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長い道を歩いていた。 長い、長い。 いまだ先の見えない道だった。 蝕 目の前には見慣れた友人の姿。 常に前を向き、けして振り返らず、けして足下を見ない真っ直ぐな。 そしてその友人の傍らにあるもう一人の友人。 常に彼と肩を並べ、時に自分達の一歩後ろを何も言わず歩く。 不思議なことにここは空に雲が無かった。 快晴、というには空の青は薄く。 目の前にはただ道しかなく、他の建物も風景も見られなかった。 青い空と緑の道。 それだけの世界。 それでも自分達はなんの疑問も無く、歩んでいた。 足をとめることなく。 時折、一歩後ろを歩く友人は僅かに後方を振り返り。 そんな友人を自分は見て。 もう一人の友人はただ歩みを止めずに前だけを見て。 ふいに足下が消えた。 どのくらい時間が経ったのかなどということは、重力に引かれて体が落ちてから考えた。 真っ暗な場所だった。 手に、足に、泥がついていた。 体中薄汚れていた。 上を見上げると、ぽっかりと青い空が丸く区切られていた。 ああ、あそこから落ちたのか。 ぼんやり思う。 そして次の瞬間には切実に、あそこへ戻りたいと思った。 友人を呼ぼうとして、口を開き。 言葉を失った。 今まで気付かなかった事。 目の前に、金の目をした何かがいた。 じゅるじゅると音をたて、這い回るそれはたちの悪い人の髪の模造品のように。 恐ろしいほどに美しい女の顔に飾り立てられていた。 神話で呼んだメドューサだ。そう直感した。 慌てて目をつぶろうとするが遅かったらしい。 瞬きも出来なくなった目、動かない体、友を呼ぼうとした形のまま凍りついた口。 硬く、硬く凍りつく。 その時、頭上から降り注ぐ日の光に影がさした。 そして見覚えのありすぎる友人の顔、が。 「幸村!?」 駄目だよ、真田。 お前まで石になってしまう。 危険を伝えたかったけれど、口は言葉を発する事は無い。 異質なものに変化した瞳に、真田の足がじわりと色を変えるのを見た。 「・・・・っ!」 意識をたたき出されて目覚めた先は、すでに見慣れてしまった病室のベットの上だった。 じわりと背中を冷たい汗が落ちる。 目を落すと、入院して白くなってしまった手に血管が浮き出ていた。 青白いそれ。酷くきつく握り締めていたらしい。 カーテンは夜闇を吸い込んで青白く揺らめく。 その隙間から、急患の到着を告げる赤いランプがチカチカと入り込んだ。 静かな夜に耳に届くサイレンと人の声。 どうして、あんな夢を見たのかは…誰よりも自分自身がよくわかっていた。 太陽のように傲慢なお前に。 子供のように真っ直ぐで今を疑う事の無かったお前に。 夜を与えたのは自分だった。 終 幸村話。 真田と幸村と柳。この三人は深いです。 |