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変わらないと思ってた 変わらずにいると信じていた 変えずにいてやれる と 何の疑いもなく お前を変えてしまったのは 俺 変化を望んでいたのは 促したのは 俺のこの腕 それを後悔すると共に 同じ強さで歓喜する 俺の心が 恐ろしい お前に狂う お前が狂う その先を見るのが怖かった だから 手を離そうと 決めた 出来るだけ酷く 出来るだけ残酷に そうして吐き出した言葉 たった1つで ガラスが砕けるように ああ なんてあっけない 別離 Part from … another 「もう…終わりにしようぜ……士朗…」 何度も心の中で反芻して、何度も考えて。 出来るだけ酷く。 そう決めた言葉。 俺がお前に贈る、最後の言葉は。 自分が思っていたよりも冷たく、部屋に響いた。 響いて。 ついさっきまでしていた行為に、疲労しきった体をベットに横たえていた士朗が。 その身を固くしたことが触れた肌越しに伝わる。 その温もりに流されそうな感覚を切り離して。 それ以上彼の熱が沁みこまぬよう、彼の熱に惑わされぬよう、ベットから抜け出た。 「終わり…って?……ニクス?」 まだ意識がはっきりしていないのだろうか。 かすれ気味の。 困惑をあらわにした声が、空気を振動させて伝わる。 その心をかき立てられるような音色に、耳を塞ぎ。 ニクスは足元に脱いだまま投げ出されている服を拾い上げ、身に着けはじめる。 士朗の方は、見ない。 見ないと、決めていた。 見れば決意が揺らいでしまうから。 背中にチクリと刺さるのは、紛れも無い士朗の眼差し。 あの海のような青い瞳を向けているのだろう。そう思う。 しかしその瞳に振りかえってはならないのだ。 「ニクス?」 もう1度。響く声。 今度は問いただすような色が含まれていた。 その声にも、答えてはならない。 士郎のほうには目もくれず。 じじ とジーンズのファスナーを引き上げる。 ギシリと、おそらく背後の士朗が体を起こしたのであろう、ベットの悲鳴。 わずかに耳に届く衣ずれの音は、あの筋張った手がシーツを掴んだ音ではないだろうか。 静かな。 静か過ぎる 沈黙。 息を呑む気配が伝わる。 それでも、名前を呼ぶ声はしない。 そうだ。 呼ぶんじゃない。 お前が呼んだら…俺は止まらなくなってしまう。 それでも伝わってくる。 背中にぶつかる、彼の無言の想い。 振りかえりたい。 振りかえって、いつものように『冗談だよ』と笑ってしまいたい。 笑って。 その言葉に少し膨れたお前を抱きしめて。 キスして。 今ならそれが出来る。 今ならまだ間に合う。 しかし。 出来ない。 ひら オレンジの光の下に、何処から迷いこんだのか。 1羽の蝶。 黄色の燐粉が光に照らされ雪のよう。 季節はずれの蝶は自身が何処にいるかも知らず、漂う。 罪人が光を避けるように、視線を外して。 そして、深く息を吐き出した。 これが最後だと、心に言い聞かせて。 重い言葉を、紡ぐ為に口を開く。 「飽きたんだよ」 低く。今までで一番。 あいつが聞いた事も無いぐらい、低く。冷たく。 「なに…言って」 背中越しに聞えてくる声。 震えてるのが声だけでわかってしまうほどだ。 俺が、震えさせているのだ。 それは分かっていた。 それでも、止めるわけにはいかないから。 「お前に飽きたんだよ……やっぱり女の方が気持ち好いしな」 後半は、ことさらに明るく言った。 そうしないと、持たなかった。自分の心が。 しかし心は叫ぶ。 これは嘘だ…と。 女なんか変わりにならない お前だけだ そう、何回も 何十回も 繰り返した。 今でもそう思ってる。 でも、それじゃ駄目なんだ。 「そう…なんだ?」 酷く乾いた声が耳に届く。 ほら、お前はすぐに信じてしまう。 そして最後は自分を捻じ曲げてしまうだろう。それが、俺にはたまらなく苦しい。 でも、今はその素直さが助けになる。 俺達を終わりにする為の、助けになるよ。 「ああ。やっぱり女が一番だよ。だからお前とは、今日で終わりだ」 終わりたくない。 終わりになど出来ない。 がら がら がら 世界を、音を立てて崩して行く。 極彩色の世界は色を失い、モノトーンの荒野に変わる。 それでも。 あと一言。 あと一言で終わるから。 「……サヨナラだぜ。士朗…」 士朗の答えは無くて。 胸がツキリと痛み出す。 自分の言葉に、自分の嘘に。 心が腐っていく。 終われ。 終わるな。 終わってくれ。 床に貼りついてしまったように、動かない両足。 去りたくない、その心を切り裂いて。 引きずるように外へ向かう。 士朗は答えない。 足はゆっくりと、それでも外へ向かう。 俺達を閉ざす扉へ向かう。 士朗は 答えなかった。 重い扉を開いて。 目をつぶり、外に出た。 そして、後ろ手に扉を閉ざす。 悲鳴のような軋みをあげて、灰色の扉は俺達に別れを言い渡した。 そのまま。 扉に背をもたれたまま、動けない。 きつく閉ざしていた瞼を開くと。 ひら ひら 蝶が舞っていた。 偽りの光を求めて、季節はずれの蝶が。 その蝶は、先ほど部屋で見たものと異なる彩。 異なり、しかし同じ姿。 「お前は……相方を探しているのか?」 呟く。 その声が寒空の下、響く。 響いて。 ぽとり 蝶が 落ちた。 寒さに耐えられなかったのか、寿命であったのか。 落ちた蝶の羽は、冬を思わせる銀。 その彩に。 扉の向こうに残した彼の髪を想い。 世界が一つ 終わりを告げた それでも 零れ落ちないこの涙は 手放したくなかった 己の心であろうか…… アイシテル アイシテル たった一人 お前だけを その言葉すら 伝えなかった ホラ なんてあっけない 別離 了 |
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自己満足第二弾★ 書きたかったんです。どうしても、書きたかったんです。 ようやく形に出来ました。 Part from …ニクスサイド。 士朗の方と対になっていますので、こっちも敬愛する櫻さんに、さ・さ・げ・ま・す・★(とっても迷惑だ) ニクス、こんなこと考えてたんですYO! 彼は周囲に色々誤解されてそうな人ですが、心根は優しいんです(MY設定) 孤独なんです! 士朗を大切に想うあまり、自分の想いが士朗を傷つけていると思ってしまった人なんです。 そうじゃないんだ!そうじゃないんだよ、ニクス!!! でもこうして別れてしまいました。 二人はもう元には戻れません。(過去の男だからね!…え) 誤解も沢山あったけど、それを上回る幸せがあったよね。 でも、二人の気持ちは同じようでとても遠かったから。 もう戻れない。 サヨウナラ。 傷つけて、傷つけられて。 でも愛は確かにそこにありました。 愛は見えないけれど在ったんです。 切ない……ううううう! 書いている本人がそんなこといってるとアホみたいだ。(正気に返る) そんなこんなで、自己満足第二弾なのでした。 |