「なんやジロ、また寝とんの?
そんなん寝てばっかやと、目が溶けるで」
 
 
閉じた瞼の光の中に、すいと影が落ち。
耳に馴染む声が降ってきて、滋郎はうっすらと目を開けた。
背に青空をしょって、そこには忍足が立っている。
 
「ん〜…おはあよ〜」
 
「寝ぼけ。はよなおし」
 
やんわりと苦笑されて。
むっくり体を起こす。
 
「んー…でも気持ちイーし…」
 
それでもあふあふと二回ほど未練がましく欠伸が出る。
片手で目をこすりながらへらっと笑うと、忍足はふぅと溜息を一つ。
 
「背中芝生だらけにして、ほんまおかしなやっちゃ」
でも声音は優しく。
怒っている様子は無い。ただ、あきれているんだろう。
その余裕のようなものを剥がしてみたくなって。
 
「じゃあオシタリもやってみよ?」
 
「へ?」
 
疑問が全て通る前に、手を強く引かれ体が傾く。
最後まで落ちそうになるのを、持ち前の反射神経でなんとか押しとどまり。
 
「ちょっ!ジロ!?」
 
慌てれば、滋郎は何食わぬ顔で笑っていた。
 
「ほらほら〜♪
はい、ここオシタリの場所ね」
 
ポンポン
と傍らの地面を叩いて、掴んだままの手をひとたび引いた。
今度は身構えていたのだが、もともと無理にたっていたような印象。
重力も手伝って、忍足の体は本人の意思に沿わずに地面へと倒れこんだ。
 
膝から落ち。
わずかな砂埃と、枯れた芝生が舞い上がる。
 
 
「うえっ、ぺっぺ!
口ン中入ったわ…」
 
「風流だよね」
 
「…阿呆…」
 
口内に砂が入り込み悪態をつく忍足はしかし、必然的にジロの胸の上に倒れこんでおり。
二人して、芝生の上で寝転がると言う現状。
忍足はちょっと視線をずらして体を反転させ、滋郎の隣に仰向けになる。
そうすると、先刻まで気にならなかった日差しが顔を容赦なく照り付け。
意外と強い事を知る。
反射的に光を避けるように目を細め息をはいた。
 
 
「…えぇ天気やな」
 
「そうだね」
 
「…確かに気持ちええわ」
 
「でしょー」
 
 
おそらく隣では滋郎が自信満々の笑みを浮かべているだろうことが、忍足には容易に想像がついた。
もっともそれをわざわざ確認するのも面倒で。
忍足は瞼を閉じた。
 
 
日差しが強い。 きっと夏が近づいているから。