要なのかよ…今回も」
うめくように呟けば、天根はきょとんとした。
「何いってんの?当たり前」
天根は本当にわからない、といった様子で黒羽の顔を見ている。
物心ついたときから組織に属している、いわば組織が親代わりの天根には拳銃など玩具替わりであったし、それを実際に人に対して使ったことも数え切れない。
だからこそ、黒羽の拳銃に対する躊躇が理解できないのだろう。
「この前も運転だけだし、護身用にでも持ってたほうがいいよ」
「…ああ、そうだよな」
黒羽はゆっくりと机の上に転がった拳銃に手を伸ばした。
狙いどころを間違えなければ容易く人の命を奪える道具。ずしりと重い鉄の冷たさは指先を通して細胞を焼くかと思う。
−−ただの幻だ。

「んじゃあ行くぜ、ダビデ」
「うぃ」

苦い、呑みきれない感情の揺らぎに。
黒羽は見ないふりをした。
知覚しても、はたしてどうにもならない。
これが『現実』というものなのだから。