[15]

「なあなあバネさん」

嬉しそうに天根が笑う。
嬉しそうに呼びかける。

「なんだ?」

返す言葉と共に振り返った先にある。
常に無い彼の笑顔。
天根がこれだけあけすけに、満面の笑みを浮かべる事は珍しい。
黒羽も微笑み返そうとして。
息が止まった。

「すごいだろ」

子供の様に自慢げに。
見せた彼の指先に彼の髪よりもさらに濃い緋色。
鮮やかな夕陽に染まったような爪と、黒い鉄の塊と。

「いっぺんに3人」
「…ああ」

猫が仕留めた獲物を主人に見せるように。
罪悪のかけらもなく言い切ってみせる、彼の立つ場所はどこなのか。
今にも音をたてて崩れそうな崖の先端で、ワルツを独り踊るような彼のあやうさはどこから。

「報告に行くか」
「ちぇ、バネさん冷たいな」
「普通だ」
「ケチ」

普通だ。
普通のはずだ。
それとも。



俺がおかしいのか?