[13]

目覚めない天根の隣で、眠れぬ夜が明けることなく続く。
ベッドサイドに無造作に置かれている時計の針は、コチコチと神経質な音を立てる。
時刻は既に26時を回っていた。
休息をとろうという気には、なれなかった。
一瞬でも目を離したら、天根は掻き消えてしまうかもしれない。そんなはずはないのに、浮かんでしまった焦燥は居心地悪く黒羽の心の中に放りこまれたまま。

いつのまにか伏せていた視線を再び天根のもとへとそそぐ。
相変わらず瞼は閉じたまま。
唇からは規則正しい呼吸。薄い布地の下で、上下する胸。
思わず安堵の吐息がもれて、そして願った。

−−早く、目覚めてくれ。

お前の瞳が見たい。
お前の瞳に映りたい。

そしてその思いと同等の重さでまた願う。

−−どうか、目覚めないでくれ。

このまま安寧の世界に。
お前だけでも。


相反する願いは同じだけの強さを持って、黒羽の精神を蝕んだ。
ギリギリと心の中ですり減らしあう気持ちと想いに、臓腑が裏側から引きつるような痛みを覚える。
その痛みに耐えるように、黒羽は自身を手が白くなるほど
掴んだ。


望むと望まざるとにかかわらず。
いずれ朝は訪れる。
永遠に明けぬ夜などは、幻想でしかない。

太陽は白刃の如き鋭さを持って、無慈悲に全てを切り崩すのだ。