夢ニ酔ウ


終ワルコト無キ 夢ニ酔ウ


タダ タダ


ソレガ現デアルヨウニト 祈リナガラ……





夢幻−ユメマホロバ−





ジリリリーン…

広い家の中に電話のベルが鳴り響いた。
無機質なそれは甲高く鳴きつづける。

もそり。
10回目のコールで、白いシーツの固まりが動いた。
そしてシーツの端から長い足が突き出る。

「う…」

ちいさなうめき声。
身じろぎしたのか、シーツがめくれて銀色の髪が零れる。
士郎は先ほどからけたたましく鳴り続ける電話の音に、のろのろと体を起こした。
母親から引いた血のため、日に焼けることも無く白い肌。
その上におざなりにシャツを羽織った姿で、士郎は電話の置いてある廊下へと出ていく。

こんな朝早くにいったい誰だろうか…
父親の仕事関係かとも思ったが、父は今会議で大阪に出張中のはずだ。
帰宅は今夜遅くになるという。

『明日の夜は寝ずに待っておいで』

昨晩の父からの伝言。
きっと父が帰ってくれば眠らせてなどくれない。
士郎はそんな生活になれてしまった自分自身を嫌悪する。
13の時より繰り返されてきた行為に、士郎の体は抵抗を覚えることも無くなっていた。
抵抗しても無駄だと分かってから。

それでも。
1つだけ譲れないことはあったけれど。

「兄貴…電話なってる……出なくて良いの?」

ふいにかけられた声に肩が跳ねあがる。
驚いて声のした方を振り向けば、声の主は廊下の電話を指差している。

ジリリーン!

電話はもう何度目かに分からぬ音を叫びつづける。

「あ…ああ、今出るから。エレキ」

慌てて。でも出来るだけ平静を装って返事を返す。
士郎の前の青年、彼の弟であるエレキは『ふーん』と納得のいかない顔だ。
どうやら士郎の動揺が伝わってしまっていたらしい。
問いかけるようなエレキの視線から慌てて視線をそらすと、士郎はなりつづけて絶え絶えの電話へと手を伸ばした。

「はい」

『もしもし?○○さんのお宅ですか?』

電話から聞えたのは聞き覚えの無い男の声。
しかも随分と緊迫している気がする。

「○○は父ですが…父になにか?」

嫌な予感がする…

『息子さんですか。突然のことと思いますが○○さんが事故にあわれました』

「……え?」

『ご自分の車で走行中に…幸い一命は取りとめましたが、まだ集中治療室です。できれば御家族のかたにおいで頂きたいのですが…』

  「………わかりました。僕が行きます。場所は…はい。そうですか…ハイ…」

そのあとは病院の場所だったりとか、持っていかなければならないものとか…
とにかく言葉はついてでるが、士郎の頭の中は滅茶苦茶だった。
それでもくわしい話しを聞いて。つたない謝罪の言葉を述べて受話器を置く。
とたんに混乱が押し寄せる。

父さんが…事故。そんな……

自分を貪った悪魔が怪我を負ったのだ。
しかしそれは士郎にとって大切な父親で…
そしてそれは弟のエレキにとっても大切な父で。
とにかく事故のことをエレキに知らせなくては、と振り向いた。

振り向いて。
士郎は違和感を感じる。

一瞬前には無かったもの。それが目の前にあった。


エレキの微笑み。

「……エレキ?」

酷く今の場にそぐわないような気がして、士郎はおずおずと声をかける。
その言葉に返ってきたのは、聞き間違いとしか思えないような言葉。

「あいつ…死んだか?」

「あいつって…父さんのことか?……一命は取りとめたって…」

「なんだ。残念」

「………エレキ?お前何言って…?」

士郎の背中に冷たいものが走る。
これは誰だ?
心が叫んだ。
無意識に体が退く。
そんな士郎の様子に、エレキは小さく舌打をする。
混乱したままの士郎には聞えない。

「せっかく殺したと思ったのに……やっぱりブレーキに細工したぐらいじゃ駄目か」

「お前…何言って……!実の父親だぞ!!?」

エレキが父さんの車に細工をし、事故を起こさせた。
そう理解した瞬間、士郎は反射的にエレキの上着の胸元を掴んでいた。
しかしその手を逆に捕られ、床に押さえつけられる。
したたかに背中を打ちつけて、肺から息が漏れた。

「エレキ…っ!」

「だって…あいつは兄貴にこんなことをしてたんだろ?」

淡々と告げられた言葉に青い瞳が見開く。

「どうして……」




淫らに蠢く二つの影。
薄闇の中、震える声で繰り返された。
それはたった1つの請い。

『エレキには…エレキにだけは見られたくない…』

『そうだな…息子に見られるのは恥ずかしいかい?エレーナ』

『……うっ』




見られたくない。知られたくないと。
隠しとおしたと思っていたのに。

「バレバレだったんだよ。つけくわえるなら兄貴が14くらいから。
俺、ふすまの隙間からのぞいてたんだぜ…気付かなかった?」

「嘘…」

「嘘じゃねえょ。ずっと見てて、あいつが憎くてたまらなかった。兄貴を好き勝手にしているあいつが…」

そう言いながら、エレキの手は士郎の体を這い回る。
その感触に、ならされた体が士郎の意識とは関係無く反応する。
喉の奥から掠れた甘い声が零れそうになって、士郎は慌てて口を押さえた。
しかし無理やり手を引き剥がされ、舌で貪られる。

「ん…!んん…」

弄られて、奪われて。
士郎の瞳からは息苦しさからか、それとも別のところから来るものなのか。涙が溢れた。


「もう離さねえ…よ?兄貴は…俺のだ…」


エレキの声が…遠くで聞えたような気がして……
その記憶を境に、士郎は意識を手放した。








はらハラはら


舞い落ちる


はらハラはら


白 薄紅 そして紅




空に白雲 揺れる華


狂い咲くは幾壱百の歳月を経た しだれ桜




風に舞う花弁の嵐 その先で


微笑む 父と母と弟を 観た




『士郎』



懐かしいその声は それぞ幻








「兄貴…泣いてんの?」





返る声など あるはずもなく。
床に投げ出された四肢に、獣の跡。








瞼を伏せた白い顔 流れる雫ぞ誰が為に










了・続


←泡沫ニ戻ル
さよなら人類またきて四角(途中から違う)。コンニチワ。そろそろ夢の世界へ逝ってください♪的声も高いのではないかと思われます。
士郎を愛して止まないムスミです。
愛ゆえの待遇です。私の愛は痛いです。腐腐。
そんなこんなで父士郎続きです。むしろエレキ士郎(兄弟編)です。
近親相姦再び。むしろ士郎親子どんぶり<分からない人も聞いちゃ駄目v
ところでエレキが弟とか考える前に、お母様の名前をエレーナ(仮名)と名づけたのは運命としか。
ずっとエリカやセリカとかぶらないように…としか考えて無かったです。 
ていうかエレキ考えてなかったし。ごめんね。弟にまで散らされてしまったわ。華・士郎(何それ)
そろそろ髭氏か帽子氏に摘み取っていただきたいものです。手折ってください。愛でてください。
あーあーあー。<自分の発言に対する自覚はある様子。

このSSは当初、神威涼さんに送ったメールに書き散らかした文字の集合体でした。
それを涼さんが暖かく見てくださったのでこうして正しくお清書している限りでございます。
涼さんにのしをつけて捧げますv
ところで今回随分と最初と最後おかしいですが。
こういった日本錯誤的な文面も非常に好ましいと思います。ていうか楽し。
どうでしょうか。
息子のことを妻と錯覚している倒錯気味の父親と、同じニデラキャラで公式設定もまだなのにこんな扱いを受けたエレキ氏。
御免。<自分の…以下略。

表のSSを頑張りたいのですが、士郎はいじめがいがあってたまりません。
カッコイイ士郎も好きデス。念の為。